J1リーグ第1節 vsアルビレックス新潟 2005.3.5 味の素スタジアム
さて、今年も開幕がやってきた。このワクワク感だけは、この数年間全く変わることがない。
開幕イベントはアニマル浜口氏。「今年は、ぜったい、ゆうしょう、だァー!!」の絶叫に東京側ゴール裏大いに沸く。最後はちょっと足元アヤシく、小さな歩幅の「ホップ、ステップ、チャンプ!」が笑いを呼び、新潟側からも「はまぐち!」コールが飛んだのだった。派手すぎず地味すぎず、気合も注入されて(笑)いい企画だったのではなかろうか。
で、キックオフ。プレシーズンマッチの内容に不安が募っていたが、ふたを開ければ笑いの止まらない内容だった。いや、相手関係もあるにせよ、これほど変わるものかね。川崎戦はいったい何だったんだ(笑)。 東京はダニーロを控えに回し、宮沢が先発。机上の配置では1ボランチのフォーメーションなのかもしれないが、宮沢は当然のように下がり気味でゲームメークし、実質的には昨年までと同じ4−2−3−1となった。4バックの壁とボールハンターの今野に栗澤・宮沢のプレスが加わり、まずは守備が安定。新潟のアタッカーになかなか前を向かせない。そして宮沢の左足から放たれる、テンポ良いミドルパス。展開が見違えるように広くなった。2分、6分と石川が右サイドを突破。栗澤と加地のフォローも加わって、序盤からチャンスの連続となった。
11分、GK野澤がゴールキックをミスし、ハーフウェー付近で拾った石川が一気に持ち上がってペナルティボックスへ突入。後退かツメか迷うDFを前に見ながらシュート!当たりそこね気味のグラウンダーがスルスルと抜けてゴール左隅に吸い込まれた。東京、あっさりと先制。ゴール裏からは「ありがと野澤!!」のコールが飛ぶ。新潟も押されながらベタ引きにならず、反撃に出ようとするが、DFが不安定なままでの焦りを感じさせる攻めは次々と東京のプレスの餌食になる。アタッカーがほとんど前を向けない。後方の安定が個々の思いきった仕掛けを後押しする東京とは全く対照的であった。
21分、中盤でポストのルーカスが戻すボールを、宮沢が右サイドへ高速のミドルパス。上がる石川の足元にボールが収まった瞬間思わず「よしっ!」と声を上げてしまったくらい、素晴らしい弾道のパスだった。そして石川は食い下がるDFをスピードで振りきりながらゴールライン際までえぐり、クロス。一旦ははね返されたものの、ポジションを上げていた今野がこぼれ球を右足で思いきり叩き、強シュートがゴール左に突き刺さった。2−0。その後も質・量とも素晴らしい栗澤の動きと宮沢の展開力により東京は優勢を維持。右サイドでは石川が度々ボールを受け、DFを脅かす。34分には右サイドで栗澤がDFのタックルをひらりとかわしながら抜け、ペナルティボックス手前から絶妙のグラウンダークロスを入れる。ニアにルーカスが飛び込んでスライディングで押し込もうとするが、ポストのわずか右に外れた。
前半も終わりに近づいた頃にようやく新潟も前向きのパスワークが増え、38分にはファビーニョが左サイドを突破、ファーサイドをゴールライン近くまで上がっていたDF海本にボールが渡るも、クロスは土肥ちゃんがキャッチ。ロスタイムには中盤からの浮き球がペナルティボックスへ走り込む鈴木慎吾に渡る危ういシーンもあったが、すぐに茂庭ががっちり付いてシュートを撃たせない。2点差のまま前半終了。
ハーフタイムに強い雨が降り、後半は立ち上がりから両チームとも滑るピッチに苦戦。足元を滑らせながら何とか踏ん張ってのボール争奪戦が続く。0分、アルビレックス陣でのパス回しに東京アタッカーがプレスをかけ、パスカットから持ち上がった金沢のスルーパスで戸田がDFライン裏へ抜け、シュート。野澤が弾いたボールをさらに栗澤が押し込もうとするが、これは右に外れた。3分、新潟中盤のパスワークからMF本間がスルーを受けてペナルティボックスへ突入するも、やはり茂庭がピタリと付いて決めることができない。
不安定な攻め合いの中、東京が追加点を奪う。14分、後方からのロングボールを石川が右サイドでDFと競りながらうまくキープ。ペナルティボックスへ切れ込んでシュートを狙うもDFに体寄せられ、ボールを失うか…という瀬戸際に伸ばした足のつま先でゴール前へラストパス。走り込んでいたルーカスがきれいに右隅へ決めて3−0。これで勝負あった感じ。新潟の方は気持ちが前に行きすぎていたのか、ボールを奪われた時の戻り、こぼれ球への反応にも精彩を欠いた。さらに17分、左サイドを持ち上がったルーカスがフェイントでDFをかわしながらペナルティボックスへ進入、角度の無いところから豪快にゴール上に突き刺した。「ここしかない」というコースを狙ったスーパーゴール(偶然、という気がしないでもないが(笑))。18分には今度は右から石川が勝負、強烈なシュートを野澤がかろうじてはじく。もうやりたい放題である。
