J1リーグ第13節 vsセレッソ大阪 2005.7.2 味の素スタジアム

 

 

 6月までの悪い流れを断ち切りたい中断明け初戦だったが、出来の悪いセレッソ相手に痛い引き分け。



 前半は一貫して東京が押し気味に試合を進める。立ち上がり、いきなり祐介が巧みなターンでDFラインの裏に抜け、GKの前にグラウンダーを通し、滑り込んだ戸田が惜しくも届かず。東京の攻撃パターンはわかりやすく、ボールを奪ったら即座に2トップか右サイドの石川を狙う。SBの上がりは少なく、後ろ目からの縦パスが多い。よく言えばシンプルな、悪く言えば中盤に味のないサッカー。ルーカスを投入するまでは慎重に、ということだったのだろうか。12分にはDFの裏へ走り込む戸田へ金沢から絶好の縦パスが通りかけたが、ダイレクトで打とうとして残念の空振り。

 一方のセレッソは、こちらも全体的に引き気味なんだが、攻撃の意図がよく見えない。西澤ら前の選手に当てて後方からMFが追い越すサッカーを指向しているらしいのだが、フォロワーの連動する動きが鈍く、パスの精度も低い。東京は容易にパスカットして攻撃に転ずることができた。守備の方も、ブロックを作って囲い込む意識はあるようだが肝心の寄せに鋭さを欠くため、こちらは左右どちらかの空きスペースを突きさえすればいい形を作ることができる。「全然怖くない。さすがにこの相手には勝たないと…」というのが正直な感想だった。4分に西澤が粘って森島がペナルティボックスへ突入した場面も、きっちり茂庭がカット。

 19分、石川がペナルティボックス外から鋭いミドルシュート、GK吉田が一旦弾いたボールに祐介が飛び込むが、間一髪セーブ。21分にも左サイド持ち上がる祐介から栗澤経由で右スペースの石川につなぎ、シュート(吉田キャッチ)。33分、左サイドのスペースに飛び出した戸田がクロス、セカンドボールを栗澤がシュートするもGK正面。40分にはセレッソ陣でのFK、石川の蹴ったゴールへ向かうボールがDFに当たってゴールインかと思えたが、これはサイドネット。44分、右サイドから切れ込んだ祐介が左足で強シュート、吉田が横っ飛びできわどく触って枠外へ。どうにも攻めきれない。逆にロスタイム、MFゼ・カルロスが左サイド突破してクロス、CBの間でフリーになっていた森島がヘディングシュートする大ピンチとなったが、ボールはバーの上へ。助かった。

 結局、両者無得点のまま前半終了。東京のサッカーがいいと言うよりも、セレッソの元気のなさが東京の優勢をもたらした印象だったが、そこでもらったチャンスを生かせないのが何とも…。湿度の高さにもやった視界も加わり、やや息苦しい雰囲気。ゴール裏からは「シュート撃て!」のコールが飛んでいたけれども、けっこう数を撃ってはいたんだよな。決まらないだけで。



 後半も同様の流れ。東京優位のままちょっと雑な攻防が続く。7分、後方からのボールを戸田がダイレクト(ヒールだったか?)で左サイドに流し、フリーになっていた祐介がペナルティボックスへ突入するも、切り返しに時間がかかってシュートはブロックされる。この辺でゴール裏からルーカスコールがわき起こる。そして東京ベンチがルーカス投入を準備したその時、やっと先制点が生まれた。8分、石川のゴールライン際からのクロスがはね返されたところをまた拾ってつないだ場面。DFの間でフリーになっていた戸田めがけて加地が低く鋭いクロスを入れ、戸田がダイビングヘッド!ボールはゴール左隅に吸い込まれた。さすがは戸田、滅多に決まらないが(笑)決まった時には掛け値なしに美しく、すんばらしい。

 もちろんこの得点は、チームを盛り上げることになった。そして東京は予定通り(?)に祐介OUT、ルーカスIN。足下にボールを収めてくれるアタッカーが入ったことでパスの回りは目に見えてよくなり、イケイケの攻勢に。9分、右サイドから石川が意表を突くロングシュート、ボールは弧を描いて吉田の頭を越したが、惜しくもバーに当たってはね返る。しかしそのセカンドボールをまたつなぎ、ペナルティボックス外から今度は加地がグラウンダーのシュート、これを吉田は前に弾いてしまい、反応良く詰めていたルーカスが押し込んでゲット。2−0。ワッショイワッショイ!15分にも、今野のスルーパスで抜けた戸田が追いすがるDFをステップで振り切りながら強烈なシュート、惜しくもポスト左に外れた。

