J1リーグファーストステージ第12節 vsガンバ大阪 2004.6.12 味の素スタジアム

 

 

 サッカー選手も、やはり人柄が大事なんである。そう思わされる光景だった。

 

  いきなり先制したのはガンバ。開始まだ1分もたたない時間帯、MF二川から東京DFラインの裏を突く緩いロングボールが上がり、FW大黒がトラップから一気にゴール前へ持ち込む。飛び出した土肥・追いすがるジャーンと大黒が競り合う中ボールは複雑にはね、最後は土肥の裏にこぼれたところを大黒が蹴り込んでゴール。スタンドでも「ウソー!」「早すぎ!!」の声が上がる。今シーズン何度も繰り返されている開始直後の失点だが、観ている方としては(選手自身もそうらしいが(笑))さすがに驚かなくなってきたというか。失点前にも徳永が浮き球を空振りしてヒヤリとしたシーンもあり、立ち上がりはどうにもチーム自体がビシッと締まっていない印象。0−1。

 この日は東京もすぐさま反撃に出た。チャンスの起点となったのは、トップ下の馬場憂太。軽やかながら強靱さも感じさせるドリブルからためを作り、巧みにボールをさばいてアタッカーを走らせる。5分、馬場が右ライン際でDF2人相手にキープ、オーバーラップした徳永がチップパスを受けてどフリーで突破したが、クロスは惜しくも戸田に届かず。直後のCKのこぼれ球がペナルティボックス内で今野の足下に収まり、「またか!」と思わせる場面もあったが、シュートはわずかにふかしてしまい逸機。しかし11分、左からのコーナーキックをジャーンが頭で叩きつけたシュートはGK松代に弾き出されるも(これも一瞬「またか!」と思わされる場面)、折り返し逆サイドからのコーナーにルーカスが飛び込み、DFに競り勝ってヘディングシュート!強烈な一撃に松代今度は動けず、ゴールネットが揺れた。みんな待っていた1トップのゴール。場内は歓声に包まれ、ルーカスは迷わずベンチの飯野通訳に駆け寄って抱きつく。リーグ中断後「仕切り直し」の試合で、実にいい選手が取ってくれたものである。1−1。14分には、憂太が今度は抜群のタイミングのスルーパスを通してチャンスメーク、コーナーキックの連続からこぼれ球をルーカスシュート(松代キャッチ)。ここまでは実にいい流れだった。

 ところが、前半中頃からは今度はガンバがペースを握ることに。19分、浅利のファウルでペナルティボックスすぐ外のFK、遠藤やっとのシュートがクロスバーを叩く。22分にも二川のミドルシュートが枠を捉え(土肥キャッチ)、28分には渡辺光のパスがゴール前大黒に通る(徳永カット)。ガンバは4−5−1の布陣ながら、中盤のポジショニングが非常に流動的であった。特に遠藤はボランチより後ろに下がったかと思えばFWを追い越して前線に飛び出し、あるいはサイドに流れてパスを受ける。東京は入れ替わりながらパスを回すガンバMF陣をなかなかつかまえられず、ダブルボランチも後方から飛び出して来る選手への対応に追われた。ガンバSBの攻撃参加も目立ち始め、クルクルと方向変換する中盤でマークをズラしてからサイドへ展開。自陣に押し込まれる東京。DFがペナルティボックス内へのパスを粘り強くカットし続けることで決定機こそ作らせないものの、ボールを奪っても敵ゴールまでの距離が遠く、苦しい時間帯に。32分にはフェルナンジーニョが強烈なミドルシュート、DFに当たってコース変わるも、土肥がよく反応してセーブ。

 もっとも、そんな状況でもそれなりにチャンスを作ってしまうのは、今の東京の個人能力の高さゆえか。37分、憂太の機転の利いたワンタッチのスルーパスからルーカスが抜けて久々にチャンス、今野のクロスに馬場と戸田がフリーで飛び込んだが、動きが重なってしまいシュートできず。こぼれ球を拾った金沢のシュートもバーを越えた。40分、出足良くパスをカットした今野が中央をドリブル突破するも、木場が追いついてシュートまで持ち込めず。42分にはまたも浅利のファウル(それだけ彼に負荷がかかっていたということだ)でペナルティボックス手前のFK、遠藤のシュートが今度はポストに当たり、ゴールライン上にはね返ったところを土肥ちゃんが慌ててキャッチ。思わず場内に安堵と、幸運への感謝の笑いが漏れる。結局1−1のまま前半終了。

 

 後半キックオフ直後、ハーフウェーから規郎の撃った超ロングシュートは、チームとしての攻撃意志の表れだったのだろうか?

