J1リーグセカンドステージ第10節 vs浦和レッズ 2003.10.18 味の素スタジアム

 

 

 サポーターの鼻息の荒さとは裏腹に、どうしてこの両チームの対戦はこう煮え切らないというか、華々しさに欠けるスコアと内容になるのであろうか。選手もスタンドの雰囲気に乗せられて「負けたくない」という意識が強くなりすぎるのか?

 

 前半開始。浦和の方はいつも通り、人数的には後ろがかりの、しかし前に残る3人が恐ろしく危険な布陣。数字にすると5−2−1−2と言えばいいのか?東京の攻撃時には5人のDFがピッチの端から端まで並び、その前のスペースで長谷部・鈴木啓太が横に動いてボールホルダーにプレッシャーをかける。一旦ボールをとるやエメルソン・田中の快速2トップ、あるいはその後ろで自在に動く山瀬へ即座にミドルパス!チーム全体がそのパターンに意思統一しているため、画一的ではあるが、しかし効率的でそれなりの強靱さを持ったサッカーができていた。東京が中盤から攻撃に移っても、浦和陣に入るやDFの多さにパスコースを失ってしまう。異様に多い「ミスパス」の数。そうした場合の打開力に期待がかかるケリーも、マンマーク気味にはりつく坪井に苦戦。さらに戸田の飛び出しも副審の怪しげなオフサイド判定(笑)に阻まれて次第に陰を潜め、序盤の東京はボール支配率で上回りながらもなかなかチャンスを作れなかった。東京の最初のチャンスらしいチャンスは22分、中盤で巧みなステップでキープした石川からアマラオへスルーパスが通り、アマがDFと競り合いながらシュート(GK山岸正面)まで持ち込んだものだった。

 浦和はエメ・田中の2トップにボールが渡るたびにサポーターが沸き、逆に我々には緊張が走る。田中はややサイドに流れた位置でボールを引き出してから縦にスピードで勝負するプレーが光った。11分には田中のドリブルでとったCK、エメルソンの鋭いキックがバーをかすめてヒヤリとさせられる。東京DFは、さすがにエメルソンは警戒して易々といい形ではボールを持たせないものの、疲れからか茂庭の動きが重く、スピードへの対処に不安が残る出来だった。

 東京の攻めをほぼ完璧に止めた浦和は、25分頃になると山田・平川の両ウイングバックが前へ押しだし、全体として前がかりに。セカンドボールを拾い、よりボールポゼッションを高める攻撃へ移行していった。左右からのクロスが増え、雨で濡れたピッチでもあり、東京にとっては危険な状況になっていく。エメルソンのシュートも見られるようになる。そんな中、ゴールライン付近まで攻め上がってフリーになりながら、「クロスを上げようかどうしようか」タイミングを見計らっているうちにラインを割ってしまった山田のひょうきんプレーは何だかほっとさせてくれるものがあった(笑)。そして、ここがサッカーの攻守の妙というか、浦和が前がかりになることによって浦和陣にスペースが生まれ、逆に東京のチャンスが生まれることに。26分、石川と交差してサイドライン際でパスを受けた加地のクロス気味シュートが山岸の頭を越してバーをかすめる。34分には右サイドでボールを持った石川が、ペナルティエリア内でDFを背負う文丈に楔のパスを当て、リターンを受けて一気にゴール前に突入、飛び出す山岸と交錯するような形で宙に舞った。すわ「PKか!?」と思えた場面だったが、しかし笛は鳴らず。

 その後は延々と中盤でのボール争奪戦が続く。怪我人が出ているのにプレーを止めない(止める判断力がない)浦和の幼稚さは相変わらずである。そして、「0−0で終わって、まあ御の字だな」と思い始めた後半39分、最も恐れていた事態が発生する。東京陣右サイド、ペナルティエリア角付近でエメルソンにパスが通り、茂庭との一対一の局面。エメは強引に縦方向に持ち出してモニのマークを外し、横からシュートコースに飛び込んでくるジャーン・ニアポスト脇で構える土肥をものともせず右足が一閃!ボールがゴールネットに突き刺さる。「あの角度から…んなアホな……」、エメルソンのシュートは都合3人のDFの壁を突き破った訳で、スタンドからは軌道が見えず、まるでボールがゴール内へテレポーテーションしたかのようなスーパーゴールであった。浦和側の真っ赤なゴール裏から重低音の歓声が響いてくる。

