J1リーグファーストステージ第9節 vs大分トリニータ 2003.5.17 味の素スタジアム

 

 

 わずかな選手の入れ替えと、ほんのちょっとした2、3のプレーによる試合の「流れ」の急変。その怖さをスタンドにいる誰もが実感したゲームだったことだろう。

 

 東京が攻め大分が守る展開が予想されたこの試合、キックオフ直後にいい形をつくったのは大分の方だった。フラットな4バックの前に守備的MF2枚を置いた陣形はいかにも堅牢な印象で、東京の攻撃になかなかスペースを与えず、ボールをとるや吉田・ロドリゴ・寺川のアタッカー陣がサイドに流れてボールを受け、シンプルなパス回しで速攻を狙う。4分にはアタッカー3人が1タッチずつでパスをつなぎ、ペナルティエリア内で吉田がシュートを放つ(DFブロック)。9分にはロドリゴが低いクロス、フリーでペナルティエリア内に走り込んできた寺川のシュートがバーを越える。浅利の出場停止で今季初の三浦文丈・宮沢ボランチコンビとなった東京は少々中盤守備の網が緩い感じで、「もれてくる」アタッカーがいつもよりも目につく。が、この日は最後方に控えた茂庭が落ち着いてカバーリングをこなし、失点には至らない。

 そのうち、前へ出る姿勢・全般的なパス回しのスピード・個人技で上回る東京が次第に優勢となっていった。石川のスタメン復帰によりアマと阿部の2トップとなったが、阿部は従来のようなFWと左MFの中間的な位置ではなく、アマと同じかそれ以上に高くポジションをとっていた。阿部は先頭で左右に自在に動いてボールを引き出し、攻撃のリズムができていく。16分、中央にドリブルで入った石川からの左足の浮きパスに絶妙のタイミングでDFライン裏に出た阿部がGK岡中と一対一になるが、胸でのトラップがややずれてハンドの反則、惜しくも得点はならず。しかしその直後、石川のスルーパスに合わせ完璧なタイミングでスタートを切った阿部が再びオフサイドトラップを破り、外から巻くカーブをかけたシュートを放つ。これが岡中の脇をきれいに抜いて東京先制。阿部らしく一対一の局面でも全く慌てることのない、まさにゴシック書きで「決定力」とタイトルをつけたくなるような得点シーンだった。

 調子づいた東京は宮沢も左前に高く進出、グラウンドの幅を広く使った攻撃で追加点を狙う。23分には加地のクロスがDFの間でフリーになっていたケリーの頭にドンピシャで合うが、シュートはゴールわずか左へ外れる。この日は文丈と宮沢が前へ出て攻撃の起点を高く保つことでケリーのプレーエリアも押し上げられ、「こねくり回す」悪癖の出にくい位置で攻撃に専念することもできていた。しかし、右から左から揺さぶられながら、東京側の僅かなパスぶれもあって、大分の守備陣形は崩壊しない。むしろ、守備の薄いボランチ付近から東京DFラインのギャップを狙って幾度かいい逆襲を見せた。27分、MF梅田(?)がキレのあるドリブルで中盤を疾走、前でDFラインのギャップを突破したFW高松に決定的なスルーパスが通りかけるも、わずかに足が届かず。

 30分には加地が右サイドで石川をオーバーラップして完全にDFを振り切るが、余裕がありすぎたのが災いしたか、丁寧すぎるゴロのクロスはアマラオまで届かず。36分、やはりDFラインの穴に梅田が走り込んでシュートを放つが、これは金沢がブロック。43分には左に流れてパスを受けた阿部がDFを体半分ずらしてゴール右上隅を狙うも、シュートは枠をとらえきれず。ロスタイム、大分のタッチの少ないパス回しからペナルティエリア正面の高松にボールが入るが、茂庭が一対一を制してピンチを逃れる。結局、東京がリードを保ちつつも、一方的にはならないまま前半が終了した。

 

 後半になるといきなりスコアが動いた。2分、ペナルティエリア脇でスローインを受けたケリーはそのままゴールラインと平行にドリブル、DF2人を巧みなステップでかわし、最後はトゥキックでゴール左サイドネットに蹴りこんだ。間髪入れぬ個人技にサンドロも岡中も動けず、2−0。これで東京の優勢は明確になった。ボランチコンビとDFラインの連携は慣れのせいか前半に比べても良くなり、三浦・宮沢は裏をとられることなく中盤を制す。ソリッドな守備陣形を保つ大分DF相手に決定機はなかなかつかめないものの、ボールは完全に支配、失点の危険を感じることもなく時計を進めることができた。58分、右サイドでの細かなパス交換から石川がスルーパス、文丈が一気に抜けるも、グラウンダーのクロスは阿部に合わずノーゴール。その直後には石川のミドルシュートが岡中を襲う。この日の石川はパス・シュート・ドリブルと多彩な技を見せてくれて出来は非常に良かった。63分には、石川が今度は右サイドからドリブルで切れ込み、右足アウトにかけたクロスでケリーを狙うが少しずれて逸機。そこからのカウンターで寺川に通りかけたスルーパスは加地がスライディングしてクリア。

