J1リーグ第17節 vs横浜Fマリノス 2005.7.17 味の素スタジアム

 

 

 FC東京にとっては会心の、逆にマリノスにとっては全てが思うように行かなかったであろうゲーム。つい一週間前のよどんだ空気は何処へやら、思わず頬をつねりたくなるような快勝劇であった。

 

 キックオフ。東京は4−5−1、横浜は4−4−2の布陣。序盤はほぼ互角の攻防。両チームとも相手SBの後方を狙い、それにCBが対処するような形が多い。ただし、横浜は中盤でゆっくりつないでから、東京はよりシンプルに。開始直後、金沢からの縦のボールで戸田が左サイドを抜けてクロス、惜しくも栗澤に届かず。6分、さりげなくDFラインのギャップに入っていた那須にスルーパスが通り、強シュートを土肥が反応良く枠外へはじき出す。そのCKは上野が頭で合わせたが、これは土肥ちゃんがキャッチ。10分、自陣でボールを奪った東京はすかさず楔のパス、ポストのルーカスがワンタッチで右サイドへ展開、石川が抜けて低いクロスを上げるもカットされる。東京はドゥトラを警戒したのか加地の上がりが少ないのと、石川が足を痛めたためにストロングサイドたる右での攻撃が少なく、ひたすらフリーランニングを繰り返す戸田への縦パスが多い。

 先制点を奪ったのは東京。19分、敵陣でのFK、栗澤が低いボールをペナルティボックス内へ入れ、これを横浜DFがうまく処理できずCK。クロスのこぼれ球を今野→栗澤とつないでまたクロス、そのセカンドボールを拾った梶山が右隅コースを狙ったシュートを撃つが、GK榎本哲横っ飛びではじいてCKへ逃れる。2度目のCK、栗澤が上げた鋭いクロスに対し、今野がDF2人を置き去りにして躍り込み、弾丸ヘッドをゴール右隅へ叩き込んだ。榎本一歩も動けず。ゴール前の強さではチーム一の今野らしいゴールであり、横浜からすればちょっと根負けして集中を欠いたような失点だった。1−0。

 先制点を機に両チームの出来・不出来がはっきり見えるようになった。ホームで3ヶ月勝っていない東京の選手たちはやはり期するものがあるのか、一つ一つのプレーに対する集中力が極めて高い。中盤のしつこいマークに茂庭・ジャーンの鋭い読みが加わって、横浜の攻撃を抑え込む。そしてボールを奪うやシンプルな逆襲。唯一の不安材料は石川が23分に負傷交代を余儀なくされたことだったが、幸い代わりの鈴木規郎が好調。一方の横浜はどこか動きに精彩を欠き、中盤が作れない。出しどころに困って入れる縦パスも、あっさり東京DFがカットするか、直接ラインを割るばかり。山瀬も周りにはたくばかりで存在感がない。24分、梶山が得意の低空ミドルシュートを放ち、榎本が前に弾いたボールに戸田が詰めるも合わせきれず。28分、右サイド持ち上がった規郎が松田と正対し、角度のないところだったが迷わず左足で強シュート、榎本のけぞりながらかろうじてはじき出す。

 35分を過ぎたあたりから、東京の寄せにも慣れてきたのか、横浜がボールキープしながら攻撃の形を作り始め、ドゥトラの上がりも目立つように。36分、左サイドを持ち上がったドゥトラが意表を突くスルーパス、走り込む山瀬に渡りかけるが、間一髪茂庭がスライディングでカット。37分、ルーズボールがペナルティボックス内山崎の足下に落ちた場面、今度はジャーンががっちり絡んでシュートを撃たせず。40分には左サイドドゥトラから山崎→田中隼とパスがつながって田中隼がミドルシュート、金沢が体でブロック。ここら辺、ピンチの場面にはなりつつも、必ず最後誰かが飛んできてくれるために不思議と安心感があった。41分には田中隼の弱すぎるパスを戸田がカット、栗澤が中央を持ち上がってDFを引きつけ、絶妙のタイミングで左サイド上がる今野へラストパス。今野はペナルティボックスへ入って抑えの効いたシュートを撃つが、これも榎本が倒れ込んでナイスセーブ。結局、1−0のままハーフタイムへ。いつにない東京の枠内シュート率の高さと、それを阻む孤軍奮闘の榎本、という構図。

