J1リーグファーストステージ第4節 vs名古屋グランパス 2003.4.19 味の素スタジアム

 

 

 キックオフ直後から、優勢に試合を進めたのはFC東京の方だった。この日の名古屋DFはなぜかユルさが感じられ、数は揃っているのにさほど圧迫感が感じられない。東京はいつもより特段攻守の切り替えが早いわけではなく、またアマラオも動きが重かったが、それでもケリー・宮沢の軽快なパス回しで両サイドからチャンスを作っていく。まず5分、宮沢のFKがゴールを襲い(GK楢崎キャッチ)、8分にはDFラインに空いた穴を見た石川が強いロングシュートを放つ(楢崎キャッチ)。12分には右ショートコーナーから、宮沢が上げた左足アウトサイドに引っかける技巧感満点のクロスをアマラオがジャンプ一番頭で合わせ、シュートがゴールわずか左上に外れた。

 名古屋は攻撃時にも全体としてダイナミズムを欠いており、アタッカーの動きが乏しいためパスコースが見つからず、後方で延々パスを回しては可能性の低いロングボールをウェズレイ・ヴァスティッチの2トップに合わせる単調な攻めが目立った。藤本も前方でのボールタッチが少なく、恐れていた右サイド岡山のオーバーラップも回数は非常に少なかった。18分にペナルティエリア内でのチェックが多少緩んでウェズレイにボールキープされ、DFのコミニュケーションミスも重なって冷や汗。22分にはようやく藤本から岡山にタイミング良くパスが出る。が、いずれのクロスも合わせるアタッカーが上がっておらず、決定機にはならない。序盤の名古屋のチャンスはこの2回だけで、ヴェルディ戦と同様、ミスさえなければやられる雰囲気は全くなかった。

 となればあとは早く先制点を奪うことが肝心。24分、中盤のパス回しからケリー→アマ→ケリーのワンツーパスが決まり、ケリーはスピードに乗ってDFパナディッチ(禿)をもかわしてGK楢崎と一対一に。紛れもない決定機だったが、ケリーは中途半端なループシュートを放って軽くキャッチされてしまう。26分には敵陣でボールを奪いカウンター、アマのラストパスから石川のミドルシュートはまたしても楢崎がキャッチ。27分、石川が今度はループ気味のシュートを撃つもバーを越えてしまう。28分には宮沢の絶妙ロングパスで戸田がDFを置き去りにして独走するが、楢崎が判断良くペナルティエリア外へ出てクリア。なかなかゴールにまでは至らない。崩しきれていないと言えばそうかもしれないし楢崎の好守(さすが代表の正GK、と言っておこう(笑))もあったのは確か。でも、原監督が「うちの選手はホントにシュートが下手で…」とこぼしていたらしい、という話がはっきりと脳裏に蘇った(笑)。

 石川のスーパープレーが出たのは35分。敵陣右サイドでDFの緩慢なパスをかっさらうと、そのまま斜めに切り込んで迷わず勝負。追いすがるDF2人を力感溢れるドリブルでちぎった瞬間に左足でシュート!!強烈なボールはジャンプした楢崎の手の先を抜けてバーを直撃、「ガン!」と大きな音をたて、はね返って楢崎の足経由で(笑)ゴールの中へ吸い込まれた。久々にハマった、石川らしい豪快なアタッキング。フィールド中央へ駆け戻って天を仰ぎ、ガッツポーズする石川。東京側スタンドはもちろん総立ち。「石川ー、東京!!」のコールが飛ぶ。フライング・ジャパニーズが帰ってきたぜ!!

