ナビスコカップ予選リーグ vs横浜Fマリノス 2003.3.15 駒沢陸上競技場

 

 

 初戦から1週間しか空けないで同カードの再戦という、珍しいケースになったナビスコカップ第2節。今度の舞台は駒沢だ。ここは施設としてかなり古びているし陸上との兼用競技場なのだが、J1昇格以前からおなじみの会場でアクセスも悪くなく、規模の小ささが幸いしてピッチが近く感じられるので決して嫌いではない。でも、屋根がないんだよな…。この日は朝から降る小雨の中、雨合羽を着込んでの観戦となった。

 横浜は久保がお休みで、2トップは清水とマルキーニョス。東京は左SBにお待ちかねの金沢が入ったほかはスタメンに変化なし。ただし控えには文丈も小峯も入っておらず、サブのメンツは鈴木・馬場・梶山・藤山・遠藤であった。山形との練習試合(アジスタでやった方)も含めて未だ喜名・福田・小峯といった中堅どころや文丈・伊藤らベテラン組の姿を見ていないのが気になる。

 

 試合が始まってすぐ、横浜の左CK。ドゥドラのキックがうまく東京DFの間に落ち、そこに入っていた由紀彦が頭で思い切り叩きつける。これが何と小沢の手をはじいてゴールネット上面に突き刺さり、唖然とするほどあっけなく横浜先制。毎度恒例となってしまった感もある「いい時間帯」の失点。しかも由紀彦に。まさに、「出鼻をくじかれる」形になった。

 しかし幸いなことに、同点のチャンスはすぐにやってきた。6分、金沢が由紀彦に体当たりチックなチャージで倒されて得た左サイドのFK、宮沢が蹴ったロングキックは美しい弧を描いてファーサイドへ。ボールはもみ合う両チームの選手のほとんどを越え、一番端で飛び上がるジャーンの頭にピタリと合った。「ドカーン!」と音の出そうなヘディングシュートが突き刺さって1−1。セットプレーでの失点に対しセットプレーの得点で、間を空けずに追いつけたことで、選手たちも「よし、これからが勝負だ!」と気を取り直すことができたのだろう。さっと動きが良くなった。

 この日の東京は前節の反省を生かした戦い方をしていた。サイド攻撃は右に偏らず、積極的にオーバーラップを狙う金沢に宮沢、さらには自在の位置取りを見せる阿部が絡み、むしろ左主体に横浜陣へと攻め入った。宮沢は攻守でグッと前に位置するようになり(時には相手のバックパスを追ってペナルティエリアへ入っていくこともあった)、それにより全体のバランスも改善された。14分、初めて右の石川からクロスが上がりって高く弾んだボールがファーに抜ける。フリーになっていた阿部が跳び、GKより一瞬早くボールに触って押し込んだ。位置取りの勝利、ストライカーのゴール。チームの今季初得点は期待の新人FWから。いやが上にもスタンドは盛り上がり、「東京ラプソティ」の歌声が響く。

 一方の横浜は、相変わらずキープ力を前面に押し出した戦い方。ハーフウェー付近で見ていると、横浜の攻撃時にはボールを持っていない選手が適度に距離をとり、縦・横・あるいは斜めに3人以上の選手がまっすぐラインを作るように並ぶ。だからボールホルダーから誰かに1本パスが通るとその次もダイレクトで渡せるパスの受け手が存在することになる。そして2本つながる間にはまた選手が移動してパスコースを作っているため、どんどんパスは通り続ける。おそらく岡田監督の明確なコーチングによるのだろう、攻守に渡ってDF・ミッドフィールド・アタックと3つの層でラインができては消え、敵ながら見ていて感心する。東京側は勝ち越した勢いにのってどんどんボールホルダーにつっかけ絡んで行くが、しかしなかなかボールはとれない。全般的には横浜の攻勢、しかしバランスを崩さない東京、という構図で前半は進んだ。

 勝っていて気分がいい時には危なっかしいプレーも笑って許せるし、ゴール裏からは冗談も出る。茂庭は超ぎこちないフェイント(笑)で詰めてくる横浜アタッカーを交わし、喝采を浴びる(面白いけどDFが足下であんまりボール持っちゃいかんぞー)。小沢はパンチング等で飛び出した後の戻りが遅く、しばしばゴールががら空きになってスペクタクルを演出(笑)、ゴールキックやパントキックでは直接タッチラインを割ること数度でスタンドの苦笑と味方の微妙な苛立ち(笑)を誘っていた。松田がパスミスすると「意味ないじゃ〜ん!」の揶揄が飛ぶ。そしてCKを蹴る由紀彦には大ブーイングを浴びせ、横浜サポーターには「女声!女声!」の罵声。ついでに野郎何人かで裏声を出し、「キャー!ユキヒコー!!」。声量不足で横浜側スタンドまで届かないのが残念だった(笑)。

