J1リーグ第22節 vs柏レイソル 2005.9.3 柏の葉公園競技場

 

 

 「残留争い天王山」第1戦は…レイソル相手に完敗。駄目だった。とても大事な試合だったのに。浦和戦とあまり変わらないサッカー。いつの間にか、このチームは色々なところでタガが緩んでしまった様子である。

 

 試合前の練習、今節からチームに復帰した阿部吉朗のシュートが決まるたびに大歓声が上がる。そう、みんな吉朗のことを待っていたのだ。もちろん私も同じで、ゴールネットが何度となく揺れるのを目にして「もしかすると彼が今の停滞状況を打破してくれるのではないか…」などと思うようになっていた。後から思えば、彼へいきなり大きな期待をかけたくなること自体、チームの現在の戦いぶりに対して大きな不満を抱いていることの表れだったのかもしれない。少なくとも私に関しては。

 キックオフ直前、スタンド裏に生ビールを買いに行ったら2人前の客でタンクが空になってしまい、店の親父がその交換作業に手間取っている間に「オオオオー」とうなり声が高まるのが聞こえ、続いて「ウワーッ!!」という大歓声。「もしかして…」と愕然としていると、「ただいまの得点は、FC東京38番、ササ・サルセード選手でした!」のアナウンス。がーん!見逃してしもうた!!いつもWEBにエラそうに観戦記書いてるくせに、いざ肝心のシーンを見てないなんて駄目じゃん、俺。ちょっと反省。隣で観ていた下山けんとに教えてもらった限りでは、ササがFKを直接蹴りこんだそうな。技ありゴールだったようである。そうか、そういうこともできるのかササは。

 思わぬ僥倖。柏は前に出てこざるを得ないだろうから、自慢のCB2人で防いでいるうちに逆襲でチャンスを作れる…。しかし、この日に限って東京は堅守ぶりを見せつけることはできず、むしろ柏アタッカーの勢いと決定力が目立つことになった。柏は先制されてもバランスを崩さず、縦の速い攻撃からリズムをつかむ。東京は石川や規郎が何度かクロスを上げるも決定機には至らず。そして14分、東京陣左サイドで規郎と今野がMFクレーベルを挟み撃ちにして柏ボールのスローイン。東京の2人は手を挙げてマイボールを主張するものの、柏はその間にクイックリスタート、いつの間にか上がってきていた守備的MF明神がヘッドでゴール前に流し、DFの間に走り込んだFWレイナウドが頭で押し込んでゴールイン。一瞬の集中力の空白を突かれた、あっけない失点だった。

 めげない東京は反撃に出るが、石川のロングシュートはわずかに枠を外れ、ルーカスがこぼれ球をかっさらってDFライン裏に抜けた大チャンスもシュートはGK南が弾き出す。逆に26分、ペナルティボックス前でフリーのレイナウドに縦のボールが入り、レイナウドは巧みなターンで向き直ってすぐさま強いシュート!ボールは横に飛びかけた土肥に当たり、そのままバウンドしてゴールへ吸い込まれていった。1−2。その直後、ササが左サイドで鋭い切り返しを見せ、DFを外してシュートを狙うも決められず。さらに終了間際にも柏陣のいい位置でFKを得たが、ササがまた直接狙って枠を外した。「二匹目のドジョウ」はいなかったということか…ちょっと選択が安易だったかもしれない。

 前半の東京を見ていて「やはり…」とガッカリしたのは、中央の組み立てからチャンスを作った場面がほとんどなかったこと。この日は3試合ぶりにササが先発して4−4−2の布陣。左SBは規郎。規郎はアーリークロスの精度もまあまあだったし柏アタッカーに負けない頑健さを見せていたが、金沢に比べるとカバーできる面はやはり小さく、同点ゴールの時のようなポカもあった。後ろに不安があるため今野も下がり気味にならざるを得ず、そうすると梶山もそれに引っ張られ、ともに攻撃においての持ち味を発揮できない。結果、中盤の前目には穴が空き、サイドからの強引な突破か、FWの個人技かという二者択一の攻めに。一方の柏はバランスのいい4−4−2。飛び抜けて強い所もないものの、穴と言えるところも見あたらない。苦しい戦いになった。

