中断前最後の試合、「最高」の展開で決勝T進出決定!!
何しろ、次の試合は7月なんである。
W杯日程の都合で変則的な集中開催となった今年のナビスコカップ予選リーグもいよいよ第5節、ここまで3勝1敗と好調なFC東京は勝てばグループ首位が、引き分けでも予選突破が決まる状況。相手は宿敵ヴェルディで、次のホームゲームまで2ヶ月空くということもあり、ぜひともすっきりと勝って気分よくW杯「休み」を迎えたいところであった。
この日は平日夜の試合。仕事を終えてからの到着はキックオフ直前になった。たこ焼きとフライドポテトという栄養価満点(=デブ直行便)の食事を下げてスタンドに駆け込む。小峯が元気よくゴール前で跳ね、スタンドにホームランを撃ちこむ姿を横目に見ながら、スタメンを確認。東京はここ数試合定着しつつある布陣で、攻撃は福田の1トップに星・戸田のウイングハーフ。ヴェルディは平本・マルキーニョスの2トップにエジムンドがその下か。相馬がいて山田がいて米山がいて高桑がいるんだから、そう悪い面子とも思えないのだが。
キックオフ。前半から優位に試合を進めたのは東京(少なくともこのサイトでは、何もつけない時はFC東京の方だ)で、いつものようにラインを上げて攻め続ける。なんか今更ながら、相手の力関係もあるんだろうが、東京も攻め手が増えたなあというか。星が加地が宮沢が戸田がフジがケリーが福田が、色々と組み合わせを変えながらコンビネーションでつないでつないでゴール前まで攻め込んでいく。特に星は、サイドでDFとの1対1を制して精度の高いクロスを上げたりこぼれ球に詰めてシュートを放ったり、活きのいい動きが目立った。以前の「手数をかけないカウンター」一本やりとは一味も二味も違うサッカー。でも、最後の詰めが甘くて点になかなか結びつかないのは以前のまま。福田も、そして前節を反省したのか(笑)戸田も積極的に前線に飛び出しはするのだが、DFロペスの球際の強さもあって決定的なシュートまでには至らない。44分にはGK高桑が飛び出した隙にこぼれ球をケリーが押し込もうとするが当たりが弱く、ゴールライン上のDFに軽くクリアされて得点ならず。
一方、ヴェルディの攻撃にはまるで迫力がない。エジムンドが引き気味の位置からパス出ししても、前のマルキーニョス・平本をジャーン・伊藤のコンビが抑えてほとんどピンチにならない。この日のジャーンはただでさえ弱めのパスがぶれて相手に渡ったり、飛び出してカットしようとして裏をとられるなどいつもの安定感はなかった。しかし代わりに伊藤が好調。鋭い読みから素晴らしいカバーリング・カットを連発し、ディフェンス全体としては問題なし。結局、0−0のまま前半が終了した。
平日夜の試合ということで観客の少ない(ゴール裏もバックもほとんどが青赤色を着用していたが)中、ヴェルディゴール裏は輪をかけて寂しい数十人サポーター体制。それでも中段あたりに必死に固まって声援を飛ばすのだが、頑張りすぎた(?)リーダー格の男がトラメガで断末魔のような振絞った叫びを上げるものだから、スタンドではその度に笑いが起こっていた。「ヤ、マ、タ、ク〜!」(笑)。「た、か、きゅぅ、わぁ〜!!!」(笑)。いや、それでも引かずに最後まで叫び続けた彼の健闘はちょっと(だけ)称えたいと思った。マジで。
後半になると、徐々に試合は弛緩していく。東京もプレイヤー間の距離が大きくなり、ボールをとった際に反応する人数が少なく、「見ている」プレーヤーの姿が目立つようになる。ある意味、ヴェルディの思うつぼの展開だったかもしれない。いやな感じがし始めた55分、加地の凡ミスで相手にボールを渡したところで一瞬チームが集中力を欠き、ボールホルダーへの寄せが遅れる。シンプルなパスからマルキーニョスにDFラインの裏をとられ、かわされかけた土肥が倒してPK。エジムンドが左隅に突き刺して0−1。またしても「攻めていて点を取りきれず、一発でやられ、焦って攻撃しなければならなくなる」パターン。スタンドで見ていた側としては「またかよ!」と腹が立って腹が立って…。
しかし東京は失点直後、戸田OUT、お約束のカンフル剤アマラオ投入。また効くんだ、これが。ゴール前の混戦からこぼれた球をジャーンが頭で押し込んだプレーは惜しくもファウルをとられたが、続く64分、右サイドで加地がパスを受け、目の前に迫った相手DFを落ち着いて見ながら低く滑らかな弾道のクロスを上げる。DFの前に体を入れるように走りこんだアマラオが叩きつけてゴール!1−1。頼りになるのはやはりこのジーサン、今年初めて生で見るアマゴールである。加地は一発で汚名挽回。失点の原因を作ってしまった後、ちゃんと取り返したのは実にエラい。
