J1リーグファーストステージ第7節 vsガンバ大阪 2003.5.5 味の素スタジアム

 

 

 暑い日差しが照りつける中行われたこの試合、立ち上がりから優勢に試合を進めたのは東京の方だった。豊富な、まるで気温とペース配分を全く考慮していないかのような(笑)運動量で高い位置からボールホルダーを追い回し、ボールを奪っては左右に展開してチャンスを作る。特に活躍したのは先発起用2試合目の三浦文丈。とにかく動いて動いて右に左に前に後ろに顔を出しては味方を助け、DFライン・中盤から前線に至るまでの「潤滑油」として機能した。もちろん文丈が動いて空いたスペースはきちんと浅利がケアし、おかげでアタッカー4人は安心して攻撃に集中、それに加地・金沢の上がりも加わってガンバを攻めたてる。17分には加地からの速いグラウンダーを阿部がスルー、ボールがペナルティエリア内でアマラオの足下に入るが、シュートは惜しくもDFにブロックされる。

 この日のガンバは左SB新井場が試合前練習でのアクシデントで急遽欠場、警戒していた右SBチキアルセもさほど目立たず、サイドは東京が完全に制した状態になっていた。そうなるとガンバとしてはマグロンに当てるか二川・大黒が自力で持ち込むかというパターンしかなくなってしまうが、東京はDFもジャーン・藤山の分業補完関係、つまりマグロンの高さ・強さはジャーンが封じ込め、「浅利の網」から漏れてきたアタッカーは藤山が捕まえるという形が機能していた。特に藤山はその俊敏さを存分に生かして相手の足下からボールがわずかでも離れたと見るやさっと奪い取り、そのまま持ち上がって逆襲につなげていく姿が何度も見られた。時折偶発的に飛んでくるクロスやシュートは土肥ちゃんが無難にキャッチ。ガンバは暑さもこたえたのかラインをあっさり割ってしまうようなミスも多く、集中力さえ保てれば失点の危険はほぼ皆無だった。

 24分、阿部が左サイドでよろめきながらもスラロームのようにドリブルしてDF2人を抜き、グラウンダーのクロスがペナルティエリア内で待ち受ける戸田へ届くが、シュートは惜しくもブロックされる。直後のCK、ジャーンのヘディングシュートも枠の僅か左に外れた。26分にはロングボールを阿部がヘディングで競り勝って中央へ流し、突進するアマラオがDFの間を割りかけるも、スピードが足りずクリアされた。攻勢自体は変わらないものの、30分をすぎる頃には暑さが効いてきたのか、東京もガンバにおつき合いするような感じでパスミスが増えてくる。39分にはガンバ陣中央で阿部がトラップ・ターンであっという間にDF2人をかわし、アマ→ケリー→アマの壁パスがきれいに通る。前は開けており、決定機かとも思えたこの場面、しかしシュートはすんでのところでGK松代がCKに逃れた。毎度毎度のことながら決定力が足りず(というかシュートが全く枠に飛ばず)、無得点のまま前半終了。

 

 後半からガンバは中山投入。鬼の(笑)中1日連戦。開始直後、MF橋本が突如自陣からペナルティエリアまで一気にドリブルで持ち上がってシュートを放ち、少々ヒヤリとさせられる。3分には今度は阿部がペナルティエリア外から強烈なロングシュート、松代は弾くのが精一杯であったが、DFと競り合いながら詰めた戸田は僅かに届かず、チャンスを逃す。6分、文丈がペナルティエリア手前で待つアマラオにくさびのボールを入れ、文丈はそのまま駆け上がって折り返しのパスでフリーのままペナルティエリアへ突入するも、シュートはまたバーの上へ。ホント、またハラヒロミのぼやきが聞こえてきそうな枠内シュート率の低さであった。さすがにじれたか、東京は9分に戸田を外して石川投入、ガンバにおつき合いして鬼の連戦(笑)。

