ホーム最終戦、最後の最後で福田が決めて勝利!!

 

 

 いや、そりゃ序盤のチャンスをものにしていればあっさり勝てた試合だったと思うし、終わり(Vゴールのこと)よければ全てよしじゃない人が多いのはわかってはいるのだけれど、まあ勝ててよかったのも確かだし、個人的には非常に燃えた試合であった。スタンドの反対側を埋め尽くし割れんばかりの声援を轟かせる赤い軍団、互いに勝とうという意志がよく表れていた選手たちの姿、連敗後のホーム最終戦というシチュエーション、そして活躍した選手がこれがまた……私の心情には「ヒット」だった。

 

  立ち上がりは東京が気合いの入ったラッシュを見せ、さっそく宮沢が浮き球で馬場とGK一対一の場面を演出(シュートが正面を突いて逸機)。その後も浦和の着実なマークに苦労しながらも個人の強引なプレーからたびたび突破を図り、26分には石川がDFをスピードで振り切ってシュートを放つがGK山岸横っ飛びでセーブ。相変わらず、チャンスはつくりながらもなかなかゴールを決めることができない。さらにGKがこぼしたボールを押しこみそこねるなど「あと一歩」という場面があったものの、結局0−0でハーフタイム。浦和の快足2トップは東京DFがマーク受け渡しに注意を払ってよく抑えていたが、やはり「一発」があるエメルソン・トゥットは怖く、「両チーム無得点の時間が続くほど浦和のペースだ」と私には思えた。

 浦和側は相変わらずの大応援団で、東京は応援の声量といった面では正直言って劣勢であった。レッズに不利(に見える)判定があるとサポーターが足を踏みならすのか「ドドドドドド……」と地響きのような音が聞こえてきた(ここは日立台か?)。それはそれで凄いと素直に思えるのだが、しかしその熱心さの余り、勝った時に「俺たちの熱い声援で勝たせた」などと非科学的な言説を流通させてはばからなさそうなイメージ(偏見(笑)?)があるので、はっきり言って私はレッズファンが苦手である。

  後半始まって少したった頃からアマラオが足を引きずり出し、結局負傷退場。福田IN。ここ2試合のアマラオはボールの収まりの悪さが目立ったのでこれはこれで悪くない交代とも思えたのだが、しかし得点を奪えぬまま後半も半ばになると、チーム全体で中盤での上がりがきかなくなって前線でアタッカーが孤立、あっさりボールをとられては浦和の攻撃する時間が増えていった。当然、エメルソンやトゥットが前を向いて勝負する場面も多くなる。加地や浅利が必死にドリブルに食らいつき、待ちかまえたジャーン・茂庭がボールをかっさらってピンチを防ぐも、プレーエリアは明らかに東京ゴールへ近づいていく。劣勢か。失点の雰囲気が漂い始める。そこで、38分に鈴木の投入。鈴木は前節と同様「おりゃあ〜!!」と叫びが聞こえそうな思い切りのよいドリブル勝負から鋭いクロスを上げ、再び流れを取り戻す。豪快な持ち出しで山田(?)をひらりとかわしたのは非常にシビれるプレーだった。が、それでも得点には至らず、延長戦突入。

  たいていの延長戦がそうであるように、90分を超えた戦いではゲームの流れが振り子のように両チームの間を揺れ動く。右から左からトゥット・エメルソンが切り込みを見せ、平川のシュートがゴールマウス脇を抜ける。さらに永井の投入。東京も福田がDFを前にして積極的な勝負を挑み、加地を下げて由紀彦投入の攻撃態勢。中盤では宮沢の運動量がガクッと落ちるも、浅利がそれを補う動きを見せて致命的な隙を作らない。そして、延長後半7分には決定的な勝利の機会。右サイドで由紀彦がスペースに飛び出し、後方からのパスを少ないタッチから絶妙のグラウンダークロス。弧を描いてゴール正面に向かうボールの先には福田が真っ直ぐ走り込んでおり完全に決まったかと思えたが、しかしDFのスライディングが影響したのかジャストミートできず、ボールはバーの上へ。均衡したゲームにおいてこのチャンスを逃したのはあまりに痛く、スタンドからは大きな悲鳴が上がる。「お前、あれ外したら一生決めれへんぞー!!」。福田への失望と、勝利への絶望。この時「引き分けでも仕方ないか」とあきらめの気持ちを抱いたのは僕だけではないだろう。

