J1リーグセカンドステージ第3節 vs東京ヴェルディ1969 2004.8.29 国立競技場

 

 

 この日は、ナビスコ杯柏戦に続いて今年2度目の国立開催。そして2度目の雨。2000年の関西3チーム3連雨3連敗をはじめとして、2001年の磐田戦2002年の神戸戦、そして昨年のレアル・マドリー戦と、国立でやる時には本当に雨が多い。一体どうしてこんなことになってしまうのだろう。我々にテルテル坊主でも作って行けというのか?「これでもし3連敗なんてことになったら目も当てられないな…」と、低めのテンションでスタジアムに向かった試合前。その時には、まさか2時間後にあのような光景を目にするなんて、想像もしていなかったのであった。

 

 立ち上がりはピッチコンディションを考慮したのか、両チームとも前がかりというよりまず自分の足下を踏み固めるような、慎重な動き。東京はいつも通りの4−5−1、ヴェルディは3−5−2の陣形だったが、東京ボランチ2枚(文丈、今野)に緑攻撃的MF2枚(小林慶、小林大)、東京トップ下(ケリー)に緑アンカー(林)という具合に、お互いの中盤が妙にがっちり噛み合ってしまい、さらに東京のSBが攻撃を自重したせいでともにFWに対してDFが人数的に余裕のある場面が多く、膠着した試合展開となった。ヴェルディは前回対戦時と違ってロングボールを多用せず、中盤の細かいパスワークによりボールポゼッションで優位に立つが、しかし東京も守護神ジャーンと帰ってきた茂庭が中央に立ちはだかり、ペナルティボックスには寄せつけない。

 そうした状況でチャンスと言えば、まずセットプレー。そして滑るピッチを生かそうとするロングシュート。それから、フリーになる味方が少ない中で犯してしまう自陣でのパスミスから。パスミスに関しては、やや押し込まれている分前半は東京のものが目立った。17分、加地が自陣右サイドから中央へ出したパスをさらわれ、小林慶行が放ったロングシュートを土肥が正面でキャッチ。同じく17分、馬場のロングシュートがゴールわずか左に外れ、23分にも平本がロングシュート(土肥キャッチ)。29分には東京陣左サイドのFK、三浦淳の速いクロスが土肥の手の先を抜け、ポスト脇できわどく弾む。この間、淡々とした流れを破ろうと、機を見て加地がライン際を駆け上がっていったのだが、前に位置する栗澤に無視される場面が繰り返された。嗚呼、真の「無駄走り」は悲しき哉(笑)。

 しかし30分を過ぎた辺りから、加地の上がりを生かそうとケリーが右に寄りがちになり、ケリー・栗澤・加地3人のユニット攻撃により膠着状態のバランスが崩れ、東京が主導権を握っていく。34分、左CKをジャーンが頭で叩くが、ゴール右に外れてノーゴール。その直後には加地のクロスがゴール前フリーの馬場に合うが、しかしヘディングは威力なくGK高木キャッチ。38分にはケリーの右突破からのクロスを栗澤が頭でつなぎ、再び馬場が頭で狙うもバーを越えた。39分、小林慶が桜井へ鋭いスルーパスを送り、通ればGKと一対一という場面、茂庭がどんピシャのスライディングでクリア。40分には右サイドオーバーラップした米山のクロスに平本が飛び込んでヘディングシュート、ボールが右ポストを直撃した。ヴェルディも攻め手を増やすようになり、攻め合いの雰囲気になりかけたところで前半終了。

 

 後半は立ち上がりから、前半最後の流れそのままに両チームとも積極的にボールを動かしてせめぎ合う。しかし、この日の原さんは決断が早かった。9分に栗澤に代えて阿部吉朗投入。おなじみ攻撃のスイッチ・オン!阿部はドリブル・パス・シュートという3つの武器を組み合わせて左サイドからゴール前へと襲いかかり、東京の攻撃を加速させる。11分に加地のクロスへ思いきりよく飛び込み、14分にはドリブルでペナルティボックスへ突入。阿部の勢いを生かして東京は左サイドを完全に制圧、金沢の位置取りも高くなって一気に流れを引き寄せた。17分、ルーカスが落としたボールをペナルティボックス正面で馬場が左足強シュート、高木がかろうじてはじき出す。19分にも加地が正面からロングシュート、高木は横っ跳びでCKに逃れる。

 劣勢に追い込まれたヴェルディは13分、森本を投入して逆襲を狙うが、受身に回った状況ではなかなか前線までボールを運べず。たまにパスが通っても、高速ドリブルに対して茂庭を初めとする東京DFが落ち着いて対応し、突破を許さない。さらに19分には桜井OUT、平野IN。平野の左足は脅威ではあるが、ヴェルディ側の交代はカウンター向きの人材を減らしていくもので、こちらにしてみれば「助かった」というのが正直な感想だった。前半とは逆に、東京のプレスを受けてヴェルディ側が自陣でパスミス、という場面も見られるようになった。

 ほとんど「圧倒」と言っていいほど押し込んだ東京だったが、あと一押しが足りず、なかなか得点には至らない。23分、阿部のドリブルから金沢がオーバーラップしてペナルティボックスへ進入するが、クロスはDFがブロック。25分、敵陣でボールを奪ったルーカスが自らミドルシュートを放つも、枠を外れる。26分には阿部がドリブルで米山をちぎり、クロスがGKとDFの間を抜けていくが、アタッカーが詰めきれず逸機。決定機をつかめそうでつかめない、じれったい時間帯が続く。

