今年も快勝!東京、「夏のスタミナドリンク」横浜を下す!!
コンフェデレーションズ杯決勝戦から1週間、あの興奮もようやく薄れてきたように思えてきた6月16日、待望のJリーグ再開である。FC東京は序盤のもたつきから立ち直り札幌・柏と下して波に乗りかけたところ、中断前の福岡戦で悔しい逆転負けをくらって現在11位。今回の相手は、ここ2年間3勝1敗と相性の良い横浜Fマリノスだ。思えば昨年は1st・2ndともに初戦で横浜に快勝して勢いに乗り、結果として好成績を残すことができたのだった。今年もぜひその再現を期待したく、しかも横浜は下位に低迷中で先日アルディレス監督が解任されたばかり。「これはただもらいでしょう」と心の中でスキップしつつ、横浜国際競技場に足を運んだ。
試合開始15分ほど前、メインスタンド2階席に到着すると、ちょうど選手たちのウォーミングアップが終了しかけているところだった。ここのところ柏や東京スタジアムで見ていたせいか、久しぶりに来た横浜は席からピッチが非常に遠く感じられる。2階席は位置が高いためグラウンドを俯瞰できるからまだいいのだが、1階席から見ると遠くでゴチャゴチャやっていて何がなんだかわからなそうだなあ……。そう考えているうちに、スタメン発表が始まった。東京は三浦文丈負傷のために下平が先発で、あとはいつものメンツ。4−5−1のフォーメーションにも変化はなさそうだ。一方の横浜は城が出場停止・中村がケガで欠場とやや寂しいメンバー。木島・外池の2トップに平間・永山・遠藤・上野のMFは地味な印象が拭えず、川口・波戸・松田を擁する守備陣はちょっと豪華に見えるが、数馬ってのはいったい誰なんだ?サブにも出身が「横浜マリノスユース」と書かれた10代の選手が並び、元マリノスファンとしては、Jリーグ1の選手層を誇っていた時代のことを思い出してちょっとおセンチな気分にも浸りたくなる、そんな土曜の午後であった。
試合開始直前、東京サポーターが「You’ll Never Walk Alone」を合唱。多くがバックスタンド1階席の最後方に座っていたため屋根がスピーカーの役割をはたして歌声は場内に非常に良く響き、横浜サポーターの応援を圧倒。東京側スタンドはその後もいつものノリで声援を飛ばしまくり、アウェイの雰囲気を完全にかき消すことに成功していた。一方、いつも思うのだが横浜サポーターはどうしてあんなに元気がないのだろう。というか、応援歌の選曲もいまいちノリの悪そうなものばかりだし(よけいなお世話だな)、だいいちリーダー格の男がトラメガで怒鳴りまくってるのがダサすぎ。あの男が怒鳴るたびに横浜サポ(特にゴール裏周辺部分の)が白けていくように見えるのは、気のせいだろうか。
キックオフ。はっきり言って試合前は横浜を完全に呑んで(というかなめて)かかっていたのだが、この日のFマリノスは立ち上がりから好調だった。ダイレクトパスでボールをテンポ良く運び、前線では木島がチョロチョロと動き回ってDFをかき回す。この日はボランチに入った波戸も縦方向に飛び出して積極的に攻撃に関わっていった。軽快なパス回しの前に東京DFはあっさり交わされる場面も多く、波戸のスピードに対応できないこともあって次第に後退を余儀なくされ、押し込まれてはゴール前サンドロの奮闘ではね返す展開が続いた。せっかくの2ボランチも下平がきいておらず、浅利の負担ばかりが大きくなっていた。東京は攻撃時にも近頃雨の日が多かったためかやたら重そうな芝に苦戦。ボールキャリアーへのフォローが遅れがちになり、各自の距離感が悪くバラバラな状態でパスを回そうとしてはカットされる。それでもカウンターから数少ないチャンスをつくり、序盤に小林が左サイドからドリブルでペナルティエリア内に持ち込んでシュート、14分には由紀彦とのコンビからケリーがシュートを放つが、いずれもGK川口の好セーブにあって逸機した。表面的には「さすがコンフェデ杯準優勝キーパーは違う」などと余裕をかましていた私だが、内心は「何で代表の連戦やら監督交代やらで状態の悪い連中にこんな苦戦せにゃならんのだ、こら、同じチビに走り負けてんじゃねえ、このデブ!」などと全く穏やかではなかったのだった。
