「2004年度 席種・座席割り振りならびに一部席種の価格変更のお知らせ」について


一 変更の内容

 10月22日、FC東京からソシオ(年間チケット所有者)たる私の元に、表題にあるような「お知らせ」及び「2004年 味の素スタジアム座席割り振り 案」が送付されてきた。そこで示された価格・席割り変更の主な内容については下記のとおり。

1 現A自由席をF指定席に統合、SA指定席とする(価格は現F指定席と同じ)。
2 B自由席(28,000円)1階は名称をA自由席(30,800円)に変更、上層を指定席化しSB指定席(42,000円)とする。
3 G自由席(14,000)は下層のみとし、価格を18,200円に変更。上層はA自由席とする。
4 下層のA・Gの境界線はGホームを広く、Gアウェイを狭くする。

 つまり、大きく変更があるのはバックスタンド(B席)とゴール裏(G席)で、「G席の1階化(減少?)と値上げ」「B席2階のゴール裏2階への移動(減少?)とB席の値上げ」「バック2階の指定席化(=指定席の拡大)」の3つが柱と言えるだろうか。

 

二 問題と思える点

 まず最初に言っておきたいのだが、値上げは(ある程度)仕方がない、と私は思う。他チームとの比較(現状マリノスより安くヴェルディより高い)はともかく、これまではチーム創設以来ファンを獲得するために「無理に」安くしていたのかもしれず、連続して年平均2万人以上の観客動員を確保したところで、利益の確保(ないし損失の減少)という方向へ向かってもおかしくはないと思うのだ。まあ、単純にスポンサー料の獲得が困難な状況になっているのかもしれないが。ともかく、チームの財政状況が苦しいのならば、あるいは本気で優勝を狙うために資金が必要というのであれば、私としてはソシオとしてより多くのお金を出すことにやぶさかではない。もちろんその分我々が試合に要求するクオリティはより高くなるだろうし、クラブとして「価格値上げ→それ以上に観客減」というリスクを負うのも間違いない。他の人が「高すぎる」と文句を言うことを諫めるつもりもない。ここら辺は経営判断の領域であって、あまりそこには(ややっこしいので)首を突っ込みたくないというのが本音のところである。ま、個人的には、やっぱり「安く大勢が楽しめる」スタジアムが理想だとは思うのだけれど。

 問題と思えるのは、価格云々よりも席割りの方だ。ざっと思いついただけでも、下記のとおり。どうしても私の観戦ポイントであるバックスタンド2階からの視点に偏っていますが、ご容赦を。

1 バックスタンド1階とゴール裏2階という明らかに異なる観戦環境を、同じカテゴリーに入れてしまっている。
2 ゴール裏及びバック1階(A席)の混雑の懸念。
3 バックスタンド2階高額化・指定席化による2階客離れの懸念と、バック2階特有の雰囲気の喪失。
4 大幅な変更により、観戦環境の変更を強いられる人間が多い。
5 席割り変更に関して、クラブの考えがはっきり説明されていない。何をしたいのかがわからない。

 まず1については、今でもこの2カ所に座る客層は全く違うであろうし、バック1階とゴール裏2階で試合の「見え方」が全く違ってしまうことは言うまでもない。もしかして、ゴール裏2階は主に雨が降った際のバック1階客の避難場所として考えられているのであろうか。

 2については、今でもゴール裏1階はだいたいどの試合でも満員になるし、バック1階も2階に比べれば混雑しており、人気カードであれば満員になる。これに加えてクラブ案どおりの席割りとなれば、高額席・指定席を嫌って「避難」してくる観客が1階に流れ込んでくることが予想される。某掲示板に「良い席とるなら開門3時間前から並ばないと」と書いてあったが、席取りがより加熱することは避けられなさそうだし、雨が降ればA席はゴール裏2階にも入りきらず、ゴール裏1階は行き場がなく、ずぶ濡れになる観客も増えそうである。

 3は、2の裏返し。私はいつもバック2階で観戦しているけれども、あそこには確かに「中立サッカーファン」や「一見さん」もいて、そういう人は指定席になっても(あるいは席が確保されることをより好ましく思って)バック2階で見るのかもしれない。が、今の、ブロック指定だからこそあそこに座っている人間も多いことを忘れてはいけない。つまり、グループで観戦、あるいは家族連れの人々である。ゴール裏で「みんな一緒」の応援をするのや1人ないし2人で静かに戦況を眺めるのも観戦の1つのスタイルなら、グループでそれなりに固まってわいわい見るのもそれらに劣らず重要な観戦スタイルだろう。そうした人たちは、常に同じメンツで観るのならともかく、様々な観戦頻度(ソシオと非ソシオ)の人間を交えたグループであれば指定席となったバック2階にとどまるのは困難であろう。そして、その手の移動が多くなってくれば、今の「様々な観戦者が混在した」バック2階独特(ゴール裏ともバック1階とも違う)の雰囲気は消えてしまうかもしれない。それはそれで寂しいことだ。もしかして、FC東京は席のカテゴリーごとで客の色分けをはっきりさせたいのだろうか?

