J1リーグセカンドステージ第2節 vs清水エスパルス 2004.8.21 味の素スタジアム

 

 

 この日は浴衣にビールにファイヤーワークスと、イベントが盛りだくさん。試合前にコンコースで「東すか」を配っていて、目の前を通り過ぎる浴衣姿の女性につい目が行きがちに(笑)。東京も最近は女性ファンがたくさんいるので、こういう企画をやっても「誰も着てねえじゃねえか!」なんてことにならないのはいいことである。そういえば、スタンド入口脇の段ボールに入っていた(こういう「ほしい人だけもらう」やり方はいいっすね)団扇をもらったら、今年プリントされているのは馬場と梶山の写真だった。ヤング東京、ミーハー路線というヤツですか(笑)。

 配布の合間に、展示されているファン・アクーニャカップを見物。このカップの由来はよく知らないのだが、プレシーズンマッチのためにこういう立派なカップを作ってしまう欧州サッカーの奥深さに感じ入る(買いかぶりか?)、それをはるばるスペインまで遠征して勝ち取ってきた我らがFC東京をあらためて誇らしく思うのであった。……だが、しかし。

 

 立ち上がり、試合は清水ペースで進んだ。清水は3バック(森岡・斉藤・戸田)を底として全体の布陣をを高く押し上げ、攻撃的にかかってきた。左市川、右太田の両サイドは高く位置取り、彼らへの広い展開からペナルティボックスへクロスを入れるのが主要な攻撃パターン。整然と等間隔に並んで三角形を作るDFラインと中盤、思いきって突っかけていく両サイド。見た目に美しいサッカーだった。4分、いきなりCKから森岡のヘディングシュートが東京ゴールを襲い(土肥キャッチ)、8分にはロングパス一発で左サイドを突破した市川が深い位置からマイナスのグラウンダーを入れ、ゴール前へ走り込む久保山に通りかけるがDFがかろうじてカット。

 一方東京はどうもピリッとしないサッカー。全体的に重い感じで、特に中盤は攻守ともに運動量・連動性が不足し、伊東テルに軽くいなされてボールはとれず、自陣でボールをとってもなかなかフォローがつかない。味方が孤立しかけているのにつっ立って見ている選手がいたようだが、あれは気のせいだろうか。また、金沢・前田の両SBはトイメンを警戒してか上がる回数は少なく、その前で左右を任された馬場・栗澤はドリブル突破するタイプではない。時たまルーカスがサイドへ出るくらいで、東京本来のペナルティボックス脇を使ったスピーディーな攻撃も見られず。苦し紛れのロングボールも、清水DFラインの巧みなラインコントロールによりチャンスとならない。ケリーとルーカスが個人突破を繰り返してははね返される場面が続いた。

 19分、MFアラウジーニョからのスルーパスで市川が左サイド抜け、久保山が正面からミドルシュート(土肥キャッチ)。21分、右に流れたルーカスのキープから前田が中へ切りこみつつクロス、ファーで馬場が落とすもゴール前には誰も走り込んでおらず。清水は全体のバランスとダイナミックさにおいて完全に東京を上回っていた。ただ、それでも東京が決定的ピンチを回避し続けられたのは、ひとえにジャーンと藤山がペナルティボックス内を制していたからだ。右から左からクロスが上がるたびにジャーンが力強いヘディングではね返し、こぼれ球を拾った清水アタッカーがつっかけようとしたところで藤山がカット!また、中盤も全体的には低調ながら、勘所をわきまえた文丈の動きで持ち堪える。27分も、アラウジーニョが落としたボールを太田が拾ってスピード満点のドリブルでペナルティボックスへ進入、しかし弾丸のようなスピードで戻る文丈がカット。

 30分くらいになると、ケリーとルーカスの「もがき」が功を奏し始めたか、それともやや攻め疲れということか、清水DFラインの押し上げが弱くなり、東京もチャンスを作れるようになる。35分、右サイドでケリーがDFを引きつけ、スピードにのってオーバーラップした前田にスルーパス。DFラインの裏へ通った鋭いクロスにルーカスがスライディングで飛び込むが、シュートはポストを叩いて外れた。頭を抱える東京サポーター。40分には梶山との壁パスでペナルティボックスへ走り込んだ文丈がクロス、馬場が落としたボールをケリーがシュートするもDFブロック、そのボールがゴール前どフリーの文丈の足下に落ちた…というところでオフサイドの笛。さらに44分にはカウンターから左の広大なスペースへ飛び出したルーカスへパスが通り、DFとフェイント勝負してシュート(GK西部キャッチ)。結局そのまま0−0で前半終了。清水の方が(おそらくは)思い通りのサッカーをしながら、終わってみれば東京の方が決定機をつかんでいるという不思議な展開だった。