 後半開始。横浜は坂田を投入し、攻撃的姿勢を強める。0分、中澤のアーリークロスに大島が飛び込み、交錯しながらかろうじて土肥がパンチ、そのボールをペナルティボックス内で山瀬に拾われるが、DF2人が立ちふさがってシュート撃たせず。1分、中盤の混戦から大島のスルーパス、坂田がスピードを生かしてペナルティボックスへ突入するが、追いついた茂庭がシュートをブロック。ピンチが続く。ただ、横浜も前がかりになった分守備は薄くなり、CB脇に広大なスペース。再び戸田の動きが目立ち始め、東京はカウンターでチャンスを作る。2分、戸田がドゥトラのタックルを外してドリブルで駆け上がり、GKと一対一になりかけたが、田中隼が懸命に戻ってブロック。そして4分、栗澤のフィードに反応した戸田が田中隼と競り合いながら左サイドを突進、ペナルティボックス脇で倒されてFK。ここで東京ファンの期待に応え、規郎キャノンが炸裂!榎本の横っ飛びも届かず、弾丸ライナーがニアサイドに突き刺さった。規郎右腕を(控えめに)突き上げてガッツポーズ!スタンドも大興奮!!…というか、立ちふさがった壁はわずかに2枚、しかもその2人がシュート避けてるし(笑)。横浜、いくら何でもちとナメすぎであった。2−0。

 東京のいい雰囲気は続く。7分、ルーカスと栗澤の交差しながらのパス交換でペナルティボックス手前まで攻め込み、ルーカスがミドルシュート(枠外)。12分にはCKにルーカスが頭で合わせ、これもバーを越えた。相変わらず中盤の底では今野がボールに食らいつき、ジャーンと茂庭は確実にクロスをはね返す。そして栗澤の攻守にわたる活躍。ヴェルディ戦ではチームに貢献できなかった梶山も、この日はマークに集中してチェイスを続け、時折ヌルッと体を入れてボールを奪う。横浜はアタッカーにいいボールを入れられず、なかなかチャンスにまで至らない。13分、那須に代えて久保投入。ついに出たな妖怪、という感じ。試合展開に関わらず、こういう常識にかからない選手の一発というのは怖いものだが、幸いこの日は形勢が急変することはなかった。

 東京は自陣に押し込まれる時間が長い(というより、無理に前からボールを追わない)ものの、集中力は決して切らさない。横浜が攻めても東京の守備ブロックの外側をボールが回るばかりで、そのうちに横浜側にミスが出て逆襲、というパターン。堅守がいい攻撃を生む、とでも言おうか。見ていてハラハラするのではなく、守りの強さにワクワクする気持ちさえ抱いた。21分、またも左サイドを戸田が抜け、一旦中央へ戻すパス回しから栗澤が絶妙のスルーパス、戸田がDFライン裏に出て撃ったシュートはサイドネット。24分、カウンターの場面、茂庭のロングボールをルーカスが左サイドで受け、ゴールへ向かってドリブル、中澤ら2人を引きつけてから中央上がる栗澤へラストパス。これは抜ければ一対一の場面だったが、栗澤のトラップが大きく逸機。

 27分、栗澤OUT文丈IN。この交代に象徴されるように、後半半ばをすぎるとさすがに東京の選手たちにも疲れが見え始め、横浜攻勢の時間帯になっていく。29分、ペナルティボックス付近でヘディングの競り合いとなり、こぼれ球を正面から山瀬がダイレクトボレーで狙うもバーの上。30分、左サイドオーバーラップしたドゥトラからペナルティボックス内へラストパス、山瀬が右へ左へ蛇行しながらシュートを狙い、東京は茂庭・ジャーン・土肥・加地(すげえ豪華なメンツだ(笑))が次々と体を投げ出して防ぐ。36分、中盤で上野がバックヘッドで流したボールに茂庭の反応が一歩遅れ、坂田が抜け出して一対一でシュート、土肥が足一本でスーパーセーブ!……ここら辺、やられていはいるのだが、なぜか「いいなあ、これも東京のサッカーだよなあ、いいよなあ」と興奮する私。これだけ選手たちが頑張れば、守備だってタノシイ。