新潟は本間に代えて新外国人のMFリマ、さらに石川にやられっぱなしだったDF青野に代えてDF梅山(ウメッティ!)を投入し、意地の反撃。25分、CKからの混戦でパスがペナルティボックス内にいた鈴木慎の足下にすっぽり収まるが、シュートは強く叩けずに土肥がキャッチ。29分、新潟右サイドのパスワークからリマがDFライン裏に抜けるも、シュートは豪快に宇宙開発。33分にはDF海本幸が2回目の警告で退場。倒された戸田が足を滑らせ気味だったのでやや気の毒なイエローにも思えたが、しかし海本は前半から手を使いまくりで、印象が悪かった(繰り返し違反という意味もあったか)のだろう。37分、新潟のカウンター、左サイドに流れた上野からのクロスがゴール前のエジミウソンに渡りかけた場面も、全速力で戻った宮沢がスライディングでカット。東京の防御は崩れなかった。
37分、東京は石川に代えてダニーロを投入。少ない時間のプレーながらダニーロは40分にファーストシュート、41分にはゴール前からのこぼれ球をボレーで叩き、さらにロスタイムにもペナルティボックス外から強烈な反転シュート(惜しくもポスト左を抜けた)を見せ、サポーターを喜ばせた。ゴール裏は「ダッ、ニ〜ロ〜!!」のコールで盛り上がりまくり。残り時間も、加地左足(!)のロングシュートが枠に飛んでスタンドが沸いたり、石川に続いて宮沢、ルーカスと功労者を次々に下げる粋な交代があったり、愉しい時間が続く。結局、4−0でフルタイム。東京のファン・サポーターにとってはお腹いっぱいの開幕戦となった。
この日のアルビレックスは、反町監督就任後見てきた中では、最悪の部類に入る出来だったと思う。中盤でのプレッシャーが弱く、DFラインも一人一人が持ちこたえられない。「アグレッシブに行く」という気持ちは伝わってきたが、ボールを取れないのではどうにもならなかった。まだチーム作りの途中なのかもしれないけれども、この日のDFラインのメンツなどを見ても個々の能力で昨年以上のものは感じられず、いかに建て直すか、反町監督の真価が問われることになるのだろう。
東京にとっては、ちょっと驚きの快勝だった。相手守備が弱かったとはいえ、4点も取れば何も文句なし。宮沢の展開力により各所で一対一の局面が生まれ、そして今の東京の選手たちなら一対一で容易に負けはしない。それと、やり慣れた4−2−3−1はやはり落ち着くなあ、というのも率直な印象。プレシーズンマッチと今回の試合を比べれば、一目瞭然、次は同じメンバーで行くことになるだろう。問題は(すぐにそうなると思うが)相手が宮沢を消しに来た時、あるいは宮沢の調子が落ちた時にどうするか。宮沢タイプの、展開力のある選手が他にいない(金沢くらいか?)というのか、ずっとこのチームのネックになっていると思うのだ。そうなった時に、チームがどう工夫するか。栗澤・憂太・梶山らがサイドと生かし生かされの関係を作れるか。
個々の選手では、まずなんといっても宮沢が素晴らしかった。テンポの良いミドルパスのさばきに加えて、守備でも健闘していたし、押し上げてのミドルシュートもあった。この日の出来ならば、何の問題もなくレギュラーを張れるだろう。「横の宮沢、縦の今野」とでも言おうか。それと、栗澤。今まで見た中で一番の出来。運動量があり、中盤で他の選手の守備を助け、攻撃では緩急をつけながらパス出しもスペースへの飛び出しもできる。この万能性は憂太や梶山にはないもので、まったくもって貴重な戦力である。あと、石川は好調そうでキレキレ、ルーカスも自信を持ってやっている様子。守備の選手はあまり目立つ場面がなかったが、とりあえず体調は悪くなさそうだ。で、ダニーロは……シュートを撃つ積極性はいいのだけれど、全然走ってなかったし、ボールを受けた時の他の選手とのコンビネーションもまだまだ、という感じである。もう何試合か見てみないとわからないけれど。
いや、ホント、この調子を何試合かでも続けて開幕ダッシュできれば、面白いことになるかもしれない。
ちなみに、リーグ開幕戦の連勝は、これで「9」(97年以来!)に伸びたということになる。それってスゲエよな。