プレシーズンマッチ vsバイエルン・ミュンヘン 2005.7.28 味の素スタジアム
夜、ガラガラの味の素スタジアムで行われた親善試合。華やかな海外スターチームの来日ももはや珍しくなく、いささか食傷気味とさえ言える昨今、それでもやはり愛するチームが世界的な強豪と戦うとなれば駆けつけずにはおれない…のだが、さすがにこの試合はちょっと……。
この日の東京は、怪我人と代表招集により、スタメンのうち前の試合でも先発していたのは石川のみ。控え主体、どころではなく、J1での戦いとは全く異なるメンバーで構成されていた。個々の選手はもちろんそれぞれ異なる魅力を持っているものの、急造性とバランスの悪さを考えれば”東京B”とでも呼びたいチーム。試合前に抱いた印象として、バイエルンの練習風景を見て「体、でかっ!」、一方東京に目を向ければ「うわ、小さ!!」。DFラインは藤田に藤山に増嶋に尾亦だもんな。そりゃあ細くて小さいわ。
そんな”東京B”も前半途中までは、急造チームだけに粗さは否めないものの、よくプレッシャーをかけて頑張っていたと思う。シンプルながらいい形があり、ボールもまあまあ動いていた。石川・規郎のスピード、憂太の軽快さ、宮沢からの展開。ところが、19分に藤山の不注意なパスがカットされ、マカーイのシュートがあっけなくゴールに突き刺さった。0−1。このミスが試合の帰趨を決したと言っても過言ではないだろう。あまりのショボい失点に、スタンドの熱気が萎えていくのがありありと感じられた。
続いて29分、ルシオのヘディングシュートで0−2。案の定というか、「高さの欠如」という弱点を思い切り突かれた、またもあっけない失点。うーむ。沈黙。そこからは完全なバイエルンペース。慌てずパスを回し続け、東京の選手たちはバラバラにボールホルダーにアタックしてはいなされる、という繰り返し。悪い流れの時の東京らしい、自分たちばっかりが走っているサッカー。暑さの中、憂太や石川・規郎がみるみる疲弊していく。ボールを奪ってもスペースはすぐに消され、ササにも全然いいボールが入らない。藤田はロングボールをかぶってばかり。反撃の糸口もつかめず前半終了。
後半、梶山が入って中盤でタメられるようになったのと、バイエルンがペース(とメンバー)を落としてきたことにより、東京がやや攻勢に出る。でも、八分くらいの力でやっていたとは思うのだけれど、バイエルンのDFしっかりしてたわ。ポジショニングにムラや穴がないので、単純にサイドを突破して懸命のクロス(たいがいはニア狙い)を上げても簡単にはね返されるし、憂太の前にササしかおらず、追い越す選手もいない状況では中央突破も難しい。「崩す」という場面はほとんどなし。正直「こりゃ梶山の一発くらいしかないかな」と思ったのだけれど、頼みのフアン・アクーニャ砲も炸裂せず。
15分に宮沢・尾亦に代えて栗澤・文丈投入。で、規郎が左SBに。これ、原さん、攻撃を強化したつもりだったのかな(尾亦を下げることを優先したのか)?しかし石川が後方の支援も得られぬまま消え始めていた状況で、規郎を敵陣から遠い位置に置いてしまったため、ますますチャンスは遠のいたように思う。一度、規郎の弾丸シュートがバーを超えてスタンドがどよめいたけれども、ああいうシーンをもっと作りたかったな。梶山でも規郎でもいいから、バイエルンの連中の度肝を一度は抜いてやりたかった。
そうこうしているうちに28分、自陣ゴール前で規郎がクリアをもたついたところかっさらわれ、ゲレロのシュートがゴールネットを揺らす。0−3。あーあ、という感じである。規郎は決してDFじゃないからな…。そして、もう帰りたいな、と思い始めたその直後、サリハミジッチが独走して4点目。正直なところ、このゴールは記憶にございません(笑)。終盤にはササ(反転シュート1本しか見せ場がなかった)に代わった祐介が足腰の強さを生かしたドリブル突破を見せるが、憂太は完全にスタミナ切れしていたし石川に代わったコバは周りと全然かみ合ってないしで、決定機にまでは至らない。0−4のまま試合終了。
バイエルン、当たり前だけれども(何しろドイツチャンピオンだから)強かった。奇をてらうプレーは皆無、華のあるプレーも少ないが、パスの精度と速さ・ボール処理の正確さ・忠実なポジショニング・実直なディフェンスは相当にレベルが高い。向こうは普通に守備して普通に攻撃しているのだろうけども、強さ・速さ・上手さが少しずつ上回っているために、こちらもマイペースでやっていたらいつの間にか崩され、あるいは押し込まれてしまう。で、いきんで前に出て行ったらいなされて…。レアル・マドリーに完敗した時よりも先月ユベントスに負けた時の完食に近い。もっとも、ユーベ戦ではこちらにもしっかり見せ場があったのだが…。
今まで何年か東京を見てきて、駄目な試合や悔しい試合は多々あれど、それらは次の大きな勝利と喜びにつながるものだと思えるものだった。でも、今日の試合は、ちょっと、ね。どうせ「花試合」だからあまり深刻になることはないのかもしらんが、「この試合、やらない方が良かったのでは…」などと思うのも極めて珍しい(もしかしたら初めてかも)し、ある意味「よかれと思って実行した事が裏目に出てしまう」今年のFC東京の悪循環がまた出たという事なのかもしれない。いやー、しかし観ていて辛い試合だった。頑張っている選手が可哀想になったよ。
試合後は、どっと疲れが出て、バスの中で爆睡。楽しみにしていた”ゴリラ大将軍”オリヴァー・カーン大先生はベンチにも入ってなかったしさ。ちっくしょー。