J1リーグ第7節 vsジュビロ磐田 2006.4.8 味の素スタジアム

 

 

 横浜戦の「ガーロやめろ!」コール以来、いやそれ以前から漂っているモヤモヤを吹き飛ばすために、そして次のステップにチームが進んでいくためにも、是が非でも勝ってほしい一戦だった。そして、期待通り、いや期待以上の内容とスコアでの快勝。多くの東京ファンにとって、「これが観たかったのだよ、これが!」というゲームだったのではあるまいか。

 

 キックオフ。立ち上がりから東京が積極的に前へ出る。この日は伊野波が名波をマークし、それ以外は早めに受け渡す守備。前節よりもやや穏やかめに修正したというところか。全体のバランスが改善し、ボールを奪ってから攻撃へのシフトがスムーズになった。茂庭・増嶋を残して両SBも押し上げていく。2分、梶山の楔のパスをルーカスがダイレクトにDFラインの裏へ流し、ササが抜けるがオフサイド。4分、スローインをペナルティボックス内で受けたルーカスが振り向きざまにシュートを放つが、これはあさっての方向へ。

 しかし、東京の攻勢は長続きしない。判断の迷いとパスを受ける動きの少なさ、そして弱いパスをカットされる場面が目立つ。梶山は寝ぼけているかのように動きが鈍く、今野も萎縮気味のように見えた。スタンドからため息が漏れる。守備の方は増嶋がカレンと互角以上に渡りあい、茂庭と土肥は抜群の安定感。4−5−1の布陣でサイドからの崩しを狙う磐田の攻撃が迫力を欠いたせいもあり、点を取られる気はあまりしなかった。問題は先制点。15分、ゴールライン際からルーカスがマイナスのグラウンダーを入れ、走り込むササがシュートするも宇宙開発。

 ところが、ここで驚くべき大爆発が。23分、右サイドのボール争奪戦から栗澤が斜め内側に持ち上がり、ペナルティボックスへ走り込むルーカスに浮き球のパス。これをルーカスはダイレクトに右足で軽く蹴り上げ、ボールはジャンプする能活の手を越えて逆サイドのゴールネットに吸い込まれていった。ゴール!!「後方からの浮き球をダイレクトでループシュート」って、ムチャクチャ難しいやん。あんたそれどこに隠してたの!という感じで1−0。これで一旦東京の攻撃に勢いが戻ったかに見えたが…。

 26分、磐田は右サイドのパス交換からMFファブリシオがペナルティボックス内の名波へパス。名波は伊野波に付かれながらも、巧みにヒールキックで縦に走るファブリシオへリターン、グラウンダーのクロスを増嶋に競り勝った村井が蹴り込んで同点。うーむ。先制したばかりでもあったし、DFの人数は足りていただけにいかにも淡泊な守備に見え、ちょっと残念な失点だった。もう一度組み立て直し、やり直しである。28分、栗澤からパスを受けた規郎がDFと競りながらクロス、ファーで伸び上がったササが頭で狙うもわずか左に外れる。

 32分、梶山から右の徳永に展開、タテ勝負からのクロスは惜しくもルーカスに届かず。ここら辺、梶山の目がちょっと覚めてきたように見えた(笑)。33分、梶山の浮き球でオフサイドギリギリにルーカスが飛び出し、ニアのササへラストパス。ササはうまく合わせてシュートしたが、GK川口能活に防がれてしまう。34分にはペナルティボックス脇の村井から中寄りをフリーでオーバーラップする鈴木秀にパスが通るも、シュートは土肥ちゃんが倒れながら押さえる。磐田は後方からの飛び出しが1つの狙いのようだが、サイドに偏りすぎていて攻撃パターンはさほど多くない。

 そして42分。伊野波のスルーパスで右サイドルーカスが抜けてクロス、ペナルティボックス内DF2人の間でササが胸トラップからシュート!完全に決まったかと思われたが、能活に当たってノーゴール。そこでさすがはササ、倒れながらもはね返りをまた右足で狙うが、これも能活がはたき出し、さらにササが蹴ったキックはポスト右を抜けた。「これが決まらんのか…」一瞬嫌な雰囲気になりかけたが、その直後のCKでなんとまたルーカスのボレーが炸裂!足を伸ばして叩いたボールは横っ跳びの能活の手に当たりながらもゴールイン!これは大きかった。2−1でハーフタイム。

 

 後半、伊野波に代えて宮沢投入。伊野波は元気一杯に相手を削って(笑)警告+注意をもらっていたので、退場のリスクを考えれば妥当な判断だろう。そして幸運なことに(?)この宮沢の調子が良かった。的確なパスさばきに時たま織り交ぜる左右への広い展開。これに磐田の中盤が引っ張られ、できた時間とスペースを使って本格的に目覚めた梶山が縦横無尽の活躍を見せる。3分、ササのヒールキックから宮沢のミドルシュートで終わる攻撃。4分には磐田の波状攻撃となったが、名波の絶妙クロスを土肥ちゃんが体を張ったキャッチ!

