J1リーグ第15節 vs東京ヴェルディ1969 2005.7.9 味の素スタジアム

 

 

 雨の中キックオフ。いきなり攻勢に出たのはFC東京。ルーカスが入るとやはり違うというか、中央でのキープ力が増し、サイドへのボールの回りもなかなか良い。1分、いきなり石川から早いタイミングのクロスが入り、ニアで体勢を崩しながらルーカスが合わせたが、GK高木が体に当てて防ぐ。3分・7分と金沢のスルーパスで戸田がたて続けにDFライン裏へ抜けかかり、ヴェルディのDFと高木が懸命のクリア。8分、ルーカスがタメてから右へ展開、石川の低いクロスに対し戸田が飛び込むが、惜しくも触れず。さらに10分、金沢のスルーパスでルーカスが左サイド突破、ペナルティボックス内へ切り込んでDFを引きつけ、さらに裏へ走り込む石川へのスルーを狙うも、石川の反応がわずかに遅れて逸機。この時間帯はヴェルディDFの対応がやや緩慢だったこともあり、東京アタッカーの勢いが相手を完全に凌駕していた。後から考えるとここで是が非でも1点ほしかったな…というのは前節も同じ事を書いた(笑)。

 15分くらいになると、東京の勢いが止まり、逆にヴェルディが相馬・小林大の両サイドからチャンスを作るようになる。14分、CKの跳ね返りを相馬が拾って低いクロス、東京DFが触れず(ついでにヴェルディFWも触れず)ヒヤリ。18分、ヴェルディの後方での長いパス回しに東京ゴール裏からブーイングが起こるが、そこで小林大から突然のスルーパス、FW平本がスルッとDFの背後へ抜けて左足でシュート、際どくポスト脇に外れる。26分には相馬が左サイドで石川をぶち抜き、ゴールライン際までえぐってクロス、FWワシントンの手前で茂庭がカット。そして27分左サイドからのグラウンダーをワシントンがワンタッチでDFの裏へ入れ、交差する動きでペナルティボックスへ入った平本が土肥と一対一に。しかしシュートは土肥ちゃんが根性のブロックで防ぐ。お互いサイドは守備よりも攻撃の意識が強く、そこでチャンスを作りあって、流れ的に15分ずつそれぞれの時間帯があった、と。

 東京の方で目についたのは、梶山の好守にわたる働きの悪さ。守備では距離空けすぎの後追いチェイス(たまにタックルするとファウル)が多く、マークの切り替えの判断も悪い。では攻撃はどうかと言えば、淡泊にサイドへはたいてばかりで、しかもそのパスも足下に入る質の悪さが目立つ。人を前に出すでも自分が上がるでもなく、正直なところ「仕事ができていない」という印象であった。栗澤・ルーカス・今野の負担は確実に増していただろう。中盤にぽっかり穴が空いてしまっているようだった。

 前半の終盤になると、今度はほぼ互角の攻防へと落ち着く。38分、右サイド小林大のクロスがはね、フリーになっていた平本がヘディングで土肥の頭を越してゴールイン…ではなくオフサイド。39分、梶山がドリブルで持ち上がり、キュッとフェイントを入れてからゴール隅へグラウンダーのシュート、高木横っ飛びではじき出す。42分、敵陣で奪ったボールを戸田が持ち上がって右へ展開、石川のミドルシュート(枠外)。こうしてみると、ヴェルディにしろ東京にしろサイド攻撃に偏った、もっと言うとワンパターンの攻撃になっていた。よく言えば一進一退だが、悪く言えばどちらもゲームを作りきれず少ない選択肢を単調に繰り返すだけ、という感じでもあった。ヴェルディの山田がDFラインに吸収されていて、一方東京は若いMF陣で、どちらも意図をもってチームを動かす「司令塔」を欠いていたということなのかもしれない。

 

 後半、試合の様相は一変。前半の途中から強くなっていた雨の影響でグラウンドは水浸し。ボールがはね、選手がステップを切るたびに水しぶきが上がるのが見える。「泥のない田んぼ」とでも言おうか。2分、石川のクロスをルーカスがゴール前に落とし、戸田がDFと競りながら走り込むも、高木が一歩早くキャッチ。7分、戸田とルーカスが止まるボールに苦労しながらもパスをつないでペナルティボックス手前へ攻め込み、フリーの石川に渡してシュート(枠外)。8分、相馬がタッチライン際で減速したボールを拾い、加地をフェイントで切ってクロス、土肥が横っ飛びのパンチングで危機を防ぐ。足元がおぼつかずボールコントロールは難しく、精緻なパス攻撃やタイトなプレッシングは無理。やや雑目にやり合う展開に。ただ、東京陣(ヴェルディが攻め込む方)がより水たまりが深かったせいもあったのか、2トップへの放り込みと相馬のアーリークロスを徹底したヴェルディに対し、東京はなお中盤からショートパスを織り交ぜて攻めようとしていた。