 原監督は最後の「一押し」をフレッシュなFWに求めたか、馬場に代えて近藤祐介を投入。31分、カウンターからまたしても阿部がドリブルで持ち上がり、クロス。こぼれ球がペナルティボックス内で金沢の足下に落ちるも、シュートは大ふかし。34分、森本のドリブルを文丈がファウルで止めてしまい、FKを三浦淳がいやらしいワンバウンドのシュートで狙ったが、土肥ちゃんがファインセーブ。そしてそのCKからのカウンターで三対三の状況となり、ケリーが右サイド駆け上がる祐介にスルーパスを通す。祐介は飛び出してきた高木をかわしながらシュート、ボールは無人のゴールへと転って「やった!」……と思った次の瞬間、小林大が炎の戻りを見せ、ゴールライン寸前でクリア。ガッツポーズしかけた祐介の手が微妙な位置で止まった。まさしくゴールは遠し。その後も東京は決定打を欠き、場内にも引き分け覚悟の雰囲気が漂い始める中、36分にさりげなく、試合を決定づける交代が行われていた。梶山の投入である。

 40分、長駆オーバーラップしてペナルティボックスへ突入しようとする米山に、阿部がこれまた長駆追いすがってドリブルをカット。好守に奮闘する阿部やルーカスに比べ、後から入ったはずの梶山の動きは相変わらずオッサンくさく、どうにもゆっくりしてるように見えてしまう。「梶山、走れ!」と思わず叫んでしまう私。しかし、後から考えると、この時梶山は、最後に見せる大パフォーマンスのための力をため込んでいたのだ……というのは単なる妄想だが(笑)。そして43分、左スローインからの展開。ヴェルディ陣中央でパスを受けた梶山は、余裕をもったボールさばきからボールを体の正面に置き、ワンステップで右足を振り抜く。「あれ?ちょっと遠すぎるんじゃ…」と思ったその瞬間には、既に時速300km(推定)で空間を貫いたボールがゴール左隅に突き刺さっていた。GK高木、一歩も動けず。一瞬、スタンドで喜び上がる人と何が起こったのかわからず戸惑う人の姿が入り交じり、次の瞬間には場内大歓声に包まれていた。右手を挙げてチームメイトに囲まれる梶山。恐るべし、我々はかのデポルティーボ・ラコルーニャを粉砕したフアン・アクーニャ砲をこの目で目撃したのである。1−0。

 そして残り時間。開幕から2連敗という状況下での慎重な姿勢の表れだろう、東京はボールをとっても無理に攻め急ぐことはせず、ルーカスやケリー、さらには阿部や祐介までもがドリブルでサイドやコーナーへ逃げ、時間を稼いでいく。ある意味東京らしくないと言えばらしくないのだが、しかし背に腹は代えられないし、もしかすると、昨年11月のあの東京ダービーの時に比べて選手は一段大人になったのかもしれない。倒されて接触し、大げさにのたうち回るルーカスの姿(笑)なども披露しつつ、東京は危なげなく時間を使い切った。ようやくの、2ndステージ初勝利である。

 

 この試合、当たり前のことだが最大の収穫は勝点3を取ったことだ。開幕2連敗だけでもJリーグ参加後初の事であったし、ましてや3連敗(そして対照的にどこぞの赤いチームが快進撃中)となれば、色々と騒がしい事になったとしてもおかしくはないだろう。考えてみれば、この試合の前までは五輪代表組が長期間抜け、さらに規郎・浅利・戸田・加地らが次々と怪我や体調不良に見舞われるという大ピンチの状態であった。逆に言えば、(負けていいとは思わなくても)まあ「五輪組が帰ってくれば」という希望が我々にはあったのであり、だからこそ茂庭と今野が戻ってきたこの試合できっちり勝てた事は大きい。これからは、石川やその他の怪我人が次々に復帰してくることになるだろう。コンビネーションの精度を上げて徐々に本来の「速さで勝つ」サッカーを取り戻しつつ、1試合1試合勝って行かなければならない。難しい試合は続くかもしれないが、とにかく反撃開始、である。

 しかし、梶山の弾丸シュート(ボールが消えたという意味で、まさに「弾丸」だった)には驚いた。「陽平さんてば、翼君のドライブシュートだけじゃなくて、小次郎君のタイガーショットも撃てるのね!」みたいな(笑)。あの距離からGK一歩も動けずって、ホント漫画の世界の出来事である。ハイティーンのプロサッカー選手とは思えぬオッサンくさい動きといい(つい「走れぇ!」と叫びたくなってしまう)、試合後のゴール裏への超アヤシゲなパフォーマンスといい、いろんな意味で規格外の男である。

 他の選手では、まず良かったのが加地。守備に気を遣い、栗澤に無視されながらも(笑)駆け上がり続けた。前半30分過ぎから東京が攻勢になったのは、彼の上がりに気づいたケリーがパスを出すようになって、栗澤と3人のコンビネーションで崩すようになったからだ。守備も、彼なりには食い下がっていた。腐らずこの調子で頑張って、あとは石川と戸田の復帰を待てば。そして、阿部吉朗も好調を維持。ゴール裏からの声援の大きさが彼のパフォーマンスの良さを物語っている。できればもっとゴール前でプレーさせてやりたいのだが…。五輪組では、茂庭の復帰でDFラインに厚みが増した感じ。この日はセーフティーファーストも徹底され、安心して見ることができた。今野はちょっと疲れが残っているのか、いつもほど運動量で相手を圧倒できなかったように見えた。あと、両サイドは…怪我人の復帰を待つしかない、か。カウンターの時など、他のアタッカーがボールホルダーと真横に並んでしまう状況だけは何とかしてほしいと思う。

 

 試合中強く降り注いでいだ雨も、気がつけばほとんどやんでいた。もしかすると梶山の一撃は、上空の雨雲すら吹き飛ばしたのかもしれない。夏休みの終わりにふさわしいファンタジーであった。

 


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