 あるいはこのままの流れで最後まで行ってしまうのかとも思えたが、しかしそうは問屋が、いや小林監督が許さなかった(笑)。22分、大分はDF山崎OUT、MF内村IN。3バックにしてアタッカーを増やし、反撃態勢を整える。25分、金沢とのコンビプレーでペナルティエリアへ突入したケリーがシュートを放ち、これは久々の決定機だったがボールはGK岡中の正面を突いてしまった。27分にはペナルティエリア外でこぼれ球を拾ったMF小森田へのチェックが遅れ、強烈なロングシュートを土肥がパンチング。そのはね返りも梅田の足下に入ったが、宮沢(金沢?)がスライディングでブロックして難を逃れた。28分には左サイドを駆け上がった宮沢からファーサイドのケリーへクロス、わずかに届かずDFがクリア。30分には宮沢から右サイドへ流れた阿部へくさびのパスが入り、反転折り返したボールを石川が中へ入りながら受け、左足で強烈なシュート!ボールは岡中の手の先を抜けて「ガン!」と大きな音でバーを直撃した。大分側の交代から試合は確実に動きつつあり、両ベンチの動きが注目されたのだが……ここからの交代が、あれほど試合の流れを左右することになるとは。

 31分、まず大分がロドリゴOUT、アンドラジーニャIN。東京は33分に阿部OUT、馬場IN。阿部の交代は正直首をかしげるもので(アマラオを休ませるべきだろう)、馬場の投入も含め監督の意図を量りかねたが、しかし2−0というスコアを考えれば余裕の表れと受け取れないこともなかった。が、しかし、これが恐怖の15分間の始まりだったとは。馬場が入った直後、ケリーの頭越しのパスで右サイド石川が抜け、まっすぐ大きなストライドでゴールライン近くまで持ち上がってからクロスを上げる。ボールは石川に寄りかけた大分DF3人の頭上を抜け、逆サイドでは馬場がどフリーで待ちかまえていた。ボールが来る、飛び込む、頭で叩く、ドンピシャのヘディングに岡中の横っ跳びも届かない!……ボールはゴールポスト右外を抜けていった。スタンドで頭を抱えるファン多数。そして34分、ペナルティエリア前でボールを奪った茂庭が、チャンスを逸したチームに活を入れる意図もあってか、そのままドリブルで持ち上がり、右サイドの馬場にはたいてさらに上がっていった。この茂庭の動きは好判断に思えたのだが、しかし、さほど厳しいプレスを受けていたわけでもない馬場はここでパスを有村に当ててしまい、一気に大分はカウンターの態勢に。アンドラジーニャからペナルティエリア正面の高松に浮き球のパスが通り、高松は鮮やかなトラップ1発でジャーンをかわしてミドルシュート、ボールはゴール左上に吸い込まれた。1点差。東京にとってあまりに悪い流れに、スタンドに凍りついた雰囲気が漂った。

 もはや東京優位の形勢はどこへやら、ちょうど双方の中盤の圧力が弱まる時間帯でもあり、試合は一気に攻め合いの様相を呈することになった。36分、中央を持ち上がったケリーから左サイドフリーで飛び出した宮沢にパスが通り、速いグラウンダーのクロスが入るが馬場にわずかに合わず。チャンスと見たか大分は序盤の守備陣形をかなぐりすて、東京陣から果敢にプレス、一方の東京はアタッカー4人でその裏への逆襲を狙う。39分、左サイドへ回った石川が切り込んでミドルシュートを打つも、ボールはポストをかすめて左外へ抜けていった。その直後アンドラジーニャがペナルティエリア内でキープ、はね返りを内村がミドルで打つ。これは土肥が完全に抜かれるコースの枠内シュートで、見ている我々も心臓が止まりそうな場面だったがジャーンがスライディングでかろうじてブロック、続くシュートも茂庭がブロック。

 終盤は、まるでバスケの試合のような攻守交代サッカーに。41分、馬場の反転ダイレクトパスを起点に東京がカウンター攻撃、二対二の局面からケリーが石川へ決定的なラストパスを通すが、「なぜかオフサイド」。直後、アンドラジーニャが枠内にシュートを飛ばし、またしてもジャーンがブロック。43分には土肥のパントをアマラオが競り勝って落とし、馬場がDFと競りながら走り込むも、一歩早く出た岡中がキャッチ。その直後、今度はロングボールを高松がヘディングで落とし、ペナルティエリア内へ走り込むアタッカーの前にボールが落ちるが、ジャーンが一歩早くクリア。楽勝のはずが、追いつかれても全くおかしくない展開になってしまった。

