J1リーグ第11節 vsヴァンフォーレ甲府 2006.5.3 小瀬スポーツ公園陸上競技場

 

 

 先月から続く連戦、暑い気候、そしてアウェイチームの小気味良いサッカー。苦しい戦いだったが、諦めず粘った末に勝点3を獲得。

 

 序盤は完全な東京ペースだった。ここ2戦と同じく前目からの守備でボールを奪い、梶山を起点にルーカスのキープ力と川口の引き出しにSBの上がりも加わって攻め込む。1分、CKのはね返りから梶山が強烈なボレーシュート、GK阿部が横っ跳びで弾き出す。続いて梶山のフィードから川口が左足で決定的なシュートを放ち(オフサイド)、12分にはルーカスの浮き球で宮沢がDFライン裏に抜けるも、シュートは前に出た阿部を直撃。15分にも相手陣右サイドのFK、宮沢の絶妙なキックがDFとGKの間を抜けたが、ジャーンは触れず。

 一方、甲府はワンタッチ・ツータッチのパスをつなげて速攻狙い。特に規郎の後ろは何度も突かれるが、茂庭が広いエリアを駆けまくってカバーカバーの連続。3分保坂のヘッダーは土肥がキャッチし、6分にCKからゴールインしたプレーはファウルの判定。18分の石原のループもバーの上を越す。全体的には東京の攻勢が継続。23分、CKのこぼれ球を梶山がミドルで狙うが、またも阿部がビッグセーブ。26分には赤嶺のポストプレーからルーカスがシュート!…も、宇宙開発。

 先制点が入ったのは29分。パスカットして持ち上がった茂庭がパスミス。甲府のカウンターになり、左サイドを突破した石原のクロスが逆サイドに抜け、フリーの宇留野がきれいに決めた。押していただけにショックは大きく、これで東京はすっかり受身に。DFラインはべた引きになり、前線へのフィードも全くキープできず、圧力のない中盤をスイスイつないで甲府がチャンスを作る。31分にバレーのシュートがバーわずか上を抜け、その直後には杉山のクロスを叩いた保坂のヘッダーがギリギリ枠外へ。その後も次々と右(東京の左!)からクロスが上がるが、何とかしのいで0−1でハーフタイム。

 後半、東京は赤嶺に代えてリチェーリ投入。前がかりになっている相手の裏を突く意図は正しかったと思う。ただ、そのリチェーリがまだ体調も充分ではないのか、思ったほどスピードで勝てず、ボールさばきもぎこちない。何度かチャンスを作りかけるも形勢逆転にまでは至らず。4分、右サイドのワンツーから石原が強烈なミドルシュート、わずか右に外れる。5分、ロングボールで川口が抜けて折り返しを今野がボレーで狙うがDFブロック。7分、リチェーリがドリブルでボックスへ突入するもクロスがルーカスに合わず。8分、左サイド宇留野のクロスにファーで保坂が飛び込むも土肥がブロック。

 15分、すっかり消えていた宮沢がOUT、小澤IN。これで試合が動き出す。小澤は投入直後にミドルシュートを狙い、甲府DFが思いっきり手ではたいたように見えたが、片山主審は見逃し。そこから甲府のカウンターになって、宇留野の強烈なシュートに土肥も届かず、「やられたか…」と観念したがポストに当たって命拾い。その次の東京の攻撃、ルーカスが持ち上がってボックス左に流れたリチェーリへつなぎ、リチェは縦に走ってから低く速い平行クロス。これが逆サイドに抜け、きっちり詰めていた川口が蹴り込んだ。同点。

 得点に勝る良薬はなし。すっかり息を吹き返した東京が攻勢に転じる。18分、徳永のクロスに小澤が飛び込んでダイレクトボレー!惜しくも右に外れる。この後も小澤は新人らしからぬ落ち着きぶりを発揮、周囲に指示出しをしながらよくパスをさばき、攻撃を加速させてくれた。22分、中央で茂庭をかわしたバレーから石原へラストパスが出た場面は土肥ちゃんが前に出てセーブ。28分には川口が左サイドから中へ切れ込んでシュート、ポストのわずか右を抜ける。甲府は中2日(東京より1日少ない)の疲労が出てきたか、選手の動きがキレを失っていた。

 そして31分。川口が粘って奪ったCK、規郎のキックを混戦の中からルーカスが頭で決めて勝ち越し。抱き合うルーとジャーンとリチェ、両手を広げて走り回る川口信男、そして沸き返って東京ブギウギ「ワッショイワッショイ!」の東京側スタンド。失点〜後半半ばまでの攻められて苦しんだ時間帯があったから、逆転ゴールの解放感はことさら大きかった。よっしゃ!

