ナビスコカップ予選リーグ vs柏レイソル 2003.7.2 日立柏サッカー場

 

 

 間近なピッチ、親切なボランティアのおっちゃんたち、「皆さんを心より歓迎します!」のアナウンス、そしてビールはサッポロ黒ラベル。スタンドが仮設だろうが屋根がなかろうがマルチボールシステムが機能していなかろうが(笑)、ここは何度来てもいいスタジアムだと思う。この日はちょっと風が強くて寒かったのが残念だったけど、わざわざ来て損した気には全くならない。

 

 柏レイソルはリーグ開幕戦やナビスコ4節の時とは全然別のチームになっていた。攻撃的な姿勢は前回と同じだが、アタッカーの内3人にブラジル人プレーヤーを配置し、FW玉田と合わせて4人がくるくる即興的に入れ替わりながら攻め寄せてくる。後ろではボランチに明神・下平、CBに渡辺毅を置いて中央を安定させ、その一方でSBに本来MFの永井を起用。アウレリオ監督のやりたいサッカーが段々と形になってきているのだろうか。東京側からすると、前の方に足下のテクニックに優れる選手が何人も揃うととにかく捕まえづらく、なかなか中盤でボールを奪取できない。風上のはずなのに序盤は押し込まれる形に。

 しかし、ベストメンバーの東京も黙ってはいない。カウンターからケリーの長いグラウンダーのパスを阿部が受け、もちろん勝負、放ったミドルシュートがゴールマウスを襲って(GK南、やっとのことでCKに逃れる)流れが変わる。前半半ばは東京ペース。ゴール前でのケリーの決定的シュート(枠上に外れる)・宮沢のFK(僅かにポストの左)等たて続けに東京がチャンスを作り、さらに加地のクロスも加わる。が、そこで決められなかったのが後々まで響いた。

 前半30分頃からか、柏のSBが上がりを控えて明神・下平が(主に外側へ)スペースを消すことに専念すると、塩川主審のコンタクトに甘い判定もあって石川・阿部の所でボールを奪われる場面が目立つようになり、逆襲警戒で後ろがかりになった宮沢・文丈とアタッカーの間が空いて攻撃は停滞した。中盤での追いかけっこ(柏アタッカーを宮沢・文丈らが追い回し、もつれ合う)→ジャーン・茂庭のところでようやくボールを奪ってクリア→しかし前につながらず、というシーンが何回か繰り返され、そのまま前半は0−0で終了。

 

 後半、始まってすぐに「これはいけない」と思った。おそらく監督の指示なのだろう、前半金沢が抜かれる場面が目立ったせいかそれとも後方からボールを引き出そうとしたのか、試合が始まった頃にはアマラオと並ぶトップの位置にいたはずの阿部が左サイドライン際に張りついてしまっていた。しかし、こういう形になっていいサッカーができたためしがないのである。「シュートから逆算できる」位置でこそ発揮される阿部の持ち味はすっかり消えてしまった。途中からケリーが代わりに左サイドを引き受けたり、逆サイドでは石川がレフェリングに対応してより大きな振り幅のドリブルで攻撃を活性化させたからまだ良かったようなものの、東京はアタッカーの数を自ら減らして戦うような形になっていた。ケリーが、アマラオが、後ろから脇目もふらず持ち上がった阿部が、右から強引に切り込んだ石川がミドルシュートを放つが、相手の守備陣形を崩していないだけに南にがっちりとセーブされてしまった。

 一方柏の攻撃陣は追い風になったせいもあって活性化、東京ゴール目がけてドリブルでどんどんボールを運んでくる。東京のDF陣はスピードに乗った相手を待ち受けて止める形になり、自然とファウルが増え、コーナーキックも増えていく。茂庭がスッポリきれいに抜かれたシーンはさすがに冷や汗が出た。柏のやや粗いフィニッシュ、土肥ちゃんの「見た目しょぼいが、しかし空振りだけはしない」(笑)パンチングとジャーンの超人カバーリングで、何とか失点だけは逃れる。そうこうしているうちに試合はまたも停滞気味に。

 後半中頃、アマラオと競った渡辺毅が倒れ、試合中断。柏イレブンはアマの肘うちを主張して主審を取り囲む。一方アマは「ジャンプして腕を上げた時にぶつかったんだ」と(なぜか玉田に(笑))アピール。まあ、事の次第はどうあれ、ここでお粗末だったのが塩川主審の仕切り。立ち上がれない渡辺をなかなか外に出さず、柏の選手も詰め寄らせるまま。無為な数分間が経過した後にようやく渡辺は担架で退場したが、そこからの試合はすっかりダレたものに。さらに、それまでもやや首を傾げたくなった塩川氏のジャッジはここから一層不安定に。とらなくていいファウルで試合を止めたり、それまではとらなかったはずのコンタクト系のファウルをとりだしたりと、スタンドから大いに非難のブーイングを浴びてしまった。ああいう時はさっさと外に出して、知らんぷりで試合再開しないと。