 4について。3で述べたとおり、クラブ案どおりになればバック2階から1階への「避難者」は相当数に上るだろうし、ゴール裏2階→1階も同様の状況になるかもしれない。混雑の問題は置いておくとしても、そのように多数の人間がお気に入りの観戦環境からの移動を余儀なくされてしまうというのは、観客の満足度という意味で大いなる問題ではないだろうか。2000年あたり、「ゴール裏論争」的なものがあって、つまり「ゴール裏に座るに相応しくない客層がゴール裏に流れてきてしまう」という声が多かったように記憶している。そうした意見の妥当性はともかく、また今そうした状況が解消されたのかそれとも問題とされなくなったのかもよくわからないが、とにかく観客には各々好みの、あるいは似合いの観戦ポイントというのがある、という事実を軽視してはいけない。「好きなところで観たいのなら、それだけの金を払え」という意見も一つの正論だとは思うが、最初からクラブがそういう態度をとってきたのならともかく、東京のファン・サポーターがこの3年間自力で、試行錯誤を繰り返して各々の「落ち着き先」を見つけている経緯をクラブはどう考えているのか?

 5は、おそらく今回の席割り変更案に関する問題の根幹であろう。例えば、なぜこれまで差をつけてこなかった1階席と2階席の値段を変え、かつ2階席の方が高く設定されているのか。私個人の感覚では2階席の方が高いのは妥当(より広い視野で試合を観られる)だし、浦和レッズあたりの席割りもそうした考えを採用しているようである。ただ、異なる考え・感覚の者は絶対にいると思うし、何よりクラブが本当はどう考えているのかわからないのは不安だ。どういう意図でやっているのか説明してくれないと、「お知らせ」の末尾にあるように意見を募集されても、結局表面的な話しかできないのである。また、今回クラブ的には値上げよりも席割り変更を強調したいような書き方になっているが、SB指定席のような高い席が大幅に増えており、2階を定席としていた人間にとっては例外なく値上げを意味する(「さもなくば出ていけ」だから)のであって、いささか「どさくさ紛れ」の感じがしてしまう。

 

三 提案

 で、文句ばっかり言ってても仕方がないので(笑)、私なりに、改善案を以下に提示したい。

1 バックスタンド2階中央部に(範囲を限定して)SB指定席を設ける。
2 バック2階SBの両脇はA自由席とする。
3 ゴール裏2階は現状とおりG席とする。
4 その他の席割りについては、クラブ案どおりとする。
5 席割りの変更部分については、それぞれ根拠となる考え方を示す。
6 価格については、収入総額がクラブ案に近くなるよう、全体的に引き上げる。

 1については、指定席に対するニーズへの配慮である。おそらくソシオにおいて指定席を要望する者は少数派だろうが、観戦の度にチケットを買うような人の中にはバックスタンドに指定がほしいと思う向きも多いのではないだろうか。混雑度に関する情報量の少なさと席取りの労力節約のため、私もアウェイゲームの観戦においては指定席を購入するのが普通である。

 ただし、ほとんどの試合で2階が半分以下しか埋まらない現状下において、指定席のニーズを理由としてバック2階全て指定にしてしまうのは全くもっておかしな話である。よって、2の案。ま、これについては私個人のたっての希望(笑)でもあるのだが、今でも1階より2階を選ぶバック観戦者の多くが同意してくれることだろう。仮に、SB席の設置が指定席に対するニーズによるものではなく単にクラブの経済的事情によるものだとするならば、バックスタンドの1階と2階を別のカテゴリーの自由席とし、値段に差をつけることも検討に値するだろう(その場合も1階と2階の相互移動の自由はなくなるが…)。

 3についても、2と同様の考えによるものである。雨天の際にゴール裏の人間が逃げ込める屋根付きゾーンも確保するべきだ、という考えにも沿う。

 4について。おそらくクラブ案でG席1階が広がっているのは、そういうニーズがある(「ゴール裏の応援」に参加したい人間が多い)からなのだろうし、A自由席がなくなったのは、やはり上に書いたのと同様指定席のニーズがあるからだろう。だから、そこら辺についてはクラブ案どおりでいいと思う(と書くと、私と違う立場の現Aソシオの人は異論があるだろうな)。アウェイG席については、相手方の人気度によって範囲を変えられればオッケーだろう。

 5については、これがないと、特にソシオの理解を得ることは難しいだろうし、いい意見も集まらないであろうから。

 6については、「二 問題と思える点」の所で書いたとおりだが、もし今回の変更(案)が観客のニーズ云々と関係なく純粋に「収入を増やしたい」という動機によるものだとしたら、席割りについては全く今と変えることなく値上げだけを行う、という手だってある。

 こうしてみると、「SB席の範囲が広すぎる」ことの解消を初めとするマイナーチェンジで、だいたいの問題はクリアできるのではと思えるのだが。

 

四 終わりに

 クラブからの「お知らせ」にあるように、一般に先行してソシオに「案」と付された変更の内容を示し、意見を募集して〆切も設定し、さらに「正式なご案内までに修正すべき点は修正いたします」とあるからには、クラブとしてもサポーターの声に耳を貸す用意はあるのだろう。ここら辺はいかにもFC東京らしいと感心する一方、「だったらもっと早く意見を集めてくれればいいのに」「だったら何でこんなハズしたことするかね」と思ったりもする(笑)。とりあえず、ここは言うべき事を言って、そしてクラブの良識および経営判断を信じたいと思う。

 ともかく、席の指定(というかリザーブ)を望む者と望まない者の(席配分等の)調整は必要としても、クラブには「自分の好みの位置と環境においてゲームを観たい」というファン・サポーターの観戦者としての純粋な欲求を極力尊重してほしいと、切に望むのである。

2003年10月24日


ホームへ