J1リーグ第10節 vs名古屋グランパスエイト 2006.4.29 味の素スタジアム

 

 

 とにかく、勝つことができて良かった。チームのポテンシャルを引き出すための試行錯誤が続くのは今のところ仕方ないとして、やはり全く結果が出ないのもあまりに苦しい。言い換えれば、今の実力でも勝てる相手には取りこぼさないのが肝心ということ。そういう意味で、色々と課題は残しつつも、「勝って反省できる」ことをまずは喜ぶべきだろう。

 

 前半立ち上がりは両チームとも気が急くような感じで、落ち着かない攻め合いが続く。1分、CKから増川のヘッダーがバーを越え、2分には敵陣右サイドでボールを奪った川口がそのままボックス内で勝負を仕掛け、速いクロスを入れるがDFカット。3分、徳永の裏をついた本田の好クロスに玉田がダイビングヘッドで合わせ、土肥の横っ跳び届かずも左ポスト直撃でセーフ。その直後には梶山のミドルシュートが楢崎の正面を襲う。

 この日の東京は前目からチェイスしてコースを限定、中盤に出たパスへアタックし、さらに二の矢が挟み込む、という守備ができていた。千葉戦やガンバ戦に比べれば攻撃開始点は高い。また、ダラダラつなぐだけではなくロングボールも交え、攻撃のバランスは悪くない。ただし、今野の消極性や全体的なパススキルの低さは相変わらず。また、守備でも、中盤で取りに行って交わされると一気にDFライン前まで持ち込まれる危うさはあった。

 一方の名古屋はコンパクトな陣形からパスワークで左右に揺さぶり、本田や中村が前を向いたところで2トップを走らせる、という形か。ただ、確かに玉田・杉本の速さに怖さはあるものの、攻撃にたたみかける迫力はなく、守備でも全体的におそるおそるというか、連動した動きでスペースを消すことができていないため、中盤は東京がやや優勢であった。11分、玉田からのサイドチェンジで抜けた杉本のクロスは茂庭が余裕でカット。

 先制点が生まれたのは、試合がやや落ち着くかとも思えた14分。中盤でルーカスがボールを奪取、DFの間で待つ前線の赤嶺へつなぎ、赤嶺は右へ大きなグラウンダー、開いていた川口がタッチライン際を抜ける。中には赤嶺1人しかいないように見えたが、川口は巧みにドリブルで味方の上がる時間を稼いでからクロス、ボックスへ猛然と走り込んだルーカスが豪快なヘディングシュートをゴール右に突き刺した。よし!見ていて爽快感の高い得点だった。

 続いて17分。梶山のマーカーを吹っ飛ばす剛健キープ(笑)からルーカス→規郎へとつなぎ、外を川口がオーバーラップしてDFがフリーズしたところで規郎がクロス、ボックス中央で待ちかまえていたルーカスが狙いすましたヘッダー!楢崎の横っ跳びも届かず、ボールはワンバウンドでゴール右隅に吸い込まれた。ルーコン爆発!!これも中盤でSBの上がる時間を作り、さらに囮の動きで相手を惑わした、実にいい形。ガーロに駆け寄って抱き付くルーコンの姿にはちょっとジーンとしてしまった。

 これで試合は完全な東京ペースに。中盤で次々とボールホルダーにつっかけていき、名古屋は自陣でのつなぎにも苦労してミスパスがタッチラインを割ったりも。東京で特に目立ったのは梶山。この日は最初から目が覚めている感じで、ピッチ各所で持ち味のキープ力を遺憾なく発揮した。22分、敵陣でのFK、梶山の意表を突く柔らかいキックをジャーンがヘッダーで楢崎の頭越しに狙うが、惜しくも枠を外れた。次々とセットプレーを奪い、カウンターの芽も川口や梶山(!)が早めのチェックで潰す。これは、圧勝になるのか?

