J1リーグ第10節 vs鹿島アントラーズ 2005.5.4 味の素スタジアム
未だ出口は見えず。「選手は頑張ってる」のだけれど「チームが」うまく行かない回らない、という一番焦りたくなるトンネル。
4万の大観衆。戦闘態勢に入り、熱のこもった歌声を送り続けるゴール裏。試合前の、いや試合中も併せてスタンドの雰囲気は間違いなく今季最高。「勝ちたい」「勝たせたい」という雰囲気が場内に充満していたように思う。戦闘態勢完了、さあいくぞという。
前半。最初こそ中盤でそれなりにボールもとれたし、宮沢のFKや祐介の意欲的な突破など良い場面もあったものの、次第に低調な出来に陥っていく。一方の鹿島は東京の個々の突進をいなすようにピッチを広く使った後方のパス回しからアタッカーへ正確なボールを入れ、シンプルながら「ゴールへ向かう」攻撃でリズムをつかむ。17分、41分と、興梠のシュートがバーに当たってDFの動きが止まったところを本山に決められるという、同じパターンで早くも2失点。2点目の後、選手たちが憤怒と失望を露わにした時の空気は重かった。
トップのキープ力のなさ、サイド攻撃は右だけの片翼状態、相手守備の絶好の狙い目になった憂太、宮沢の消極的な役回り、迫井の動き・マーキングと周囲のズレ等々問題は色々あったと思うのだ。が、一番首を捻ったのは前半何分だったか、中盤で今野がボールを奪ってさあ仕掛けるぞと上がっていった場面、前の選手はそれなりに反応していたけれど、宮沢以下後方の選手がトボトボ歩いていたこと。単に「後ろの陣形を整える」というだけでは済まされない無反応ぶりだった。そうした広い意味でのフォロー意識の欠如、自分の役割の範囲や「バランス」に逃げ込むプレーぶりは他にも見られた。
守備時にボールホルダーにつっかける時の連動性の欠如を見ても思ったのだが、選手たちは自信を失っている状態なのだろうか。個々のプレーというよりもチーム全体の、「俺たちはこう戦う」というものに対する信頼みたいなものが揺らいでいるのかもしれない。おそらくそうした雰囲気に危機感を抱いたのだろう、途中迫井が前にスペースがあるのを見て猛然と持ち上がっていったが、味方が応えた動きをしてくれない。そして迫井は浮き上がり、慣れぬポジションでミスもしてますます…。うーむ。足りないのは戸田か文丈か、それとも何かをリセットすべきなのか。そんなことまで考えてしまった。
ハーフタイムの指示(喝?)が効いたのか、後半になると戦いぶりはややシャープさを取り戻したように見えた。50分には憂太に代えてダニーロ(やっぱりこの2人はかぶるね)を入れて流れを変えようとするが、54分に鹿島SBに抜かれた迫井がペナルティボックス内で倒してしまい、PK。これが決まっていればオシマイだったのだけれど、ありがたいことに鈴木隆行が外してくれ、逆に試合の流れが変わっていく。
PKの直後に迫井を外し(タッチラインをまたぐ姿を見るのが辛かった…)、小林を投入して宮沢を左の低めに置く攻撃態勢。バランスを放棄して「攻めるしかない」となったのが功を奏したのだろうし、コバが流動的に動きながら周りを使い使われる意識でプレーしたのも効いた。そして鹿島の方はもう無理をする必要がない。こうして、残り時間は東京が前がかりになって攻めたてる時間帯に。ワンツーで突破を図るコバ、熱い攻め上がりで盛り上げる今野、右足に賭ける加地。ゴール裏もこの日は後ろ向きなコールをすることもなく、東京ファン・サポーターの声援が選手たちを後押しする。
しかし、ラストパス(クロス)の精度の低さ、ダニーロをはじめ周りを見ずに「何とかしようと」するプレーの多さなどから引いた鹿島を崩すことができない。セットプレーでも段取りの悪さが目立ちはじめ、宮沢・石川・ダニーロ(3人はいらん)のキックがあっさり曽ヶ端にキャッチされたりゴールラインを割ったり…。残り15分で祐介が足を痛めて増嶋に交代。大分戦と同様ジャーンを上げてトップに張らせるスクランブル態勢。だが、やはりDFのヘディングとトップのヘディングは違うというだろう、こぼれ球が二次攻撃につながることはほとんどなく、ボールを失ってはまた取り返すのに苦労する、という繰り返し。最後は鹿島にいいように時間を使われてタイムアップ。ついに6連敗、これで16位に後退である。
選手の闘志、サポーターの気合、ファンの思い。負けたとはいえ、単に「だらしない」とは片づけられない東京の戦いぶりだった。スタンドのファン・サポーターの多く(私も)は拍手で選手たちを迎え、『You'll Never Walk Alone』の歌声は選手全員が引き上げるまで続いた。何も残らないわけではない、絶望に襲われるわけでもない試合後。ただ、だからこそ、かえって6連敗の重みがずっしりとのしかかってくる。
次節大宮戦までの間隔は、4日間とあまりにも短い。怪我人のほとんどは復帰できないだろうし、チームのコンセプトをいじったり特別なプレーを用意したり補強(FW!)をする時間はない。できるのは小さな修正。でも、やれるだけのことはやってほしいと思う。左SBの人選、宮沢と栗澤・今野の関係の整理、セットプレーのキッカーの固定…。どんなものでもいいじゃないか。現状できる限りのことをして、そしてその上で敗れたらそれこそ「仕方がない」(「VIVA東京たとえ敗れようとも…」のフレーズはそこではじめて使うものだろう)。チームに関わる人々の、(方向はどうあれ)反発力が問われているのだと思う。