J1リーグ第11節 vs大宮アルディージャ 2005.5.8 味の素スタジアム

 

 

 「何やってんねん!」と叱りつけたくなるような、でも精一杯の拍手を送りたくなるような、不思議な後味のゲームだった。

 

 東すか配布日ということで準備のために早めに入れてもらい、入口で噂の決意表明ペーパーを受け取る。……うーむ。署名と「最後まであきらめない!絶対に勝つ!全員一丸となって戦う!」はいいんだけどさ、下の方に書いてある言葉(『You'll Never Walk Alone』の和訳が基?)があまりにもクサくてちょっと…うーん。

 ま、でも、これはこれでいいんじゃないかな、という気もする。そりゃ多少の連敗で大げさなことすんなとかホントに選手が自発的にやってんのかよとかそんな暇あったら練習しろ(これはウチの嫁さんが叫んでた(笑))とか、まあ色々意見はあるんだろうし、ちとあざといやり方なのかもしれない。だけど、私は前向きに温かく受けとめてあげたいと思う。6連敗というかつてない事態(何しろ今までが順調だったから)に対して「何かしなければ」というチームの気持ちが、ピッチ上での戦いと同じくやや空回りしてしまっているということではないだろうか。なんだかんだ言って「自筆」の署名なんだし。あとは、これが変に形式主義的な前例にならなければいい。

 

 場内、特にゴール裏は、鹿島戦の時と同様、試合開始前からヒートアップ(全体の客数は半分くらいだが)。練習中からキックオフまで途切れることなく応援歌、そして『You'll Never Walk Alone』が歌い続けられる。その声援に対して、これも「決意表明」なのか、前節の茂庭に続き、栗澤・今野も坊主頭になっていた。すごく単純だけどわかりやすい表現方法である。日本男児系。

 

 キックオフ。立ち上がりは守備のせめぎ合い。東京は前目から気合のこもったチェイスを見せてやや押し気味に試合を進める。大宮中盤のプレスDFを回避しようとしたのか、横並びになった3トップ目がけてロングボールを入れることが多いのだが、これがほとんど効果を上げない。一方、大宮の方は三浦監督流のきれいで統率のとれた3ライン(4−4−2)サッカーを見せるものの、欠場者が多いせいかトゥット以外は迫力不足な印象。ところが11分、ペナルティボックス外からの大宮のFK、キックの直後に副審が旗を上げた、と思った瞬間にレフリーの笛が鳴り、大宮に謎のPKが与えられた。唖然とする展開に、ゴール裏からは「クソレフリー」コールが飛ぶ。このPKをトゥットが落ち着いてゴール上に決めて大宮先制。

 ただ、理不尽な先制点により、逆に東京の攻撃に火が着いた。ロングボール一辺倒ではなくSBの押し上げも加わり、数と厚みで押し込んでいく。急造左SBの今野は金沢のような安定感はないものの、運動量と前へ出る思い切りのよさで大宮の右サイドを圧倒していた。15分、敵陣でボールを奪い、栗澤のスルーパスで戸田がDFライン裏に抜け出してシュート、GKがはじいて防ぐ。18分のFKでは戸田(?)がバックヘッドで流したボールを茂庭が押し込もうとするが、惜しくもオフサイド。前半の中頃には何度もFK・CKを獲得し、宮沢(この日は彼に固定されていたようだ)のキック目がけてアタッカーが飛び込んでいった。

 29分、敵陣左サイドでのボール争奪戦から今野がDFをはね飛ばしながら猛然とペナルティボックス手前まで前進し、石川へスクエアのラストパス。石川の右足が振り抜かれ、アウトにかかったボールがゴール左隅に吸い込まれた。GKほとんど動けず。石川は両手を前に突きだし力強いガッツポーズ。文句なしに素晴らしいゴールだった。その後も東京の優勢は続く。戦術云々ではなく、個々の前に出る力が完全に大宮を上回っていた。相手陣からどんどんボールを追い回していく青赤のユニフォーム。35分、左に流れた近藤祐介がクロスを入れ、ゴール正面でDF2人に挟まれながら石川が頭で叩くが、枠外。大宮の攻撃で怖いのはやはり単騎でもゴール目がけて突っかけてくるトゥットだが、これは後ろに残るモニ・ジャーンが堅実に対応。

 そして44分、左サイド奥のスペースにこぼれたボールを祐介が全力疾走で拾い、ゴールライン手前まで持ち上がって右へ鋭く切り返し、見事DFトニーニョをかわして思いきったシュート。転がるボールはGKの届かない軌道を走って逆サイドのゴールネットを揺らした。これまで満足な働きを見せられていなかった祐介の、ついに出た一撃。そして久々に出た原監督のジャンピングガッツポーズ。2−1。本当に久しぶりに、とても良い雰囲気でハーフタイムを迎えることができた。

 

