J1リーグファーストステージ第2節 vs東京ヴェルディ1969 2003.4.5 味の素スタジアム

 

 

 この日は強い風と冷たい雨でとても寒かったのだが、試合結果の方も負けず劣らず寒いものとなった。

 

 ヴェルディは先発からエムボマ・田中を負傷で、米山・ロペスを出場停止で欠いた布陣。お世辞にも有名と言えない若い連中が多く、山田卓がキャプテンマークを巻いている。三浦淳なんてもうベテランの区分に入ってしまう。東京の方は皆さんお待ちかねのアマラオが復帰。代わりに脚を痛めたらしい阿部がサブに回り、他の控えは馬場、三浦文、藤山、小沢。馬場……。原さんは、つくづく頑固だと思った。

 

 キックオフ直後は滑るピッチ上でなかなか選手たちがボールを足下に収められず、ロングボールの蹴り合いに。数分が経過し、ようやくボールが落ち着き始めたところで東京がペースを握る。6分に右サイドから宮沢のFKがぐんと伸び、ファーの端にいたジャーンがヘディングを叩きつけるがゴール左へ。13分には左サイドで細かくパスをつないでケリーがグラウンダーのシュートを放つ(GK高木キャッチ)。東京はラグビーで言うところのシャローディフェンスのように素早く間合いを詰めてはボールを「刈り取り」、そこから素早くパスをつないでチャンスを作る。J1初年度のような「まず守りありき」では決してないが、しかし速攻により先手をとっていくのがいい形であることは今も昔も変わらない。16分にはケリーから右へ展開し、石川がゴール前へクロスという場面が2回続いたが、いずれもアマラオには合わなかった。そのうち1回はバンザイして「アー」みたいな感じで倒れる「アマラオダイビング」で、思わず笑ってしまった(というかシミュレーションをとられなくて良かった(笑))。

 押し込まれて苦しくなったヴェルディは自陣で反則を連発し、宮沢・石川の鋭いFKがヴェルディゴールを脅かす。アマラオは長い手足を利してボールキープ率を高める(多少パスがズレても確保してくれる)のみならず、敵陣・自陣を問わず(FWがそれでいいのかという問題はさておき)献身的な守備を見せていた。凄いジーサンが帰ってきたぜ!、という感じか。一方のヴェルディは東京が前がかりになっているため逆襲するスペースは十分にあるのだが、しかしクロス等の精度が低く大きなチャンスは作れない。「ミスさえなければやられないだろう」というのが正直な印象だった。28分、左サイドアマラオから大きくサイドチェンジし、走り込んだ浅利がらしからぬ鋭いシュートを放つも、GKがっちりセーブ。

 30分頃になるとヴェルディも東京の突進に慣れてきたのかプレスのかかりが悪くなり、互いに攻守の切り替えが遅くなってしまう。球をこねくり回してしばしば最終ラインまでボールが戻ってしまうヴェルディ、それを延々追い回してなかなかボールをとれない東京。それでも36分にペナルティエリアすぐ外正面でFKを獲得、宮沢のシュートはDFに当たったものの波状攻撃になり、最後はゴール正面DFラインの穴に走り込むケリーへ宮沢の絶妙ゴロクロスが入るも、ケリーのシュートは大きく枠を外れてしまった。その後も東京はシュートまでは行くのだが比較的遠くからのものが多く、なかなか決定機にまで至らない。濡れたピッチ状況を考えたのか、他にフリーになっている選手がいるのに無理にシュートを撃ちに行く場面が多かったように思う。

 そして時間は進んでいつの間にかロスタイム、前半最大のビッグチャンスが訪れる。アマラオが倒されて得た左サイドのFK、宮沢がピンポイントでゴール前のケリーに合わせるクロス。ケリーのヘディングシュートはGKの頭上を越してゴールに吸い込まれるように一瞬見えたが、しかしバーに当たって斜め下にはね返る。あわててかき出すGK高木。そのクリアボールを右サイドで加地が拾ってクロスを上げ、跳ね返りを戸田がダイレクトでシュート、さらに高木がはじいてジャーンの前にボールがこぼれるが、詰めて間一髪押し込めず。あまりにも惜しすぎる場面だった。

