ナビスコカップ第3節 vsジェフユナイテッド千葉 2005.5.21 味の素スタジアム

 

 

 唾棄すべき最低の前半、そして最近見慣れた「猛攻を仕掛けるも、あと一歩及ばず」の後半。内容、あるいは過程の評価はともかく、結果が出ないというのは本当に苦しく焦れったいことだ。

 午後の強い陽射しが差し込む中でキックオフ。体感気温の高さも考慮したか、両チームともに慎重な立ち上がり。千葉は阿部がCBに入る4ー4−2の布陣。DFラインでゆっくりとパスを回し、東京の守備の出方を見てから縦のボールを入れる。「走れ走れ」のイメージとは異なるサッカーであったが、空いたスペースに随時選手が入っていく動きや、流れに応じてSBのどちらかが敵陣深くまで上がっていくダイナミズムに「らしさ」があった。対する東京は自陣で人数をかけて守備ラインを構築、無理に前からはボールを奪いに行かない「らしからぬ」戦いぶり。これがあまり機能せず。攻撃に移った時にパスコース作る動きが不足しており、速攻の形を作ることができない。睨み合いの中、ジェフは左サイドへのフィード→突破→クロス、という場面が何度か。

 20分、ポストに入ったFW林が横にはたいたボール、2列目から追い越すMFポペスクが受けてDFラインのギャップに飛び込み、左足を思い切り振り抜く。塩田のジャンプも届かず、きれいなストレートボールがゴール上部に突き刺さってジェフ先制。あっけない、というか、あまりにきれいに取られたせいか、得点後の場内は(ジェフ側を除いて)妙に静かだった。しかし、これで東京側の姿勢もやや攻撃的になり、堰を切ったように両チームが攻めあう時間帯に。21分、小林が独特のフラつくようなドリブルでペナルティボックス前まで持ち上がってシュート(DFブロック)。25分、右に流れたMF羽生のゆる〜いグラウンダークロスに東京DF誰も反応せず、MF佐藤がラストパスを狙うピンチにスタンドがどよめく。27分、ダニーロから石川へ好展開のパス、持ち上がった石川がクロスを入れるもGKキャッチ。

 30分くらいからジェフはボールを落ち着かせることに成功し、再びペースを握る。31分、東京陣中央のFK、阿部の意表突く「柔らかく低い」ボールがゴール前のポペスクに通りかけるが、今野と金沢が詰めて防ぐ。33分、MF水野の突進のこぼれ球がペナルティボックス内でフリーのポペスクに渡り、シュートを栗澤が懸命にブロック。広く着実なパス回し、お互いが動きながら補ってバランス保つ千葉に対し、ボールホルダーへのフォローなく個人の突破力頼みの東京。42分、ファーに抜けたクロスを東京DF誰も追わず、またもスタンドは嫌などよめき。44分には延々と続いたパス回しから突如ペースアップ、縦に走る佐藤へきれいなパスが通り、シュート(塩田キャッチ)。わずか1点差ではあったが、完全にジェフのパス練習状態、「遊ばれている」という印象で前半が終了した。スタンドからはブーイング。

 

 後半、東京はダニーロを外して戸田を投入、2トップに。この交代は効いた。戸田は最前線でボールを引き出す動きを繰り返し、それがチームの攻撃全体を引っ張る形に。1分、祐介のシュートがDFに当たってそれ、こぼれ球を拾った石川がシュート、わずかにバーの上。ジェフももちろん黙ってはおらず、広くなった東京両サイドのスペースに展開してチャンスメーク。4分、縦のフィードをゴールライン寸前で拾ったMF坂本がクロス、ファーでFW巻が折り返し、フリーの佐藤がダイビングヘッド!…完全にやられたかと思いきや、シュートはバーを越えて命拾い。8分、林のスルーパスを受けてペナルティボックスへ突入した佐藤が巧みなボディバランスでジャーンを外し、シュート(ポストの右を抜ける)。10分には石川がペナルティボックス角から突っかけて横パスを入れ、走り込む栗澤がDFのタックルを受けながらキープし、前に出るGK櫛野の頭越しにクロス。戸田がGK不在のゴールを狙ったが、ヘディングをふかしてしまった。

 10分、小林に代えて文丈投入。これで東京のスイッチが完全にONに。日が陰って涼しくなったのも幸いしたか、前目からチェイスしてジェフにボールキープを許さず、今野や藤田もどんどん上がって押し込んでいく。石川も右に固定せず、相手の弱いところを突く攻撃ができるように。13分、藤田の低いクロスがDFとGKの間に跳び、走り込んだ石川が櫛野と交錯しながら足で合わせるも、わずか右に外れる。20分、藤田が敵陣深くで羽生に走り勝ってクロス、戸田が前へ出る櫛野の前でキープしてフリーの祐介にマイナスのパス。最低でも枠に飛ばさなければという場面だったが、シュートは枠を超えた。

