J1リーグファーストステージ第11節 vsベガルタ仙台 2003.7.6 味の素スタジアム

 

 

 1ヶ月以上にわたる中断を経て、久しぶりのリーグ戦。前日の試合で首位磐田が敗れ、その他の上位陣は軒並み勝点を伸ばした状況にあって、相手は4連敗中でしかも岩本・マルコス・シルビーニョという主力3人を欠く布陣のベガルタ仙台。優勝争いに食いつくためには絶対に勝点3を確保しなければならない試合だった。

 

 キックオフ。ベガルタは4バックの前に森保を底・財前をトップ下としてダイヤモンド型にMFが並び、その前で山下・佐藤の2トップが動く非常にきれいな4−4−2フォーメーション。ハーフの阿部・石井はさほど押し上げてこないため、動き回る2トップの足下にきれいなボールが入らない限り全体が引き気味のままで、こちらとしては正直あまり怖くないサッカーだった。サイド、特に岩本のいない右(仙台の左)は東京が制圧し、石川・徳永・宮沢らのパス回しから優勢に試合を進めることができた。強化指定選手の徳永は素晴らしい出来。相手の動きをよく見極めた守備でボールを奪い、そこから素早い判断のパス、時には鋭いドリブルで持ち上がって正確なクロスを次々に上げ、また逆サイドが空いていると見るやすかさずサイドチェンジ。スタンドはどよめき、ゴール裏から「徳永、トウキョウ!!」コールが飛ぶ。

 9分、右サイドのFKからゴール前混戦で茂庭が粘り、ファーでフリーになっていたジャーンがシュートを放つが、体勢が崩れていて惜しくも枠外。16分には右に流れた財前の巧みなクロスに阿部(仙台の方)が飛び込んで仙台初チャンスとなったが、これはジャーンが防いだ。22分、この日3度目の右サイドFKで宮沢がゴロを転がし、FKポイントから「さりげなく」離れかけていた石川がミドルシュートを打つサインプレー(DFブロック)。そして25分、今度はほぼ正面のFK、宮沢のFKは低く壁を越し、ググッと鋭く伸び曲がってゴール右隅に突き刺さった。コース・速度ともに申し分のない、まさに「ビューティフォー!!」なキックだった。宮沢らしい、ぎこちなく腕を突き出したガッツポーズ(笑)が飛び出す。

 これで一層流れは東京寄りになった。得点直後には右サイド思いきって飛び出した徳永からペナルティエリア内アマラオに正確なクロスが通り、アマはさらに逆サイドどフリーになっていた宮沢に流すが、ちょっとステップが合わなかったか枠外へ。28分、左サイドから阿部が切り込んでシュート(DFブロック)、そのこぼれ球を拾った石川が左サイドDFと併走しながらグラウンダーのクロスをGKとDFの間に通すが、ファーで足を出すアマラオが一歩届かずノーゴール。30分、徳永のアーリークロスに阿部が弾丸のような勢いで飛び込むも間一髪届かず。36分にはカウンターから阿部が左足(こっちも使える!)で正確なクロスを上げ、アマラオがトラップをミスしてはね返されるも金沢が強烈なミドルシュート、GK高桑が弾いたボールをケリーが押し込んだところでオフサイド。

 結局、10本打ったシュートで入ったのは宮沢の1本だけ。「流れの来ている」時間帯に追加点が取れないのは本当に悪い傾向だと思うのだけれど、しかし最近は私も慣れてしまったのか、あまり焦りを感じなくなったのはどうしたことか(笑)。良く解釈すれば「守備が安定している」ということだろうか。43分には逆に山下のポスト→石井のクロス→佐藤のヘッドという「これしかない」攻撃で仙台が決定機をつかむが、幸いボールはバーの上を越えてくれた。1−0で前半終了。

 