 しかし、うまく行くと思えた時が実は一番危ない。29分、本田がクイックリスタートでクロス、フリーで抜け出した中村のボレーがポストを直撃してヒヤリ(オフサイド)。30分、ボックス横のFKで宮沢の低いクロスがゴール前を抜けたが、赤嶺が合わせきれず。35分を過ぎると連戦の疲労のせいか、東京の動きが落ち始め、DFラインも下がって名古屋のパスが回り始める。36分、波状攻撃からの中村のクロスを土肥がこぼし、玉田のシュートはDFがブロックしたものの、ボールはゴール正面の山口へ。絶体絶命の場面だったが、ここは土肥ちゃんが超ウルトラスーパーファインセーブ。さすがは代表GKである。

 その後も名古屋の攻勢は続いたが、茂庭・今野の機動力と土肥ちゃんの堅守でしのぐ。40分を過ぎるとややゆったりとしたボール回しで時間を使い、2−0のままハーフタイムへ。よしよし、という感じである。笑ったのは44分、茂庭が前に出るパスカットの勢いそのままに名古屋陣まで入った場面。味方にパスを回したりロビングを上げたりして帰陣しようとするのだが、その度に攻撃の流れの中でボールが茂庭に帰ってきてしまう(笑)。モニ自身も参ったなあ、という感じだったかな?いい練習じゃん。

 後半立ち上がりは名古屋がラッシュ。DF阿部に代えてMF吉村を入れて中盤を厚くし、DFラインを上げて圧力をかける。ルーカスにもしっかりマークがつくようになり、中盤の攻防は名古屋がやや優勢に。2分、攻撃ラインのラグビーのような横つなぎから玉田が強烈なミドルシュート、土肥がワンハンドで弾き出す。その直後、中村のアーリークロスを古賀が落とし、ゴール正面でフリーの玉田がボレーで狙うもミートが弱く、土肥ちゃんが足ではね返した。

 この状況で頼りになったのがまた梶山。5分、敵陣で早い出足からボールを奪い、DF1人に東京アタッカー3人の大チャンス。梶山はうまく味方を囮に使ってDFをかわししたが、シュートは楢崎が胸でセーブし、はね返りを叩いたルーカスのミドルもバーに当たって外れ。ここで決めていれば神だった……しかしその後も梶山はぬるぬるキープと時空をゆがめる守備でチームに貢献。いや、ホント、横浜戦とこの試合で彼に対する見方は随分変わった。

 8分、ジャーンを振り切りながらボックスへ突入する杉本へ金がきれいなスルーパス、一対一のシュートを土肥が弾き、ボールはポストに当たって外れた。名古屋の攻勢に対し、東京は梶山を基点にSB裏を狙う速い攻めで対抗。カウンターで追加点となれば最高だったが…。14分、左に開いた宮沢からの速いクロス、逆サイドでフリーの梶山が巧みなトラップからシュート!しかし、前に出る楢崎の体に当ててしまう。15分にもスピードで古賀を振り切った川口からのクロスを赤嶺が狙うが、しかしシュートしきれず。

 後半半ばになると、疲労から両チームとも中盤の守備がほとんどなくなって攻め合いとなり、クロスやセットプレーが連続。特に宮沢あたりの動きは重く、ルーカスも消え始めていたため、ここは選手交代の時期かとも思われたのだが、ガーロはなかなか動かず。24分、バックパスを赤嶺がかっさらうもちょっと焦り気味のシュートはDF直撃。その直後、ボックス前で左右にDFを揺さぶって宮沢の前が空き、「さあシュートだ」というタイミングで宮沢がさらに横パスしてしまい、スタンドから「おい!」のツッコミ。東京らしいっちゃらしいが、シュートの判断がちょっと…。 

 もう上がれない東京は自陣深くに厚い守備網を敷き、その前で名古屋に回させて入ってくるボールをモニやジャーンが前へ出てカット、前で張る川口・赤嶺へ放り込む。まあ、勝っている方としては「これでいい」という感じでもあったのだろう。29分から30分、ようやくルーカスに代えて伊野波、川口に代えてリチェーリ。これはまずまず妥当な人選だったように思う。