 20分過ぎ、左からのFKに将軍・松田が飛び込んでヒヤリとするが小沢がキャッチ。31分にはペナルティエリア右から切り込んでシュートを打つ積極性を宮沢が見せる。36分には左サイドでドゥドラがキープしたところ奥がフォローしてクロスを上げ、ファーの由紀彦に合いかけたところ小沢がかろうじてデフレクト。43分にはカウンターの体勢で宮沢から縦のボールがポストの阿部に入り、つぶれたところを石川が拾ってペナルティボックス付近まで持ち上がってシュート、わずかに右上にそれる。結局、1点リードのまま前半が終了した。

 

 後半も立ち上がりは悪くなかった。まず開始早々宮沢が相手陣深くで由紀彦からボールを奪い、すぐさまシュートを放つ。さらに右タッチライン際を駆け上がる石川が1人かわし、2人かわしたところで那須に非道なタックルを受けてイエローカードが出される。後半もこのまま攻撃姿勢で行ければ、というところだったが…。

 5分、前がかりになって左サイドに大きなスペースが空いたところを清水に突かれ、東京はDFの数は揃っているも混乱した状況に。右から入ったグラウンダーを奥(それとも由紀彦か?)がダイレクトでDFラインの裏に通し、右サイドから回り込んでいた遠藤のシュートが小沢を破って2−2。後から振り返れば、この失点が試合のターニングポイントだった。以後、最後まで圧倒的な横浜ペースで試合が進む。一発のチャンスで決められた精神的なショックもあったろうし、前半の積極サッカーが予想以上にスタミナを奪っていたのかもしれない。東京の選手はみるみるうちに動きが落ちていき、反比例するように横浜が攻守にわたって生き生きし始める。

 8分、CKから中澤の強烈なヘディングシュートが飛び、小沢が左手一本でかろうじてセーブ。東京は全体的に引きすぎ、ボールをとっても上がりが遅い。守備時にはいかにも「追いつめられた」という感じでゴール前の中央付近に並んでしまうため、横浜は速いパス回しでDFラインにギャップを作ってはサイドに展開、由紀彦やドゥドラの低くて速い(アーセナルみたいだ!)クロスがビュンビュン飛んできて際どい場面になってしまう。ジャーン・茂庭が懸命にはね返し続けるが、マリノスの攻勢が延々と続く。宮沢は中盤の底で横パス屋に戻ってしまい、左サイドの攻撃は死亡。右では石川がドリブルでチャンスを作ろうと奮闘するも、厚い壁に一人で立ち向かう姿が痛々しいほど。チャンスらしいチャンスは、22分に金沢のアーリークロスに阿部が飛び込んだ場面くらいだろうか(惜しくも一歩届かず)。

 横浜はマルキーニョスに代えて安永、清水に代えて坂田とフレッシュなアタッカーを入れることで勝ち越し点奪取を図る。対する東京の交代は戸田に代えて馬場、浅利に代えて梶山。流れを変えようという意図はあったのだろうが、馬場はそういう効果を持つプレイヤーではないし、梶山もボールコントロールの巧さは目立つも局面を打開する力はない。相変わらず横浜のクロスがバシバシ上がり続ける。由紀彦の炎プレイは健在で、29分東京がボールを自陣へ戻したところ背走する金沢に競りかけてシュートまで持って行き、30分には由紀彦のクロスがゴール正面の安永にピタリと合う危ない場面(小沢キャッチ)。東京の攻撃はコンビミスに不注意が重なって全くパスがつながらず(出し手と受け手の意思の疎通ゼロ、みたいな)、またしても「ケリー様お願い」状態になってケリーのこねくり回しドリブルが多発するようになってしまった。これではダメだ。