 残り15分、甲府はフレッシュなFW山崎を投入し、大声援を背景に前がかりの反撃態勢。一旦は力尽きたかに思えた甲府だが、ここら辺はやはりホームの力ということなのだろう。35分、保坂からボックス内を斜めに走るバレーに決定的なパスが通るが、バレーはシュートを空振り。これに対して東京は梶山お疲れさんで伊野波IN。伊野波は低い重心で次々とボールホルダーに寄せ、甲府の攻撃のキレを確実に削いでくれた。余裕たっぷり、とまでは行かないが、ボールを回して時間を使い切ろうとする東京。それでいい。41分、茂庭が川口とのワンツーで前線まで飛び出すも、パスが大きすぎてシュートできず。密かに残念(笑)。

 そんなこんなでロスタイム。小澤のスルーパスから右サイド川口が突破、逆サイドに抜けたクロスをルーカスが拾い、中へ入りながらシュート!ボールは跳ぶ阿部の指先を抜け、巻きながら逆サイドのゴールネットに突き刺さった。ゴ〜〜ラッソ!!これはお見事。昨年の開幕戦以来の、「ストライカーらしい」ルーカスゴールだったのではあるまいか?なんか、こないだまでの「潰され役」っぷりが嘘のようである。すごいぞ、ルーコン。そして終了の笛。

 この試合、終わってみればスコア的には完勝となったものの、内容的にはほぼ互角と言っていいだろう。特に石原の先制点からハーフタイムまでは、甲府の勢いを全く止められなかった。あそこで2点目が入っていたらヤバかった。悪い流れになった時になかなか修正(ないし我慢の覚悟)が効かないのが大きな課題。時間的・空間的に「勝負所」「急所」を読んでプレーに濃淡をつけることのできる選手がもっと増えてほしいと思う。それができるのは今のところ…やはり信男さんか(あと金沢とか?そう考えるとジュビロってスゴイな)。

 とはいえ、危なっかしく、課題山積ながらも、アウェイで好チーム相手に勝点3を奪えたのは非常に大きい。そして、とにかく選手が前向きに戦ってそれなりの結果を出すようになり、彼らの表情もファンの雰囲気もぐっと上向きになってきたように感じる(試合後に信男さんがはしゃぐ姿は楽しかった)。ようやく戦いぶりがチームスローガン(「Ousadia〜信頼・勇気・挑戦〜」)に追いついて来たと言えるかもしれない。リーグ中断まであと1試合。この調子である。大宮戦はスコンと勝って、気分良く後半戦に備えよう。

 個々の選手について。ルーカスは、一昨年後半のトップフォームを取り戻したという事だろうか。まさかウチが「決定力の差」で勝てる試合があろうとは(笑)。後半の動きならFWに戻してもイケそう。信男さんは大人のプレーでチームを牽引し、土肥・茂庭とともにもはや不可欠な選手。ウチの嫁曰く「日本で一番カッコイイ七三分け」だそうである(笑)。梶山もよく頑張った。規郎と今野はもう少し考えてプレーしよう。リチェーリと赤嶺はちょっと気がはやりすぎか。小澤は、もしかしたらとんでもない大物かもしれない、と思った。

 一方、敗れはしたものの、甲府は積極果敢な守備とスピーディーで手数をかけない速攻を武器とする好チームだった。なんか、2000年の東京を見ているような錯覚を覚えたですよ、ホント。また、スタンドの雰囲気(観客数1万5千余の新記録!)も、ついでに言えば盛り上げようという街の姿勢もなかなか良い感じである。倉貫の大怪我はそれこそ一大事だろうが、何とか1部に残ってほしいチームの一つだし、この試合で見せてくれたようなサッカーを貫ければさほど難しい目標でもないのだろう、きっと。

 

 あと、この試合の片山主審のレフリングについて。流しすぎ。とにかく流しすぎ。いくら今年からリーグとして「当たりを流す」方針だとはいえ、手でどつこうが後ろから倒そうがファウルをとらないのでは、試合によっては怪我どころか暴力を招くことになるのではなかろうか。赤嶺のひじうちでカードが出なかったのは東京にとっては幸いだったかもしれないが……。ちなみに、いわゆる「国際基準」は、今後選手を怪我から守ろうという方向性で変わっていくはずだ。

 


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