J1リーグ第1節 vs大分トリニータ 2006.3.5 味の素スタジアム
これで東京はJクラブとなってからシーズン開幕戦は8連勝(JFL時代の97・98年も合わせるとなんと10連勝!!)。気持ちが悪いくらいに強い。当日配布した「東すか」15号には「勝てるかどうかは全く予断を許さない」なんて慎重めな事を書いたけれども、正直なところあまり負ける気がしないのである(などと調子こいた事を書くと、来年負けるような気もするな(笑))。
メンバー発表。東京は徳永・増嶋・茂庭・規郎と並ぶ若い4バックに梶山・伊野波・今野のこれまた若い中盤、そしてササ・「秘密兵器」リチェーリとルーカスの3トップ。個人的には3トップはあまり好きじゃない(どうしてもFWの個人技頼みになりやすいから)けれども、憂太のコンディションが万全じゃない状況ではこれもありかな、と。つーか、せっかくの新体制なんだから色々試してみないとといかんのだ。大分の方は……率直に言って、いささか寂しめの陣容。いくらシャムスカでもキツイだろこれ、という感じ。
キックオフ。東京は先週のプレシーズンマッチ甲府戦と同様に中盤以降で慌てずボールをつなぎ、SBのオーバーラップとサイドチェンジを交えながら攻めたてようとする(「ヨコヨコタテ」?)。ただし、この日はグラウンドの状態が見るからに荒れており、選手たちははね回るボールの扱いに苦戦。細かなミスが多くてパス回しはかなりぎこちない。一方、大分はボールを奪うや素早く攻めに転じ、ショートカウンターからスペースへ上がる選手へパスを通そうとする(「タテタテヨコ」?)が、パスの出し手と受け手の意図が合わない姿が目立ち、荒れたピッチもあってアタッカーの足下にボールが収まらない。序盤は東京がペースを握る。
14分、東京陣に攻め入った大分アタッカーのゆるいつなぎパスを今野が出足よくカット、迷わず左サイドのスペースへ走るリチェーリの前方目がけて蹴り出す。リチェーリはボールを拾うや快足を飛ばし、ゴールライン際を深くえぐってチェックに入るDFをかわしながら低く鋭いクロスを入れる。次の瞬間、ササが斜めのコース取りでDFの間に躍りこみ、右足アウトでで見事に押し込んでいた。鮮やかな、実に鮮やかな得点。ちょっと全盛期のラウールを彷彿とさせるようなクールなゴール。リチェーリが淡泊に上げるのではなく、えぐってくれたおかげでアタッカーの上がる時間が稼げ、中のマークが分散したのもこの先制点につながった。
ここから大分がやや盛り返す。大分も今季の東京の指向をわかっていたのだろう、長い横パスやサイドのボールホルダーを集中して狙ってきたようで、規郎や徳永が追いつめられて行き詰まる光景が増え、自陣から3トップへの長めのボールが多用されるように。大分は前がかりになり、左サイド根本を起点に同点ゴールを狙う。19分、ペナルティボックス内でササからのラストパスを受けたルーカスがDF2人と競りながらシュートするも、わずかに枠外。24分には根本のクロスを土肥が際どく弾き出した場面、無人のゴールをエジミウソンがダイレクトボレーで狙ってヒヤリ。
東京に追加点が入ったのは26分。根本のクロスを東京DFがはね返した場面、ボール争奪戦を制した今野が素早く持ち上がり、ササの前方を狙う速いスルーパス。ササは自分がオフサイドと判断したのだろう、両手を上げ減速してパスをやりすごす。それに釣られてDF2人が減速したところ、後ろから加速していたリチェーリが一気に追い越した。リチェーリはもの凄いスピードでボックス外まで到達して転がるボールを一蹴り、前へ出るGK西川の股間を冷静に抜く。ボールはそのままゴールの中へ転がっていった。大分DFの予測を上回る、「秘密兵器」のスピードと意欲の勝利。2−0。
その後は東京が再び中盤のつなぎから左へ大きく回して規郎、という展開を狙うが長続きせず、下がり気味からの縦パス多用が続く。一方大分も前がかりではあるのだが、東京の守備網を突き破る一手に欠ける。38分、オズマールが内村とのワンツー(?)でペナルティボックスへ突入してシュートを放つが、増嶋がスライディングでブロック。41分、ハーフウェー付近でパスを受けたササが反転してスルーパス、またもリチェーリが抜けたか、という場面は惜しくもオフサイド。43分には左サイドから切れ込む根本のラストパス、高松が受けてシュート、という瞬間に茂庭が体を寄せて事なきを得る。2点差のまま前半終了。東京の出来が良いと言うより、大分のもたつき加減が印象に残る45分だった。
後半になると、大分が明らかに立て直してきた。ハーフタイムの修正の効果に加え悪ピッチにも慣れたのか、アタッカーへのクサビやフィードが正確性を増し、速いパス回しから攻めたててくる。7分、大分のCK、ゴールエリア内を狙った折り返しを増嶋が際どくカット、こぼれ球を三木が正面から狙うが徳永が詰めてシュートは外れる。12分、カウンターで大分3対東京2の危ない場面、慌てない茂庭の構えにドリブルする内村の判断が遅れ、さらに高松のシュートは枠を外れて命拾い。さらに14分には高松がヘディングシュートを放つも、増嶋がしっかり体を寄せて枠外へ。
