最悪の試合内容に、幸運な結末。いつまで続くか「ジーコトンネル」。

 

 

……助かった、助かった、助かった、助かった、助かったぁああ〜〜何という幸運な得点。フランスW杯予選のウズベキスタン戦(アウェー)を思い出さずにはいられなかった……つーか、これ1次予選なんだよな。空前憮然愕然の無様なサッカーに、埼玉スタジアム6万の青き衣のサポーターたちも、顔は怒りで真っ赤に染まっていたに違いない(だよね?)。ホント、勝点3をとったことを除けば最低の試合だった。

 

 序盤は日本が一方的に押し込む展開となった。右サイドに流れた俊輔の(相手の意表を突いた?)右足クロスはきわどい場面を作っていたし、オマーンDFは不用意に足下に飛び込む場面が多くて「ボールさえ速く回していれば必ず穴はできる」という印象だった。守備面でも、この日はいつもに比べて三都主が相手サイドアタッカーのマークに健闘しており、右の山田が体調不良のために精彩を欠いたのは気になったものの、力としては完全にこちらが上回っているように思えた。あのラッキーとしか言いようのないPK(何もファウルはなかった)を俊輔が決めていれば、何の問題もなく日本が勝っていたように思う。

 しかし、俊輔のキックがGKハブシ(いい選手だ)にどんピシャのタイミングでセーブされてからは、徐々にオマーンアタッカーのドリブルの鋭さ(とフォローの早さ)が目立つようになり、試合は均衡。後半の頭から久保を投入し、今度は左に張り出した俊輔からのクロスを合わせる形で何度かチャンスを作ったものの、それも最初の10分ほどだけ。あとは90分を過ぎるまで、僕たちはひたすら日本代表が解体していく過程を見せられたのだった。オマーンの、組織化されているがさほどひねりのないカウンターからなかなかボールを奪えぬ中盤。山田はもはや動けず、三都主は攻撃から姿を消した。FWが横に流れてボールを受けるも中央へ飛び込んでいく動きは乏しい。中田は厳しいマークに苦戦(それでも「さすが」と思えるパスはあったが)。俊輔はPKミスを自力で取り返そうと力みすぎてパッサーとしての軽快さを失ってしまった。終盤は引き分け狙いで自陣を固めるオマーン相手に日本は疲れが出て動きは落ちる一方、てんでバラバラのパスが飛び交ってはボールを失ってしまう。

 そして後半終了間際には、最も見たくなかった光景も。日本陣、中盤の底まで下がってきていた中田がドリブルで持ち上がろうとする。しかし、この試合何度となく見られた「時間稼ぎ」か、逆サイドでオマーンの選手が倒れている。その姿を確認して、ピッチ外へボールを蹴り出す中田。さすがは中田、どんな時でもフェアな男だ。が、しかし。次の瞬間、中田が誰かと激しく言葉を交わしている様子が画面に映った。三都主だ。ハッキリした事はわからないのだが、状況と画面から推測するに、三都主は「そんな時間稼ぎにつき合わず、ゲームを止めないで続けるべきだ」と主張したのだろうか。もしそうだとすると(そうじゃなかったらゴメン)、これ以上残念なことはない。人には色々考え方があるかもしれないが、少なくとも僕は日本代表にはいかなる時でも正々堂々立派に戦ってほしいと思っている。たとえ相手が汚い手を使っていると感じられても、あるいはたとえ敗れようとも、だ。まして中田は誰もが認める日本代表の中心、この試合でもキャプテンマークを巻いていた選手。あの光景には、チームが一気に壊れかねない危うさが感じられたし、実際敗れていたらそれこそ全てが台無しになっていたかもしれない。

 ところが、日本にはまだツキがあった。ロスタイム、芸のない前への放り込みが目まぐるしいピンボール状態を生み、俊輔の足に当たった球がノーマークの久保の足下へ。ここで落ち着いて最高のシュートを撃てたのは、人並はずれた神経(良くも悪くも(笑))を持っている久保ならではか。「劇的」とはあまりに陳腐な表現だが、しかしそうとしか呼びようのない決勝点。命拾いをした。助かった。恐らくあのまま引き分けに終わっていたらチームの雰囲気は最悪になり、俊輔はマスコミ・ファンの格好のスケープゴートになっていたはず。今後に響かないはずがない。俊輔が(ほとんど偶然に近い動きとはいえ)アシストをする形で決まって、本当に良かったと思う。ただし、この一勝を素直に喜ぶ一方で、「ジーコもこれで命拾いをしたのか」と思うと複雑な気持ちになったのも確かだ。

 

 この試合、どうも柳沢・宮本・山田の3人はハンパじゃなく体調がすぐれなかったらしい。メンバー最終登録があったのは前日のはずで、そう考えるとジーコは全てを承知の上で起用したということなんだろうか。やっぱりこのオッサン、リスク回避という点だけ見てもちょっと監督(特に一発勝負の多いナショナルチームの)としては不適格と言わざるを得ないのではないだろうか。ま、仮にメンバー登録が間に合わなかったとしても、だ、先発起用については(百歩譲って「欠かせない選手」宮本以外は)考え直すべきだったと思うのだが。

 個々の選手では、山田は死人状態。柳沢は39度の熱を考えれば使う方がどうかしている(そう考えると宮本は凄い!)。坪井はプレーに迷いが出てきてるかな。アレックスは守備の方で頑張っていたけれども、それも「いつもに比べれば」という目で見ての話だ。遠藤やっと・稲本は全くオマーンのアタッカーをつかまえられなかった(やっぱり明神が必要では?)。中田はコンディションがすぐれないながらも最低限の仕事はしてくれた。俊輔は空回りしていたけれど、しかしプレーに気持ちが出ていたのはうれしかった。最後のプレーだって、前へ出る姿勢が生んだものと言えなくもないじゃないか。小笠原はパッサー過多の中で持ち味を出しあぐねた(あそこは藤田を使うべきだろう)。高原・鈴木は標準の出来か。殊勲の久保は……そういや、今日はうつむいてなかったね。

 ともかく、内容からしても、1点差しかつけられなかったことからしても、1次予選も全く安心できない状況には変わりがない。ましてや、最終予選でこんなサッカーをしていてはまず間違いなく日本はドイツの地を踏むことができないだろう。ま、この試合はまだあらゆる意味でコンディションの上がらないシーズン序盤に行われたものであるのも確か。今後はどんどん良くなっていくものと信じたい、が。さて、日本は、まず何をすべきだろうか?

 

 

2004年2月18日 埼玉スタジアム2002

サッカーW杯ドイツ大会アジア1次予選

 

日本代表 1−0 オマーン代表

 


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