  が、しかし。このゲームでは、最後の最後で(僕たちに)大きなプレゼントが待っていた。延長後半13分、浦和ゴール正面でFK。願ってもない大チャンス。当然、期待はキッカーの宮沢に集まる。いつもの大きなストライドから蹴り出されたボールは放物線を描いて壁を越え、ゴールポスト方向へ。山岸の手もわずかに届かない。「決まったか?!」。カン、と音がなってポストではね返ったボールが、東京ファンのわずかなため息とともにゴール真正面に転がる。予想外の出来事に反応できずにいる両チームの選手。一瞬フリーズしたピッチの上、ただ1人そこに走り込んでいたのは………福田だった。丁寧なシュート。ボールがネットに突き刺さり、ゴールイン=試合終了の笛が鳴る。総立ちになる東京側スタンド。怒号と悲鳴と歓喜の声。腕を突き上げる福田、ゴール裏に向かって一直線にダッシュする福田、ユニフォームを脱ぎながらスタンド前の横断幕に思いっきり飛び込む福田、そして溝に落ちる福田(笑)。ホーム最終戦は、劇的な形で幕を閉じたのだった。

 敗れたとはいえ浦和レッズは、ここ数年(原監督の2年目以降)では一番いいサッカーをしているのではなかろうか。美しくはないけれどもしっかり守備を固めて少数の個人技を生かして得点を狙う、というスタイルは、前節の清水もそうだったが現状で力が劣ると自覚しているチームにとっては合理的な選択肢だと言えるだろう。まがりなりにも優勝争いに一瞬とはいえ絡む位置までチームを引き上げたオフトの手腕は評価して良いのではないだろうか。ただし、肝心な所でこの監督・チームの特徴とも言える勝負弱さは出ているし、しかも来季は福田・井原の両御大が一気に戦力外だという。経験的に言って、急激な若返りというのはリスクも伴うのだが……。

  福田は、なんてったってあの場面、ちゃんと反応してあそこにいたのがエライ。ストライカーはどんな形でもいいからゴールすることが第一の仕事であって、その意味ではこの日の福田は「よくやった」と言っていいんじゃなかろうか(もちろん、「もっとやってほしい」のが前提だけどね)。そして宮沢は、またしても「魔法のような」左足を見せてくれた。偶然は偶然なんだろうが、よりによってあの場面で、あんなうまい角度でポストに当てて、外しようのないボールを福田の前に落としてくれるなんて。非常に大げさな言い方をすれば、ああいうシーンを見ると「ああ、この世界って捨てたもんじゃないな」と思ったりする。あれは、紛れもなく、僕が求める美しいスポーツ・シーンの一つだったと思う。

  試合後の監督挨拶・選手のスタンド前の行進は、勝利の後だけになかなかいい雰囲気の中行われた(レッズサポが早く帰りゃいいものをわざわざ残って原さんにブーイングしたのはみっともなかったが)。「原東京!」のコールも飛ぶ。ま、紆余曲折・賛否両論の戦いを繰り広げてきた今シーズンも残すところあとわずかだが、この時の選手たちの笑顔と、手を振りチーム・選手の名を叫ぶファン・サポーターの姿を見ると、1年の戦いは決して無駄ではなかったのだと思えたりもする。今シーズン残り試合そして来シーズン以降、この日の熱気をいつでも、いつまでも、そして優勝へ。

 

 

2002年11月24日 東京スタジアム

Jリーグセカンドステージ第14節

 

FC東京 1−0(V) 浦和レッズ

 


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