J1リーグ第4節 vsジュビロ磐田 2005.4.10 味の素スタジアム
4月上旬とは思えぬ暑さと強風の中、大の苦手とする磐田相手に勝利。東京の選手たちの意気込みと、それに加えて判断力の賜物でもあった。
立ち上がり、3節時点で首位の勢いをそのまま持ち込み、東京が飛ばし気味のラッシュを見せる。前目前目から、次々とボールホルダーに寄せていく選手たち。組織的なプレスというよりも、1人1人がハンターと化す「攻撃的な」守備。そしてボールを奪うや即座に前へ蹴り込み、石川・戸田が走って走りまくる。磐田はその勢いにのまれ、パス回しもままならない。2分、左サイドから戸田のクロスがファーに抜けたところ、石川がボールを拾って強烈なシュート、能活がワンハンドではじき出す。10分にはロングボールにゴールライン際で追いついた石川がクロス、ルーカスの寸前でDFがカット。ただし、確かに押してはいたが、石川が茶野にがっちりマークされていたのと、展開パスの精度が低かったために攻撃の効率はやや悪かった。
15分くらいから、磐田も東京の速い守備に慣れたか、いなすパス回しからそれなりにつなげるようになり、ペースを握りかける。19分、福西のパスでカレン・ロバートがペナルティボックスへ進入、付いた茂庭が切り返しで転倒する大ピンチ。ここは間一髪ジャーンがカバーに入り、スライディングでシュートブロック。22分、名波のロングパスをペナルティボックス内で崔がダイレクトボレーで叩くも、ボールはゴール右上を抜けた。さらに23分、崔を経由した横方向へのパス回しから名波がクロス、ファーサイドで崔がヘディングするも枠を外れる。
ただし、磐田はACLを挟んだ疲れもあるのか、全体的には精彩を欠き、優位な流れを維持できない。再び東京の攻勢。27分、中盤で栗澤のパスカットから速攻、スルーパスで戸田がペナルティボックスへ突入するが、切り返しからのシュートはDFに阻まれる。35分、加地から左へ速いサイドチェンジが決まり、金沢からパスを受けた戸田が好クロスを上げるも、右から飛び込んだ石川はヘディングをふかしてしまう。38分には右タッチライン際を持ち上がる石川の内側を加地が勢いよくオーバーラップ、石川からの弧を描くようなスルーパスが通り、ゴールライン際で加地が入れたグラウンダーのクロスをニアに走り込んだルーカスが流し込もうとするが、ゴール寸前でDFがカット。さらにロスタイム、加地のクロスのこぼれ球がゴール正面でルーカスの足下に落ちるも、シュートはDF直撃。いつものことながら(笑)「1点ほしかったな」という展開で、0−0のままハーフタイムへ。
後半開始前、東京サポーター側ゴールを守る能活に盛大な「ヨシカツ!!」コールが浴びせられる。両手を上げて何度も応えてくれる日本代表正GK。いや〜、愛のある光景ですな。やっぱりいいぞ能活は。
後半も立ち上がりは東京ペース。2分、左CKに戸田が飛び込んでDFとヘディングで競り、足下にこぼれたボールを拾って至近距離でシュート(能活セーブ)。9分、クロスのこぼれ球を拾った今野がミドルシュートを放ち、これも能活が際どくCKへ逃げる。しかし、後半頭から崔に代わって投入された中山隊長がDFライン周辺をかき回したせいもあり、東京の押し上げは次第に弱まり、磐田がこぼれ球を拾えるようになって形勢は互角に。前を向いた磐田のパス回しからモニやジャーンがクロスをはね返す、といった場面が増えていく。また、6分には前半のプレーで負傷していた加地OUTで藤山INの交代。これで東京右サイドの圧力が弱まり、逆に磐田の左サイド村井の活躍が目立つようになった。
14分、左サイドからドリブルで切り込むルーカスがミドルシュート、能活がファー方向へ弾いたところへ石川が詰めていたが、わずかにタイミングが合わず逸機。20分、左サイドで今度はゴールライン方向へ向かうルーカスがGKとDFの間を狙うクロスを入れ、惜しくも戸田に届かず。22分には村井から絶妙のアーリークロス、CBの間に中山がフリーで飛び込むも、頭で合わせそこなって外す。25分、途中出場の梶山がタッチライン際でDFを引きつけてから巧みに裏をとるパス、石川→栗澤からフリーの戸田までボールがつながるが、しかしクロスはあさっての方向へ。
このあたりで試合開始から吹いていた風はいよいよ強まり、東京側ゴール裏の看板があおられて転倒、スタンドがどよめく。そうした風にあおられたわけでもないだろうが、能活がフィードキックをミスしてタッチの外に出してしまい、東京ゴール裏から「ありがとヨシカツ!」コールが飛ぶ(笑)。