 31分、伊野波のフィードでオフサイドギリギリからリチェーリが飛び出すも、ドリブルのフェイントでボールを置き忘れて逸機。リチェーリは元気よく前へ進んでいたが、やはり試合勘にはちと問題があったのかもしれない。32分、本田のアーリークロスがファーに抜け、玉田がダイレクトボレーで狙うもバーの上。36分、左の赤嶺から右のリチェーリへ大きなパス、リチェーリは切れ込んでボックス外でFKを獲得したが、宮沢のシュートはバーに当たって決まらず。41分、ボックス内へ走り込む山口を狙う本田の絶妙の浮き球は、茂庭が読み切ってカット。

 終盤、名古屋の藤田投入に対し、東京は宮沢に代えて文丈投入。ともかく最後はしっかりつないで危なげなく逃げ切りたいところだが……そう甘くはなかった。43分、東京陣中央から吉村が思いきったロングシュート、ものすごい速度で飛ぶボールに土肥ちゃんも届かず、ゴールに突き刺さった。この素晴らしいシュートはある意味仕方がない。こういう「事故」があるからこそ3点目が必要なのだ。なんか、まるで若い東京の選手たちに「試合の流れとは」と教えてくれるような展開である。そして、俄然スリリングな雰囲気に(笑)。

 ロスタイム、カウンターから規郎が左サイドを抜け、クロスが逆サイドで待ちかまえるフリーの伊野波へ。しかし伊野波はやはりシュートを撃たずに折り返そうとして奪われ、カウンターの形を作られかけて冷や汗。ゴール裏からはもちろん「シュート撃て!」コール。「どこまで崩したら撃つのか」という判断は常に難しいものではあるけれど、やっぱりシュートで終わる事をまず考えないと。ともあれ東京は何とか2分間をしのぎきり、2−1で試合終了。最後はちょっとやれやれだったが、しかし勝ちは勝ちである。

  正直、3日前のマリノス戦で選手たちの戦う気持ちを見て「これなら大丈夫」と思ってはいたものの、連戦の疲労と、あと今のメンツではどうしようもなさそうな決定力不足が心配だったのだ。実際、後半早々にバテる選手が続出したり好機を逃したりして、心配は半ば的中したのだが、しかしよく持ちこたえて結果を出してくれた。最後の盾になってくれた土肥ちゃんとモニ、あと攻守の大黒柱として活躍した梶山にはいくら感謝してもしきれない。もちろん、繰り返しになるが左サイドの守備の脆さやラインが下がりすぎな事、シュートの判断力など課題も多いのだが、それは次節以降への宿題にすることができた。

 今日はスタジアムの雰囲気も非常に良かった。ゴール裏は横浜戦とはうって変わり、絶えざるチャントとコールで選手たちを立派にサポート。今日の応援には頭が下がります。そしてバックスタンドも、シニアデーということで一見さんっぽい年配のお客さんも多かったのだが、暖かい視線が多かった分かえって素直に応援しようという雰囲気になって良かったのかもしれない。この試合内容とスタンドの空気ならば、人にも喜んで勧めることができるわな(初観戦が清水戦だった知り合いのライターさんから電話をもらった時には、ひどく悲しかったからね…)。

 ともかく、GW3連戦の初戦を白星で飾れたのは良かった。もっとも、次節の甲府は前へ出る姿勢が非常に強くて一旦受身になるとボロボロやられる(特に左サイド!)危険があるし、その次の大宮も中盤プレスのきついチーム。全く安心はできないし、若くて不安定なチームが快勝にホッとしてしまう事はありがちなこと。そういう意味で、J's GOALの3選手のコメントは「さすがベテラン」の的確さ。3連戦の残り2つ、横浜戦や今日のような気持ちで、しかしもう少しクレバーさを付け加えて(文丈さん頼みますよ)五分以上の成績を残してもらいたいものである。

 


2006年目次へ            全体の目次へ