 ガンバは中山が左前方に張る形で加地の裏のスペースを狙う。何度かサイドを突破したのだが、しかし中へ折り返すか切り込むかする前にミスが出る(まだまだプレーの精度が低い)のでピンチには至らない。東京の方は次第にケリーの持ちすぎが目立つようになる。もちろん「苦しい時のケリー頼み」ということで彼に預けて苦しい体勢のまま放置してしまうこともままあるのだけれど、しかしパスコースが開いてフリーの選手が駆け上がっている場合でもなかなかパスが出ない。ボールをこねくり回しているうちにアタッカーはオフサイドラインを越してしまい、あるいはボールを奪われ、それが続くとただでさえ体力的にきついコンディションの中「無駄走り」を嫌うアタッカーたちが動かなくなってくる。3トップ気味になったガンバFWへの対処から両SBの上がりも減り、ますます攻撃は停滞する。18分から20分の間には、ペナルティエリア付近で延々パスをつなぐのにシュートまでは至らないという悪い攻撃の典型みたいなシーンも見られた(こういう時こそ「シュート打て!!」だね)。

 両チームとも中盤での守備が機能しなくなり、互いに一発のプレーでチャンスの形を作れるようになっていった。17分には後方からのパスがペナルティエリア内の中山にすっぽり入り(ループ気味のシュートは枠を外れた)、23分には石川が左サイドからスピードでDFを振り切りつつゴール前まで突進してシュート(ポストの僅か右に外れる)、さらに25分には今度は二川が右サイドから斜めに切り込んでシュートを放つ(枠外)。26分にはジャーンのヘディングがバーをかすめ、その後ガンバの波状攻撃から橋本のミドルシュートが土肥の正面を突く。この時間帯まだ東京側がやや優勢には見えたが、ゲームの流れをがっちり引き寄せるには交代によるブーストが必要に見えた。しかし、ベンチに入っているのは馬場・宮沢・茂庭……うーむ

 31分、阿部OUT馬場IN。続いて34分、文丈OUT宮沢IN。正直「これでは流れを変えるのは苦しいか?」とも思えたのだけれども、しかし幸運なことに34分ガンバの大黒が2枚目のイエローで退場。これで負けの危険性は大きく低下し、「勝たなければ」と、結果として自動的に攻撃のスイッチが入ることになった(のだろう、多分)。また、配球役となる選手が入ったことでケリーがゲームメイクよりもフィニッシュに絡もうとする意識が強くなり、それが最後に勝敗を分けることになった。35分に相手陣右サイドのスローイン、ガンバDFの虚をついてクイックなリスタートから石川が右サイドを縦に抜けクロス、ケリーのジャンピングボレーが決まったかに見えたがしかしワンバウンドしたボールはバーを直撃してはね返り、こぼれ球に走り込んだ宮沢のシュートもDFにブロックされた。ため息がもれるビッグチャンス。

 ここから後の数分間、東京はひたすらサイドから攻めたてることになる。ガンバDFの両サイドへの対応は明らかに後手気味で、とにかくそこを突けば何とかなるように見えたし、その通りに宮沢と浅利がサイドアタックを組み立ててくれた。39分、左からのクロスが逆サイドの石川に渡り、石川はドリブルで直角に中へ切れ込んでDFを引きつけつつペナルティエリア正面で待ち受ける宮沢へパス、シュートがGK正面を突く。そしてようやく決勝点が生まれたのは40分。今度は加地から、いかにも加地らしい弧を描いたクロスがペナルティエリアで(なぜか)フリーになっていたケリーの頭にぴたりと合い、今度こそシュートはゴール右隅へ吸い込まれた。我々をじらしまくり身をよじらさせてくれた(笑)ケリーの、おいしいどこ取りの得点。1−0。