 17分、相馬の素晴らしい弾道のアーリークロスに対し、平本がフリーで前に出て頭で叩きつけ、思わず悲鳴を上げそうになった(オフサイドの判定)。地域とボール支配率では東京の優位であったが、「これ」という形を持っているだけに侮れない。23分、東京は足を痛めたルーカスOUTで近藤祐介IN。ルーカスが抜けるのは痛いが、祐介の馬力をこのピッチコンディションで生かしてくれれば、というところか。25分、ヴェルディのCK、DF李の弾丸ヘディングシュートがバーの上を抜ける。27分、梶山に代えて三浦文丈を投入。「困ったときの文丈頼み」。ロングボールへの競り合いと中盤でのつぶし合いで時間が進んでいくが、ヴェルディの両サイド、特に相馬からの正確なアーリークロスは怖い。DFが2人立ちはだかってもきれいによけて上げてくる。31分、小林大のクロスに平本がきれいに頭で合わせるが、これは土肥ちゃんが倒れ込みながらキャッチ。33分、東京陣中央を持ち上がった小林大がスルーパスを出すも水たまりでボールが急停止(笑)。

 なかなかチャンスを作れない東京は栗澤に代えて馬場憂太投入。この交代がいきなり功を奏する。35分、中央でボール争奪戦のこぼれ球を拾った憂太は右サイドへライナーのスルーパス、石川があっという間に突破し、弧を描く大きなドリブルでペナルティボックスへ入ろうとしたところで倒されてFK(あと30cmでPKだった…)。このプレーでDF戸川が退場。しかし、相手が10人になってもちっとも嬉しくないのはなぜだろうか(笑)。FKのクロスがDFにブロックされた後のスローイン、ペナルティボックス内への山なりのボールを今野が落とし、石川がボレーで狙うも空振り。この状況ではヴェルディは当然時間を使いにくるわけで、米山と交代するワシントンがピッチを出るのにゆ〜っくりと時間をかけ、東京側スタンドから大ブーイング(そして警告)。

 ここからヴェルディは完全に引き分け狙いで自陣に引きこもり。対する東京は動きのいい憂太を中心にボールを動かして攻めたてようとする。憂太びいきの私からすれば、かなり燃える時間帯であった。イーブンボールにガチッと体を寄せ、マイボールにする憂太。いいなあ、戦っているなあ、と。ただ、完全に守りに入られているだけに、その好プレーがなかなか決定機まで至らないのがもどかしいところでもあった。41分、右スローインから加地のクロス、こぼれ球をペナルティボックス内で憂太が小さい体を伸ばして拾い、戻したボールを今野がシュート、DFブロック。42分には波状攻撃からのクロスを高木が飛び出して倒れながらパンチ、拾ったジャーンがGK不在のゴールをループで狙うがバーの上。結局その後も、人数をかけたヴェルディ防御を突破できず、ロスタイムの3分も過ぎてホイッスル。またしてもスコアレスドローに終わってしまった。

 結果ももちろん、内容的にもあまり褒められない試合だった。駄目だとわかっているパターンを、それでも何度も繰り返す愚直ぶり(例:相手が引いた状況で、ひたすら低い弾道のクロスをニアのDFに当てる石川)については、あまり馬鹿にしたくはない。後半の難しいコンディションで頑張った選手たちには敬意を表したい。けれど、残っている結果が、今季10試合目の無得点試合だからな…。選手たちは戦う気持ちを表に出して頑張っていると思う。でも、だからこそ、チームとしてのやり方に何かしらおかしいところがあるのではないだろうか、と思ってしまう。サイドの使い方(またはその裏返しとしての中央の使い方)、セットプレーのあり方、ワンペースな攻撃のリズム…。ちょっとどころではなく、行き詰まっている状態である。

 通算成績も、これで15試合(去年までなら半分)を終えて勝ち点14か。これは「ノルマ」なんて窮屈な言葉を持ち出すまでもなく落第だろう。

 個々の選手について。試合後に話したMendozaさんなどは、「これはもう選手個人の問題じゃないよね」と言っていて、それはその通りではある。そして、そもそも特定の選手を攻撃するのは趣味じゃない。だが、これだけは言わせてほしい。今日の梶山について。駄目だ、あんな選手をピッチの上に出していては。中盤をふらふら浮遊する様はまるでクラゲのようだった(って、この表現前にも使ったような気がするな)。仕事をしたのは前半のミドルシュートくらいか?周りの負担は確実に増していただろう。この試合、最後ヴェルディは退場者を出したが、前半の東京も10人だったんだ。

 でも、考えようによっては、そんな選手をとっとと下げないで72分まで出し続けた采配こそが問題だ、とも言えるのか。大器だから大きく育てたいという意図ならば、それは賛成(そもそも私も「使うなら先発で」と書いていたから、あまり偉そうなことは言えない)なんだけど、現実のパフォーマンスとしてあれではちょっと限界を超えてると思う。特に、そういう選手起用の結果として、戦える選手の出場が遅れてしまったわけだし。次梶山が出るかどうかはわからないが、頼むよもうちょっと(いやだいぶ)頑張ってくれよ、という感じである。

 この試合で約15分だけ出場した馬場憂太。去年感じられていたたくましさと頼もしさが復活していた。戸川の退場をもたらしたすんばらしいスルーパス、前目で当たってボールを奪う守備。ホント、「あの憂太がねえ…」(お袋さんが涙ぐんだ口調で)という感じである。彼が出てからは燃えたし、だからこそ結果につながってほしかったんだが…。なおさら残念だ。ついでに言うと、憂太の動きをいいと感じたのはユベントス戦の時からであって、あの時左右へボールをさばいて攻撃をコーディネートしていた宮沢とともに、ここ3試合全く使われる気配がなかったのは不可解でもある。また怪我の具合がよくなかったのだろうか?

 

 息をつく暇もなく、次の水曜日には清水戦だ。とにかく1つ勝たねば。

 

 試合前に起こった残念な事件については、また別のところで。

 


2005年目次へ            全体の目次へ