前回の借りは返した!判定にも恵まれ逆転勝ち!!

 

 

 試合後、通路で挨拶した「ATAVO東京」のMakoPさんが「もうけた、もうけた」と連呼していたが、確かに勝ち点3プレゼントしてもらったような感じの試合だった。そう、あのPKで。

 

 立ち上がり、東京は早い出足から長短のパスをつないで押し込み、しかしヴェルディもエジムンドを軸にシンプルなプレーで逆襲を狙う展開。全体的には優勢ながら、アドバンテージを取ってくれればフリーの石川がシュートを打てる場面で松崎主審がFKにしてしまったりもして、なかなか得点を奪えない。そのうち、どこで痛めたのか石川が足を引きずり始める。17分、CKから走れない石川の裏をつく形でヴェルディのカウンターになり、慌てて前に詰める加地の裏をとった平本が思い切りのよいドリブルでDFを引きつける。グラウンダーのクロスが中央のエジムンドに渡ると、もう東京の陣形は乱れまくっており、糸を引くような鮮やかなミドルシュートがゴールネットに突き刺さってヴェルディ先制。エジムンドのシュートは、ボールが足下に入りすぎたにも関わらずノーステップで右足を振り抜いたもので、DFに詰める時間的余裕を与えぬ見事としかいいようのないプレーだった。

 結局、石川は失点直後に交代(喜名IN)してしまい、東京は本職のサイドアタッカーなしで戦う辛い展開に。ヴェルディはとにかくエジムンドにボールが渡ると高い確率でチャンスになる。エジムンドのキープ力、それもただ単に持ち続けるだけではなく、DFを引きつけて味方の上がるスペースと時間を作る動きはまことに効果的で、そこから出る自在のパスもDFラインを脅かし続けた。さすがに2億5千万円(だっけ?)の選手だけのことはある。一方の東京はサイドに飛び出す選手がいないために中央で分厚い守備網にぶつかり、結局ロングボールを放り込んでマイボールを無駄にする場面が多くなる。時間だけがジリジリと進んで行った。

 ところが31分、試合は急転回。ヴェルディ陣で米山がトラップミスしてこぼれたボールをアマラオが拾い、ゴールへ向かいかけたところで米山が引き倒してなんとPK。優勢でも何でもない流れの中で、しかも後でビデオで見返してみたらペナルティエリアの外なのに(笑)、主審と米山の合作による願ってもない贈り物だった。アマが確実に(見ているこちらはドキドキものだったが(笑))決めて1−1。これで沈滞ムードは一掃され、東京はいつものサイド速攻よりは手数をかけつつも、左右を広く使ったパスワークでチャンスを作っていく。悪くない雰囲気のまま前半が終了。

 

 後半になっても、東京はボールをヴェルディ陣内へ着実に運ぶ。この日好調さが目立ったのは「代役」喜名で、ドリブル、パス、ボールのない所での動き出し、どれもキレキレだった。次第に右サイドでいい飛び出しも見せるようになり、彼が基点となることで加地の攻撃参加も増える。右サイドにおいては東京が圧倒し始め、さらにアマラオ・宮沢が左に流れることでヴェルディDFを左右から追いつめていく。ヴェルディも負けずに東京の選手の積極的な「詰め」の裏を突くカウンターで時折ヒヤッとさせ、8分には左サイドを切り裂いたエジムンドからペナルティエリア内の桜井にパスが通り、ジャーンがハンドくさいプレーでようやくシュートをブロック。しかし、東京の優勢それ自体は動かない。そして12分、アマラオが左サイドからクロス、戸田が落としたところでゴール正面に走り込んでいた(この場面でここにいたのはエライ)宮沢がつぶれ、ボールはケリーの足下へ。うまく浮かしたシュートがGKの脇を抜いて、東京逆転に成功。

 ここで私は直感的に「よーし、福田投入だ!」と叫んだのだが、ホントに福田がジャージを脱ぎだしたのには驚いた。ヒロミとシンクロしてしまったか(笑)?戸田に代わって入った福田はファーストプレーでいきなりDFラインの裏を突きかけ、狙い通りヴェルディの守備陣は上がるに上がれず、人数をかけての攻勢に移れない。むしろ東京の方が多くチャンスを作り、18分には右サイドを持ち上がった喜名から、DFラインのギャップに入ったアマラオにドンピシャのスルーパスが通る(シュートは惜しくもGKセーブ)。さらに福田も決定的場面に絡む……のだが、またしても「あと一歩」ゴールに至らない。ゴール裏からは繰り返し「ふ、ふ、ふっくだぁ!」(『ジンギスカン』のメロディーで)コールが飛ぶ。30分には左サイドを突破したアマラオからのクロスがファーサイドへ抜け、そこへ福田が走り込むがわずかにDFに走り勝てず。そうしてるうちにヴェルディの守備陣が深い位置を保ったままになり、福田のスピードは生きなくなってしまった。

