呂比須の右足炸裂!FC東京、歴史的一勝を得る。

 

 さて、いよいよ開幕である。外部から見ればまことに地味なチームながら(失礼)「首都初のJクラブ発足」「J1昇格1年目」と開幕ごとにそれなりのネタをマスコミに提供しているFC東京だが、今年は「東京スタジアム完成」「初の東京ダービー」というよりビッグな話題により世間的注目を集め、何と開幕戦のチケット4万数千枚が完売とのこと。これまで「時間はかかるかもしれないが、いつの日か東京スタジアムを満員にしよう」などと書いていた私の立場はどうなる(笑)という感じの盛り上がりようだ。しかも相手はあのヴェルディ。もともと憎たらしいキャラの上に、昨年東京に2戦2勝、しかも今季はぬけぬけと東京移転の野望を実現し三浦淳や小倉・永井・前園などのビッグネーム(名前だけビッグな奴もいるが)を集めているという、東京ファンにとってはこれ以上はない悪役である。この機会に是非全国の皆さんの目の前で負かしてやりたい、いや叩きつぶさねばならないと鼻息を荒くしていたのも私だけではあるまい。加えて、トゥットの移籍や呂比須・下平らの加入がチームにどう影響を与えるかといった点からも開幕戦は不安と期待の交差する重要なポイントであり、ホント、3月10日が待ち遠しくてたまらなかったっすよ。

 

 まずはこけら落としとなった東京スタジアムについての感想から。いいじゃん、ここ。まず、新宿から最寄りの飛田給まで20分弱、駅からも広い一本道を5分ほどとアクセスは良し。場内はスタンド全体が屋根で覆われていて雨の心配はないし、適度に閉鎖的な空間となっていてハレの場としての雰囲気が醸し出せそうだ。陸上トラックの設置を想定(実際には不設置)した設計のためピッチがやや遠いのは残念だが、横浜国際あたりに比べればバックスタンドに角度もついており、見にくいというほどではないと思う。ちょっと気になったのはトイレ周りの導線が悪そうなのと、この日ほど客が入ると飛田給駅自体のキャパが不足してしまうことだろうか。ここら辺はもう少し見てみないと分からない。いずれにせよ、とにかくきれいで明るいのが嬉しい。今までが西ヶ丘(ここはここで別の良さがあるのだけれど)とか駒沢とか江戸川だったからなあ…。感激もひとしおである。

 開幕セレモニーでは、特別ゲストの三杉淳君(笑)が登場。サポーター席からは「俺たちの三杉君!」コールが飛び、三杉君のFC東京ユニフォーム姿にはスタンドがどよめいた……って、私は大いに楽しかったし『キャプテン翼』ファンは盛り上がったろうが、一般のお客さんは引いていた、というか意味が分からず唖然としていた。昨年の『春一番』の時はまだ一般客はあまりいなかったからなあ。でも、このこだわり、マジで素晴らしい(笑)。来年も「一般向け」はいらんぞい。 

 この日の「You’ll Never Walk Alone」の時間、威力を発揮したのがサポーター有志が配った青赤の紙。バック・メインのスタンド一面が青赤色に染まったのも良かったが、あまり頻繁に来ているわけではないファンも紙に書いてある歌詞をなぞって歌に参加できたのも良かったように思う。英語の歌詞って意外と覚えずらいからね。

 そして試合直前になり、いよいよお待ちかねの石原都知事による始球式である。慎太郎、代表のユニフォームなんぞ着て出てきてやんの。「FC東京のを着ろ!」って叫んでいる人も多かった。着ろよ(笑)。こっちのホームなんだからさ。知事の蹴ったパスを受ける役は当然、王様アマラオ。この時、アマがやけに離れた位置に立ったのでパスが届くかどうか心配になったのだが、慎太郎はつたない足どりながら10mほどドリブルを見せ(どよめくスタンド)、そこからアマラオへ正確にパス。「ワンツーで返せー!!」の声があちこちから飛ぶも、アマラオ(ちょっと「パス返しましょうか?」の素振りも見せたが)きっちりゴールに叩き込む。なーんだ、GKいないと枠内に飛ぶじゃん、という笑えない冗談はさておき(笑)慎太郎に花を持たせても良かったのになあ。知事殿はアドリブはお嫌か?また、ゴールした瞬間にピッチ脇で大音響とともに青赤のテープが吹き上がるの仕掛けには驚いた。派手な演出やって、FC東京も出世したもんだねえ。選手入場の時の青赤の変な風船人形なんかは同じなのにねえ(笑)。