 後半の中頃になると、東京の方は一休みといった感じで落ち着き、一方セレッソは苔口・徳重・黒部を投入して攻撃態勢へ。しかしパスはブレブレ陣形はバラバラで、攻め込むに攻め込めないといった様子。この時間帯、「東京の方も腰砕けになってきたが、しかしいくら何でもこの相手ならば逃げ切れるだろう」とタカをくくってしまった私を誰が責められようか(笑)。ま、後から聞くと、この頃から既に嫌な予感を感じていた人はけっこういたらしいのだが。

 27分、文丈OUT浅利IN。東京は逃げ切り態勢へ。だが、結果的には、この交代が裏目に出ることに。28分、東京陣中央のFK、クロスに飛び込もうとしたファビーニョを浅利が後ろから倒してしまいペナルティ。ゼ・カルロスが遅いシュートで土肥の逆をとってゴール。2−1。この後も浅利は自陣で走り回って奮闘するが、周りとの連携がイマイチだったのと、彼が入ったことでチーム全体がズルズル下がってしまい、セレッソの攻勢を招くことになった。37分、ぽっかり空いた中盤スペースにこぼれたボールを拾われ、ペナルティボックス内に突入した西澤が切り返しでDF2人を振り切るが、シュートはあさっての方向へ。

 39分、東京は栗澤に代えて梶山投入。どちらかと言えば石川か加地を外してキープに転じるべきだと思えたが、栗澤は足が痙攣しており、やむを得ない交代だったらしい。43分、ゼ・カルロスの強烈なロングシュートが東京ゴールを襲い、土肥ちゃんが正面に弾きとばしたボールを徳重がダイレクトボレーで狙うも、これも枠外。そして「やれやれ、相手に助けられて何とか逃げれるか…」と思えたロスタイム、東京陣で今野が苔口を倒してFK。ここに至ってさすがに私の頭にも悪い予感が(笑)。案の定、ゼ・ロベルトが蹴ったボールは信じがたいほど見事な弾道でゴール右隅に突き刺さった。またかよ…。選手たちも思わずフリーズ(真っ先にボールをセンターサークルに運んだルーカスは偉い)。残されたわずかな時間で東京はFKを得るが、これはルーカスが壁にぶち当ててしまいタイムアップ。バックスタンドのお客さんの帰るスピードの速いこと速いこと。スペイン並に速かったぞ(笑)。

 

 この日は中断明けということで、中断前に比べてどうチームがリファインされたかという点に注目が集まっていたと思うのだが、実際のところ何も変わっていなかったように思えた。怪我人もほぼ戻ってきているのに。前半の中盤省略サッカーは、2トップの特性を考えてのものなのだろうし、例えば祐介にポスト役を期待するよりはずっと賢いとは思うのだが、ちょっとワールドユースでのU20代表を想起してしまう泥臭さであった。戸田と石川が好調だから何とかチャンスは作れているものの、東京の抱えている中盤のタレントを生かしているとは言い難く、あくまでルーカス復帰までの期間限定戦法にすべきだ(原さんも本意ではないのだろうし)。つーか、芸のない「シンプル」さ一本やりはないだろう、今更。後半の試合運びについては…浅利は損な役回りになってしまったというか…何かが欠けているんだろうな、やっぱり。少なくとも「セットプレーでやられたので悲観しません」なんて趣旨のコメントしてる場合じゃないぞ、石川と茂庭。文丈が90分出場できれば少しはマシになるのかもしれんけど、でもいい加減特定のベテランに頼っているばかりでもいかんよな。

 あと、梶山の使い方について。彼は今の東京においてルーカス・石川と並ぶビッグプレーメーカーで、先発にしろ途中出場にしろ、とりあえず使えば何かしらやらかしてくれそうな雰囲気を持っている。ただ、全くと言っていいほど計算が立たない選手でもある。計算という点からすれば、憂太や宮沢の方が(やや不安定な面もあるとはいえ)上だと思う。だから、ベンチに5人しか入れないJリーグルールの下で、しかもこの日のように「一番計算できる」栗澤が足を痛めてしまった状況では仕方がないとはいえ、試合を畳んで逃げ切りたい時に入れるのはちょっと厳しいのかもしれない。スケールのでかい選手はスケールのでかいプレーのできる状況で使いたい。7月は中3日で試合が続くことを考えれば、この試合で無理にベンチ入りさせる必要もなかったのでは?

 試合後、「またか」という素朴な感想とともに、何だか変にあきらめてしまっている自分を自覚した。もしかしたらあの異様な速さで引き上げるバックスタンドのお客さんたちも同じ思いなのかもしれない。これはヤバい状況だ…。うーむ。

 


2005年目次へ            全体の目次へ