J1リーグセカンドステージ第1節 vsセレッソ大阪 2003.8.16 味の素スタジアム

 

 

 試合前、ゴール裏のコンコースになぜかモネールがいた(笑)。

 

 雨の中のキックオフ、快調な立ち上がりを見せたのは東京だった。出足鋭く前目からつっかけ、相手陣でたてつづけにパスカットして攻勢に。3分にはペナルティエリアすぐ外でFKを獲得、石川のシュートが枠内へ飛ぶ(GK多田キャッチ)。イメージどおりと言おうか、やはりセレッソは後方でのパス回しがあまり得意ではない様子であった。しかし、東京も有利な態勢でボールを奪うまではいいのだが、そこからなかなか決定機まで持ち込めない。特に石川の判断の悪さが目立つ。せっかく目の前に広大なスペースがあるのにわざわざ相手DF(と戸田・アマラオ)の待ちかまえる中へ入ってしまい、行き場がなくなって逸機というプレーが何度か見られた。彼はこの日全般的に動きにキレがなく、数日前までのU22代表エジプト遠征の疲れが残っていたのかもしれない。

 セレッソは最初の東京の攻勢をしのいで試合を落ち着かせるのに成功すると、本来の攻撃サッカーへシフトし始める。まず大久保・バロン・森島の3人にサイドの1人を加えて相手陣に攻め込み、DF網に突きあたって進めなくなるともう1人のサイドが攻撃参加。このオーバーラップにはしっかりとした決め事があるらしく、ちょうど「そこに来てほしい」タイミングでバッチリ上がってくる。セレッソ自慢の大久保・森島をDFがしっかりつかまえていたので崩された感じはなかったものの、特に左サイドは金沢が中寄りのポジショニングをとることが多いだけに少々怖い部分ではあった。14分、FKからバロンのヘディングシュートがバーを越す。

 また、この日はレフェリングに悩まされた。塩川主審は全般的に判定が不安定で、かつボディコンタクトに非常に敏感であった。アマラオには「偏見を持っているのではないか?」と思えるほど厳しく、また相手にヘディングで競り勝っても体をぶつけているとチャージをとられる(笑)ため、茂庭のプレーも何度かファウルにされていた。選手にはストレスがたまり、スタンドからはブーイングが飛ぶ。セレッソがボールを支配し始めた前半半ばはFK・CKが延々続くことになった。ただし、そこで入ってくるクロスは茂庭やアマラオがきっちりとはね返し続け、大事には至らない。

 押され気味になった東京は、今度は逆襲からチャンスを作る。20分、左サイ金沢からライン際を上がる石川にパスが通ってカウンターの態勢になり、ケリーがペナルティエリアすぐ外で倒されてFK。宮沢がファーサイド目がけて蹴ったボールにフリーで走り込むアマラオがヘディングシュートを狙うがきれいにヒットせず、さらにはね返りを金沢がミドルで狙うも枠をわずかに外れた。24分にはCKを茂庭が落としてゴール前にこぼれたボールに石川がスライディングで飛び込むが、これまたうまくヒットせず。そして26分、徳永が右サイドで持ち上がり、相手DFと対したところで中の石川を使って壁パス、見事DFを抜きさってペナルティボックス横から低く速いクロスを入れる。これにニアサイドでフリーになっていたアマラオが頭から飛び込み、ボールは逆側のゴールネットに突き刺さった。待望の、アマラオ今季リーグ戦初ゴール。それまでイマイチだったサイドをコンビネーションで崩し、速さで相手に何もさせない素晴らしい得点だった。1−0。

 先制されたセレッソは0−0の時以上に人数をかけて東京陣へ攻め込む。ボール支配は完全にセレッソ。しかしそれは東京にとっては慣れた展開であって、ボールをとられてもセレッソアタッカーを上回る人数があっという間に自陣に戻り、綻びを見せない。この日守備で活躍したのはなんといっても茂庭で、クロスをはね返しカバーに走り、またパスカットからダイレクトのスルーパスをアマラオに通して攻撃にも貢献、さらに奇妙な判定にアマラオが不服のジェスチャーを示しかけるとすぐに駆け寄ってなだめるなど、とにかく半年前とは別人のような頼もしい姿であった。「大きくなったなあ」。37分にはカウンターの態勢から大久保がドリブルで東京陣内に切りこみ、DFを集めたところで逆サイドの佐藤にパスを通すが、徳永が判断良くカバーに走って強シュートは許さず、土肥がキャッチ。41分には右サイドの久藤にスルーパスが通りかけるも、戸田がゴールラインまで密着マークしてクロスを上げさせない。終了間際には主審の連続する微妙な判定に東京のセルフジャッジが加わって雰囲気が悪くなりかけたところ、藤山がお得意のパスカットで攻撃の芽を摘み、そのままリードを保って前半終了。

 