 さて、そろそろ真面目に試合の話を。FC東京はキャプテン下平がベンチ入りせず(故障か?)増田も控え。代わりに浅利・小林が先発という予想外の布陣をとってきた。呂比須・三浦文・伊藤の新顔が入ってあとは昨年と同様である。FWの控えは新外国人のケリー。確か来日1週間程のはずだが、それほど期待が大きいということなのだろうか。一方のヴェルディは前園が先発せず、小倉の1トップ。三浦淳・永井と合わせて攻撃に偏った補強選手をそのまま出してきた形。中盤以降は変動がなく、相変わらず地味だが手強そうなメンツである。この連中相手に得点がなかなか奪えず苦戦した嫌な記憶が蘇る…。

 前半立ち上がり、優位に立ったのはFC東京だった。コンパクトな陣形でボールキャリアーに積極的にプレッシャーをかけ、奪った球は即座に前へ送っていく。7分には敵陣で3人で囲い込んでボールを奪い、三浦文→呂比須→アマとつないでシュートがバーを叩くビッグチャンス。その後も組織ディフェンスでボールを支配し、好調の浅利が左右に広くフィード、2トップと由紀彦・文丈のコンビで小気味よく攻め込んでいく時間帯が続いた。一方のヴェルディはスペースのない中アタッカーの個人能力に頼るサッカーで、攻撃が単発に終わっては守備に時間をとられていた。ヴェルディの最終ラインの固さは相変わらずだったものの、20分あたりまではどちらが代表選手を多く抱えているチームなのか分からないほど一方的な内容であった。

 ところが、クロスの精度の悪さもあってなかなか先制点をとれないでいるうちに東京も息切れしたのか、前半も半ばになると次第にヴェルディのパスがつながるようになり、逆に東京側はファウルで止める場面が多くなっていった。23分自陣ペナルティエリアそばのFKは三浦淳がふかして助かったものの、25分、自陣中央で再びファウルを与え、これを三浦淳に直接蹴り込まれてしまう。この30mほどのFK、飛んだコースとしては大して厳しくもなかったのだが、直接狙うかどうか微妙な距離であり、しかも落ちると言うより回転が少なく斜め下に加速してくるような強烈な弾道だった。土肥ちゃんを責めるのは酷だろう。ともあれ、攻め込みながら先制を許すという昨年同様の嫌な展開。このFKの直前、隣の席でずっと野次を飛ばしてたオッサンが「早く蹴れよ!どうせ入らないんだからよ!!」と怒鳴ったので嫌な予感はしたのだが…。東京のサポーター・ファンもちょっと浮かれすぎていたかもしれん。

 一旦こういう展開になると流れはなかなか変わらないもので、その後はむしろヴェルディの球回しが活発になり、山田・廣長の攻撃参加も見られるようになってきた。東京は右サイド中心に反撃を図るも、ヴェルディDFラインは相変わらず固く、崩すまでには至らない。おまけにアマラオが次第にポジションを下げて守備から攻撃まで独り相撲をとり始め、全体のバランスも悪化していった。40分には小林のドリブルでとったFKから波状攻撃をかけるも、サンドロが上がったところ逆にカウンターで1対2のピンチを招く始末。ここはDF陣が懸命に戻ってペナルティエリア内折り重なるようにして防いだものの、そのまま嫌な雰囲気で前半が終了した。

 

 後半も東京が立ち上がりから攻勢をかける。1分には伊藤のフィードから呂比須右サイドフリーで抜け出すもフォローがなく逸機。2分にもドリブルで中央に切れ込んだ小林から呂比須を経由してアマがシュートを放つが、これも相手DFに当たって×。アマラオは相変わらず下がり気味で、逆に前線が薄くなって攻めに手詰まり感が生じていた。呂比須は孤立し、どっちのチームが1トップなんだか分からない展開。さらにFC東京側にとっては間の悪いことに、前半から不安定だったレフェリングが後半になってさらに悪化していく。4分、左サイドアマラオとのワンツーから相手陣中央に持ち出した小林がスルーパス。反応した文丈がペナルティエリア左側で米山に引き倒されたかに見えたが、何故か文丈側のファウルに。さらにボールと関係ない所で倒された由紀彦について何の確認もせず、流しても良いオフサイドをとって東京の攻撃を寸断する。23分にはアマラオがペナルティエリア外でバックチャージを受けるがノーホイッスル。24分には米山のバックパスをかっさらった呂比須が後ろから引き倒され、完全にレッドと思えたがなぜかイエロー止まり。ここは倒されなければGKと1対1になる場面、完全な得点機会阻止(しかも後ろから)であったのだが…。「フェアプレー賞」の御威光はそれほど大きいということか?緑色の服を着ていた小幡レフェリーが心まで緑に染まっていたかは不明だが、私の周りで飛んでいた「4級審判!」「三井ゆりと代われ!!」との野次は全くその通りであったろう。