しかしそんなイライラした流れも、一つのプレーでガラリと変わることに。29分、横浜DFがバックパス。これを川口が足で止めたところアマラオが猛然とダッシュ。「おい、無理だ!疲れるからやめろ!!」と叫ぶ間もなく、アマは川口がドリブルでかわそうとしたところを見事かっさらい、右サイドゴールライン際角度のないところから切り返して逆サイドのゴールネットに突き刺した。あっけない先制点。努めて冷静に振る舞う川口や松田だったが、チーム全体として今のFマリノスに動じないだけの余裕・自信はなく、流れは一気に東京へ傾いて行った。
ここからはそれまでが嘘のようにパスが通り始め、右サイドを由紀彦・ケリー・内藤が崩していく。32分、内藤のクロスをケリーが頭で後方にすらし、胸で受けたアマラオがボレーシュート(川口キャッチ)。35分には左サイドを破られ木島にペナルティエリアに進入されるも、小峯・藤山のしつこいタックルで局地戦(あるいはチビっ子サッカー選手権)を制し、40分には由紀彦のクロスからのケリーの反転シュートが枠をかすめる。43分には内藤のアーリークロスを数馬がヘッドでバックパス。これがまた中途半端なパスで、やはり反応していたアマラオの足にすっぽりと収まり、アマの放ったループ気味のシュートは川口が手に当てたもののそのままゴールへ吸い込まれていった。2−0。
序盤の苦戦から思いがけぬリードを奪って東京サポーターも絶好調。先制直後には「ヨシカツー!東京!!」コール、2点目の後には「俺たちーのー能活ー!」コール(2点目は数馬の責任だけどね)を浴びせかけた。この東京節には私の隣に座っているマリノスファンらしき女の子たち(中学生?)も大激怒。東京サポをさんざん罵っていた。うんうん、お嬢さんたち、君たちのお怒りはごもっともだ。でもね、ここはアウェイ側のスタンドなんだぜ。もしウチが浦和や柏だったら、君たちただでは帰れんぞ。気をつけなさいよ。ま、でも、「東京ってアマラオの他に誰がいるのよ」とか言いつつサンドロの存在感は熟知していたみたいだし、「何てったって東京」の歌には喜んでたみたいだし、良しとしましょう。そんなこんなしているうちに、前半終了。気がつくと、ハーフタイムの間に女の子たちはいなくなっていた。終了間際に「どうしてここ、東京の応援の方が近いのー」とか言ってたので、ようやく気づいたんでしょう。よしよし(笑)。
後半開始。東京は相変わらず優勢で、右からの崩しに加えて由紀彦→小林のサイドチェンジ等も出始めた。右サイドで交互にフォローしあうパス交換、そして相手が詰めてきたところで左へのワイドな展開と、決定機にまでは至らないもののそれなりに楽しませてくれる。横浜は52分外池に代えてFW坂田(誰?)投入、さらに56分には平間に代えてMF田中投入とヤング(死語)かつフレッシュな選手を入れて挽回を図るが、GKからのパントでケリーが競り合わずにボールをとれるなど、Fマリノス側には集中力欠如と見られるような場面もあった。ふ、ふ、ふ。若いのう。
それでも15分を過ぎた頃から疲れが出たか、東京も素早い押し上げがきかなくなり、徐々に押し込まれ始める。ボールをとっても後続が続かないために攻撃を継続できず、アマラオもとぼとぼ歩く場面が増えた。ただ、先制してから下がって体を張って守り前線で待つアマラオに放り込んでカウンターを狙う、というのはある意味東京の得意パターンでもあり、ここからの時間帯もそれなりに安心して見られた。18分には左サイドライン際を疾走した木島が切れ込んでシュートを放つが、土肥ちゃんがきっちりセーブ。
後半も半ばを過ぎると横浜は数馬と丸山を残してほぼ全員が攻め上がる総攻撃態勢に入った。ゴール前に固まる東京DFに対してサイドのスペースを使うという意図が見られ、それに後方から縦に浮き球を放り込んでアタッカーを走らすパターンを加えて攻め込んできた。しかしそこは我らがサンドロ大魔神が立ちはだかり、足で頭でひたすらボールをペナルティエリア外へかき出していく。この日は川口のミスを見て身が引き締まったか土肥のセービングも安定し、失点を許さない。東京は負傷の由紀彦OUT加賀見IN、さらに30分にはやられ気味だった右サイドで内藤に代えて伊藤を投入して逃げ切りを図る。
