ナビスコカップ第3節 vs横浜Fマリノス 2006.4.26 味の素スタジアム

 

 

 「いい試合だった」。それが試合後の率直な感想である。最近の東京については、新たな試みにワクワクし、負けが込んでも「これくらいは仕方がない」と自分に言い聞かせる一方で、迷い、足踏みしている選手や監督に苛立ちや失望を覚えていたのも事実だ。でも、今日の東京の戦いぶりに少なくとも僕は納得したし、だからこそ敗北に対する純化された悔しさが残ったのだった。

 確かに、褒められたものではないシーンは多かった。規郎はザルとも呼びがたい逃げの守備を繰り返し、チームとしてもそのエリアをカバーしきれず。先制点を奪った際の田中隼は無人の野を進むが如しだった。また、ビルドアップのパス回しがなかなかできないのはある程度仕方ないとして、そこで失敗した時の攻→守の切り替えの遅さや、下を向いて消極的になり、再チャレンジまで時間がかかる選手がいるのには歯がみさせられた。

 加えて、今日の敵は横浜だけではなかった。レフリーの砂川さんは横浜のハンドくさいプレーを見てないわ今野の好タックルをファウルにするわ、しまいにゃボックス内で伊野波が後ろから倒されてもPKをとらず、東京は前がかりになっていただけに損をしたように思う。そして、立ち上がりから出来は悪くないように見えたのだが、なぜかゴール裏が前半早々から後半の途中まで応援拒否。選手たちは、横浜側のチャントばかりが響く「ほとんどアウェイ」の状況での戦いを余儀なくされたのだった。

 それでも、選手たちは崩れず持ちこたえ、幾人かの奮闘が他の選手を引っ張る形で反撃モードに移行。前半を押し気味に終え、後半早々に梶山が「お前よくそこまで上がってたな!」と叫びたくなるゴールライン際からのヘディングシュートを決めて同点。ややぎこちないながら、ルーカスや梶山のキープからボールを散らし、宮沢や伊野波のクロスが何度も上がる。松田の「100年に1回あるかないか」という奇跡的ループ(笑)で勝ち越されても、へこたれるどころかさらに攻勢が加速。

 特筆すべきは、チームが試行錯誤する中で、若手が持ち味を出し始めると同時に既存の選手たちも新境地を開拓しつつある事だろう。無尽蔵のスタミナを持つ伊野波が右サイドを幾度となく駆け上がり、精度の高いクロスを上げる。赤嶺はDFとの肉弾戦から鋭いターンと小気味よいステップで決定機を作りかけた。また、茂庭も前線近くまで上がって攻撃に絡み(ほとんどは失敗だったけど)、梶山はいつもなら電池切れの終盤にもう一度力を出して配球役はおろか守備でもカバーリングに活躍。

 みんな頑張っていた。スタンドで観ていて、彼らの姿に胸が熱くなった。ホントに、ホントに勝たせてやりたいと思ったのだが……ついに勝利はおろか、追いつくことさえできなかった。「まさか松田があんなスーパーシュートを決めるとは…」「審判がPKを見逃さなければ…」「ロスタイムのササのヘディングシュートが決まっていれば…」。悔しいなあ。心の底から悔しい。こんなに悔しいのは03年の、終了間際に追いつかれたヴェルディ戦以来だよ。

 もっとも、こういう時にこそ、思うのだ。「ああ、だから俺はこのチームを好きになったんだな」と。勝ったときの、ましてや大事な試合で快勝した時の歓びは何ものにも代え難い。でも、僕たちが泣きそうなくらい悔しくて、同時に選手たちも膝をつき、肩を落とすくらいに悔しがっている時。その時こそ、選手たちと何か大事なものを共有しているように感じたりもするのである(監督が誰であろうとも、だ)。それは、単なる思いこみかもしれないけれども。

 こういう試合をまた見せてくれるなら、僕はまだまだ大丈夫。選手たちには、自分たちの力を信じて思いっきり戦ってほしいと思う。応援するぞ。次こそは勝ってくれ!!

 


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