 9分、梶山から徳永へ鋭いロングパスが通り、クロスにファーで梶山(よく走ってる!)が合わせるも落としきれず。10分、ドリブルで上がる徳永からペナルティボックス内のササへ斜めのパスが通り、外へのリターンを梶山がマイナスのグラウンダーで入れるが、惜しくもササに合わず。12分、宮沢のCKのはね返りを拾った梶山がミドルシュート、鋭いボールがゴールわずか左を抜けていった。この時間帯はよく動くわパスはつながるわシュートもバンバン狙うわで、熱くて楽しい攻撃にスタンドのテンションもイケイケドンドン。

 そして、両チームの中盤に疲れが見え始めた22分。敵陣でプレスをかけてボールを奪い、ペナルティボックス左で梶山がキープ。梶山はDF2人をいなしながら中を見て、中央の宮沢へ大きく折り返す。DFが「シュートか?!」と身構えた瞬間、宮沢は意表を突くスルーパス、オーバーラップしていた今野が弾丸のように抜け、狙いすましたグラウンダーのクロス。きっちり詰めていた栗澤が能活の目前でスライディングシュート、ゴールイン!!いや、まるで夢のような得点ではないか!!組み立てと緩急で磐田DF崩しちゃったよ!、という。場内大盛り上がり、僕も思わず絶叫である。

 その直後、必死モードに入ったジュビロの波状攻撃をルーカスまでゴール前へ戻る守備でしのぐ。うーん、何だか今日のルーコンは頼もしいぞ。26分には左サイドで宮沢・栗澤・今野がヒールも交えた細かいパス回しで磐田守備陣を翻弄し、ゴール裏からは久しぶりの「セクシー東京!」コール。ジュビロはカレンに代えて前田、村井に代えて成岡と選手を代えてきたが、流れを引き寄せるには至らない。30分、梶山からのカーブのかかったすんばらしーフィードが徳永に通るが、速い折り返しは能活キャッチ。31分にはファブリシオがドリブルからミドルシュートを放つも土肥ちゃんキャッチ。

 意地を見せたいジュビロは名波を起点に右へ左へボールを回して突破を図るが、懸念の左サイド(規郎はかなりガス欠気味だった)も含めて東京はよく粘り、崩れない。まあ、守備については刻み込まれたDNAがあるからな(笑)。37分、カウンターの態勢で中央の梶山から右を駆け上がる徳永へナイスタイミングのパス、しかし徳永がクロスを上げるのに手間取って逸機してしまう。38分には軽快なパス回しからペナルティボックス正面でササがFKを獲得、自ら狙ったシュートは壁に当たる。ここらでトドメを刺せれば完璧だったが…贅沢を言っちゃいかんか。

 東京は栗澤に代えて浅利を投入。「終盤に守備的MF投入」は東京ファンにとってちと不吉だが、しかしこの日ばかりは怖さは少なかった。41分、磐田陣左サイド、磐田DFの蹴ったボールが前線に残っていたルーカスに渡るが、なぜかオフサイドの判定。「あら、誤審かいな」と思った瞬間、テクニカルエリア内で怒りのガーロキック炸裂(笑)!!いや、これには笑った。で、最後、優雅につないで逃げ切り…とまでは行かなかったが(規郎パスミス大杉!)、磐田の半分くらいの選手が戦意喪失していた(ように見えた)せいもあり、何事もなく3−1のまま試合終了。完勝である。

 冷静に考えてみれば、こういう一方的な試合展開になったのも磐田の出来が悪かったから、ということは言えるだろう。数年前の流動性あるパスサッカーは影を潜め、ウインガーがいないのにサイド重視の4−5−1布陣を敷いたせいもあるのか、何だかちんまいサッカーになっちゃったなあ、というのが率直な感想である。FWのメンツも1トップには苦しそうだし、せっかく名波がいるのにターゲットの数を減らしているような感じもして、どうも選手の適性に合ったサッカーをやれていないような気がする。まあ一時の不調に陥っているだけかもしらんけど。

 東京の方は、横浜戦ではマンマークにこだわりすぎてややバランスを失したきらいがあったが(相手によってはああいうのもアリだと思うけど)、この試合では全体的に修正されていて、磐田の守備の圧力の弱さにも助けられてイキのいいサッカーを行うことができた。相手陣でボールを奪われてもすぐにプレスをかけに行くなど、前への意識、あるいはボールへの意識の高さを取り戻したのもいい兆し。前半途中までの萎縮したパス回しはいただけなかったが、途中からは選手たちが闘志をそのままプレーとして表現できていて、少なくとも最低の状態ははっきり脱したと思う。

 個々の選手では、まずはルーカスの確変ぶり。2得点はいずれも難しいシュートだったし、特に2点目は嫌な流れになりかけたところだけに価値あるゴールだった。おそらく、ササとの役割分担がうまく行ったのも大きいのだろう。中に張ってターゲットとなるササに対してルーは左右に流れ、スペースのある場所で技術を生かす、という形。あと、去年もらっちゃった悪い憑き物を日産スタジアムに置いてきたのかもね(笑)。いや、「お役御免」とか書いた俺が間違ってたよ、ルーコン(この調子で行けばね)。

 他にも、梶山の堂々たる司令塔プレー、今野のちょっとは吹っ切れたかなーという飛び出し、栗澤の献身性、宮沢の機転、伊野波の豪傑感たっぷりのエースキラーぶり、徳永の超人的フィジカル等々、褒めるところを挙げればきりがない感じではあった。課題は、もう少し早くみんな目を覚ますことだろうか(笑)。強いチーム相手だと、前半のあの時間帯にやられてたかもよ。あと、クロスの精度ももっと上げないといけないかな。ササには前線で奮闘していいシュートもあっただけに、1点取らせてあげたかった。

 さて。これでリーグ戦ここ3戦勝ち→分け→勝ち、しかも内容が伴ってきていて悪くない流れではある。ただ、次はナビスコを挟む厳しい日程で、しかも横浜、千葉、G大阪とかなりの強敵が続く。せっかく磐田相手にこれまでのイヤな諸々を払拭するいい勝ち方をしたのに、次からボロボロでは元の木阿弥である。快勝できるかどうかはともかく、3歩進んだ次はせめて2歩下がるくらいにとどめてしっかり勝点を拾っていってほしいものだと思う。

 


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