 後半開始。当然、立ち上がりからセレッソはどんどん東京陣へ攻め入ろうとするが、しかしやはりDFライン−GKのあたりのコンビネーションに問題があるようで、自陣でもたついたところを東京のアタッカーがつっかけてさらに勢いを削ぎにかかる。6分、左サイドから戸田が上げたクロスにゴール正面でアマラオが飛び込み、間一髪多田が先に触ってノーゴール。9分、FKからのはね返りをアクセウが低く抑えた(雨の日の鉄則ですな)ミドルシュート、土肥が横っ跳びではじき出す。11分には右サイドからアマ→石川→アマ→中央のケリーとつないでさらに左へはたいて金沢がクロス、はね返りをケリーが狙うもDFブロック、さらにこぼれ球に石川がつめるが多田が思い切りのいいダッシュで防ぐ。15分、右サイド起点の攻撃から宮沢の浮き球でケリーがDFライン裏に抜け出しかけるも、あやうくDFが戻ってクリアした。17分にも石川のクロスがゴール前ではねたところをアマラオがボレーで狙うがクリアされる。

 とにかく東京陣に入ってボールを回すセレッソだが、しかし東京も自慢の分厚い守備網で対抗。セレッソのアタッカーが切り返して抜こうとすると2人目のDFが付き、さらに切り返すと1人目のDFが戻って、仕方なく横へはたくと既に3人目のDFが立ちふさがっている、という感じであった。セレッソの攻撃にも意図がよく感じられなかったということもあるが、ともかくボールの支配とチャンスの数は反比例していたように思う。8分に佐藤OUT原IN、16分にアクセウOUT古賀INの交代を行うも効果はさほど見られなかった。対して東京は20分に石川OUTチャンINの交代。石川のデキの悪さを思えば全く妥当な交代であったろう。21分には裏をとられかけた文丈が大久保を倒してFK、波状攻撃を受けるがゴール前に人の壁を築いてはね返す。23分にはその文丈を外して浅利を入れ、逃げ切りも見据えた布陣へシフト。回すセレッソ、引く東京。東京陣内での追いかけっこが延々と続く。25分にはゴール前の混戦から布部のシュートがゴールわずか右を抜け、27分には森島の低く速いアーリークロスを茂庭がカット。

 前半からそうだったが、この日の東京は攻撃時に縦方向にはスムーズだが横への判断は悪く、ボールを進めかけて相手陣に入ったところで停滞してしまう。一方のセレッソもそれなりに攻めてはいるが手詰まりの感は否めず、後半半ばを過ぎると試合は徐々にクールダウンしていった。東京側は苦し紛れのロングボールが多くなり、セレッソはそれに比べれば回している分だけマシ、という感じであった。このまま終われば「いつも通り」1stステージ何度となく見られた試合展開だったが……。31分、セレッソの左CK。原の蹴ったボールを一旦アマラオがはじき出すも、もう一度原がファーにクロスを上げ、金沢を押し倒すように当てた布部のヘディングがふわりと飛んで逆サイドのネットを揺らした。何とも運がないというか、あのヘディング、アマラオとか茂庭がとられていた基準に当てはめたらファウルなんじゃないの!?というか。まあ、金沢にはもうちょっと踏ん張ってほしかった。

 こうなってくると、東京もそれまでの慎重なサッカーを続けるわけにはいかない。引きがちだった徳永と金沢が高く位置をとって攻め込む。宮沢が、ケリーが、次々とクロスを放り込む。が、決定機には至らない。正直この時点では得点の臭いが感じられず、当然引き分けでは不満足の我々としてはアタッカーを増やしてほしいところだ。何しろ、ベンチには阿部がいるのだ。しかし阿部はなかなか投入されない。時計は刻々と進む。37分には戸田がペナルティエリア内で反転シュートを放つもGK正面をついた。「こんな試合を落としては、優勝なんて夢のまた夢だな」。暗い考えが頭をよぎる。結局、阿部が宮沢に代わってピッチに入ったのは39分になってからだった。

 そして。待ちこがれていた、「これしかない」と思っていた選手の投入であるにも関わらず、そこで阿部が見せたパフォーマンスは我々を驚かせてなお余りあるものだった。彼がピッチに立った直後のプレー。自陣のFKで土肥がロングフィード、それを左サイドでアマラオが頭に当て、大きくはねたボールがセレッソDFの間に飛ぶ。そこに迷いなく全速で走り込む阿部。トラップで巧みにコントロールし、ペナルティエリア内へ突入する。右からはDFが迫り、多田も前へ出てシュートコースを塞ぐ。シュートを打つことさえ至難の業と思われたが……そこで阿部は、のけぞって体勢を崩しながらもDFが追いつく一瞬前に右足アウトサイド(?)で球を浮かし、ボールはゆっくり、本当にゆっくりと多田の頭を越えてゴールの中へ吸い込まれた。技あり、というにはあまりに凄すぎる、ストライカーとしての技術と本能が炸裂したゴール。スタンドは総立ち。叫ぶ人間多数。疲れているはずの選手たちもダッシュで阿部に群がって喜びまくる。この1点だけをもってしても、FC東京は阿部を獲得した価値があったとさえ言えるだろう。凄すぎである。