 後半。やはり指示があったのだろう、梶山が前に出て、後ろの今野とは縦の関係に。しかし開始直後、その梶山の寄せが遅れたところで大谷から前線のレイナウドへ縦パス、レイナウドはこれまた巧みな持ち出しで茂庭をかわし、玉田へラストパス。玉田が右足で土肥の横を抜いて1−3。気を取り直して反撃と行きたいところでいきなりの失点。これは試合展開としても、選手に精神的なゆとりがなくなったという意味でも痛かったように思う。東京は栗澤に代えて阿部吉朗を投入。今度こそ、いざ反撃。ところが、前がかりになったところでまたも失点。10分、中盤のこぼれ球を拾われ一気のカウンター、茂庭がクレーベルにズバッと交わされ、シュートを一旦土肥が弾いたものの、中央を上がっていた玉田に蹴りこまれて4点目。とにかく流れが悪い。悪すぎである。

 東京の攻撃はなかなか機能しない。右の石川・左の阿部が積極的に突破を図るも、彼らと中とのコンビネーションや中央からの展開が相変わらず乏しく、2トップまでなかなかボールが渡らない。後ろから梶山へ渡すまではいいのだが、そこからが進まないのだ。これは梶山だけの責任ではなく、布陣の問題でもあるように思えた。後ろ・両サイド・前にはそれぞれ選手たちが張り出していて、真ん中で今野と梶山が周りの選手を使おうとするのだが、彼らだけではいかにも手薄。対する柏は中央を常に3人以上で固め、特に梶山は明神・大谷の2人でケアされる。東京は中盤の単純な数あわせで負けていた。梶山の前方へのパスが引っかけられるシーンが何度も。20分にはルーカスの浮き球パスでササがDFライン裏に出たが、間一髪DF薩川のスライディングタックルが決まった。

 22分、孤立無援の状況にあった石川に代えて馬場憂太投入。遅すぎる交代だったが、とにかくこれで中盤は厚くなる…と思いきや、憂太は左サイドに流れ気味でなかなか前に出ず、2トップへのボール供給はイマイチのまま。いったいどういう指示が出ていたのだろう?それでも時間がたつにつれ、次第に憂太は中寄りになって規郎が上がりっぱなしになり、吉朗も右からガンガン突っかけて攻撃のリズムが出始めた。25分にカウンターからの玉田のシュートを土肥が、26分にササの鋭いミドルシュートを南が、それぞれ横っ飛びで防ぐ。28分、規郎が左サイドをドリブル突破、GKとDFの間にグラウンダーのクロスを入れる。押し込もうとするルーカスとカットに入る柏DFが競り合う中をボールは逆サイドへ抜け、詰めていた吉朗が押し込んでゴール!2−4。やっぱりやってくれるのはこの男。チームに勢いをつけてくれるゴール。

 そして東京は梶山に代えて文丈も入れ、残り時間で意地の反撃を見せる。だが、2点差を守りきればいい柏DFはほとんど自陣に残っており、そして何より「ここが勝負」の気迫に満ちていた。力強いスライディングタックルが東京の攻撃を遮断し、DFラインは根気強く攻撃をはね返し続ける。39分、憂太のアーリークロスをファーでジャーンが落とし、ササがボレーで狙ったが南の体に当たってノーゴール。41分、FKからのクイックリスタート、憂太からゴール前に走り込むルーカスの足下へピンポイントパスが決まったかに思えたが、オフサイドの判定(ホントかよ)。ロスタイムには文丈が弾丸のようにペナルティボックスへ飛び込んで折り返すも、ルーカスはシュート撃てず。最後はもうササ目がけて放り込むしか手がないようにも見えたのだが、東京の選手たちは横へ回してなかなか前線へ入れようとしない。結局、2−4のまま試合終了。スタジアムは黄色い人々の歓喜に包まれ、東京の選手たちにはスタンドからやや控えめなブーイングが浴びせられたのだった。