 その後も東京は変に守りにはいることもなく、43分にはゴールを狙った宮沢のFKのこぼれ球を石川がミドルシュート(松代キャッチ)。ロスタイムにマグロンが頭で落としたボールがゴール前中山に入るピンチもあったが、しかし「まだまだ若いのう」という感じで慌ててシュートミスしてくれた(笑)ので事なきを得たのであった。2万7千人の大観衆の前で、今季初めての連勝。結果オーライであろうが何であろうが、勝点3は勝点3だ(笑)

 

 ガンバ大阪は、全くと言っていいほどいいところがなかった。昨年来の印象では「ガンバと言えばサイドアタック」ということで、両サイドがガンガン上がってくる攻撃的なサッカーを警戒していたのだが、新井場欠場はやはり相当痛かったのだろう、マグロンと二川さえケアしていればあとの攻撃は大したことはなかった。DFの方は最後左右に振られてチンチンになっていたけれども、宮本欠場自体はさほど影響がなかったのではないだろうか(と思いたい(笑))。五輪組の中山君は3トップの左なんぞやらされて、よく動いてチャンスを作っていたけれども、フィニッシュに持ち込む動きの粗さはいかんともしがたかった。というか彼は五輪代表の試合を見てもストライカータイプなのではないかと思うので、窮余の策とはいえちと気の毒でもあった。そういえば、吉原とか遠藤やっと(※追記1)とかはどこに行っちゃったんだろう。怪我?

 FC東京は、ボールを奪って攻めたてるところまではいいけれども決定機を作れないフィニッシュも決まらない、というある意味見慣れた(笑)試合運びであった。それでも勝てたのは完封したからに他ならず、この試合の一番の功労者は藤山だろう。ジャーンら味方DFとアタッカーが競ってこぼれたボールへの反応の速さ、背走してボールを追う際の落ち着きと判断、ボールを奪って前が開けているとみるやすかさず持ち上がる動き、いずれも文句なしであった。今後は相手チームも屈強なFWをぶつけてくるなど対策を立ててくるだろうしこのまま通用し続けるかどうかはわからないが、しかし「CB藤山」は今のところ今季一番の発見であり驚きである。また、三浦文丈のリンク・プレーヤーとしての動きもチームを大いに助けたのは間違いなく、ベテランが光った試合でもあった。五輪代表から「凱旋」の石川についてはスタンドでの期待が尋常ではない大きさで、もしかするとまた「切り込んでシュート」一辺倒になってしまうかとも心配したのだけれど、この日は縦に抜けてクロスを上げたりオーバーラップした加地をきちんと使ったりと、むしろ前よりバランスのとれたいいプレーをしていたと思う。その調子、その調子。

 あと、勝った時こそ良くないと思うところを2点。1つは本文中にも書いたが、ケリーの持ちすぎがチーム全体の前へ出る勢いを殺いでいるように見えること。東京の選手の基礎能力も上がってきたとはいえ相手を圧倒するほどではないのだから、何より少ないタッチで速くゴールを目指すことを忘れてはいけない。それにこね回してばかりでパスが出てこないのでは、周りのアタッカーも積極的に動くのをやめてしまうだろう(ウィルがいたら蹴られてるぞ(笑))。あともう1点、原監督がサブメンバーに関しては「控え」、つまり先発選手の次の実力ないしコンディションの選手を素直に選んでいるようなのが気になる。「攻撃的に行く」「守備を固める」といったオプションの観点が足りないように思えるのだ。それとも、あくまで90分同じサッカーをやり続けることを目指すのだろうか。1つのパターンしか持たないのではそれにはまる場合しかパフォーマンスを発揮することはできず、タイトル獲得(高勝率が必要)は難しいだろう。Jのベンチ入り枠5人は確かに厳しいが、ならば昨年のナビスコカップのような手だってあるのである。

 

 試合後、テレビ的に仕方ないと言えばそうなのかもしれないが、ヒーローインタビューがケリーなのはいかがなものかと思った。藤山だろ、藤山

 

[追記1]
 よく考えたら、遠藤出てましたね(笑)。でも全く記憶に残っていないのは本当。それくらい存在感がなかった。どうしちゃったの?


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