 さすがに35分を過ぎてからは東京の選手も疲れが出て上がれなくなり、攻撃にかける人数がぐっと少なくなる。前線でケリーやアマラオが孤立し、福田は敵に埋もれて存在感を減らしていった。喜名のキープ力とDFライン・守備的MFの危なげないパス回しのおかげでかろうじて一方的な攻勢にはさらされずにすんだが、それでもつなぎのパスよりもクリアが増え、徐々に自陣で耐えることを余儀なくされていく。ヴェルディは永井・三浦淳・玉乃とアタッカーを投入。対する東京はアマを下げて浅利投入で守備固め。何度もサイド突破やCKからクロスが上がり、土肥が確実にキャッチしてしのぐ。エジムンドも距離を問わずシュートを狙い始め、それをDF陣が体を張ってブロック。最も危なかったのはロスタイム突入寸前のCKで、土肥ちゃんが微妙に出にくい距離のボールを山田が頭ですらし、ゴール前の混戦からエジムンドが押し込んで同点!……かと思いきや、これがオフサイドの判定で救われた。3分のロスタイムも「自陣じゃとにかく思い切り蹴っとけ」作戦と「ケリーのキープで時間を稼ぐ」作戦でしのぎきり、ついに1stステージの悔しい逆転負けの借りを、ある意味これ以上ない形で返すことに成功した。

 ガンバ戦に続いてのリベンジ成功に、またも看板を越えてスタンドに挨拶する選手たち。ま、1stステージの惨憺たる戦績からすればどこに勝ってもたいていは「リベンジ」になってしまうわけだが、そこには突っ込まないのが「わきまえた人」の態度であろう(笑)。

 

 ヴェルディにしてみれば、判定(※追記)について恨み言の2つや3つは言いたいに違いない。前半30分までは東京の攻撃を受けとめつつカウンターで得点する、という思うつぼの展開だったわけで、敗因らしい敗因は特に見あたらないようにも思える。特にエジムンドは実力を見せつけ、敵ながらそのプレーには大きな魅力を感じた。守備はベテラン中心でまあまあ安定感があり、前では平本ら若手アタッカーが思い切りのよいプレーでチームに活気を与えている。2ndステージ開幕から2連勝して一気に降格戦線から抜け出しつつあるという事実も、今の形でのチーム再建が成功しつつあるという証なのだろうか。あえて言うならば、やはり選手層には難がありそうなのと、田中が出場停止だったせいかサイドアタックの迫力がイマイチだったろうか。そういう意味では、この試合途中出場だったが、三浦淳の復活こそヴェルディサポーターが待ちこがれていることではないだろうか。

 FC東京にしてみれば、何だかんだ言って判定に恵まれた試合だった。特にアマラオのPKは苦しい展開における「プレゼント」としか言いようのないもので、前節広島戦のように徹底的にサッカーの神様に見放されることもあれば、こういう(運ではないが)恵まれる試合というのもあるのだと痛感させられた。もっとも、この日は別に内容が悪かったというわけではなく、序盤と同点に追いついてからは優位に試合を進めることができた。互いを補いパスワークで勝負する意識・姿勢は終盤にいたるまで徹底され、入れ子状に選手たちが動いてパスコースをつくり、相手DFをぬうように前進していく様は見ていて楽しかった。また、勝ち越し時の宮沢の位置取りや加地・茂庭のゴールライン付近への上がりに見られるように、前へ出る積極性があったのも評価できるだろう。采配は、相手DFラインを下げる意図の福田投入がガンバ戦以上にうまく行った感じであった。良くなかったのは、中盤とDFラインの距離が開きすぎてしまい、そこでスピードに乗った相手に裏をとられる場面が何回かあったこと。あのスペースを使われてしまうと、いくらジャーンや茂庭でも止め続けるのは難しい。次の相手は好MFを揃えたチームでもあるし。

 個々の選手では、喜名が素晴らしかった。まさに本領発揮という感じでボールに触りまくり、軽快なボディコントロールでひらりひらりと相手DFを翻弄、アシスト・得点こそできなかったものの中盤で優位に立つのに大貢献した。ケリーはさほど調子が良くないように見えたが、それでもトリッキーなプレーとキープ力は健在。宮沢と下平のコンビは運動量と前へ出る守備を取り戻し、ヴェルディに後方からの組み立てを許さなかった。戸田は精力的な動きでDFラインをかき回して決勝ゴールを演出、アマラオは左サイドで起点となって攻撃の幅を広げた。守備陣はやや下がりすぎという感じであったが、それでも加地と茂庭はチャンスに恐れずサイドを駆け上がり、「揺さぶって崩す」形に近づいていた。土肥はこの試合についてはスーパーセーブというより堅実なキャッチングが光った。あとは、福田が追加点を取ってくれるのを待つばかりだろう。

 わずか4試合とはいえ、これで首位と勝ち点差なしの3位に浮上。さあ、次の相手はいよいよジュビロ磐田だ。

 

 

2002年9月18日 東京スタジアム

Jリーグセカンドステージ第3節

 

FC東京 2−1 東京ヴェルディ1969

 

[追記]
 それにしても松崎主審は、あのPKをよくも吹いたものである。最近はアマラオのダイブ癖(笑)もすっかり有名になり、ちょっとやそっとのことではファウルを取られなくなっているのに。この試合でも全体的にアマやケリーには厳しかったように見えたのだが、なぜあそこだけ…?謎だ。ヴェルディ側にしてみれば後半のジャーンのハンド見逃し疑惑も許せないだろうが、前半のアドバンテージ無視もあったし、要するに下手なだけだろう。有利不利はほとんど運の世界であったのかもしれない。何であの程度の審判にダービーマッチの笛吹かせるかね、Jリーグは。


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