 後半になって大宮はMF藤本投入で挽回を図るが、東京は優勢をキープ。中盤の攻撃的守備からどんどんアタッカーを走らせる。キックオフ直後には早いリスタートから宮沢の絶妙の縦パスで祐介がDFライン裏に抜け出し、シュートを撃つも、DFに体を寄せられて決められず。15分くらいになるとさすがに東京の攻勢も鈍りはじめ、大宮のパスが回り始めるが、決定機につながるパスの精度の低さ、モニ・ジャーンの堅守に対抗する武器の少なさなどから攻めあぐみ、試合は膠着した。焦れたトゥットがボールを求めて下がる場面も多い。21分、宮沢から左サイドに流れていた祐介にきれいなサイドチェンジ、祐介は中へ切れ込んでミドルシュートを放ち、ボールはポストわずか右を抜けていった。

 大宮がMF橋本・FW横山を入れてさらなる攻撃態勢へシフトする一方で、東京は戸田OUTコバIN、祐介OUTルーカスINと手堅い交代。30分には大宮陣深くでFKをゲット、宮沢の低いクロスがペナルティボックスへ飛んだところでルーカスが相手DFに体を寄せられ飛び上がれない…と見えた瞬間にホイッスル。なんとこれがペナルティ。レフリー、前半のアレをチャラにしたかったのか(笑)?ともかく、ルーカスがきっちり決めて3−1。名古屋戦でのルーカスのPK失敗(思えばあれから連敗が始まったのだった)が思い起こされ、ならば今度こそ行けるかと思えたのだが…。

 直後の32分、大宮のCK、ニアサイドなぜかフリーでいたトニーニョがバックヘッドで合わせ、ボールはカバーに入った今野の頭に当たってからゴールイン。G大阪戦の大敗が思い出される、得点直後のあまりにあっけない失点。これを契機にあっという間に大宮の攻勢になってしまう。36分、CKでボールへの集中力が途切れたところを狙ってショートコーナーから橋本がクロスを入れ、ファーサイドにフリーのアタッカー3人が飛び込むあわやの場面があったが、これはその3人が重なったせいでシュートが枠に飛ばず、命拾い。40分には東京陣左サイドでクリアにもたついたところをつながれ、久永のクロスがファーでどフリーのトゥットへピタリ…。だが、「駄目か」とあきらめかけた目に飛び込んできたのは、トゥットの宇宙開発ヘディングだった(笑)。また命拾い。

 ようやくロスタイムに突入。東京はぎこちないながらも時間を使いにかかる…と思いきや、サイドからクロスを入れたり(しかもアタッカーが中上がってないのに)とやや中途半端な印象。こういうシチュエーションでは、前の試合で鹿島にやられたように相手のプレッシャーを受け流すようなパス回しができれば最高だが、それが無理でももっと徹底して時間を使いにかかるべきだったかもしれない。ボールホルダーがサイドへ流れていってもフォローがつかず、結局ボールをとられて大宮の攻撃につながるシーンが何度か。石川が逆襲のドリブルで一気にペナルティボックスまで持ち込みシュートを撃った場面も、残念ながらGKが片足でナイスセーブ。

 そして48分(くらいか?)、今野のクリアキックが大宮の選手にはね返り、拾ったトゥットがドリブルで持ち上がったその先、DFを背負いながら右サイドからFW森田がゴール前へ突入。トゥットのラストパスを受けた森田が信じられないような絶妙のループシュート…土肥ちゃんの伸ばした手も届かず、ボールはふわりとゴールの中へ吸い込まれていった。顔を覆い、ピッチに倒れ込む東京の選手たち。いや、この時、厳しいことを言えば、もう1プレイ残っている可能性もあったのだがら、東京の選手たちは悲嘆にくれる暇などなくすぐボールを拾って再開すべきだったのだ。私も一瞬「まだあるぞ!」と叫びそうになった。でも、一方で、半ば自業自得とはいえ、あまりにショッキングな展開にこれ以上望むのは酷だという気もして、ついに声は出なかった。人間のやることなんだから…。結局、次のキックオフ直後にタイムアップ。再び倒れ込む東京の選手たち、ガッツポーズする大宮イレブン。

 

 試合後、うなだれる選手たちにスタンドから温かい拍手が送られる。おそらく中断前最後の(リーグ戦の)ホームゲームだからだろう、ベンチ外の選手たちも出てきて挨拶(これはそこまでしなくてもいいのでは?と思った)。独りになってしまった石川の姿、倒れた選手たちに手を差しのべて助け起こす迫井の姿。チームの、自分たちの非力さ・拙さを含め、色々な事を思い知らされたゲームだった。負けに等しい引き分け、連敗を止めた勝点1、選手の健闘、試合運びのまずさ。おそらく、この試合の評価は、この試合だけで決まるものではないのだろう。今は前を向いて行きたい。次こそは。


2005年目次へ            全体の目次へ