 痛い黒星だった。勝点計算(これで15位に転落)の上で打撃なのはもちろん、チーム全体に与える精神的な動揺が大きいのではないかと心配だ。幸先のいい先制点をとって、どう考えても慌てるのは向こう、有利に試合を運べるのはこちらのはずだったのだが…悔いの残る形での同点ゴールから、次々と悪い時間帯に得点を入れられてペースを失い、終盤ようやく我に返って懸命の反撃を見せるも時間切れ。後半の茂庭の妙に前がかりな守備といい、終盤のルーカスの無謀とも見えるドリブルやワンタッチパスといい、どうも選手たちの焦りや苛立ちが次第に強まっているような気がするのである。この敗北で選手たちは相当に危機感を持つだろう。それはもちろん良いことでもあるのだが、とにかく慌てないで自分たちの力を出すことが大事。怖いのはパニックだ。

 もっとも、その選手たちに力を発揮させるはずの采配については、この試合でも大きな不満を感じた。まず、ササをチームにどうフィットさせるかという方向性が見えない状態での4−4−2採用。浦和戦と比べれば規郎が石川に、憂太が栗澤に代わっているものの、2トップの後ろの使い方やサイドと中とのコンビネーション(つーか、中に人いないのにあんなにサイドに張ってはいかんのでは)については相変わらず確立されていない様子。結果として梶山にもチーム全体にも過負担がかかってあちこちが綻んだ状態になってしまった。しかも今回は本職の左SBがいない状態で、かつアウェイの戦いで、残留争いの直接対決だったのである。原監督としてはこの時期に苦労してでもササ入りの布陣を馴染ませ、10月以降の戦いに備えようという腹なのかもしれない。が、それはちょっと残留争いに関してタカをくくりすぎてはいないだろうか?

 あと、後半の交代について。阿部投入はそれはそれでいいとして、20分を過ぎるまで馬場を入れなかったのはなぜなのだろう?問題は中盤の劣勢にあったのは明らかだったと思うのだが…。あの、円状に伸びきった東京の選手たち(その真ん中で苦しむ梶山)を見れば、やはり憂太→吉朗の順で入れるのが良策だったのではないかと思う。憂太を長い時間使わないのはフィジカルコンディションの問題なのか、それとも彼のタイプをスーパーサブ向けとみなしているのか、あるいは他の理由があるのか…。個人的には、梶山の守備力も考え合わせれば、1トップにせよ2トップにせよきちんと中央に攻撃的MF(トップ下)のポジションを設けて、そこを憂太と梶山の2人で競わせるのが良いのではと思うのだけれど。

 阿部吉朗のゴールについては、負け試合の中とはいえ素直に嬉しかった。復帰していきなりのゴール。さすがというか、やはり彼はチームに勢いをつけ、ファンの心に点火し、試合の行方を左右するための「何か」を持っているのだろう。もっとも、しばらくMF暮らしが続いているためか、シュートに関してやや積極性を欠くような場面もあったのはいただけない。Jリーグデビューした当時のように、まずシュート、それが無理なら周りへパス、という順序でやってほしいものである(そのためにも完全なゴールゲッターの役回りで使ってあげたいところだが…)。

 さて。息つく暇もなく、次節はホームで13位清水エスパルスとの対戦が待っている。どんな形でもいい、とにかく勝つこと。もはや先々のことは考えていられない。一戦必勝主義で行ってほしい。まず生き残りを決めてから、次のことを考えるべきだと思うのである。そして、万一次の試合でも敗北を喫するようなことがあれば、来年を待たずして監督を交代させるべきではないかとも思う。だって、こうなったらもうさすがに仕方がないだろう…。

 


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