 東京も終了間際、石川のスルーパスからケリーがDFラインのギャップを抜けてペナルティエリア内でシュートを放つチャンスがあったのだが、山岸の好セーブに防がれる。そのまま1−0で前半終了。この時点(1点ビハインドの状況)で、何しろ相手が5バック(時には7バック(笑))で守ってくる浦和だけに、追いつくとすれば「宮沢のミドルか、セットプレー」という安易な考えが頭に浮かんだのだが、まさか本当にそうなるとは思わなかった(笑)。

 

 後半、立ち上がりから東京が反撃に出る。いきなりジャーンの攻め上がりが見られ、その勢いでとった2分のCK。宮沢の蹴った低く鋭いボールが浦和DFの間で待ちかまえるジャーンに向かって飛び、これをその前でカットに入った山瀬がゴール方向に蹴ってしまい、鮮やかなオウンゴール。満面の笑顔で宮沢に駆け寄るジャーン(だから私の観戦位置からは、一瞬ジャーンのゴールかと思えた)。当然、入った瞬間から東京ゴール裏はわっしょいわっしょいの大はしゃぎ。1−1。さらに5分には左サイドでアマラオがキープ、戻したボールを宮沢がダイレクトでクロスを上げ、ケリーがGK頭上を狙いすましたヘディングシュート!しかしこれは山岸が指先で見事はじき出してノーゴール。一方、浦和の方も別に押されっぱなしになってしまう訳ではなく(打たれたらすぐ打ち返せるのは好調の証か?)、8分には左サイド田中がドリブルでジャーンをちぎり、クロスが逆方向へ抜ける。これを右に流れて待ちかまえていた鈴木啓太が拾ってグラウンダーのクロスを入れ、エメルソンのボレーが右のゴールポストを叩いた。

 ここからしばらくは激しい攻め合いの時間帯。11分、左サイドに流れた宮沢からグラウンダーのクロス、これをアマが逆サイドの加地に流し、加地はカットに入る平川に足を払われながらもびっこを引き引きクロスを上げる(ファーへ流れて逸機)。この加地のど根性プレーには燃えた。15分には文丈のスルーから右サイド石川が抜け、クロスを入れるも戸田に合わず。17分、パスカットした宮沢が自陣から柔らかいスルーパス、アマラオがDFライン裏に抜けるが、ペナルティエリアぎりぎりで間一髪早く山岸が追いついてクリア。20分、またも右サイドに突出した鈴木からファーサイドへ好クロスが上がり、エメルソンが豪快に飛び込むが、加地が必死に飛んで交錯しながらも防ぐ(またも根性プレー!)。

 22分、文丈OUTで浅利IN。確かに予定通りではあったのだが、これで好パスを供給していた宮沢がより前に出られるのではないかと期待が高まる交代でもあった。しかし、交代後も宮沢の位置取りはそれまでと変わらず、むしろ守備的な浅利が入り、加えてこの辺りからアタッカー陣の足が止まりだした分かえって浦和の攻勢を招いてしまった感もあった(これは、決して浅利のプレーぶりが悪かったという意味ではない)。24分、田中が今度は右サイドで快足を飛ばしてクロス、グラウンダーのボールがまたしても逆サイドに抜けてヒヤリとさせられる場面になった。

 25分を過ぎると、浦和が完全にボールを支配。東京陣で波状攻撃をかけ続ける状態になってしまった。27分、エメルソンの折り返しからDFにぽっかり空いた穴に飛び込んだ鈴木がペナルティエリア内でシュート、わずか右に外れる。29分、ゴールライン際でゴールキックにしようとした茂庭がエメルソンにボールをとられ(ファウルにも見えたが)てあわやの場面(クロスが田中に合わず)。30分にはエメルソンのクロスを加地が頭でクリア、走り込んだ平川が強烈なミドルシュート、土肥が横っ跳びで弾き、さらにポストに当たったボールをジャーンがかろうじてかき出す。ほとんどサンドバック状態である。この時間帯東京側はDF・アタッカーともに足が止まっていたが、前に全くボールがつなげないのが何より辛かった。特に石川はほとんど歩いていたし、自陣からドリブルをしかけてボールを失う場面があるなど判断も悪化。一刻も早く「代えてやれ!」という感じであった。

