サントリードリームマッチ vsレアル・マドリード 2003.8.5 国立霞ヶ丘競技場

 

 

 試合開始20分くらい前に到着。スタンドは7割方が白。マドリーのレプリカを着て、カメラを構える女子多し。ハーフタイムにはアップしていたロベルト・カルロスやロナウドが軽く手を振るたびにマドリー側のゴール裏は「キャ〜!!」と大騒ぎになっていたな。まったく、マドリー好きなのはいいけどさ(私だって大好きだ)、彼らの極東戦略にそうまで簡単にホイホイ乗っちゃってからに。君たち、とっととマドリードに移住しなさい!!(というのは負け犬の遠吠えなので気にしないで下さい(笑))。

 

 今日はバックスタンドやや左(アウェイ)側で見ていたのだが、前半マドリーがこちらに陣取ったのを見て隣の席のヤツとか「前半はこっちサイドに来ないんじゃないの?」とか言ってたが、何を言いますやら。ある程度の目利きなら予想できたことだと思うが、暑い極東での移動続きでどう考えてもコンディション万全じゃないマドリー、親善試合ということもあって立ち上がりあまりアクセルをふかさず、のんびりしたパス回し。そこを狙った東京の部活プレスが襲いかかる。30分くらいまでは東京陣に入る方が少なく、東京がバシバシボールをとりまくってマドリーびいきのスタンドを押し黙らせたのであった。ベッカムの鋭いFKも我らが土肥様(笑)がナイスセーブ。宮沢がミドルシュートを狙い、戸田がゴール前に飛び出して決定機を作る(そしてシュートをふかす(笑))。

 まあ、それでも飛車角金桂馬落ち(問題です、誰がどの駒でしょう(笑))の東京、チャンスは作りながらも得点には至らない。前半半ばくらいから、ボールをとっても「さて、どうしようか」という感じでムダなつなぎをすることが多くなり、いかにも攻めあぐねの様相。で、そんな時間に加地がソラーリをペナルティエリアすぐ外で倒してしまい、FK。そりゃあの位置なら「蹴るだけなら世界有数」ベッカムは決めるわな。フラッシュ焚かれまくりの中低い弾道のボールが土肥ちゃんの指先を巻いてサイドネットに吸い込まれ、マドリー先制。これで一気に流れが変わってしまい、東京は足も止まり気味、プレスのかかりが一気に悪くなった。ロスタイムにはフィーゴ→ラウール→ポルティージョの目の覚めるようなパス交換から、こぼれ球をソラーリに押し込まれて0−2。

 ハーフタイム明け、ロッカールームから出てきた東京イレブンの顔は何だか死人のようだったが気のせいか(笑)。後半は阿部に代わってチャン君が入り、マケレレが引っ込んだおかげでドリブル突破ができ始めたケリーを中心とするパス交換でゴールを目指すが…いかんせんトップが馬場君だからねえ……。疲労の見えた宮沢を代えて梶山を入れ、さらに近藤祐投入により前線は「中学生日記」という感じのメンツに。一方マドリーはロベカルにロナウドと次々にスター軍団を投入、スタメンだろうと控えだろうとみ〜んな代表クラスだからたまらんよな。

 両軍とも疲れの出た後半半ば、マドリーは自陣への戻しも含めた速いパス回しを延々と見せ、東京の若い衆はヘトヘトになるまで走らされてしまった。それでも茂庭・藤山は懸命の守備を続け、土肥とゴールポスト(笑)の好セーブがスタンドのため息を誘う。終盤はHPゼロになった文丈に代わって浅利(東ガス社員。それでトヨタ杯王者とやれるんだからスゲエよな)が登場、さらにゴール裏の熱心なリクエストに応えて福田がピッチへ飛び出してそれなりに盛り上がったのだけれど、最後はロナウドがドリブルから目にもとまらぬ驚速モーションのシュートを突き刺して0−3。結局は完敗であった。

 