 後半もガンバは前半と同様に、MF陣が代わる代わる東京DFライン前の「バイタル・エリア」を脅かす。ただ、東京も後方警戒で4バックが後ろに張りついてしまう形は前半と同じながら、前方でアタッカー陣が積極的にプレッシャーをかけ、単発的ながらも逆襲の頻度を増やしていった。2分、ルーカスが右サイドで粘ってクロスを上げ、ファーで合わせた戸田のヘディングシュートが松代を越えてクロスバー直撃。9分、規郎がドリブル突破からクロス、セカンドボールを今野がロングシュート(松代キャッチ)。14分にはコーナーキックからジャーンのヘッダーがバーを越す。

 15分頃になると初夏の暑さ(この日は昼間の試合)の中両チームの足が止まり始め、ルーズな中盤で両チームが交互にチャンスを作るようになる。16分、今野のカットから馬場が左へ展開、ルーカスのクロスがペナルティボックスへ走り込む今野に渡る。シュートは一旦シジクレイに当たった後もう一度今野の足下にこぼれるが、再シュートはバーを越えてしまった。19分、前に出てパスカットした茂庭が猛然と攻め上がり、ルーカスとぎこちないワンツーパスを交換(笑)するが、さらにルーカスへ渡そうとしたところをカットされる。21分、二川が左サイド突破、巧みなクロスをゴール前に入れ、際どい混戦に。こぼれ球をフリーの遠藤がボレーで狙うも、ふかしてクロスバーを越える。やっとのプレーに関しては、東京にとってラッキーなシーンが続いた。

 膠着状況を打開しようと、先に動いたのは東京だった。24分、規郎に代えて阿部吉朗投入。攻撃への貢献度を考えれば戸田を先に代えるべき、あるいはもう中盤はなくなりつつあったのでボランチを1枚切って2トップにするべきかとも思えたのだが、おそらく規郎のバテも考えての交代だったのだろう。理に適う適わないの問題ではなく、これで東京はスイッチオン!、という感じで攻撃に勢いが出た。25分、金沢のアーリークロスをペナルティボックス内で戸田がうまくトラップ、ゴールライン際まで持ち上がってからマイナスのグラウンダーを入れる。合わせられればゴール、という場面だったがルーカスが戻りながらのシュートの体勢になってしまい、シジクレイが懸命のクリア。29分には今野の好パスから徳永が右サイドを突破、クロスがファーでどフリーの馬場に通るも、角度がない所からのシュートは松代が足で弾き出す。

 決勝点が生まれたのは31分。浅利のカットからルーカスがフィールド中央を持ち上がり、ペナルティボックス外の憂太にパス、これを憂太がダイレクトで返し、浮き球がDFラインのギャップに落ちる。木場を引き連れながら走り込んだルーカスが踊るようなフォームでゴール右隅に叩き込み、単純ながらも美しいワンツーリターンが完成した。興奮した様子でゴール裏へ駆けていくルーカス。他の選手も喜びを露わにする中、馬場憂太は落ち着き払ってその場に立ち、ベンチに向かって堂々としたガッツポーズ。その姿にはある種の貫禄すら感じられたのだった。まだ完調でない足は痛みもあったろうに…頼もしい男である。2−1。

 ビハインドを背負ったガンバはFW松波を投入、さらに3バックに変更してシジクレイが前線へ上がっていく。36分には二川が右サイドで金沢を振りきりつつ速いクロスを入れ、大黒詰めるが土肥セーブ。これに対して東京は、39分にルーカスOUT、藤山IN。パワープレイに備えてサイドの守備を固める意図はうかがえたが、驚いたのは徳永を上げるのではなく、藤山が右サイドハーフの位置に入ったこと。そうか、そういう手もあったのか(笑)。さらに驚いたことに、41分、右サイドで起点を作った阿部からの折り返しに藤山が走り込み、ペナルティボックス外からグラウンダーのシュート。ボールが芝でイレギュラーしたのか松代は全く動けず、ボールはゴール右隅へ。「すわ、藤山J1初ゴールか!」と立ち上がりかけたその瞬間、ボールはポストに当たってはね返ってきた。しかし神はまだフジを見捨てておらず(笑)、こぼれ球はさらに藤山の足下へ。中央へ流れながら、今度は左足で狙った…のだが、やっぱりDFにブロックされてしまった。この間、「うわあああああああ!」と絶叫し続けたのは私だけではあるまい。

