ナビスコカップ第2節 vs横浜Fマリノス 2006.4.12 三ツ沢球技場

 

 

 この試合は「絶対に勝たなければいけない試合」ではない、という前提に立つならば(この部分については後述)、采配とかフォーメーションとかいう以前に現在の東京のチームとしての問題点、選手たち個人の課題がよくわかった試合だと思う。すげー大ざっぱに言えば、状況への適応力と「正確なプレー」をするための意識・技術が不足している、というところか。

 前半。事前の報道にもあったように、茂庭・増嶋・ジャーンの3バックに梶山・今野・栗澤の中盤。これがどうもうまく行かない。パスのつなぎはぎこちなく、なかなか前に出られないどころか、パスミスから横浜の攻撃を呼び込んで次々とシュートを浴びるはめに。土肥とDF陣の奮闘で得点こそ許さないものの、一方的な展開。選手たちが急造3バックに対応できなかったということなのだろうが、それにしても工夫のなさが目についた。

 単純に中盤がいつもより1人少ないのだから、MFがより広いプレーエリアを意識するなりSBが絞ってパス回しに参加するなりしなければならないはずなのに、4バックの時と全く同じ感覚でプレーしている者が多い様子。梶山は相変わらず前半途中までは寝ていたし。もっとポイントへの移動を速くしないとボールも動かせないよ!さらに、MFが前に出られないとルーカスもサイドへ流れることができず、すぐにつぶされる「駄目な方のルーコン」に戻ってしまっていた。

 それでも、前半30分過ぎからようやくパスが回り出し、劣勢を覆すまでは行かずとも徐々にチャンスを作り始めていたのだが…。後半12分、相手の左サイド攻撃からあっさりとクロスを入れられ、土肥ちゃんがはじいたボールをMF狩野に押し込まれてしまう。これに対して東京ベンチは怪我上がりのジャーンを下げて川口を投入。「苦しい時の川口頼み」が定番になってきたような気もするが、実際頼りになるんだから仕方がないか。

 これで東京の攻撃スイッチが入る。徳永の突破力(ドゥトラにフィジカル勝ち!)、川口のパスを引き出す動き、そして守備の綻びを狙い続け、あるいは前線で基点となるササ。ようやく梶山や今野も敵陣で前を向けるようになり、いい形が何度か。ササが戻したボールを梶山がシュートした場面や、ササの反転シュートは惜しかった。その一方、電池切れの規郎に代えて藤山という交代。藤山は田中隼にあっさり裏を取られては、「すわシュートか!」という瞬間にスライディングで飛んでくる、という面白守備を披露(笑)。

 終盤になると、前半から横浜のパス回しに振り回されたダメージが出たのだろう、東京の選手たちの疲れが顕著に。こぼれ球に寄せず、相手のドリブルを黙って見送る選手も。この苦しい状況で「おっ!」と思わされたのはササの動きだ。後方からパスが出ないとみるや中盤まで下がって積極的にボールをさばき、相手ボールにも早々と詰めていく。もちろんそれはチームがいい状態にない証拠でもあるのだけれど、根っからのストライカーたる彼の献身性には心を動かされるものがあった。

 で、残り5分、東京ベンチに動きが。栗澤OUT、吉朗IN……。うーむ、ここはパワープレイやるにしても宮沢を入れるべきだと思ったのだが。後のなくなった東京はドッカンドッカン放り込んで、ペナルティボックス内で混戦になる場面もあったのだけれど、そこでボールをさらって押し込む余力まではなかった。逆に、カウンターから久保が抜け出し、前に出る土肥ちゃんをかわす巧みなシュートで横浜が追加点。決定力の差も見せつけられたところで試合が終了。残念。

 

 これで、東京はナビスコカップの予選突破は相当厳しくなったらしい。そういう意味では痛い敗戦なのだが、試合中、さらには試合が終わってからも不思議と腹が立たなかった。彼我の差は明らかだったからだ。横浜が正確なパス&ゴーの連続で攻撃を作っていたのに対し、東京は単純なワンツーリターンを含めてグループ戦術が拙く、個人レベルでもトラップやパスの精度がイマイチであった。どうも、コレクティブなサッカーへの道はやはり相当に長いものになるのではないかと思えてきた。

 「ポゼッション」でも何でも良いが、個人の突破力に頼るのではなく組織的に崩すサッカーをやるのならば、即興又はパターン化による「もう一工夫」が必要なのだ。この試合でも何度かあった、単純にサイドへ送るのではなく、横へはたいて一拍置いてからダイレクトのスルーパスで前を走らせる形。ゆっくり下がってくる選手と入れ違うことでマーカーを惑わせ、一気に裏へ飛び出す形。「速く、前へ」ではなく「ゆっくり、横へ」でもなく、緩急を操ることが目標(磐田戦の3点目のように)。そのために磨かなければならないものはかなり多そうである。

 3バックについては、「まあやってみるのはいいんじゃないかな」というのが個人的な感想だ。もちろん、ナビスコカップの優勝を本気で狙っていて、この試合も「絶対に負けられない」と考えるのであればまた評価は違ってくるだろう。でも、ガーロや選手たちが格闘している相手というのは、おそらくそういうものではないように僕には思える。成功しても失敗してもいい。マンマークやっても3バックやってもいい。チームの可能性を探り続けるガーロにはやれるだけとことんやってほしい、と思うのだ。山本昌邦さんにならない程度にね(笑)。

そ れにしても、気がつけば、伊野波が相手エースとドッグファイトを繰り広げる姿が見られないと、試合後にちょっと物足りない気持ちを抱くようになってしまった今日この頃なのであった(笑)。

 


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