 後半が始まると、仙台はメンツこそそのままであったが、前半とはうって変わって前がかりになってきた。それまでなかったSBのオーバーラップも見られるようになり、3分には根本のクロスをつないで石井がペナルティエリア内でボレーシュートを放つ。続く5分、FWをスルスルと追い越した根本が今度は自らシュート、土肥が横飛びになってはじき出す。7分にはまた根本のクロスから山下がシュートを狙う(ヒットせず)。相手の圧力に受け身になった上に前半の攻め疲れもあったのだろう、東京はボールを奪っても目に見えて反応が悪くなった。徳永の上がりはなくなり、阿部は守備に追われて存在感を発揮できない。それでもバランスは崩れない(文丈が守備の意識を強めた)ので失点の危険はさほど感じないのだが、しかし1点差だけに少々薄気味悪い感じでもあった。

 後半も中頃になると、両チームとも動きが鈍って試合は停滞。東京は相変わらず押し上げがきかない少人数攻撃で、一方の仙台は財前に代わり福永を投入したものの、財前に比べると横の動きが少ないゆえか、攻撃のダイナミズムがかえって低下したように見えた。間延びした攻防がしばらく続く。

 後半半ばを過ぎたところ、東京は阿部に代えて戸田を投入。体力的にきつい状況で再び「点火」するのにこれほどうってつけのアタッカーはいない。交代の意図通り、東京の攻撃は再び活性化していった。29分、左コーナー付近でケリーがDF2人を引きつけてから中で上がるどフリーの宮沢にパスを通し、宮沢は逆サイドでやはりフリーになっていた石川へDFの間を抜くグラウンダーを送った。石川の強烈なシュートにはほとんどのDFも、GKさえも一歩も動けなかったが、ただ1人ファビアーノだけが絶妙の判断・反応でゴール内に入っており、寸前ダイビングヘッドでクリア。敵ながら、この試合のベストプレーに上げてもいいと思える素晴らしさだったと思う。その直後にも戸田のミドルが高桑の正面を襲い、さらに徳永のアーリークロスに戸田が頭から飛び込む(惜しくも枠外)。仙台は森保を下げてFW中原を投入し巻き返しを図る。

 34分、右コーナーで粘る中原から山下への折り返しにマーカーの金沢が振られて転ぶピンチも、戸田がペナルティエリア内まで戻っていてクリア。とにかくこの日の戸田は攻守に効いていた。そこからのカウンター、右サイドフリーでボールを受けた石川がクリアミス。ゴール裏からはブーイングと「シュート打て!」コールが飛ぶ。後半は相手が前がかりになった分石川のドリブルスペースは存分にあったのだが、しかしシュートとクロスとで判断を誤った(で、結果的に「強引すぎる」プレーになった)ような場面もそれまで幾度かあり、確かに物足りなさはあった。直後にフォロー(?)の石川応援ソングを合唱するあたり、ゴール裏も微妙に気を遣ってますな(笑)。35分、東京はアマラオに代えて馬場を投入。まさかと思ったが、なんと馬場はトップの位置に入ったのだった。馬場1トップ(笑)。一昨年天皇杯でケリー1トップというのはあったが…。

 追加点が奪えぬまま東京は40分、宮沢OUT浅利INで逃げ切りを図る。面白いことに、ダメ押しの得点が生まれたのはその直後だった。右サイドでDFと対峙した石川が思いきって縦に走り、速く正確なクロスを上げる。ボールはDFともつれる馬場の頭を越し、走り込んでいた戸田が右足で引っかけてゴールに叩きこんだ。高桑一歩も動けず。戸田らしい、左サイドからさりげなくDFラインへ入る動きが生んだ追加点だった。戸田と石川にそれぞれコールが飛ぶ。あとは浅利がいつもの迎撃スライディングタックルで相手チャンスの芽を摘み、馬場が背後からのタックルで暴れん坊ぶり(笑)を発揮し(イエローで良かったな)、ゴール裏は締めの歌(「青と赤の、俺らの誇り〜」)を気持ちよく歌って試合が終了したのだった。

 

 

 ベガルタ仙台は、苦しいチーム事情がうかがえるメンバー構成と戦術だった。ホームの東京相手に得点を取り合う気はさらさらなく、3ボランチ気味のフォーメーションで守りきって、あとは2トップ+財前の能力で何とか、という感じだったろうか。これで5連敗で、このままだと残留争いに参加してしまいそうな低迷ぶりである。この試合での明るい材料は財前・福永の復帰と、あと根本が高い能力を垣間見せたあたりだっただろうか。とにかく今の堅実なサッカーを続けて1つでも勝点を拾いつつ、欠場中3人の復帰を待つより他にないのだろう。まあチームの根幹が崩れた感じは全くせず、中位のチームともさほど勝点が離れている訳でもない(東京との差だって、わずか7だ)。清水監督とあの大サポーターが付いていればきっと大丈夫、来年の遠征(今年はスケジュール的に厳しい)では牛タンが食えるだろう…と思いたい(笑)。