 

 ハーフタイム、バックスタンドから配布所へ歩きながら、時々振り返って花火見物。20発くらいはあったかな?1発1発がやたら大きく(打上場所が近いっつーことだろうね)、非常に見ごたえがあった。拍手。近くに立っていた東京サポーターらしき人たちが「今日のメインはこれだったりしてな」とか話していたので、おもらず苦笑してしまう。

 

 後半、ロッカールームでヒロミの檄が飛んだか、東京は前半に比べて守備に激しさが、攻撃に(遅めながらも)フォローする動きが出てきた。前田や金沢の位置取りもぐっと前へ。5分、敵陣でのプレスからボールを奪い、中央に移動した栗澤からペナルティボックスへ走り込むケリーへスルーパスが通るが、シュートはゴール左に外れた。やれやれ、ようやくエンジンがかかったか…と思った8分、東京陣ペナルティボックス外、パスを胸でワントラップした久保山がそのまま思い切りのいいシュート。ドライブのかかったボールは素晴らしい軌道を描いて土肥の頭を越え、ゴール左スミに突き刺さった。唖然とするスーパーゴール。もっとも、あまりに素晴らしい得点だっただけに腹が立つより「仕方がないか」という気分の方が強かったが。

 めげない東京は反撃に出る。9分、ペナルティボックス内でパスを受けた馬場が森岡に思いっきり足をかけられるが、しかしPKならず。これは取ってほしかった。11分、前半にはなかった左→右の広い展開から前田が持ち上がり、シュートともクロスともとれるグラウンダーを放つが、ケリーのスライディングも届かずゴールわずか左を抜けた。13分にはアラウジーニョが鋭いフェイントを交えながらドリブルでペナルティボックスへ突入、振りきられかけたジャーンが引き倒すも、これまたノーペナルティ。バランスとったな、松村レフェリー(笑)。ジャーンの方は取られていたら一発退場もあり得るシーンだったので、助かった。清水は17分にアラウジーニョに代えて澤登投入。

 前半中頃になると、東京は完全に前がかり、一方清水は自陣にしっかり引いてカウンターを狙う構図に。20分になると東京は存在感の薄かった馬場を外して阿部吉朗投入。阿部はボールを引き出す動きとしつこいチェイスで攻守に貢献、東京の攻勢が加速していく。21分、梶山が巧みなドリブルでペナルティボックスへ進入(DFブロック)、22分にはケリーがポストプレーで戻したボールを文丈がシュート(DFブロック)。23分には中央でパスを受けた阿部がミドルシュート、西部がかろうじて足でセーブする。このあたり、東京が押せ押せムードながら清水DFのしぶとさが光った。25分、文丈OUT宮沢IN、同時に北嶋OUT平松IN。28分にはCKからのこぼれ球を梶山が拾ってペナルティボックスへパス、ジャーンがヒールでDFライン裏に流してケリーがGKと一対一になるも、オフサイドの判定。

 攻撃がようやく実ったのは30分。右サイドのパス回しから前田がうまくDFを避けるクロス、ファーサイド絶妙のタイミングで飛び出した阿部がジャンプし、そして空中で一旦停止してから(いい時の彼は本当にこう見える)頭で豪快に叩きつける。ボールは飛び出す西部の足下を抜いてワンバウンドでゴールネットに突き刺さった。まったくもって阿部らしい、チームを最高に盛り上げるゴール!それまでのもどかしい展開でストレスが溜まっていただけに、スタンドもやんややんやの大盛り上がり。直後にも前田→阿部のコンビで惜しいヘディングシュートがバーを越え、雰囲気だけを見れば、「これはもう逆転するしかないだろう」と思えたのだけれど…。34分、東京陣ゴールライン際で梶山が平松(またコイツか!)を倒してしまいFK。やや早めのリスタート、澤登のどんピシャクロスに斉藤が飛び込み、ヘディングしたボールは土肥の脇下を抜けていった。チームが勢いに乗ってきていただけに、何とも間の悪い失点。1−2。

