J1リーグ第20節 vs名古屋グランパス 2005.8.24 味の素スタジアム

 

 

 どうにもパッとしない試合が続く。7月のマリノス戦は幻だったのか、それとも蝋燭が消える前の最後の(以下自粛)。

 

 前節浦和戦から期待の新外国人ササを迎えながら、その起用法で悩みを抱えてしまった観のある東京。浦和戦で試した(そして機能しなかった)4−4−2の布陣をあっさり変え、この日はルーカス1トップに石川・栗澤・規郎が2列目という「旧タイプ」の4−5−1でスタート。ササはベンチで「控えの切り札」といったところか。一方の名古屋は、新外国人ルイゾンと本田の2トップの後に藤田・中村が並ぶ4−4−2のフォーメーション。ウェズレイ・マルケスが大黒柱の時代が長かったので、ちょっと目新しいというか、別のチームのような顔ぶれ。


石川選手はJ1出場通算100試合。おめでとう!!

 キックオフ。6分、東京陣でロングボールを処理しようとしたジャーンの前でボールが大きく跳ね、それをかっさらった本田が茂庭と競争しながらペナルティボックスへ突入、シュートがサイドネット外側を揺らす。7分、右サイドの競り合いから石川がドリブルで縦に抜けてグラウンダーのクロスを入れ、ペナルティボックス中央のルーカスが足で浮かしてボレーシュート、GK正面。13分にはルーカスのタメから右の石川へ展開、ニアサイドに集まったアタッカーにDFがつられたその上をクロスが越していき、ファーサイドにフリーの栗澤が走り込むが、シュートはミートに失敗。東京はやり慣れた布陣だけにスムーズな動きで、前から詰めていくコンパクトな守備を見せる。名古屋の方はあまり押し上げず、後方のパス回しから縦の速いパスでCBの間を狙う。

 17分、名古屋陣でのFK、ノリカル砲(笑)は壁をど直撃。21分、左サイドで藤田からボールを奪った規郎がそのまま持ち上がり、チェックに入ったMF安をはね飛ばしてからマイナスのクロスを入れたが、これはアタッカーに合わず。東京は優勢ではあるのだが、人数をかけた名古屋の守備を崩しきれず、ラストひとつ前くらいのパスが相手DFに引っかかることが多い。一方名古屋もアウェイのジーコジャパンみたいな煮え切らないサッカー。人数をかけない攻めでチャンスは少ない。期待のルイゾンにもいいボールが入らず、活躍の余地は少なかった。31分、ルーカスの大きなサイドチェンジから右サイド攻撃、加地→石川と渡ってクロス、ペナルティボックス内でクリアボールが跳ね、拾った栗澤が反転シュートするもDFブロック。

 35分過ぎになると、東京も息切れしたか前からのプレッシャーが弱くなり、名古屋のポゼッションの時間が延びてくる。右SB井川やMFクライトンの上がりも目立ち始めた。36分、バイタルエリアでの長いパス回しから左SB中谷のクロスをゴール前でルイゾンがすらし、どフリーのクライトンへ。思わず叫びたくなる大ピンチだったが、前へ出る土肥の頭上を抜こうとしたループシュートはバーを越してくれた。東京も負けてはいない。38分、敵陣左サイドで粘る金沢からオーバーラップした今野へスルーパス、強いシュートが楢崎の正面を突く。39分、ルイゾンと藤田のコンビから井川の好クロス、マークを外したルイゾンが飛び込むが、わずかに届かずヒヤ汗。40分、梶山が自陣でボールを奪い、力強いドリブルでDFをかわしつつ前進して左へ展開。ルーカスが折り返したボールを栗澤がシュートするも、これも楢崎キャッチ。結局、スコアレスのまま前半終了。最後こそ攻め合いになったが、全体的にはどちらもプレーに精度を欠く印象であった。

 後半開始直後、東京陣で今野が出足良くボールを奪い、左サイド駆け上がる規郎へ。規郎はスピードでDFを切ってクロス、ボールはファーへ流れたが石川が拾って中央へ戻し、栗澤がシュート(枠外)。いかにもハーフタイムにネジを巻き直したという感じ(原監督の喝が効いた?)で、東京は囲い込んでのボール奪取が復活。前節良くなかった梶山もこの日はちゃんとボールを追っては体をぶつけていた。梶山が頑張れば今野の前へ出る力が生きる。3分、加地が右でキープ、外側を石川が追い越したところで加地は中へ切れ込み、走り込む今野がシュート(枠外)。10分、こぼれ球を拾った今野が左サイドへ飛び出し、中村に当たり勝ってグラウンダーのクロスを入れたが、ルーカスに合わず。中盤を制圧して名古屋アタッカーへのパスを遮断し、次々前へボールを運ぶ東京。