東京もパス回しからリズムを取り戻したいところだが、梶山・今野とFW陣の連携がイマイチでなかなかチャンスが生まれない。今野は時折勢いよく前に出る場面もあったが、梶山はこねてさばいてばかりで前に絡んでいく姿勢に欠ける印象(そういう指示なのか?)。規郎・徳永も沈黙し、ますます3トップ頼みが強まっていく。16分、右サイドからリチェーリが突破、折り返しをルーカスが合わせたシュートはDFに当たり、さらにこぼれ球をササが右足で叩くもボールはポストのわずか右を抜けていった。そろそろ選手交代のタイミングかとも思えたが、ガーロはなかなか動かない。24分、ゴール正面から梅田が放った強シュートは今野が顔面でブロック。
25分、東京は足を痛めたリチェーリに代えて川口投入。半ばアクシデンタルな交代だったが、これが当たった。川口は右で左でボールを引き出してはドリブルで仕掛け、その積極性が攻撃を活性化。26分、川口が右で突破してクロス、逆サイドからササが折り返し、ルーカスが引き倒されるもノーペナルティ。27分、パスカットから伊野波が豪快に左タッチ際を駆け上がり、中央への折り返しをルーカスがシュートするが西川の正面。28分にはササからのグラウンダーを川口が反転して流し、走り込んだルーカスのシュートを西川が左足でかろうじてセーブ、さらに規郎のクロスに川口が飛び込んだヘッダーはわずかにバーの上。つーか、がんばれルーカス。
大分はDFの上本に代えてMF西山、さらにFW松橋投入と攻撃の枚数を増やして対抗しようとする。しかし攻撃のバリエーションはあまり多くないように見え、困った時の高松頼みがやや目につく。31分、ペナルティボックス内で高松にラストパスが通った場面も増嶋がガッチリ付いてブロック。この日の増嶋はたくましいプレーを連発しており、いつもに比べて茂庭の存在が目立たないように感じたほどであった(もしかしたら茂庭はちょっと楽してたかも(笑))。
終盤になると両チームの守備の圧力が減り、やや淡泊なシュートの応酬となっていく。35分、ゴールライン際からの内村のクロスに合わせた松橋のシュートがサイドネットを揺らす。38分、大分のロングボールに対して増嶋から茂庭へマークの受け渡しが遅れ、山崎の思い切ったシュートがゴールわずか左を抜けていった。ここら辺、大分のシュートの不正確さに助けられたのも事実であろう。東京も負けじと川口が勝負を仕掛け、得点には至らないながらクロスやシュートでDFを脅かす。
41分、東京は警告を受けたルーカスを下げて憂太を投入。憂太はもう少し早く見たかった気もするが、おそらくガーロは試合をかき混ぜるのではなく、ペースを保って逃げ切る事を優先していたのだろう。妥当な判断だと思う。終了間際になると東京は皆でしつこくボールを追いかけ、大分になかなか攻撃の形を作らせない。時間がなくなり焦る大分の放り込みも、増嶋を中心にはね返し続ける。46分、1人まだ得点が欲しそうなササの期待に応え(笑)、川口が左サイドでDFをぶっちぎってクロス、しかしササは体勢を崩してシュートできず。48分には憂太が敵陣深くへのドリブルからFKを獲得、クロスに川口が飛び込むが決まらず。結局、東京ペースのまま試合終了の笛が鳴った。
この試合、途中で僕が思わず呟き、試合後東すか編集長からも同じ言葉を聞いたのだが、「何ともコメントするのが難しいゲーム」であったというのが正直な感想である。ところどころで「つないでリズムを作る」意図はうかがえたものの、大分の前がかりの守備、デコボコのピッチ、リチェーリの予想以上のスピード、と様々な要因が重なってリニューアルしきれない(しなくてもイケちゃう)サッカーになった事は否めないし、大分のもたつきに助けられたのも確か。まあ、まだ開幕戦でもあるし、拘りすぎて状況を無視した「原理主義」サッカーに陥ってもいけないので、とりあえずよしとすべきだろう。得点はいずれもナイスなカウンター。
選手・ユニット別では、まず3トップは各自持ち味を出して勝利に貢献。リチェーリはスピードはもちろん、ゴールを目指す意識の強さがいい。ルーカスは相変わらずシュートが決まりませんな。中盤は、伊野波は90分間シブい働きで合格点、梶山はちょっと雑なプレーが多い印象。今野は守備の方でまだ感覚がつかめていないかな。SBの2人はもっと周りとの絡みを考えないといけない。特に規郎は、今のままだと前に蓋をされたらお手上げだろう。DFは、増嶋が頼もしくなったのが嬉しいところ。この日のプレーならジャーンを欠いても大穴にはなるまいよ。あと、忘れてならないのは川口か。FWであれだけやれるとは、ちょっと意外であった(と言っては失礼か)。
ともかく、ガーロ監督の初戦できっちり勝点3奪えたのは、チーム作りに「ゆとり」をもたらす意味でも非常に大きい。思い起こせば2002年「原東京」の初年度だって、開幕鹿島戦の圧勝で半年分の(気持ちの)貯金ができたようなものだったし。次戦以降も色々と試行錯誤が続くこととは思うが、3月の相手は新潟・清水・川崎・京都。この4戦で徐々にチームを固めながらそこそこの成績を収め、良い状態で最初の山場である4月(横浜、磐田、千葉、ガンバ!)を迎えてほしいものである。
そして、一方、大分の方は……アウェイでの開幕戦、最初から自分のサッカーをやるのは難しかったのだろうが、序盤の出来は昨季の後半と見比べると「あらら?」という感じであった。人材面で質の低下があるのは否めず、特に攻撃の武器の少なさをみるにつけ、軸であったマグノ・アウベスの穴はやはり埋まらないのかな、と思わされた。「少数精鋭」と言えば聞こえはいいが、強力なユースを抱える千葉あたりに比べても状況は厳しいのかもしれない。まあ、逆に「その逆境をどうシャムスカが乗り切るか」という意味で興味深いチームではあるが。