J1リーグ第29節 vsガンバ大阪 2005.10.30 味の素スタジアム

 

 

 これが昇り調子のチームというものか。難敵(のはずだった)強力攻撃陣を封じ込め、首位ガンバ相手に快勝である。

 

 序盤は両チームとも中盤でゆっくりとつなげず、DFラインやサイドから長めのパスを多用。東京は戸田やルーカスがボールを引き出し、ガンバはFW吉原を走らせ、スピーディーな攻め合いとなった。いきなり2分、ガンバの右CK。遠藤のクロスに対してシジクレイが突進し、巨体の勢いをそのまま頭からぶつけて行く。次の瞬間、ボールはゴールネットに突き刺さっていた。まだ落ち着かない時間帯の、あっけない失点。立ち上がりのセットプレーは特に注意すべきところなのだが…ちょっと出鼻をくじかれた感じ。4分には右サイドでパスを受けたルーカスがゴールライン際からグラウンダーのクロスを入れるが、これはアタッカーに合わず。

 しかし、10分を過ぎる頃から、東京の優位が明らかになっていく。東京は今野・梶山・憂太の的確なマーキングに両SBの押し上げも加わり、中盤を制圧。奪ったボールを次々前へ供給していく。一方ガンバは、先制したので無理を避ける意図もあったかもしれないが、DFラインから思うようにボールを進められず、頼みの外国人アタッカーコンビになかなかボールが入らない。13分、右CKからジャーンのヘディングシュートがゴール右上を抜けていく。16分、右サイドで後方からのパスを受けたルーカスがターンでDFをかわし、ゴール前へ鋭いグラウンダーのクロス、戸田がDFを背負いながらシュートを狙うがブロックされた。その直後のMF松下からのクロスは、吉原の寸前で土肥ちゃんがキャッチ。

 この日の東京はとにかくよくシュートを撃った。遠くからでも全くおかまいなし。18分、憂太のスルーパスで抜けたルーカスがクロス、戸田が反転シュートを狙うがまたDF直撃。19分、ペナルティボックス前で浮き球を交えながらテンポ良くつなぎ、憂太のミドルシュート(GK藤ヶ谷キャッチ)。ゴールこそ割れないが、テンポと雰囲気は悪くない。そんな中、23分、戸田が足を痛めてOUT、鈴木規郎IN。この日の戸田は得意の左サイドでの起用が良かったのか、よくボールを引き出していただけにちょっと残念な交代であった。24分、ガンバが逆襲からペナルティボックスすぐ外でFKを獲得。遠藤のニアサイドへ落ちるキックに實好が飛び込んで合わせるが、ゴールわずか左に外れて冷や汗。28分にはクロスの処理にガンバDFがもたついたところを憂太が拾ってシュート、DFブロック。

 よく攻めていた東京だが、30分を過ぎたあたりからアタッカーの動きが落ちていき、試合は膠着気味に。こうなるとリードしているガンバにゆとりが、東京側には焦りが生まれてくる。ガンバのパスがつながり始め、茂庭やジャーンの奮闘により決定機には至らないものの、東京陣でのFK・CKが連続。37分、右サイドから切れ込む遠藤がチェックに入る憂太をかわして強烈なミドルシュート、土肥倒れながら弾き出す。危ない場面だった。ところが、ガンバペースになってきたこの時間帯に同点ゴールが生まれるのだから、サッカーはわからない。44分、金沢がチャージを受けながら持ち上がり、梶山が一瞬タメてからペナルティボックス外の憂太へはたく。ドリブルでDFをずらしてから、右足を強引に振り抜く憂太。ボールはもの凄いスピードでゴール右隅へ飛び、藤ヶ谷の横っ飛びも届かず、ポストに当たってゴールへ吸い込まれていった。いや、驚いた!!あの小さい体からは想像もできないパワー。まさにスーパーシュートであった。最高の形で前半終了。