 東京はもちろん再び反撃を開始。35分、ペナルティボックスで阿部が孤軍奮闘、シュート(DFブロック)に続いてこぼれ球をゴールライン際まで追ってクロスを上げるが、他のアタッカーに合わず。37分、梶山OUT、近藤祐介IN。近藤は右サイドで力感溢れるドリブルを見せて場内を沸かせるが、しかし逃げ切りを図る清水DFの厚い壁を崩すには至らない。41分、ルーカスがペナルティボックス外ほぼ正面でFKを獲得。宮沢のシュートは見事壁を抜けてゴール左を襲ったが、西部が横っ跳びでセーブ、そのこぼれ球に複数の東京アタッカーが飛び込むも、重なり合いゴチャゴチャしている間に逸機。ロスタイム、宮沢懸命のロングシュートも枠を外れ、結局そのままタイムアップ。東京にとってはJリーグ加入後初の開幕2連敗となってしまった。

 

 清水エスパルスの前半の組織的な戦いぶりは、石崎監督の指導がかなり浸透してきているということなのだろう。システムは多少違えども、あのキッチリした感じは紛れもなく大分や川崎でノブリン(笑)が見せていたものだ。ただ、その大分・川崎でもそうだったのだが、中盤やサイドの整備度と引き替え(?)に、前線にダイナミックさが乏しいように感じられてしまうのもまたノブリンらしいところ。まあ清水の場合は駒不足という事情もあるだろうし(北嶋が頑張らないとクロスに合わせるアタッカーがいないだろ)、流れの中で森岡を上げるなど工夫はしているようだが。少なくとも伊東はもうちょっと前で使った方がいいように思うのは…余計なお世話か。

 FC東京は、前半寝ていて、後半目が覚めて慌てて頑張ったけれども試合を作りきれなかった、という感じである。パッと思いつく敗因は2つ。1つは、前半顕著だった中盤選手の動きの重さ。もう1つは、「足下テクニック系」(または「こねこね系」)の選手を並べすぎたスタメン布陣。後者に関しては原さんの「悪い癖」が出たという見方もあるだろうし、それ以前に石川・戸田・規郎が使えないという事情もあるだろう(もちろん阿部スタメン、という選択肢もあったけど)。これはある程度はやむを得ない部分であるし、途中からは同じメンバーでチャンスも作っていたのだから案外致命的ではなかった、と言えなくもない(笑)。それより問題なのは前者の方で、これはもしかしたら中断期にスペイン遠征を行った反動が出ているのではないかとちょっと気がかりである。海外旅行って疲れるからねえ

 個々の選手では、ジャーン・藤山・文丈はよくチームを支えてくれた。それに比べて不満が残るのは梶山・馬場・栗澤といったところか。梶山はちょっと守備でボールを追わなすぎ。馬場は、難しいプレーへチャレンジする時と簡単にさばけばいい時の判断が悪かった。栗澤にはもっと味方を使って自分が前へ飛び出していく動きが必要だったと思う。別に若いから体力が有り余っているわけではない(ベテランの方がコンディション調整は上手い)だろうが、しかし目の前で文丈があんだけやってんだから君たちも頑張ってくれ、みたいな。前田は、加地のようなダイナミックさには欠けるが、アーリークロスの正確性や堅実さでは加地・徳永を上回る。少なくともキャリアの割には実によくやっていると思う。あと、阿部吉朗の調子が上がってきたのは好材料だ。彼のゴールはファン・サポーターを熱くし、チームに勢いをつけてくれる。去年も2ndの方が良かったし、「秋男」ということなのだろうか?ケリーとルーカスについては微妙。どちらもそれなりに役割を果たしているんだけど、どうもチームのバランス的にはどちらか1人でいいような気がしてしまう。

 何にせよ、次の東京ダービーは崖っぷちである。いや、別に根拠はないのだが、いくらなんでも3連敗はマズイだろうそりゃ。というわけで、是が非でも勝ってほしいものだ。勝点勘定なんてとりあえず忘却の彼方に追いやり、一戦一戦を大事に勝っていかなければならない。

 早く石川や加地や規郎や戸田が帰ってきて、私の大好きな「加速していくサイド攻撃」を見せてくれないかなあ。


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