 その直後、ケリーが性懲りもなく(笑)ループシュートを打って枠を外す。さらに38分、楢崎のクリアがオフサイド崩れになり、藤本がDFライン裏へ抜けてまたまたループシュート。これは土肥の頭を完全に越したが、しかしバーの上側に当たってノーゴール。これほどループシュートが見られる試合というのも珍しいと思うが、しかし1本も入らなかったのは問題だろう(笑)。40分には宮沢が敵陣でボールを奪い、金沢の上がりを待ってパス、金沢はそのままペナルティエリア内まで入っていくがドリブルが大きくなったところでDFにカットされてしまう。そのまま1点リードで前半終了。終盤アマラオが明らかに痛めた足を気にして走らなくなってはいた(それを見ていた東京サポーターから「早く終われ!!」のコールも飛んでいた)けれど、まあ控えに阿部も入っていることだし、このまま行けば勝利は間違いなし、というムードですらあった。

 

 後半開始直前、東京ゴール裏からお約束「ナラザキー、東京!!」のコールが飛んでいたのはまあいいとして(笑)、第4審判が選手交代の背番号ボードを2枚持って登場したのには少々驚いた。一瞬アマに代えて阿部かとも思ったのだが、出てきたのは2人とも赤いユニフォーム。しかも岡山・酒井を下げて原・山口を投入といういかにも「フォーメーションいじります!」という感じの交代。名古屋の試合をあまり見ない私としては、最初「アタッカーを増やす」ということくらいしかわからなかった。一方の東京は前半のままのメンバー。アマラオの過労死は近い。

 後半も出だしは東京が攻撃ペースを維持する。4分、右サイドに流れた宮沢が好クロスを上げ、戸田がバックヘッドでゴールを狙うが楢崎がかろうじてCKへ逃れる。7分には戸田の反転パスで石川とDFが競争しながらペナルティエリアまで進入(クロスを上げる前にもつれ倒れて逸機)。しかし、ここから流れは一気に名古屋へ傾く。

 名古屋は3トップ気味のフォーメーションに変更、FW原を右前に張らせて金沢の斜め後ろのスペースを狙わせる。確かに柏戦でもヴェルディ戦でも見られたようにここは東京のウィークポイント。ヤバいというのはすぐにわかった。脇腹を突かれて「イテテテテ」みたいな(笑)。10分、原が金沢を抜いて(この時点で既に3度目くらいの)突破、クロスがペナルティエリア内の藤本に渡ってシュート(DFブロック)。11分にはウェズレイがゴール正面へ持ち込んでシュート、これもDFが寄って何とかブロックするが、こぼれ球を拾ったヴァスティッチのシュートが枠をかすめる。東京は左サイドを鮮やかに破られたことで浅利がそちらをケアせざるを得なくなり、ペナルティエリア正面の守備が薄くなってしまった。さらに宮沢がそのスペースを埋めにかかることで全体的に布陣が引き気味になり、せっかくボールをとっても前線で孤立したアマラオ(すでにヨロヨロだった)が味方の上がりを待てずして潰され、すぐ相手ボールになってしまう悪循環に陥ってしまう。そして14分、ペナルティエリア左前でチェックが遅れた(DFが原に釣られていた)ところでボランチ中村が豪快なロングシュート、土肥の横っ跳びも届かず逆側のサイドネットに突き刺さって同点。さらに18分にはウェズレイ(ヴァスティッチだっけ?)と茂庭が一対一になる超スリリングなシーン(笑)もあったが、シュートを土肥がキャッチして難を逃れる。

 東京はどう見ても足を引きづり動きの悪いアマラオを代えるべきなのだが、しかしそんな時こそ我らがじー様は頑張る姿を見せてしまう。アマはなかなか届かないながらボールを追い、20分、右サイドでDFをかわしてから自ら中へ切れ込んでシュート、しかしGK正面。そして23分、ようやくアマラオOUT、阿部IN。やれやれ。その直後、またDFのチェックに乗じてヴァスティッチがミドルシュートを放ち、これがDFの足に当たってペナルティエリア内フリーになっていた藤本の足下に!この絶体絶命の場面、土肥ちゃんがスーパーセーブではじき返してしのぐ。今季も、彼のおかげでもう何点分救われていることだろう。このプレーによってチーム全体がやや息を吹き返したような印象だった。勝ち越し点目指し、再び攻撃が始まる。

 29分、右に流れた阿部が低いクロスを入れ、ペナルティエリア前胸で受けたケリーがターンしようとしたところでDFと絡まり倒れ、笛が鳴る。「FKか!?」。しかし、悪名高い(笑)「スペシャル審判」の柏原氏は無情にもケリーにイエローカード提示。確かにどちらのファウルともとれる場面ではあったが…少なくとも一方的な行為ではなかったし、ましてシミュレーションではあり得ないのだから、警告はないんじゃないの?スタンドからは「くそレフェリー!!」の声が響く。