 

 後半が始まると今度はヴェルディが素早い出足を見せ、東京はしばし自陣で我慢する展開になる。6分には山田卓のヘッダーがバーをかすめ、9分にはクロスのこぼれ球を拾った柳沢の弾丸シュートが土肥の正面を襲う(堅実にパンチでクリア)。しかしヴェルディもアタッカー個々に突破力がなく、後方からの支援がタイミング良く到着しなければいい形にならないため、攻勢はそう長続きはしない。10分、土肥のクリアからの切り返しでとったCK、クロスがはね返ったところを再び右へ展開、宮沢から好クロスが入るもファーサイドのアマラオ合わせきれず逸機。14分には逆襲からケリーが左サイドを突破、クロスが戸田(?)の頭に当たってファーに流れたボールを石川がボレーで叩くが、わずか右上に外れる。やはり得点こそ奪っていないものの、再び流れは東京に戻ってきた。とにかくあと30分で1点とるだけ、だったはず、なのだが……。

 17分、アマラオOUT、阿部IN。アマラオに大きな拍手が飛ぶ。うーむ。アマラオは怪我明けでこのピッチコンディションで、最初からここまでの予定だったのかもしれない。阿部だってもちろんいい選手だ。でも、ちょうど東京にとって流れが良くなっていたところで、しかもアマラオはよくボールに絡んでいただけに、見ている側にとってはいささか「残念」な交代だった。交代直後、スルーパスに対して反応が遅れた阿部があっさり諦めたのを見て、阿部もまた本来のダッシュがきかない状態にあるように思えた。そして22分、ヴェルディが放り込んできたロングボールに対しカットに入った茂庭が空振りし、走り込んでいたラモンが独走、足下のボールを止めに行った土肥が脚を手で払ってしまいPK。これをラモンが確実に決めてヴェルディ先制。相手の状況を考えても、試合の展開を考えても、全くもって最悪の失点だった。

 優勢に進めていたゲームだけに、こんな形で落とすわけにはいかない。東京はすぐさま反撃を開始する。右の加地に加えて金沢も猛然と攻撃参加、さらにジャーンもチャンスと見るや前線へ上がっていく。26分、金沢のクロスに阿部が飛び込むが、ヘディングシュートはわずかに枠を越えた。32分には金沢のミドルシュートを高木がはじき、混戦からこぼれた球を再び金沢が拾ってゴール前フリーのケリーに送るも足下に入りすぎてトラップ失敗。あと一歩、あと一歩なんだが…。37分、消耗の激しい石川OUTで馬場IN。しかし、この土壇場で投入されて流れに乗るのは難しい。馬場はそれなりにボールに触るのだが、そこでスムーズに次のパスが出ず流れが悪くなっている印象であった。41分、その馬場が阿部とのワンツーパスでペナルティエリア付近まで進むが、シュートを躊躇しているうちにタイミングを逃してブロックされる。

 刻々と時間は過ぎていく。ヴェルディは最後の力を振り絞って前線からプレッシャーをかけ、東京はなかなかボールを前に進めることができない。しびれをきらしたスタンドからはおなじみ「シュート撃て!!」「動け!動け!」のコールが飛ぶ。ジャーンはもう上がりっぱなしになってパワープレイの態勢か。44分、後方からの浮き球をジャーンが頭でゴール方向に落としたところへ阿部が飛び込むも、一瞬早くヴェルディDFが追いついてクリア。さらにその直後ロングボールにヴェルディDFの反応が遅れてジャーンの足下にスッポリ入ったが、ジャーン本人もビックリしてトラップできず(笑)逸機、とうとうロスタイムに突入。そして46分、もはや詰める力を失った東京のゆるいDF網をかいくぐった飯尾のロングシュートがゴール左隅に決まり、勝敗は決した。終了直前に東京が得たCK、金沢のキックに反応しニアサイドにダイブした馬場がリーグ初得点。これで少しは溜飲を下げた、と言いたいところだが、とてもそんな気にはなれない。そのまま東京ダービーアウェイ戦3連敗が決まった。

 