 今回は誰がどう見ても商業色満点の試合だったのだが、最後も表彰式、無得点のラウールが最優秀選手に選ばれ、途中から出てきて省エネプレーに徹していたロベルト・カルロスが優秀選手とされる「試合前から決まってただろ、お前」的な選手選考によりマドリーの選手たちの苦笑で幕を閉じたのだった。一般人向けに「わかりやすく」しすぎると、それは滑稽でしかないのだよ、スポンサーさん。

 終わってみれば非常にありきたりな結果というか、ベッカム「様」の先制点にロナウドのダメ押しと、国立のスタンドを埋めた「白いレプリカの人々」には大いに喜んでもらえたんじゃないだろうか。ふん、だ。いや、でも、確かにマドリードはすごかった。ベッカムのFKの鋭さにラウールのDFラインを混乱させるムーヴ、マケレレの守備範囲の広さ、そしてロナウドのシュートモーションの速さといった個人技ももちろん、組織としてのパス回しも飛び抜けていた。単に相手の穴を見つけるために回してるというのではなく、何と言ったらいいのか、守備の構造を解体してしまうような回し方ができているのだ。パス自体もボールを受ける(あるいはデコイになる)選手の動きも質が高い。足下に収めるトラップとダイレクトではたくパスの緩急、かさにかかって押し込む時と試合を落ち着かせるべき時の判断・意思統一も難なくやってしまう。ジュビロ磐田をさらに懐深くしたような、そんな印象だった。ガチンコの試合だったら並の相手は窒息死してしまうだろう。ただし、(完封されたチームが言うこっちゃないが)守備はあんまり強くなさそうな。どうも守備的ハーフは1枚で行くみたいだし、センターバックの補強をしないとマケレレは年明けを待たずして過労死してしまうのでは(笑)。

 FC東京は、いいところも少し見せたんだけど、最後突き抜けられないもどかしさは1stステージの戦いぶりそのままだった。ボールをどんどん回されてしまうと絶対駄目なのは誰もがわかっていたことだが、あのプレッシングを90分続けるわけにもいかないし、まあ今のところはこんなもんでしょう。土肥ちゃんは3失点に責任はなく、相変わらずのスーパーセーブ連発で大いに存在感を示せた。茂庭や藤山、金沢、あと宮沢も良かった。不満だったのは、阿部があまり勝負しなかったこと。サイドに流れてボールを受けた時、マドリーは阿部の特性を知らず中のコースを切っていなかったので、もっとシュートを打ちに行けばよかったのに。今日こそ代えられても仕方がないというか、どうも最近阿部ちゃんは小器用なプレーに走りすぎである。ロナウドの3点目を見習ってもらいたい。馬場君はこぼれ球をよく拾って頑張ってたけど、彼がボール持つと攻撃がスピードダウンしちゃうんだよね…。ケリーは切れていたしサイドはもっと突ける感じだったので、「ああ、これで石川(と規郎)がいればなあ…」と何度か思ってしまった。あと、近藤君のとりもちトラップにはシビれたね。

 ま、何にしても、実際に試合をしてみて、こういう機会があって良かったと本当に思う。藤山や浅利といった2部時代からの選手が世界のスタープレーヤーと同じ土俵で戦っていた光景には感激したし、全然かなわなかった(途中からは遊ばれてしまった)のは残念だけど、そういう実力差だってやってみなければわからないからね。世間が無謀だとか分不相応だとかやっぱり負けたねとか何を言おうとかまわないじゃないの。日本でレアル・マドリードと対戦したクラブチームはFC東京が初めて(だよね?)なんだし、この国で今レアル・マドリードと実力比較ができるのはFC東京だけなのだ。今は、偉大なクラブと対戦したことを誇りに思えばいい。もちろん選手は悔しいだろう。やる前にははしゃいだコメントも一部出ていたみたいだけど、でもハーフタイム明けの、そして試合後の表情は敗北の悔しさと実力不足への無念さに満ちていたように見えた。この思い、この経験を明日への糧にすればいい。何年後でも何十年後でもいい、再び、今度は真剣勝負の場で巡り会ってマドリーを破ることを目標に強くなっていけばいいのである。この試合は世界制覇へのステップの一つだ

 「誰が何と言おうと、周りは気にするな」。そう、志は、どんな相手にも負けず高く持っていこう。


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