 33分、東京はルーカスOUT、馬場憂太IN。梶山が前に出て憂太と規郎の2枚をターゲットにする体勢に。それが功を奏したと言うべきか、39分、ドゥトラのミスパスを拾った梶山がスルーパス、規郎が反応してドゥトラと競ろうとしたところでドゥトラが足をもつれさせて転倒、規郎は余裕で持ち上がり、榎本が前に出たところで落ち着いてゴール左へゲット。イエース!!という感じで歓喜爆発のスタンド。規郎もコーナー付近まで駆けてきて、今度は遠慮無く中空へ飛び上がってガッツポーズ!いや、頼もしい。3−0。さらに41分、右サイド規郎から中寄りを上がる今野へパスが通っていい形になり、横浜DFラインが乱れていた所に抜け目なく入っていた憂太へスルーパス、一気にペナルティボックスへ突入。憂太のシュートは一旦は戻った田中隼にブロックされたものの、角度のないところにこぼれた球をもう一度拾って左足で反転シュート!浮いたボールは榎本の頭上を越え、バーに当たってわずかにゴール内へはね、サイドネットに刺さった。まったく憂太らしく、人を食ったようなギリギリゴール。スタンドはもはや半狂乱であった。4−0。

 あとはもう余韻を楽しむのみ。時計はどんどん進む。こんなに余裕のある気持ちで終盤を迎えたのはいつ以来だろうか?結局、3分のロスタイムもあっという間に過ぎてタイムアップ。大量得点の上に4試合連続完封、堂々たる勝利であった。

 今日の東京は、とにかく戦いぶりが締まっていた。もちろん全く穴が無かった訳ではないけれど、守ってはセットでも流れの中でも気を抜くことはなく、危ない場面では必ず誰かが飛んできた。攻撃の際にも常に機先を制し、相手のミスをしっかりチャンスに結びつけ続けた。今日の勝利は集中力の勝利である。「久々にホームで勝ちたい、勝たなければ」という使命感に加え、やはり清水戦の勝利も大きかったのだろう。選手たちは気持ちを込めながらも、落ち着いて、自信を持ってやっていた様子だった。セットプレーで2点先取、守りを固めてカウンターで2点追加。内容的には決して「攻撃サッカー」ではなく、むしろ守備の強さが優勢をもたらした印象だったが、こういうソリッドな戦いぶり(「堅守速攻」!)は今の東京にとって好ましいものだと思う。

 個々の選手では、まず栗澤が良かった。精力的なフリーランニングで相手守備を攪乱し続け、一度ボールを持てば周囲の味方を巧みに使って相手DFラインを脅かす。もちろん守備でも手抜きはしない。後半半ばで文丈に交代したのは残念だったが、それだけ走っていたということだろう。セットプレーの精度も高く、この試合のMVPは彼だ。もちろん他にも活躍した選手は多い。ジャーン・茂庭は日本最強クラスのCBコンビであることをアピール(中澤・松田にも負けてない!)、石川の怪我で急遽出場となった規郎は積極的なドリブルと弾丸シュートで試合を決めた。あとはスーパーセーブ連発の土肥ちゃんとか、左サイドでひたすら縦勝負してくれた戸田(隼磨に仕事をさせず)とか、中盤を制圧した今野とか、今日はちゃんと守備してた梶山(その上でトリッキーなプレーやシュートの上手さを生かしてくれればオッケーだ)とか…いや〜、勝つとみんなよく見えるな(笑)。

 あと、個人的には、ひいきの憂太がとどめのゴールを決めてくれたのが最高。思わず「うわああああ!」とか叫んでしまった。燃えた。いや、萌えた(笑)。

 一方、横浜の方は元気のない戦いぶり。攻撃の動きはぎこちなく、パスはぶれ、時折集中力を欠いたようなプレー(CK連続の後の今野のゴールとか)や自陣での信じがたいミスなど、「これ本当にマリノスなの?」と言いたくなるような出来の悪さだった。松田や那須はともかく、ドゥトラや上野までヘナチョコパスを連発してたのにはちょっと驚かされた。山瀬もほとんど持ち味を発揮できなかった。奥(試合を「動かす」事に関しては極めて優秀な選手であり、セットプレーも抜群)の不在はやっぱり大きなダメージなのかもしれないし、春先からの連戦連戦でチームが疲弊してしまっているのかもしれない。まあ、岡田監督の事なので立て直してくるとは思うのだが。

 今日は「ファイヤーワークスナイト」ということで、ハーフタイムにバックスタンド裏では大きな花火が何発も上がっていた。試合展開(4得点!)とちょうどぴったりシンクロしてたのは、偶然にしても出来過ぎである。そう言えば一昨年のマリノス戦も、同じく花火の日に4−1で圧勝したのであった。あの年のように、ここから尻上がりにに調子を上げていけるかどうか。とりあえず次の相手は最下位神戸、「窮鼠猫を噛む」だけに油断はならない。つーか、せっかく強豪相手に完勝しても、「勝たなきゃいけない」相手に星を落としたらリーグ戦的には意味がない。しっかり勝とう。

 


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