 しっかし、いきなりプリミティブな物言いになって恐縮だが、よりによってあんな相手に負けちゃいかんよ。ヴェルディは昨年2ndステージ4位のチームでロリ監督の手腕にはそれなりのものがあるのだろうが、今回はエジムンド・マルキーニョスが抜けた上、レギュラーのCB2人と頼みの外国人FWと五輪代表MFを欠いていたチームなのだ。まあ、でもよく考えてみると、東京ダービーにおいてこちらが戦力的に見劣りすると思ったことは1度もないが、しかしその割に戦績はほぼ互角となっている。この日も試合前には東京サポーターが恒例の「ヴェルディ川崎〜!」「川崎帰れ!!」コールを飛ばしていたけれど、もしかするとそういった「負い目」や人気の面での劣勢が逆にヴェルディ側の「なにくそ!」という気持ちに火をつけているのだろうか。そう言えば東京のチャンスでも、いい体勢でシュートに入りかけたところ間一髪でDFがブロックに入るようなシーンが多かったような。

 東京の敗因は、試合のほとんどの時間において優位に試合を進めていたにも関わらず、先制できなかったことだ。この試合では攻撃面に関して、チャンスを作るところまでは今年1番の出来だったと思う。でも、フィニッシュにおいて精度が低いというかもう一つ突き抜けられなかったというか…。印象としては、ちょっと積極性が裏目に出たかな、という感じはある。前半、石川がフリーで前を向いてボールをもった時、ほとんどのケースにおいてシュートを撃つかクロスを上げることを選択していたのだけれど、でもオーバーラップに走っている加地を使えばもう少しいい形になるのではと見えた時も何度かあった(逆に先制されてからは、加地に預けすぎて加地が孤立していた)。可能性の低いロングシュートを放った時に、逆サイドでフリーになっていた選手が不満のジェスチャーをしていたこともあった。彼に限らず、前半に思い切りが良すぎ、後半にこね回しすぎのきらいはあったろう。逆になればそれでオッケーというものではないかもしれないが、ここらへんの塩梅はどう考えるべきか。

 あと、正直なところ選手起用にもちょっと違和感が残った。多くの人が思った通り、「なぜ馬場なのか?」ということである。阿部のサブはわかる。本来90分で使いたいところなのに怪我で難しく、アマラオも完調でないとなればあそこは予定通りの交代なのだろう(それにしてももう少し遅らせても良かったのではないかと思うが)。中盤万能の文丈を入れるのもオッケーだろう。ただ、もう1人控えに攻撃の選手を入れておくとすれば、想定される事態は「負けている、もしくは点を取りに行かなければならないのでアタッカーを入れる」というものであるはずで、そこで馬場は適当なチョイスなのかどうか。鈴木、あるいは福田(怪我してなければ喜名でもいいだろう)という選択が妥当なのではなかろうか。中堅冷遇と決めつける訳にはいかないが、どうも選手層は確実に増しているはずなのに選手起用の幅は広がっていないのが気になる。次々に若い選手が登場することに喜びを覚えていた昨年とはチームの状況もサポーターの見る目も異なるのである。

 個々の選手では、石川はだいぶ元気が出てきたような。ただ、上にも書いたように今度は自分でガンガン行き過ぎて加地とのコンビネーションがイマイチなように見えるのが心配だ(って、我ながら勝手なことを書いてるな)。宮沢は前で攻撃参加して軽快にボールをさばき、攻撃にリズムを作り出してくれていた。アマラオは攻守に貢献しているが、得点の香りは全くしなかったのがやや気がかり(我慢して前にいた方がいいかも)。ケリーはちょっとヒールパス連発しすぎ(笑)。阿部は相変わらず面白いが、ヤマタクあたりが相手になるとさすがに柏ザルDFのようにはいかないか?馬場君は立ちすくんで攻撃を止めるのをやめてください。DFは…1点目のミスは置いておくとして(笑)、相手の攻撃にスペースを与えてしまう割にCBにスピードがないのが東京の弱点だが、それにしても茂庭はちぎられすぎではないかい?あと、リードされてからちょっとキレた感じでガンガン上がる金沢は面白かった(いいぞ!)。

 まあ、次勝ってよ、次。


2003年目次へ            ホームへ