 ジェフは中島、要田とフレッシュな選手を入れて立て直しを図る。25分、佐藤からペナルティボックス内の巻へパスが通り、要田を経由して走り込む佐藤へつながるが、シュートは左に外れた。その直後、ポストに入った戸田から右オーバーラップする藤田へ展開、思いきったシュートを放つも枠をとらえられず。28分、スルーパスがゴール前へ向かう要田に通るが、茂庭が素早く寄せて難を逃れる。この場面で茂庭が頭を打ってしばらく動けず、ちょっとヒヤリ。31分には左サイドの混戦からボールをさらった今野が弾丸のように縦に抜け、ペナルティボックス内でフリーになっていた祐介にラストパス。「よし、決めろ!」と思ったところで慎重になったのか、タックルに入るDFをかわしてからシュートを撃とうとする祐介。これで時間がかかりすぎ、戻った別のDFにクリアされてしまった。ゴール裏からはもちろん「シュート撃て!」コール。直後のCKでの今野がヘディングシュートもバーを越えた。

 36分、祐介に代えて憂太。今季不調の憂太もこの日は体が軽そうで、動き回ってチャンスを窺う。38分、憂太から藤田へサイドチェンジが決まり、クロス。ファーに抜けたボールを今野が頭で叩くがDFにブロックされ、こぼれ球をさらに憂太が拾ってクロスを上げるも詰めるアタッカーの数が足りず。42分には右CKからまたも今野がヘディングシュート、叩きつけられたボールのバウンドが大きすぎバーの上。珍しく顔を覆って倒れてしまう今野。うーむ。良い形を作りまくって圧倒しているのに、(いつも通りと言えばそうだが)どうしても枠に飛ばない…。ロスタイム、今野からのスルーパスは戸田が後ろ方向にトラップしてしまいシュートできず。最後はジャーンを最前線に上げて藤田が繰り返しクロスを放り込むが、ここは櫛野が確実なキャッチとパンチを見せ、ミスなく耐えきることに成功した。

 結局、0−1のまま試合終了。後半の優勢ぶりから、せめて引き分けには持ち込めると思ったのだが…。

 以下、感想をいくつか。

 前半の戦い方。今まで多少のアジャストはありつつも「自分の良さを出す」サッカーを志向してきただけに、あの消極的とも言える戦い方は「らしくない」ように見えた。まあ、後半にFWのシュートが2〜3本でも枠に飛んでいれば、策が当たって万々歳だったのかもしれないが。たまたま暑い中での選択なのか、試行錯誤の表れか、それとも原監督にも迷い・焦りが出てきたということなのだろうか。結果が出てないだけに、どうも自分を見失いつつあるのではないかと心配してしまう。

 文丈が入るとチームが締まって攻撃スイッチが入ること。逆に言えば、チームとして重要な部分を彼1人に依存し過ぎているのかもしれない。判断力、周りを見る力、全体を動かそうという意志、それらと同居する冷静な思考。いくら若いチームだとはいっても、そろそろ後継者が出るなり、あるいは彼不在でも大差ないパフォーマンスが出来るようにならなくては。

 2度目の先発だった藤田。彼のクロスは「外れ」がないし、DFに当てない巧さも持っている。少なくとも攻撃だけに関しては、加地と同等かそれ以上の期待を持てる選手だ。

 今野。ボール奪取してからシームレスに攻撃に移る彼のプレーは、もはやチーム最大の武器の1つである。攻守の切り替えが早い、というよりボールを奪う前から攻撃態勢に入っている感じ。「堅守速攻」という忘れかけつつある言葉を思い出させてくれる突進には胸が熱くなる。ヘディングシュート、決めさせてやりたかった。

 ダニーロと憂太。この2人、シーズン前は「タイプがかぶるのでは」と思っていたが、今のところプレーぶりは対照的。中央に構えてボールを待ち、独力一発のプレーで何とかしようとするダニに対し、自分で突破する力はないが、周りとボールをどんどん動かして攻撃を加速させる憂太。どちらかと言えば後者の方が東京のサッカーに相応しいと僕は思う。今日に関して言えば、チーム全体の出来が前半と後半で全然違ったのでダニーロには気の毒な面もあったけど。

 2トップ。ここのところ攻撃態勢に入るとFW2枚にすることが多いようだが、そうなるとなおのことFWの駒不足が感じられてしまう。ルーカスも怪我してしまったわけだし。この試合みたいに、いくらチャンスを作ってもシュートを枠に飛ばせるアタッカーがいなければそもそも勝負にならんのである。

 


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