29分、田中のアーリークロスが上がった場面、左から中央へ走り込んでいた村井が藤山にあたま一つ競り勝って(これは仕方なし(笑))ヘディングシュート、やや前に出ていた土肥の頭を越してヒヤリ(結局バーを越えた)。32分、右CKからファーに抜けたボールを梶山が拾い、ゴールライン付近へ持ち上がってからマイナスのクロスでルーカスを狙うが、DFにカットされる。どちらもそれなりにチャンスを作りながら決定機というまでには至らず、決着への確信は持てない展開。淡々と時間は流れ、引き分け、あるいはうっちゃられ負けへの危機感が強まっていく。33分、東京は気合が空回り気味だった石川を下げて近藤祐介を投入し、2トップの布陣で決勝点を奪いに出る。しかし35分前後には押し込まれ、波状攻撃を浴びてしまう。ゴール前での混戦から放たれた田中のシュートは土肥ちゃんが横っ跳びで弾き出し、さらに河村のアーリークロスに中山・西の2人が飛び込むも危うく戸田がクリア。もしここでやられていたら、それこそ東京サポーターの失望は大きかったに違いない。私の頭にも一瞬「またかよ…」と嫌な考えがよぎった。ところが、である。
ピンチの後にはチャンスあり。40分、相手陣左サイド、戸田がボールホルダーのDFにプレッシャーをかけ、小さくなったクリアを栗澤が拾う。栗澤はDFを避けるように中央へドリブル、ペナルティボックス手前で待ち構える梶山へパス。その瞬間、もの凄い勢いで今野が追い越して行き、梶山から素晴らしいタイミングのスルーパス。あっという間にスペースへ抜けた今野は左足でグラウンダーのクロスを入れ、速いパス回しについていけない磐田DFの足が止まったところで、ゴール正面の栗澤にボールが渡る。そしてその前には、信じられないくらいシュートコースが開けていた…。栗澤が落ち着いて左足を振り抜くと、素早い反応で跳んだ能活も届かず、ボールはゴールネットに突き刺さっていた。場内歓喜の爆発。栗澤を囲んで固く抱き合う選手たち。土壇場での先制点であった。残り時間、どんどんロングボールを放り込んでくる磐田の攻めに対して、余裕というわけにもいかなかったが、粘り強く守り抜く東京。タイムアップ。磐田戦、実に5年ぶりの勝利である。
この試合で最も印象的だったのは、やはり前半の初め頃、ガンガン前へと詰めた、明日をも知れぬ攻撃的守備。思えば3年前の磐田スタジアムでは、ああいう前へ出る守備がことごとく裏をとられて1−6と大敗したのであった。あれに懲りてスタイルを変えたりすることもなく、ヒロミと共に毎年イケイケでやってきて、こういう形で同じ相手に勝つことができたのにはやはりそれなりの感慨がある。ジュビロに昔のような強さがなくなったのも確かだが、おそらくはあの頃より強くなっているのだろう、私たちも。
ただし、この試合の「内容」が素晴らしかったかというと、微妙なところではある。決勝点と前半終了間際の加地のオーバーラップを除けばコンビネーションで崩すシーンは少なかったし、序盤心配なくらい飛ばして案の定息切れしたし、石川あたりは気合が空回りしてしまっていた。磐田の出来の悪さに助けられたのも事実だろう。しかし、暑さと強風の中最後まで選手たちが粘り強く頑張って戦ってくれたのもまた確かである。相手が相手だけに、とにかく「結果」が大事であったのだとも思う。満足のいくゲームだった。
それにしても決勝点の場面、よくぞあれほど栗澤の前が開いていたものだ。今野の追い越しの判断(梶山のキープ力とパスセンスを計算)、そして栗澤のポジショニングの判断(さりげなくDFの死角に入っていった)。栗澤のインサイドキックのシュートもそうだが、冷静な判断力が最後にものをいったということか。東京が前回2000年の勝利や2001年雨の国立での死闘、あるいは2002年の大敗時より強くなっているとすれば、もしかしたらそういう部分なのかもしれない。今野はジャーンとともに完封にも大貢献したわけだし、栗澤と同じように賞賛されてしかるべきだろう。
まあ、この後も厳しい連戦が待ち構えているので、この1勝だけで浮かれるわけにもいかない。首位といってもまだたった4試合だし、フィニッシャー不足は相変わらずそのままだ。しかし、とりあえずは良かった。ホッとした。去年駄目駄目のジュビロを倒し損ねて、もし今年も引き分けてしまっていたら、「またか…」と非常に落ち込んだに違いないから。次はアウェイの名古屋戦。これもまた、勝てそうでなかなか勝てない相手と場所。たてつづけに壁を破れるだろうか?