 44分には文丈OUT、藤山IN。とにかく相手のアタッカーを捕まえなければならない状態での藤山の投入は理にかなっていたが、どちらかと言えば宮沢に代えた方が自然だったような。さらにロスタイムにはようやくアマラオOUT、戸田IN。戸田は短い時間ながら活発に動き、石川の強シュートを岡中が弾いたところ詰め、あわやゴールという場面も演出した。さすが、最後に頼れるのは部活サッカーだ(笑)。結局どうにかこうにか逃げ切り、東京は勝ち点3をゲットしたのであった。

 

 大分トリニータの、序盤の堅実かつ慎重な戦い方は去年1年間を通して見られたもので、チームとして本来の持ち味が感じられると同時にJ1でのガチンコ勝負にはやや非力すぎるようにも思えた。あのまま終わっていたら、「来年はまたJ2かな」というレベルかもしれない。しかし、後半半ばからの積極的なサッカーは、「らしくない」反面、これまでの限界から一歩抜け出す可能性を感じさせるものだった。昨年J2を勝ち抜くのに最適なチームを作り上げた小林監督は、今季の数試合でJ1残留に向けた戦法修正の必要性を感じ、今懸命に改善を図っているということかもしれない。戦力的にはどこまでも苦しいが、しかし高松の個人技、梅田の切れ味、アンドラジーニャの存在感などには見るべきものがあり、やりくり次第ではJ1残留の可能性は十分あるだろう。

 FC東京の側にとって、この試合の反省点はやはり選手交代だろう。阿部→馬場の交代ははっきり大悪手であったと思う。もちろん、監督は確固たる意図を持って断固として采配をふるうべきであって、それが結果的に裏目に出ることがあるのは仕方がない。が、この試合の用兵は意図も量りかねたし、理屈としてもっといい選手起用はあり得たように思う。阿部を代えてアマラオを残したのは、おそらくアマラオに今季初得点を取らせたい気持ちがあったのだろう。馬場にも経験は積ませたかったのかもしれない。でも、それらはこの日攻撃の核となっていた阿部を代えてまで優先されるべきことなのか、どうも首をひねってしまう(阿部が怪我をしていたとかいうのなら別だが)。

 あと、この日注目していたのは、昨年の開幕戦以来となる宮沢・文丈コンビ。まだ1試合しか見てない段階での感想としては、やっぱり中盤の守備(特に受け身になった時)はちょっと緩くなるのかな、と。守備の面での安定感だけなら、どちらかの代わりに浅利が入った方が上だろう。ただし、攻撃面では、効果的に前に出られる枚数が増えるのはやはり大きいと思えた。特にケリーが前向きになれるのが良い。まあここら辺は相手の布陣、力関係にもよるわけで、一概にどちらがいいとも言えないが、個人的な感想としては攻撃サッカーを指向するからにはやはり宮沢・文丈コンビを軸に、オプションとして浅利もいる、という形が相応しいのではないかと思う。

 個々の選手では、阿部が本来のFWの位置に入って持ち味を発揮、攻撃の中心となっていた。彼を生かすには、とにかくシュートを打てる位置でボールを渡すことだ(そこでチャレンジしてミスるのは別にいい)。この日は石川も好調だった。ここのところ可能性の薄いロングシュートが目立っていた彼だが、このゲームでは縦に抜けてのクロスあり、切り込んでのシュート・クロスあり、スルーパスありと多彩な技で大いにスタンドを沸かせた。このプレーなら何の文句がありましょうや。文丈はゴール前への飛び出しも復活してコンディションが上がってきている模様。宮沢もいいバランスどりをしていた。加地はちょっとつまらないパスミスが多い。金沢は攻撃で存在感がない代わりに守備で魅せた。ジャーンはやや裏をとられる場面が多かったが、ナイスなシュートブロックで帳消し。土肥ちゃんはノーミス。茂庭はカバーリングが光ったし、失点直前の上がりには熱いものが感じられて良かった。馬場君は、シュート外してもパスミスしてもいいから(よくないけど(笑))、とられたボールをもっと懸命にとりかえしに行ってくれよ。サポーターにそっぽ向かれかけてるぞ!!あと、アマラオに得点の香りがほとんどしないのが気になるね。

 

[追記]
 この日は、スタジアム周辺に綿のようなものがやたら飛んでいて、口に入ったり顔にあたったりエライことであった。ポプラの胞子だという話だが、選手のプレーに影響はなかったのだろうか。


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