 一本のシュートが試合の流れを変えた。後半が始まると完全に東京ペース。ガンバは大黒と二川の投入にも関わらず、受けに回ってしまう。1分、金沢の縦パスから規郎が左サイドを突破、クロスにルーカスがどんピシャのタイミングで飛び込むが、ヘディングはDFに当たってしまいノーゴール。さらにこぼれ球を拾った梶山がシュートを放つも藤ヶ谷キャッチ。3分にも規郎のクロスに憂太がボレーで合わせたが、これもDFに当たってしまう。東京は前半終了時の勢いそのままに前進。憂太が至る所に顔を出して攻撃をコーディネートし、梶山・今野も再び前がかりに。さらに規郎が3バックの脇に空いたスペースを突きまくる。8分、梶山から左サイドのルーカスへ速いフィードが通り、オーバーラップした金沢のクロスのこぼれ球を中へ入ったルーカスがシュート、またまたDFに当たってポスト右へ外れる。9分にはフェルナンジーニョのクロスにアラウジーニョが競りかけ、こぼれ球を橋本がボレーで狙うがふかしてしまう。

 東京の攻勢は続く。12分、押し込んでの波状攻撃。今野が思い切りよく左サイドを突破しクロス、こぼれ球をまた今野が拾ってゴールライン際からマイナスのグラウンダーを入れ、ゴール前フリーのルーカスへ。決定的としか言いようのない形だったが、シュートはシジクレイが身を挺して防ぐ。この日のルーカスは、魅入られたように外し続け、うちのカミさん曰く「シュートをDFに当てる病にかかっているようだ」。ま、それはさておき、東京のチャンスの連続にスタンド(3万4千の大観衆)は大いに沸いた。ゴール裏からはバリエーション豊かな応援歌が響きわたり、バックやメインの観衆も手拍子や歓声で盛り上げる。青息吐息のガンバ。

 だが、アウェイとはいえ勝っておきたいガンバは、リスク覚悟ということか、両サイドの位置取りを強引に上げ、試合は攻め合いの様相を呈していく。18分、中央持ち上がる今野から右サイドを上がるルーカスへラストパス、速く低いミドルシュートがゴールのわずか右を抜けていった。20分、ペナルティボックス左でジャーンがボール処理に手間取り、さらった橋本がゴール前待ち構える大黒へ決定的なラストパス。しかし、幸いシュートはミートせず、土肥が倒れ込んでキャッチ。これはラッキーだったか。24分には東京の逆襲、ルーカスがドリブルで持ち上がり、DFをフェイントで揺さぶってシュート、藤ヶ谷足で弾き出す。ルーカス、チャンスメーク役としては充分なのだが…。

 ようやく決勝点が生まれたのは26分。ハーフウェー付近のFK、金沢のアーリークロスをペナルティボックス内でジャーンが落とす。規郎の躍り込むようなヘディングシュートは藤ヶ谷に弾かれたものの、DFが処理に戸惑ったところでこぼれ球を今野が拾い、DF2人の間に足を差し入れるようにして押し込んだ。ボールは藤ヶ谷の脇を抜けてゴールイン!!バックスタンドへ向けて走りながら、(胸でのトラップがちょっとハンドくさかったので?)主審の方をチラリと振り返る今野。チームメイトに囲まれ祝福を受ける今野。両手で二本指を立て、奇妙な踊りをする今野。変なヤツ(笑)。ともかく、よくぞねじ込んでくれたものである。決してきれいな形ではないが貢献度は最高に高い、「いかにも今野らしい」と納得させられるゴールであった。

 残り15分くらいからは、ともに序盤から飛ばした疲れが出たか、動きがガタッと落ちて中盤の圧力がほとんどない状態に。ただし、東京側は憂太が的確にさばいて攻撃の形を作るのに対し、ガンバ側は雑なパス回しが目立つ。たまに漏れてくるアタッカーやパスは、そのほとんどが茂庭の高速守備に断ち切られた。29分、規郎がタッチライン際でDF3人に追いつめられながら粘って抜け、場内大いにどよめく(ただしクロスはあさっての方向(笑))。37分、憂太のラストパスでルーカスがDFライン裏へ抜けるも、シュートはまたまた藤ヶ谷に当ててしまった。39分には二川の浮き球に反応した大黒が鋭い反転から茂庭と併走してペナルティボックスへ突入、しかしシュートはふかしてしまう。42分、規郎が左サイドドリブルで抜けるが、もはや憂太もルーカスも上がる余力はなく、しかし相手DFも走れず、規郎がそのままえぐって至近からシュートを放つも藤ヶ谷の正面。