この時点ですでに予選突破圏内に突入してはいたが、東京は由紀彦も投入(星OUT)して攻め続ける。由紀彦は体が重そうで本調子ではなかったと思うけれども、最近の星・石川の台頭や間近で見る加地や宮沢の堂々たるプレーに刺激されていたのだろう(セットプレーも蹴らせてもらえないし(笑))、何だか必死のプレーぶり。そして、フリーでパスを受けた時の彼のクロスは相変わらずの威力。ファーサイドの福田にピンポイントで合わせた球にはシビレた。しかし、高桑の着実なセーブにも阻まれてなかなかゴールを奪えない。ヴェルディの方は平本・相馬が加地の裏を突くなどそれなりにボールは進め、また桜井・佐野とFWを投入して得点を狙うが、エジムンドが中盤の底まで下がってパス出しに専念したのがたたって決定機は生まれない。
いよいよ引き分け濃厚かとなった87分、東京が押しに押し込んでヴェルディDFをペナルティエリア内まで下がらせたところ、加地が判断よくマイナス気味にペナルティエリア外のスペースへパス。一歩引いた位置でフリーだった宮沢はボールの軌道にしっかり合わせて走りこみ、左足を一閃!!鋭く飛んだボールは高桑の手をはじいてゴールマウスに吸い込まれた。またまたまたまた出た、スナイパー宮沢の魔法の弾丸。当然スタンドは興奮状態になり、バックスタンドでも絶叫する人間が多数。そう、宮沢の左足には人を叫ばせる力があるのである。ゴール裏からは「宮沢最高!!」コール。終盤は福田に代えて前田も出場、ヴェルディの攻勢も落ち着いてしのぎ続け、場内に「You’ll Never Walk Alone」の合唱が響く中タイムアップの笛が鳴った。いやあ、気分のいい終わり方だった。
試合後、ゴール裏から「1億円!」コールが飛ぶし、アマラオの「シャ〜!」にスタンドの位置関係なくほとんどの客が揃って腕を突き上げたりと、(東京サポーターにとっては)最高の雰囲気。これであと2ヶ月ホームで試合が見られないなんて、不合理すぎる。こういう試合をしてくれるのなら、平日だろうと何だろうといくらでも観たいと思うのである。
この日の東京ヴェルディ1969を見ていてどうしても納得行かなかったのは、エジムンドのポジションだろう。特に後半だが、あんなに引いたらぜ〜んぜん怖くない。もしかすると桜井・佐野・マルキーニョスに裏を狙わせたい、あるいは左右のサイドにボールを供給したい、そのためにはエジムンドには後方でさばいてもらいたいというベンチの戦術的判断があったのかもしれない。さもなければエジムンドの独断ということになる。しかしいずれにせよ、いくらパッサーとしてもそれなりに優れているとしても、相手にしてみればゴール前に荒々しくドリブルで切り込んできてこそ怖いエジムンドなのだ。山田卓也の起用法といい、チーム全体にそれほど悪い印象がないだけに、2つ3つ駒の使い方を変えるだけでずっと良くなるような気がしてしまうのだが…。
FC東京の方は、まあ、相変わらず爺が入らなきゃ点入らんのかい!っつーツッコミは置いといて(笑)、代役組のメンバーも出場を重ねることで段々良くなってる感じだし、あとはペナルティエリアでの詰めだな、詰め。福田に期待するのはもちろん、反省の跡が見えた(笑)戸田にそろそろ一発かましてほしい。とりあえず、開幕戦のコバのビデオでも見ておくように。あと、この試合でいいところも悪いところも見せてくれたのは加地。思い切りのいいオーバーラップから「ひらり」と形容したくなる軽やかな身のこなしでクロスを上げる攻撃は、間違いなく「金のとれる」プレーだ。受けに回った時に「ひらり」とかわされることがあるのは困ったものだが(笑)、まあこの試合半ばで出たようなふいに気を抜く部分がなくなればもっと安定感が増すのだろう。大きく育って、早く波戸や市川を抜きさってほしいと思う。
これで東京はグループB1位抜け確定。次の清水戦は完全テストに使えるだろう(戸田!1点とれよ!)。問題は準々決勝の相手だな。京都希望。横浜とだけは当たりたくない(注)。しかし、もし優勝して1億円なんて取れたらねえ……石川の移籍金が払えるかも(笑)。とりあえず、私のつれは「宮沢の給料を上げてあげて!」と叫んでおりましたな(←完全同意)。
ちなみに、ナビスコカップの「ニューヒーロー賞」は対象が23歳以下(4月27日時点)だって?宮沢は4月24日で24歳……。うーむ、これまた不合理な。
2002年5月9日 国立競技場
ヤマザキナビスコカップ 予選リーグ第5節
FC東京 2−1 東京ヴェルディ1969
[追記]
この日の主審は、「あの」梅本氏。ということで緊張して見ていたのだが、まあ心配していたよりは良かったような。FKの時にヴェルディの壁がやたら近かったように思えたのは、気のせいだろうか。