 これで東京は俄然動きが良くなった。阿部はその後も徳永のクロスに合わせてヘディングシュートを放ち(バーの上に外れる)、さらに右サイドから思いきったロングシュート。43分にはスルーパスでDFライン裏に抜け出た戸田がシュートを放ち(多田セーブ)、44分にはケリーが左サイドをえぐって角度のないところからシュートを狙う(これも多田セーブ)。ロスタイムに入ってもゴール前アタッカーを狙うセレッソのパスを藤山がカットし茂庭がはね返し、3分間を守りきってタイムアップ。だれ気味の時間帯もあった試合を、終盤のスリリングな展開が救った形になった。

 

 セレッソ大阪は、もっと圧力を感じさせてくれる「攻撃サッカー」を見せてくれると期待していたのだが…。1失点こそくらったものの、さほど守備に追われたという印象でもなかった。セレッソが本調子じゃなかったのか、それとも東京のDFがそれほど強力になったということなのか、もしくは1st最終戦のジュビロの印象が強すぎるのか。両チームの今後をもう少し見てみないと何とも言えないと思う。セレッソの個々の選手では、あまり印象に残る選手はいなかった。森島は消えている時間が長かったし、大久保の動きも予測の範囲内だった。両サイドも地味め。布部が途中から前線に飛び出していくつかいいプレーをしていたのが目についたくらいか?

 FC東京の方は、とにかく幸先のいいスタートがきれてよかった、と言うしかない。はっきり言って内容はイマイチだった。DFの安定感は相変わらずだが、攻撃はサイドを使えず縦方向ばかりにボールが動いてダイナミズムを欠いていた。雨に濡れたピッチコンディションもあるのかもしれないけれど、とにかくもっと左右に揺さぶらなければ相手を崩し、大量点を奪うことなどとてもかなわないだろう。今回は相手が比較的前に出てくるセレッソだったからまだ良かったのかもしれない。自分たちのやりたい「はず」の、「攻撃サッカー」ができたのは最後の10分くらいだったろうか。ただし、今後を考えると、得点したメンツはとても良かったと思う。まず、チームの象徴アマラオが初得点。もはやアマラオの現役生活が残り少なくなっているのは誰の目にも明らかだが、それでも今はまだ彼の力が必要なのである。優勝トロフィーをその手でつかむためにも、また次代を担う若手にそう易々とレギュラーの座を渡さない(それが若手のためでもあるだろう)ためにも、もう一踏ん張りしてほしいと思う。そして決勝点は、誰もが期待している新人ストライカーの久々の得点。ポストに入ってつぶれる仕事で手一杯になりつつあるアマラオの頑張りを勝利に結びつけるためには、2ndストライカーの活躍が必須だ。戸田もだいぶ成長したけれど、連戦の中で彼1人に期待するのは重荷である。阿部にはあと7点くらいはとって、「アマラオさんお疲れ様でした」と引導を渡すくらいの活躍を期待したい。

 他の選手では、土肥ちゃんはいつも通りの守護神ぶり。茂庭・藤山は各々の特徴を生かしたディフェンスぶりが光った。茂庭が当たりもカバーリングも器用にこなしてくれるおかげで、ジャーン・モニ・フジの3人はどう組ませても安定感のあるCBコンビとなり、今後のリーグ戦・カップ戦の混在する過密日程を考えても何と頼もしいことだろう。茂庭、エライ(と、褒めれる時に褒めとかないと(笑))!!徳永も攻守に安定感のある活躍。クロスは素晴らしい弾道だったし、包帯巻きながら最後までプレーするガッツも嬉しかった。中盤は、宮沢がナビスコ浦和戦に引き続いてあまり前に出れなかったのがちょっと気になった。そして、この試合で一番残念だったのは石川の出来。動きも重いし判断も悪いし、あれでは早々に代えられても仕方がない。どうにも中に入る(原監督の「ノルマ10点」指令を気にしてる?)癖がついてしまったのがイカンと思うのだ。縦に走ってマーカーを振り切る、あるいはゴールライン際をえぐる、そして正確なクロスを上げる。サイドアタッカーとしてまずこなしてほしいのはそういった事だし、その上で弾丸ミドルシュートやら中央でのコンビネーション突破が付け加わればナオ良し(笑)、ってことだろう。真ん中にはケリーと宮沢が、前にはアマラオ(阿部)と戸田がいるのだ。今のチームに足りないのはサイドアタックのキレと分厚さだと思う。

 

 

[追記]
 塩川主審のレフェリングはひどいもんだった。基準バラバラ、正当なチャージに笛を吹くかと思えば後ろからプッシュされてもとらなかったりするし。FKを31回与えるほどラフなプレーはしてないと思うんだけどね、ウチのチームは。後半37分くらいだったか、戸田が左サイドライン際をDFとやり合いながら突破、その後2人目のDFをほとんど接触なく抜いた場面で(戸田ファウルの)笛が鳴ったのにははらわたが煮えくり返った。あれ、1人目のDFとのやり合いでファウルがあったのならすぐに吹かなきゃいかんだろうし、2人目についてはファウルがあったとは思えんぞ。真面目に集中してやっている選手が馬鹿を見るようなタイミングで笛を吹くのはやめてほしい。


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