 東京は阿部に代えて栗澤を投入、逃げ切り態勢へ。栗澤はルーカスのキープ力を生かしながらうまく時間を稼ぎ、クレバーなプレーぶり。ロスタイムに入っても東京の守備は崩れず。ガンバが前線にボールを入れるべく回すが入れるタイミングを見つけられず、仕方なく最終ラインまで戻すシーンまであった。これなら集中力を切らさなければ大丈夫。なにしろ東京には、リーグ屈指のCBと守備的MFがいるのである。結局、終盤はガンバにチャンスらしいチャンスも与えないまま試合終了。FC東京、首位チーム相手に逆転勝利。タイムアップからスタンドへの挨拶、今野のヒーローインタビューに至るまで、サポーターも選手も、今季で最もいい雰囲気だったかもしれない。

 やはり、このチームは大宮戦以後変わったのだ、と思わずにはいられない。○△○○という成績以上に、(相手の調子もイマイチだったとはいえ)中盤でしっかり戦って勝てているのが非常に嬉しい。もちろん守備陣も相変わらずの健闘ぶり。運動量、創造性、そして戦う気持ち。色々な面において、今は間違いなくいい方向へ向かっている。あとはもうちょっとシュートが入るようになったらもっと良いのだが(笑)。少なくともしばらくは、復調の要因である「中盤」を前面に出すような試合をしていくのが良いのだろう(ある意味東京らしくないけれども)。憂太・今野・梶山・栗澤の4人を軸に、規郎・戸田・宮沢がスパイス役といったところか。これで加地が戻ってきたら、楽しみはもっと広がるぞ。ま、とはいえ、一方でこういう良い形がもっと早くできていればなあ、とも思ってしまう(つーか毎年そう思っているような気がする)のだが…。

 個々の選手では、まず何といっても馬場憂太。この数試合の活躍ぶりは目覚ましく、我々は今まさに「エース誕生」を目撃しているのかもしれない、と思う。同点シュートは、単に巧さだけではないポテンシャルを感じさせてくれるものであった。このまま緩むことなく、どんどん高みへ上っていってほしいものである。また、もちろん今野もMVP級の活躍。守備の貢献度は言うまでもなく、いいタイミングで攻撃に噛んだ時の破壊力は凄まじいものがある。大塚愛のポーズはどうかと思うが(笑)。そして、忘れてはならないのが、前節に引き続き活躍した梶山。この日も前へ出て攻撃によく絡んだし、後ろ目からのフィードも及第点。何より良かったのは、土肥のセーブやセットプレーの場面で、誰よりも早くこぼれ球に反応して拾う場面があったこと。配球と集中力の維持。大きく欠けていた部分に成長が見られるのは頼もしい。問題は、これを続けていけるかどうかだ。

 他では、茂庭はガンバの誰よりも速い足を発揮し、吉原を完封、大黒も自由にはさせなかった。さすが守護神(4日前に車を盗まれた後だったので、鬼神と化していたのかもしれん(笑))。藤山がシブいポジショニングで家長をよく抑えたのもオールドファン的には嬉しい。金沢はやはりこのチームにとっての「重し」。大いなる安定感をもたらしてくれる。ジャーンもまずまず。土肥ちゃんはノーミス。規郎はドリブル突破は良かったけれど、もう少し中の状況を見てプレーできれば効果的なのだが。吉朗はやっぱりFWでプレーさせてあげたいとつくづく思う。ササは腐らずモチベーションを保ってくれるだろうか、ちょっと心配。ルーカスは……よく走ってくれてるんだけどなー……どうも、あの日産スタジアムでのアクシデント以来、決定力が入団当初に戻ってしまったような、そんな感じである。次はズドンと一発頼みます。

 ともあれ、この勝利で完全に残留争いからは脱出した形になった。チームの調子は上がってきた。戦力も充実してきた。リーグ戦の順位的な目標は立てづらい状況だが、この後上位陣との対戦が続くために、存在感を示すことは十分可能である。もちろん、その後には天皇杯も残されている。終わりよければ全てよし、ではいけないと思うのだけれど、ここから正月まで、今シーズンの集大成、あるいは「有終の美」と呼べるようなサッカーを見せてほしいものだと思う。がんばれ!!

 


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