 で、0−0のまま時計は進んで、両ベンチの采配が注目されたわけだが、もはや予選突破の見込みもない柏は終了間際に左SB田ノ上に代えてMF大谷を入れただけ。一方の東京は、まず27分阿部に代えて戸田。阿部は私の贔屓の選手だが、後半の働きぶりは(気の毒でもあったが)物足りなかったので、この交代は仕方がない。アマを最前線に残して戸田が永井の背後を突いてくれれば…。しかし、それからたった5分でアマラオOUT鈴木規郎IN。規郎は当然左サイドハーフ、トップには戸田が入ることに…。うーむ。それなら阿部を残してアマ→規郎で良かったんでないかい?何より、勝点3を取りに行くのならもうちょっと早く動かなきゃならんのではないの?とは思ったのだけれど、もしかすると原監督は「負けるリスクをおかすよりは、最低1勝点をとる」という考えだったのかもしれない(注1)。戸田はそれなりに前線で奮闘、というよりゴール前混戦でピンチになった際に高さ50cmくらいの浮き球に頭から飛び込んだ姿が光り(VIVA部活サッカー(笑))、規郎はピンポイントのクロスをケリーに合わせる(ヘディングシュートは枠を外れた)も、得点には絡めず。結局0−0のまま試合が終了した。

 

 柏レイソルにしてみれば、決勝トーナメント進出は不可能な状況下での試合、いいテストになったことだろう。この試合を見た限りアウレリオ監督は持ち駒に相応しい戦い方をしているように思えた。「真ん中後ろを固めて、前はブラジリアン軍団の個人技を武器に攻める。単調になったら、外に開いてアクセント」。まあ常道と言えば常道ですわな。これでエジウソンもいたらすごかったかも、というのは言ってはいけないのだろうか(笑)。冗談はさておき、これで左サイドバックに平山がいたら持ち堪えられたかどうか全く自信がないのだが、攻守のバランスを考えて外されているのか、それとも怪我か?ともかく、開幕時の大根が並んでいるかのようなショボい戦いぶりを考えれば、見違えるように適材適所(永井除く。今のところ)の「戦える」チームになっているのは確かである。

 FC東京にしてみれば、ここで勝点3を得て予選突破をほぼ決めてしまいたかったところだが…。スムーズに行かないのがらしいと言えばらしいのだけれど。「引き分けでいい」というまでの意識はなかったにせよ、選手交代を見る限りやや勝ちに行く積極性に欠けていたように思えた。個人的には、もっと早く戸田なり規郎なりを入れて永井のところを突いてほしかった。選手交代の順序・時間帯は果たして妥当だったのだろうか。

 アマラオと阿部の2トップについては、正直言ってあんまり合っていないように思える。2人の役割分担が未整理というか、片方が上がったら片方がやや控えるというくらいの意識はあるようだけれども、しかしそれがどちらかの持ち味を殺す形でなされているというか。阿部という選手は左サイドハーフなどという形で使うべきではないし、「アマがポストに入り、阿部がシュートを狙う」形に収まらないのであればいっそ併用しない方がいいのかもしれない。また、守備に関しては、この日はDFがきれいに抜かれる場面が多かったのが気になった。金沢は攻撃で貢献が少ない割に守備の方も淡泊だったし、茂庭はカバーリングに入る時はいいけれども前に出るとちと弱めか。ボランチが宮沢・文丈だとDFラインとの連携(挟み撃ち!)が弱くなるという面が出たのかもしれない。右の加地も守備の弱さはあるがオーバーラップ・クロスは大きな武器で、やっぱり物足りないのは左だ。金沢があれくらいしかできないのであれば、藤山を使った方がカウンターの切れ味は絶対に出る。

 ついでに、この日スタンドに大いなるストレスをもたらした塩川レフェリーについて。私自身はボディコンタクトに厳しい判定は好みではなく、むしろややルーズな方が好みだったりするのだが、しかしショルダーとかならともかく足がかかっているのに吹かないのはやりすぎだろう。それと、やはりあの渡辺毅が倒れた場面の仕切りはいかがなものか。後半ロスタイムが3分しかなかったのも納得がいかない(渡辺と田ノ上の倒れていた時間だけで3分以上あっただろ!)。まあ、最後の方内心の動揺ゆえかレフェリングもぶれてしまったのは同情できないこともないし(どこかの「俺様エライ」審判ほどひどくない)、これからしっかり修行して(笑)(注2)もっと精度を上げ、スタンドも納得のいく基準で吹けるように頑張って下さい。

 

 好きなスタジアム、かつ1ヶ月あまりの中断後最初の試合と言うことで楽しみにしていた日立台だが、試合の方はイマイチすっきりしない結果となった。最終戦、逆転を賭けたベガルタとの(しかもアウェイでの)直接対決となってしまった。むろん勝ってくれるとは思うけれども(いや、引き分けでもいいんだぞ(笑))、次は平日の仙台。さすがに応援に行けないので、ネットで速報を見ながらハラハラするしかないのがつらいところだ。

 

[注1]
 ただし、同時刻に行われた仙台×横浜戦は横浜が圧勝して勝点を10まで伸ばし、結果、東京が勝点8、仙台は7となった。東京と仙台では得失点差で東京が上回っているため、この試合東京は負けでも引き分けでも「次の試合勝つか引き分ければ予選リーグ突破、負ければ敗退」ということに変わりはなかったことになる。そのあたりの情報は当然ベンチに入っていたはずで、単に様子を見ているうちに交代の時機が遅れてしまっただけなのかも。

[注2]
 終盤、オーバーラップから攻撃参加して脚をつらせた田ノ上に向かって、バックスタンドで若いアンちゃん2人を連れてたオッサンが「修行が足りねえぞ!年寄りだってつってないのによぉ!!」と野次って笑いを誘っていた。あと、そのオッサンは試合が停滞したと見るや、「土肥くんに向かってズドンと一発みまってくれよ!!」と叫んでいたが、GKに向かってシュート撃ったらゴールに入らねえぞ、と思った(笑)。


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