 東京ベンチがようやく動いたのは36分。石川OUT、馬場IN。そして42分、これまた動けなくなっていたアマラオに代えて鈴木規郎を投入。前方で攻守に動ける人間が増えることでややレッズの攻勢も止まり、逆に東京が相手ペナルティエリアへ進入する場面も見られたが、しかし山岸の安定したセーブもあり、シュートまで持ち込めぬままロスタイム突入。結局、東京ゴール裏から「シュート撃て!」のコールも聞こえる中、タイスコアのままタイムアップ。最後はいい感じになりかけたところで時間切れになってしまった印象で、いささか残念さが残る終わり方であった。

 

 浦和レッズは、個々の選手が割り振られたタスクを忠実に果たすことによってオフト的サッカーを具現しているのは相変わらずながら、前回対戦した時に比べるとやや変化(進化?)が見られたようだ。ベタ引き5バックの前に並ぶボランチに鈴木啓太・長谷部といずれも「前の見える」プレーヤーを起用したことにより、速攻が決まらなかった時の「次の手」、この試合で言えば東京が引いてしまってからの時間帯に以前より味のある攻撃が見られた。サイドバックの攻め上がりも、より積極的になっていたように思う。最近の好成績がチームを好循環へ導いているのだろうか?個々の選手では、田中達也のスピードにはやはり目を見張るものがあった。(エメルソンはともかく)山瀬とはもう少しユニットとして動く場面が増えればより強力な攻撃になるだろう。頑張ってオーバーラップしていた山田には、失礼ながら全くやられる気がしなかったが、鈴木啓太の飛び出し・右へ流れてのクロスは非常に怖かった。坪井はまことに「まっとうな」センターバックに育ちつつあるように見える。山岸は相変わらずの安定したセーブを見せ、都築の穴を感じさせなかった。そしてエメルソンは……ありゃ人間じゃない(笑)。どうしてヨーロッパのクラブからオファーが来ないのだろう?

 東京にしてみれば、「負けなくて良かった」展開の試合。前半は立ち上がりから攻撃を完全に封じ込められ、反転攻勢に出てきた相手に終了間際の失点。これで後半追加点を許していれば完全に「負けパターン」だったのを幸運なオウンゴールで追いついたものの、勢いに乗って勝ち越せず、後半半ばからはほとんど自陣に閉じこもって耐え続ける展開となってしまった。ゴールポストに救われたシュートが2つ。どちらかが決まっていれば、追いつくのは非常に困難だったろう。勝点1をもって満足すべきなのかもしれない。が、しかし。残り試合数、首位との勝点差、上位に数チームがひしめく状況、そして何よりホームゲームということを考えれば、これで良しとしてしまっていいのかどうか。優勝を狙うのであれば、選手の足が止まって受け身に回っていた後半の15分間、まだ残り時間もたっぷりあったところでフレッシュなアタッカーを入れて勝負しても良かったのではないだろうか。失点のリスクももちろん増えるにせよ、「勝ちに行くんだ、勝たなければならないんだ!!」という意志の表れた交代が見たかった

 この試合、東京の側で特に傑出して出来が良かったり悪かったりした選手は見られなかったように思うが、茂庭はやはりアフリカ・欧州遠征の疲れが残っているのだろう、かなり体が重そうだった。その割にもう一人の「日本代表」加地は元気だったように思うが、トイメンが平川で守備の負担が軽かったからだろうか?いずれにせよ、今日の彼の根性プレーはグッと来た。宮沢はいくつかの好パスでチャンスメーカーの役割は果たせていたが、もう少し前へ上がって攻撃に絡む場面が増えればもっといいのだけれど(特に相棒が浅利の時)。石川は相手が5バックだった割にはきちんとえぐる場面もあったし、中へ入ってのスルーも効果的なのがあったし、及第点と言っていいだろう。戸田は、あの副審じゃ駄目だわな(笑)。規郎・憂太のヤングコンビ(笑)は出場時間が短すぎて何とも…。ケリー・アマラオはびっちりマークされていたからあんなもんだろう。今日みたいな相手だと、やっぱりその後ろのボランチがもうちょっと助けてあげないと苦しい。

 ま、何にせよ、これであと残りたったの5試合。首位ヴェルディ(!)との勝点差は5という状況である。上位が僅差でひしめいている状況なので正直なところ優勝まで行くのは難しいと思うのだけれど、諦めるのはまだ早い。あとの対戦相手を見れば、清水、神戸、G大阪、東京V、柏。合言葉は「5連勝」。東京ダービーで首位に立って、日立台で優勝を決めよう。1人で勝手にそんな想像を膨らませている秋の夜長である(笑)。


2003年目次へ            全体の目次へ