 FC東京は、詰めは甘いがイケイケの攻撃安定した守備とが噛み合って勝利をものにすることができた。追加点をなかなか取れず接戦になるのはいつも通りだが、後半の選手交代(阿部→戸田)が当たり、攻撃が再加速していく感覚はなかなかに心地よいものだった。まずは1勝。「東京、奇跡の逆転優勝」のためには最低条件として5連勝が必要なのだ。残り4節、上位同士の対戦がほとんどないために「取りこぼし」を願う他力本願にならざるを得ないにしろ、最終戦の磐田戦に全てを賭けてみたい。浦和・清水・京都……全勝は現実的な目標だろう。

 この試合、何といっても良かったのは徳永。全く物怖じしないプレーぶりには舌を巻く。加地ほどの派手さはないにしろ、技術がしっかりして思い切りもあり、ドリブル・パスカットで足下からボールが大きく離れないので何やら安心感がある。いい選手だ。先制点をあげた宮沢は、FKだけでなく攻守にわたって要として活躍した。宮沢が前へ出た分文丈が攻撃では目立たなかったが、それは攻守のバランスを考えたからと思われ、そこら辺は中断期間中の練習の成果が出たのかもしれない。石川は十分な活躍を見せたけれども、後半のスペースをなかなか生かせずブーイングも浴びてしまった。まあ、期待が大きいゆえということで、すねないでちょうだいな(笑)。アマラオは全く得点の香りがせず、阿部も前半こそいいところもあったけれども後半チームが下がり気味になるとサイドで孤立してボールに絡めなくなった。この二人を併用するのはやっぱりいかがなものかと思う。特に阿部は、左足で正確なクロスを上げたりなまじっか器用なところがあるので何とか格好はついているが、本来はシュートを打ってなんぼの選手だろう。ストライカーとして育てたいのなら、今の(戸田や小林向きの)ポジションではなくトップで使うべきだ(馬場が使われていた位置で)。彼の奮闘を見ていると、どうしても福田の低迷ぶりが思い出されてしまう。その一方、戸田は素晴らしかった。チャンスになれば相手ゴール前に、ピンチになれば味方ゴール前にいつの間にか顔を出す彼の運動量とポジション感覚は貴重なものだ。戸田と言えば「部活サッカーの遺伝子を持つ男」だが、最近足技もけっこううまくなっているような気がするのだが、気のせいか?

 

 試合終了後、ヒーローインタビューを受けていた戸田と宮沢が2人でバックスタンド〜ゴール裏とあいさつに来た姿が、何やら漫才コンビみたいで面白かった。2人全く同じ揃った動作で、しかも妙に小刻みなステップで歩いて来るんだもん。お囃子でも流してあげたくなったよ(笑)。

 

[追記1]
 この試合レフェリーの布施さんは、けっこういい笛吹いていたように見えた。判定の基準が安定し、余計なイエローも出さなかった。少なくともこのレベルである程度満足できなければ、もう国内では岡田さんしかいなくなってしまう。不満の声を上げていた人もいたみたいだけれど、私の後ろに座っていた子供が「あんまりブーブー言ってると、審判が仙台(寄り)になっちゃうよ」とズバリ見抜いていた(笑)ように、余計なブーイングはしない方がいい。圧力ばっかりかけるとレフェリーが余計な意地張ることだってあるだろう。

[追記2]
 試合終了後に発煙筒のようなものを投げ込んだヤツ、場所(バックスタンド寄り東京ゴール裏?)から推測すると東京サポーターなのかもしれないが、だとしたら最低以下の行為だね。せっかく勝った試合、人によって取り方は様々かもしれないけれど、再開後緒戦を飾って「さあ頑張るぞ」という雰囲気になっている時にチームに迷惑かけて。何てことすんだ、アホ。


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