 しかし、クロスの精度の悪さや時折見せるアタッカーの連動性のなさにより、なかなか決定機にまでは至らない。15分、中央持ち上がる栗澤から左サイド上がる規郎へ絶妙のスルーパスが出たが、クロスははるか彼方へ(笑)。17分、規郎OUTでササIN。ササが前へ張り、ルーカスがその後ろで動き回る形。19分、久しぶりに本田がいい形でボールを持ち、右サイド上がる中村へ展開、しかし中にルイゾンしか上がっていない上にクロスも大きすぎて逆サイドのタッチへ。21分、中央こぼれ球拾った今野から右どフリーの加地へ渡すが、このクロスも大オーバー。うーむ…きっと両チームとも次の試合までは居残りでクロスの練習だな、と思わされた数分間。

 24分、後方石川からのロングボールに反応したササがCBのギャップにうまく入り込んで抜けたが、楢崎必死の飛び出しをかわそうと浮かしたシュートはゴールネットの上で弾む。こういうもどかしい展開の時にほしい「ストライカーの一発」が出たかと思ったが…惜しかった。25分、CKをファーで拾った今野が反転してシュートを撃つが、DFの壁に阻まれる。後半半ばをすぎたところで名古屋DFは動きも集中力も落ち始めているように見え、東京のMF・SBのオーバーラップを交えたパス回しに対応できなくなっているように見えた。26分にはルイゾンに代えて中山を投入、彼のスピードによる打開を図るものの、縦のボールは茂庭が素晴らしいスピードでカバー。東京の攻勢はなお続き、あとは仕留めるだけに見えたのだ。あとは。

 31分、梶山からのフィードを追った今野がDF中谷に競り勝ってCK獲得。このCKをニアでルーカスが後方へすらし、ファーに飛び出したジャーンが足で狙うも、楢崎体を張ってブロック。さらにショートコーナーから石川が弾丸クロスをゴール前に入れ、名古屋DF懸命にブロック。波状攻撃である。ところが、そのはね返ったボールがたまたま右サイドにフリーでいたクライトンの足下に落ち、クライトンはよく周りを見てから東京陣に走り込む中村へスルーパス。カットしようと伸ばした金沢の足もわずかに届かず、中村はペナルティボックス横まで持ち上がって中央へ押し返し、走り込んだ藤田が加地のブロックを避けてシュート!ボールは右ポストに当たってからゴール内へ吸い込まれた。チーム全体のイマイチ感の中、一人イヤらしい動きを見せていた藤田の得点。しかも、金沢がこのプレーで足を痛めて退場。まさに痛恨だった。

 この試合の結果によっては降格ラインが近づく東京。負けるわけにはいかない。金沢を外して馬場憂太投入。左サイドは今野と栗澤が交代でカバーするような感じか?とにかく攻め手を増やす交代。36分、その金沢の穴をロングボールでもろに狙われピンチ、藤田(またかよ)のシュートをジャーンが何とかブロック。さらに37分、梶山OUTで文丈IN。とにかく反撃したい東京だが、疲れと焦りゆえか、ボールが足につかない場面が多い。中盤は既に間延びしており、スペースは十分にあったのだが…。そんな中、必死にボールを収めながら動き回って何とかしようとするルーカス。40分、右に流れた憂太から中央のルーカスへ大きな折り返し、ワンタッチでDFの裏に流すがササには通らず。直後に今野のクロスをササが頭で叩いたシュートもバーの上。さらに41分、ササのポストプレーの戻しを受けた憂太が中央でドリブル、鋭いフェイントでスライディングタックルをかわしてペナルティボックスへ突入!やや流れたボールをササがさらってシュート、楢崎が押さえる。おそらく自分で撃ちたかった憂太は「もー(怒)!」という感じで跳び上がって腕をブンブン(笑)。