 40分には石川OUT、鈴木規郎IN。交代を告げられた石川がバックスタンド側でピッチから出て、ユニフォームを脱ぎ捨てる。古巣相手にこのザマ、怒りのやり場がない、といったところか。終了間際にはジャーンが頭を打って流血、マリノス側からの「早く出やがれ!」という女声の罵声(笑)を浴びながらピッチ外に出て治療、頭を包帯でぐるぐる巻きにして再出場した。しかし、そのファイトも、チームとしては失点を防ぐことにつなげるのが精一杯。ロスタイムのCK、宮沢のニアサイドへのクロスがはね返されたところで笛が鳴る。引き分けだが、「やられた」という感の強い試合だった。むしろ、よく負けなかったというべきか。

 

 横浜は、現段階はともかく、岡田体制の下、もしかしたらここ10年で最も強いマリノスとなるかもしれない。元々潜在能力の高い選手が揃っているところに優秀なコーチングが加わり、さらに的確な補強をしているのだからそう考えてもおかしくないだろう。この日はGKが三番手(エノテツ)であることが影響したか守備にやや脆さも見られたが、DFのメンツ的には全く問題なく、おそらく早い時期に修正してくるだろう。攻撃は「速いパス攻撃で崩す」明快なコンセプトがあり、それが手持ちの選手によくマッチしているように見える。リーグ戦にあたっての課題としては怪我人の穴をどう埋めるかと、久保がシュートを枠の中に蹴ってくれることを祈る(笑)くらいだろうか。この日も大活躍の由紀彦は、早くも横浜の攻撃の中心に収まった感がある。代表に選ばれたって全然不思議じゃないし、多分もう東京には戻ってこないだろう。彼は独り立ちしたのだ。

 東京は、前節の課題を修正してみせ、前半は非常にバランスのいいサッカーで2点を奪った。しかし後半心身のスタミナが切れると全く自分たちの戦い方を失い、再び取り戻すことができなかった。悔しいが、まだ力が足りない。現状では「90分間」はとてもとても、せいぜい「30分間攻撃サッカー」といったところである。守備の方も2失点。両サイドの攻撃参加に期待するところが大きいのでその裏を突かれるのはある程度やむを得ないとも言えるが、前がかりになってない場面でもサイドを使われ放題だったのはどういうことか。CBがジャーン・茂庭のコンビになってからは確かに一対一の場面では負けなくなったけれども、その代わりラインの上げ下げで試合をコントロールすることはできなくなっているような気がする。あと、コンスタントに力を出すというよりは前半から「とにかく行く」サッカーなのはいいとして、ならば後半トーンダウンした時に選手交代で立て直し・再加速をしなければならないはず。現状では選手交代が効果的とはとても言えないだろう。この日は戸田・浅利・石川に代えて馬場・梶山・鈴木を投入。何だか「まだ戦えるヤツを外して力尽きつつある人間を残し、打開力の(まだ)ない人間を入れる」交代に見えるのは私だけだろうか。小峯・伊藤・喜名・文丈・福田あたりをもっと見たいと思う。経験を積ませることは大事だが、若い連中ばかり揃えて「学校」じゃないんだから…。

 個々の選手については、小沢はもうちょっとキックの練習をしよう(笑)。ジャーンはよくやっていた。金沢は安定感はあるので、もう少しフィード・クロスの精度を上げてほしい。今の宮沢は後半いらない選手だ。石川はもう少し前でドリブル勝負させてあげたいし、そのためにも加地・ケリーとのコンビネーションをもっと上げていってほしい。戸田は無茶苦茶走りまくって攻守に貢献する貴重な存在。ケリーよ、頑張っているのは認めるから、周りをもっと動かしてくれい。馬場は途中出場では生きないし、ボールをもっとコンパクトに扱うかタッチを少なくしないと生きる道はない。そして、大きな収穫だったのは、何といっても阿部の得点だろう。欲を言えばもう少しポストプレーを正確にこなしてほしいところだが、しかしもうじき老練ポストプレーヤー(笑)が帰ってくるし、当面は点を取ることに専念してもいいと思う。あのポジショニングとシュート力と勇気は、既に大きな武器になっている。

 しっかし、石川も悔しいよなあ、あんだけ目の前で由紀彦にやられ放題やられて。東京ファンの「由紀彦帰ってきて!」という気持ちの高まりと横浜ファンの「石川帰ってきて!」っていう気持ちの沈静化はひしひしと感じるだろうし。逆に言えば、このプレッシャーをはね返して、次のオフでどちらのチームからも熱望されてこそ一流になるということなのだろうけど。がんばれ。


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