 終了間際になると、東京はペナルティボックス周辺に得意の「部活防御網」を構築。ガンバにほとんどチャンスすら与えない。憂太も最後までボールを追って、追い続けた。ロスタイムにはハーフウェー付近で浅利がドリブル・フェイントで敵を翻弄する(しようとする)場面もあり、これもまた楽しい光景だった(結局ボールはとられてしまったが(笑))。そのまま2−1で試合終了。東京、お得意の逆転勝利である。

 

 試合後、ヒーローインタビューのために遅れてバックスタンドへ挨拶に来たルーカス。よく見ると、脇では飯野通訳が目頭を押さえている…。飯野さんを抱き寄せるルーカス。スタンドからは盛大な拍手が。これまであまり目にしたことのない、美しい光景であった。

 ガンバ大阪は、前半はポジションチェンジを繰り返しながらよくかき回し、ゴール前では大黒の突破とMF陣の飛び出しを武器に攻めたててきた。しかし試合が進むにつれ前者にはジャーン・茂庭が、後者には浅利・今野がきっちり対応したことでチャンスの数は減少。最後は東京アタッカーの鮮やかなコンビネーションに屈した。やはりマグロン・宮本欠場の影響は大きかったのだろう、攻撃ではもう一つ武器の種類が欲しかったところだし、2点目のワンツーに対しても宮本ならば裏をとられなかったのではないだろうか。おそらく、MF陣の能力はJリーグの中でも高いレベルにある。よって、それをチーム全体の戦闘能力に高めていけるのかどうかがこのチームの鍵となってくるのだろう。

 FC東京にとって収穫だったのは、まずなんといってもルーカスの2得点だ。きれいな壁パスからDFを巧みに振りきった2点目(パスを出した憂太は「外すかなと思った」とかコメントしたらしい(笑))ももちろん素晴らしいのだが、それよりもCKの場面で「不得意な」DFとの競り合いを制した同点ゴールは、色々な意味で価値の高いものだったと思う。大きな期待を背負って入団しながらここまでリーグ戦で1得点と物足りなかった彼だが、それでも前線でボールを追って走り続ける姿に多くのサポーターは好意を抱いており、ここでとりあえず結果が出たことは皆にとってハッピーなことだった。飯野さんの涙からもうかがえるように、きっといいヤツなんだろうな、ルーコンは。ま、だからといってまだまだ一息つけるわけでもなく、「結果を出したからこそ」次節以後もチームの要となる1トップとして頑張ってもらわねばならないのだ。

 あと、どうしても得点者が大きく取り上げられてしまうので割を食う形になるのだが、馬場憂太はこの勝利の最大の殊勲者だったと思う。重心が低く体の近くにボールを置くドリブル、味方の動きをよく見たパス出し、そして最後までチェイスを続ける勤勉さ。昨年までとはまるで別人のようである。勝ち越しゴールの後、走り回って喜ぶ周りをよそに落ち着き払ってガッツポーズしていた姿もかっちょよすぎ(まるで中田ヒデみたいだ)。ルーカスの方はまだまだ予断を許さないが(笑)、こちらの「覚醒」はどうやら本物のようである。

 藤山のシュートは本当に惜しかった。浅利(彼も、この2日前に30歳になった)との「J1初得点競争」を制する絶好のチャンスだったのだが。ま、しかし、なんというか、あれが入ってしまったら入ってしまったで、なんか夢から覚めてしまいそうでちょっと怖いような気もする(我ながら変な表現だが)。本人たちはもちろん得点したいと思うのだけれど、勝手気ままな一ファンとしては、得点シーンは最後の最後の最後に「とっておく」として、それよりも藤山がパスカットからライン際を鋭く持ち上がる姿を、浅利が中盤の底で相手にくらいつき、あるいはスライディングタックルを決める姿を、あと何年でも見ていたいと思うのである。シュートなんて、いつか決まるよ、きっと。

 

[追記]
 この日のレフェリー家本さんは、前に良くない評判を聞いたような気もするのだが、この日に関してはまずまともなレフェリングであったと思う。ちょっとファウルの基準が緩すぎるような場面もあったし、基本的にペナルティボックス内での接触は流す(笑)ようだけれど、変にカードを出しすぎることもなく、「観る側の邪魔をしない」(←これが一番大事)笛であったように見えた。まあ、最近色々あって、そもそも審判に対する期待値自体が低くなっているということもあるのだけれど、とにかくがんばってもらいたいものです。


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