横浜は33分に木島を下げてレアンドロ登場。しかしこの試合東京にとっては木島の機動力こそが驚異だったので、はっきり言ってこの交代は助かった。東京は38分下平OUT喜名IN。盤石である。40分には喜名が巧みな動きで浮き球スルーを受け左サイドを突破。喜名はDFを振り切ってペナルティエリア内でクロスを上げ、ファーサイドでケリーが足で合わせるが、惜しくもゴールポストに阻まれた。これが決まってれば「今年も3−0!!」だったのにー。43分には藤山の長駆攻め上がりも見られ、44分には特攻隊長と化した松田のゴール前までのオーバーラップも何とか防いで、そのままタイムアップ。やっぱり今年も完勝であった。ごちそうさま。
横浜Fマリノスは、どうしてこんな事になってしまったのだろう。現在けが人もいるとはいえ、相次ぐ主力の放出によりスタメンの戦力は半減、選手層も目を覆わんばかりの貧弱さだ。ワールドユースに選手を送り出してた?それがどうした。ユース世代の選手に頼ってる事自体、降格争いをしていた頃のジェフ市原並のみっともなさではないか。外国人選手のハズしようといい、ここのフロントのひどさは目を覆わんばかりだ。フリューゲルスを吸収して激しい非難を浴びた時には「常勝球団を作ってファンに応える」とか言ってたくせに、この有様は何だね。経営合理化?経費節減?経費以上に戦力と観客が減ってるじゃねえか。あらゆる観点から見て駄目駄目だろう。監督の首をすげかえて済む問題ではない。親会社の日産も最近では立ち直って史上最高の利益をあげてるらしいが、そうした立場から見て、カルロス・ゴーン君はこの没落しつつある名門球団をどう考えているのだろう。非常に興味深いところだ。
もっとも、この日のFマリノスがそれほど酷いサッカーをしていたかというと、決してそんなことはなく、少なくとも先制を許すまでは内容の上で東京を圧倒していた。球離れの悪い俊輔の不在も良い方向に働いたか、ダイレクトパスが何度もつながって相手ゴールに迫るサッカーは見ていて楽しく、これから横浜が進むべき方向とその可能性をいくらかは見せてくれたと思う。問題は、最後のフィニッシュのところか。木島はチャンスメーカーとしてそれなりに使えそうだが、外池・坂田・レアンドロはほどんど何も出来なかった。田原が帰ってきてももまだ大黒柱の働きは出来まい。荒削りでも良いから、ペナルティエリア周辺できっちりとシュートに持ち込めるFWを獲得することが浮上への条件となるのかもしれない。え?城?まあ、期待しすぎると駄目な選手だからねえ…。
FC東京は、大して良い出来だったとも思えないが、大ベテランアマラオの頑張りと少しばかりの幸運に助けられて勝ち点3を手にした。前半半ばまでと後半の多くの時間帯はかなり一方的にやられていたのも事実で、評価が難しいところだが、先制してから後半15分あたりまでは攻撃で幾度も良い形が作れていたし、DF陣も最後までしのぎきって完封。まずまず良くやったと言っても良いのではないだろうか。選手では、殊勲者アマラオに加えてサンドロ、小林あたりが良かったように思う。
リーグ戦の行方という視点で見ると、この勝利の意味は非常に大きい。まずは勝ち点3を獲得して7位に浮上できたこと。次に横浜を突き落として降格争い軍団との間にある程度距離を稼げたこと。そして、何より、中断後の初戦をものにしたことでこれから残り4戦、チームが自信を持って臨めるようになったことだ。特にステージ最後の3戦は鹿島・G大阪・清水といずれも強敵であるが、この日の先制点以後のような勢いを持続できれば五分以上の成績を望んでも良いだろう。できれば1stのうちに借金を清算して降格の影を振り払い、2nd(ないしナビスコ)での躍進につなげたいところだ。これから暑くなり選手には厳しい季節になるが、東京にとっては部活サッカーの見せどころとも言える。夏だからこそ泥臭く、かつ時にはセクシーに、勝ち星を重ねていってくれることを願う。
2001年6月16日 横浜国際競技場
Jリーグファーストステージ第11節
横浜Fマリノス 0−2 FC東京