 そして、負け濃厚の雰囲気も漂ってきた43分。左サイドを今野が突破してライナー性のクロス。キックミスだったのか、ボールはゴール前で待ちかまえる楢崎の真正面に飛び、難なくキャッチ…と思った瞬間に信じられない光景が。楢崎が、日本代表の楢崎が、なんとこのボールを弾いてしまったのだ。しかもゴールの方向へ!!確かにゴール方向へのファンブルは彼が時折やらかす「悪い癖」ではあるのだが…この日は好セーブも光っていただけにちょっと気の毒。それとも、詰めていたササ(←えらい)が目に入ったのだろうか?ともかく同点。サッカーのゴールというのは、入ってしまえば実にあっけないものだ。猛ダッシュで自陣へ返る今野、ポストにもたれかかってうなだれ頭を抱える楢崎、「ナラザキ!」コールの東京側スタンド。その後は引き分けでは納得いかない両チームの攻め合いとなるが、さらなるどんでん返しはなし。ロスタイム、加地がDFをかわしてクロスを上げ、DF2人に競り勝ったササがヘディングシュート、ボールは楢崎の脇を抜いていったが、名古屋DFがゴールライン上で懸命のクリア。結局1−1のまま試合終了となった。

 試合終了の笛が鳴った瞬間、東京側スタンドからは大「ナラザキ!」コールが沸き起こった。……うーむ、ああいうのは個人的に好きではないし、本気で「助かった!」と思っている人間が多そうなのが(私もその1人だが)状況的に悔しいよな。

 名古屋ははっきりと調子が悪かった。前半からなかなか前に出てこなくて「夏のアウェイで慎重になっているのか?」と思っていたら、最後までそのままだった。前半の終わり頃ボールを支配できた時間帯(そしてクライトンの決定的なループ)もあったが、あれはどちらかといえば東京側が息切れして引き気味になった結果。全体的にはプレーの精度は低かった。中村も得点のシーンを除けばミスが目立ったし、新外国人ルイゾンもいい形でボールをもらえていなかった。前節神戸に負けたのもむべなるかな。ただ、藤田がいやな所に顔を出しまくって効いていたのはさすがである。藤田は東京にとって、いやJリーグのほとんどのチームにとって天敵のような存在であろう。東京ファンとしては、正直、浦和に行かないでくれて本当によかった(笑)。

 東京は前節うまくいかなかった4−4−2ではなく、堅く(?)4−5−1の布陣。現時点では正しい判断だと思うし、実際まあまあ(特に後半は)機能していた。ルーカスはよくボールをキープしてくれたし、中盤で梶山が体を張って頑張っていたので、今野の前進力も生かしていい形を何度か作ることができた。問題は…まずはクロスの精度の低さ。両サイドは孤立がちながら奮闘していたけど、肝心のクロスがちょっと(いや、だいぶ)アレであった。石川と今野はまあいいとして、規郎と加地が。あと、先発のトップ下は久しぶりに栗澤だったのだが、この起用、悪くはないもののちょっと微妙な感じが。彼は補助とか調整の力、つまり周りを生かしチームのバランスをとることは上手いのだけれど、中央突破の駒としてはやや物足りない。もうちょい早く憂太が見たかったと思う。あるいは、フィジカルの理由とかで憂太を長く使えないのなら、途中から梶山を上げる手もあるのでは?

 この日のササは後半から登場。先週と違ってチームが攻勢だったこともあり、4本くらいはシュートを撃っただろうか?憂太のドリブルをかっさらったシュート、あれは決めて欲しかった。ただ、ロスタイムの惜しいヘディングシュートなんかを見る限り、今までの東京にはない能力を持っているのは確かなんだろう。次に期待したい。もちろん今の東京において彼の使い方はかなり難しい。今後もしばらくはスーパーサブとして使って行くのか、それともまた4−4−2を試す時が来るのか。とにかく何とか彼を生かしたいし、生かすことができれば、もしかするとそれがチームの1部残留の決め手になるのかもしれない(リベルタドーレス杯得点王を連れてきておいて何とも情けない話だが)。

 試合を総括するなら、勝点1を取れたのは残留争いを考えるならば大きいのかもしれないけれども、やっぱり今日くらいの出来の相手にホームで勝てないのではファンとして大いに不満である。これで今季のホームゲームは3勝5分3敗(リーグのみ)。うーむ…。せめてホームで勝ち越すようでないと、「降格ライン」の恐怖を感じる日々は続いていくのはないだろうか。柏・清水・大分と当たる9月に向けて調子が上がっていけば良いのだが。

 金沢の怪我は非常に心配だ。実はあのポジション、現状では代わりがいないから。

 


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