プレシーズンマッチ vsユベントスF.C. 2005.6.7 味の素スタジアム

 

 

 いや〜、なんだかんだ言ってけっこう燃えたし、その反動で試合後悔しかったこと!

 

 客観的に見ればこれはいわゆる花試合であり、今回東京は「偉大なるユベントス様」の引き立て役に過ぎなかったのかもしれない。しかし、東京ファンの主観からすれば、愛するチームが未知の強豪にどう挑むか、そしてその結果がどうなるかという興味はひじょーに大きく、チームや個々の選手が披露するサッカーが通用してほしい、という熱い思いが沸いてくるものなのである。他の人はどうかよく知らないが、少なくとも僕はそうだ。

 前半の展開は痛快だった。立ち上がり動きの鈍いユベントスを尻目に東京は次々と速攻をしかけ、ゴールに迫る。CKを連取した9分、ショートコーナーから宮沢が低く鋭いクロスを入れ、オフサイドトラップを利用してDFと入れ替わった戸田が頭ですらして鮮やかにゲット。「どうだ、見たか!!」といった感じで『東京ブギウギ』ワッショイワッショイ。続いて石川の絶妙のクロスを戸田がダイレクトボレーで叩く(かろうじてGKセーブ)。スタンドに響く「セクシー、トーキョー!」のコール。

 さすがに前半中頃になると、ボールキープ力で上回るユベントスが攻勢になり、正確にパスを回しながらじわじわと押し込んでくる。しかしサイドから上がるクロスは全てジャーンがはね返し、2度飛んだ枠内シュートは塩田の好セーブでしのぐ。そしてボールを取るやすかさず宮沢が美しいロングパスで展開、右サイドでは石川が縦に中に勝負を挑む。もちろん戸田は走りどおしだ。終了間際にはカウンターからオーバーラップした茂庭(!)がクロスを入れ、DFラインのギャップにフリーで走りこんだ近藤祐介がシュートを放って、惜しくもポスト直撃。いい雰囲気のままリードして折り返すことに成功した。

 

 後半もそのままの流れで行きたいところだったが、しかし痛いミスが出る。6分、ネドベドが角度のないところから放った低いミドルシュートを塩田が弾いてしまい、きっちり詰めていたトレセゲが押し込んで同点。それでも東京は祐介に代わった馬場憂太を中心に攻撃的な姿勢をキープ。憂太は(コンディションがだいぶ戻っているのだろう)足腰の強さを見せてユーベDFの寄せに負けずボールキープするが、相手の裏へ飛び出すターゲットが戸田1人では難しい。さらに栗澤に代わって投入された小林の出来が悪く、ユーベの正確かつ緩急の効いた攻撃がピッチを支配していく。

 28分、ドリブルでペナルティボックス前まで切り込んだ憂太がDFに倒されたのに主審はファウルをとらず、ユーベの速攻に。左サイド深い位置まで持ち上がったMFカポのクロスをFWスクーリがシュート、塩田が一度後ろに弾いたボールをゴールライン上で止めたかに見えたが(実際、近い位置のスタンドで見ていた友人によれば「入っていなかった」とのこと)ゴールインの判定。1−2。単純ミスの1点目に加え、理不尽な判定で失った2点目。これで東京イレブンの集中が切れた。ユーベは前がかりになった藤田の後ろを突く形の速攻で、次々とチャンスを作る。

 30分、またもカポが左サイド突破し、クロスをデルピエーロが豪快に突き刺して3点目。さらに36分、ネドベドのミドルシュートの跳ね返りをデルピエーロがきっちりいいコースへ蹴り込み、1−4。東京側は鈴木健児、浅利、池上とフレッシュな選手を投入。ユーベのペースダウンにも助けられ、「せめて一太刀」という意気込みは見せたが、コンビネーションパスから鈴木が左サイドを突破するチャンスなどはあったものの、決定的な場面を作るまでは至らなかった。結局、そのままタイムアップ。アウェイ側に陣取ったユベンティーノ(笑)の歓声とともに試合は幕を閉じた。くそ、悔しいなあ。

 ユベントスはやっぱり強かった。ややメンバーは落としていたものの、個々の選手の身体能力と技術の高さ、組み上げられたチームプレーの正確さ、そして何といってもその2つがもたらす、90分間という長さにおいてゲームを支配し続ける力。「かなわないなあ」というのが正直な感想で、インチキな2点目(笑)をなしにすれば1−3というスコアは妥当なところかもしれない。あの統制のとれた速攻(しかも相手の弱点を的確に突く)の動きなどは、まさに「お手本」。

 とはいえ、柏戦に引き続き、東京の出来も決して悪くはなかった。つーか、やりたい放題だったリーグ開幕戦を除けば、今季最も観ていて楽しいサッカーだったのではないだろうか。特に戸田の走力や石川のスピード、前半の宮沢の展開力あたりは、普段東京を観ていない人達に対しても胸を張って披露できるものであったと思う。ユーベとの間に天と地ほどの差を感じたのは、チャンスにおける決定力と、あと繰り返しになるけど、緩急の付け方やペース配分も含めた「90分間での」ゲームメイクの能力かな。

 試合終了後、スタンドに挨拶して回る間、東京の選手たちの表情に親善試合らしいお気楽さはなかった。相手は途中まで本気ではなかったかも知れない。自分たちの力のなさを思い知らされたかもしれない。でも、ありふれた言い方になってしまうけれども、そうした悔しい経験を糧にしなければ、チームの成長なんてたかが知れたものだ。手の届かない高みを知って、諦めてしまうのでなく、そこにいつかは達してやろうという志。この試合が、リーグ戦再開に向けたチームの立て直しに、さらには先々の強豪へのステップアップにつながることを期待しよう。

 この試合で一番感激したのは、終盤、尽きぬスタミナでボールを追い続ける戸田がゴールライン際でDFビリンデッリと激しく競り合い、両者転倒した後、2人がともに親指を立てて健闘をたたえ合った場面。周知の通り、戸田は今「最もFC東京らしい」選手である。その彼が、ユベントスから見事な先制点を奪った上に、最後の最後まで頑張って(東京というチーム自体知らなかったであろう)相手からも認められたようなジェスチャーをされて……。いいよなあ。あの場面を見られただけでも味スタに行った甲斐があった。

 


2005年目次へ            全体の目次へ