 それでもめげずに攻勢に移る東京。30分、ケリーが右サイド突破、中央への折り返しを受けた石川がダイレクトでペナルティエリア内の阿部へ入れるが、DFに絡まれながら打ったシュートはゴール右外へ。31分、左サイド阿部からの浮き球スルーで戸田がDFの裏をとったが、これまた楢崎が一歩早く追いついてノーゴール。33分には戸田に代えて馬場を投入。34分、後方からの長い浮き球をポストに入った阿部がDFに引き倒されながら落とし(つーか、FKだろこれも(怒))、ケリーがシュートを打つもDFブロック。41分には馬場のスルーパスが右サイドから斜めに切れ上がる石川に通りかけるが、滝澤の決死の(というか危険な)タックルが決まって逸機。結局、1−1のまま試合終了となった。

 

 この試合、FC東京にとっては勝てるチャンスは大きかったし、彼我の出来の差を見てもシーズンの流れを考えても勝たなければならない試合だったと思う。勝ち点3を逃した要因としてぱっと思いつくのは4点。もちろん一つは東京の「決定力不足」。「そんなのは前からじゃないか」と言われればそれまでだが、でも「決定力」そのもの以前に、何か今年の東京、変な(可能性の低い)シュートがやたら多いように感じられる。特に石川と宮沢。「シュートが下手」というよりも「そんな態勢から打っちゃよっぽどシュートうまくないと入らないよ」みたいな。もちろん、打たないと「シュート打て!」って言われてしまうのが辛いところだが。それから、2つ目はベルデニック監督の思い切った采配。1点ビハインドの状況で攻撃的に行かなければならないのはもちろんだが、そこで酒井・岡山を一気に下げられるのが凄い。まことに理にかなった交代だし、チームとしてそれができる対応力があるということでもある。交代だけで一気に形勢を逆転させてしまった。それに比べると最近の東京は戦術的な柔軟性に欠けてるんじゃないの?というのが第3の点。試合前の状況・試合中の戦況に関わらず、交代のパターン(誰と誰を代えるか)と時間帯が相当程度固定されてしまっているのが気になる。今日だったらアマラオは前半だけで代えるべきだったろう。駒は増えているはずだしまだシーズン序盤なのだから、あまりコンディションの良くない選手に無理をさせてもらいたくもない。そして4つ目に挙げるべきは、楢崎の好セーブだ。この日の彼は、アンラッキーな失点(笑)はあったものの、それ以外ではミスなく東京のシュートをセーブし続けた。「世間で絶賛するほどうまくない」というのが楢崎のプレーについてのかねてからの感想なのだが、この日は素直に「やるなあ」と思ってしまった。

 東京の個々の選手では、石川はあのシュート一発で合格点だろう。これで吹っ切れてどんどんキレの良いアタックを見せてもらいたいものである。ただ、「中へ切れ込む」動きに「ゴールライン際をえぐる」プレーが加わってくれば言うことなし、とも思うが。あとはケリーのキレ、宮沢の判断の速さ・パスのテンポの良さが光った。宮沢には、名波みたいな「俺が攻撃を束ねて試合を動かしてやるぜ!」という意志が加わればもっと大きくなれるんじゃないかと思う。金沢は前半もっと積極的に前へ出ても良かったかも。加地は石川のシュート意識の強さにやや置いてけぼりを食っている印象。浅利・ジャーン・土肥は相変わらず頼りになるね。阿部はコンディションを割り引いて見ないといけないのだろう。そして、アマラオは……あの脚は、もしかしてもう直らないのだろうか。

 

 終了後、東京側スタンドは勝ち点3を逃した悔しさにため息が漏れる。名古屋の選手たちがホッとしたような表情を浮かべていたのは気のせいか?もちろん、帰りゆくスペシャル審判様には「くそレフェリー」との妥当な評価罵声とも言う)が浴びせられたのだった(笑)。


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