明大ファンの野次


 皆さん、明けましておめでとうございます。何がめでたいのかよく分かりませんが。今年も昨年同様、スポーツ・政治を中心にあれこれと書いて行きたいと思いますので、よろしくお願いします。

 

 年が明けてからもスポーツ界はビッグイベントが目白押しだ。国内ではニューイヤー駅伝・箱根駅伝に始まり、サッカーの天皇杯決勝・高校選手権やラグビーの社会人・大学・高校の各選手権、ライスボウルなどが行われ、海の向こうでもNFLプレーオフ、世界水泳選手権、スキー・スケートのW杯前半戦などが行われた。一昔前ならともかく、現在では衛星放送などでこれらのほとんどをその日のうちに観戦することが可能であり、僕の様な「雑食」のスポーツファンにとっては全く至福の時である。これからもラグビー日本選手権・スーパーボウル・長野オリンピックが控えており、少ない時間でどうやって多くをカバーするか、頭を悩ませることになりそうだ。

 しかし、そんな幸福な時期であっても、やはりいいことばかりとはいかないもので、いやな思いをすることもある。観戦する機会や集める情報が多ければ多いほど、楽しさが増すと同時に不愉快な体験も多い。今回は、最近接した、その不愉快なことについて書いてみたいと思う。

 先日1月10日、国立競技場でラグビー全日本大学選手権の決勝が行われた。日本有数の伝統校であり強力FWを武器とする明治大学と新興勢力の代表格で巧みな継続・展開ラグビーを身上とする関東学院の対決はファンとしては非常に興味をそそられるカードであり、僕も寒い中、まだ雪の残る国立に駆けつけた。試合自体は、両チーム共にゴール前でのミスが目立ったものの、最後まで緊張感の途切れない好ゲームだったと思う。関東30−17明治の結果は、現在の両チームの力量を考えたら至極順当であったろうし、「早明中華思想」の崩壊をいっそう促進することになるかもしれない。僕は試合自体にはとても満足した。問題は、スタンドの雰囲気である。

 ラグビーの国内試合では、基本的にホーム・アウェイの区別はない。大試合は全て国立・秩父宮・花園のいずれかで行われる。従って、サッカーのようにチケット発売の際に指定席をホーム側・アウェイ側に分けることもない。僕は過去に明治の学生の観戦マナーの悪さを何度か目撃していたので、本当は明大生の多いところには座りたくなかったのだが、あいにく僕の席の周りの7割くらいが明大生であった。しかもその日(だけではないが)の明治の学生の観戦マナーの悪さといったら、僕の予想をはるかに越えていたのである。キックオフの笛がなるとすぐに明大生の野次(野次などという上等なものではないけれど)が始まる。相手がミスした時には「ヘタクソー!」「ザマーミロ!」、明治が反則をとられた時には「ヘボ審判―!」。ここまではまだいい(良くないが)。明治が劣勢に追い込まれるにつれて、野次は段々エスカレートしていった。「このインチキ四流大学―!!」(人の事言えるか?)「斎藤、殴れ殴れー!」、しまいにゃ「殺すぞコラ!」…。周りに関東学院生もいるのに、である。関東学院側で汚い野次を飛ばす人はほとんどいないにも関わらず、である。

 まあこの手の人間は愚かにも自分で自分の品位・人格を格下げしているのだし、自分達を強者と思い込んでいた者が実は弱者であることを気付かされた時に負け犬の遠吠えに走るのは分からなくもない。だから放っておけばいいのかもしれないが、しかしそんなアホどものおかげでこちらまで不愉快な思いをするのはまっぴら御免だ。思わず席を立ちかけたぞ。もう明大生はラグビーを観に来るな。最近サッカーの(一部悪質サポーターの)影響なのか、ラグビーに限らず若者のスポーツ観戦のマナーの悪さが以前よりも一層目立つように思う。明治だけでなく、各スポーツの各チームの選手・関係者は悪質ファンに対して声明などで断固たる姿勢を示してもらいたい(明治の関係者がファンのマナーについてコメントしたのを見たことが無い)。この国の主要スポーツにおいてスタンドがなかなか埋まらないのは、試合自体の質のせいだけでは決してないのだ。

 

ショートカット99号掲載(1998年1月15日)


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