 10分を過ぎると東京の選手たちの足が止まり始めてDFラインとアタッカー陣との距離が開き、できたスペースを利用したヴェルディの縦パス・サイド攻撃に苦しむようになる。攻撃時にもフォローがなくなり、パスコースを作る動きがないためにMFの地点で立ち往生。15分には由紀彦がカウンターをかけようとするも、後続の選手が歩いていて全く前へ出られないシーンもあった(この頃からゴール裏で「ケリー」コールが)。26分には由紀彦のセンタリングがぴったり文丈に合う久しぶりのチャンスだったが、わずかにバーの上を越えてしまいノーゴール。そして27分、大熊監督はついにケリーを投入(なんと由紀彦OUT!)して追い上げを図る。が、しかし、13分の喜名投入(小林OUT)と合わせてあまりに得意ポジションを無視した交代が続いたためか(劣勢だとむやみにFWの数を増やしたがるのは大熊さんの悪い癖)、30分を過ぎると各自の役割分担についての意思統一がなくなり、さらにちぐはぐなサッカーになっていった。頼みのケリーは独特のリズムで攻撃の起点となってはいたがさすがにコンビネーションには難があり、また両ウイングを下げたことでサイド攻撃の威力も半減していた。40分には右サイド内藤からのセンタリング、なぜかマークがずれて呂比須がフリーでボールを受けたが、歩数を合わせるうちにシュートチャンスを逃してしまう。時間が時間だけに、「これで終わりかあ…」。だが、典型的なFC東京の負けパターンにあきらめの気持ちが生じてきたその時、奇跡は起きたのだった。

 浅利に代え増田を入れる捨て身の布陣をひいた直後の42分、ポストに入った呂比須からセンターサークル右でボールを受けた文丈が突如ドリブルで大きく直進、慌てたヴェルディDF3〜4人が集まったところ文丈が絶妙のタイミングで中央にパスを出すと、そこにはアマラオが超どフリーでいた。落ち着いてGK菊池を交わそうとするアマを菊池が手で引っかけて倒し、なんとなんと土壇場でPKのチャンス(もちろん菊池は退場)。どよめく場内。往生際悪くゆっくり時間稼ぎする菊池。PKが怖くてグラウンドから目をそらす私の連れ。無茶苦茶プレッシャーのかかるこの場面、正直言ってアマラオだと不安だったろうが(笑)今季は何しろ百戦錬磨の呂比須がいるから心強い。呂比須はゴールバーに当てながらも強烈なキックを枠内に飛ばし、ついに同点。Vゴール方式の延長に突入した。

 

 土壇場で追いつき、相手が1人減った延長戦。もうイケイケのノリで行くしかない。昨年の駒沢では似た状況でVゴール負けをくらったような気もするが、そんなことはもうサポーターの頭にはあるはずがない(笑)。FC東京の選手たちはそれまでがウソのように速いパス回しと活き活きした動きを見せ、スタンドの声援も波状攻撃を後押しした。0分には左サイドライン際を抜けた藤山がマイナスのセンタリングをゴール前に入れ、2分にはケリーの右からのクロスに増田が飛び込む。ヴェルディは4分に前園を投入するも大勢は変わらず、7分には再び藤山が動きの鈍ったヴェルディDFをしり目にドリブルで長駆し、呂比須→アマと渡ってシュートが枠へ飛ぶが、GK本並がナイスセーブ。11分には右サイドから上がってライン外へ出るかに見えたクロスをファーサイド諦めずに追ったアマが頭で折り返すチャンス(味方が反応できず)。さらに13分・14分にも呂比須・アマがシュートを放つが枠を外れた。後半に入っても東京の攻勢は続き、4分には右サイドFKの場面でアマが完全にDFに競り勝つがヘディングはわずかにバーを越えて行き、ノーゴール。この日のアマラオは全くツキがないというか、「枠に飛ばない病」再発、という感じであった。

 これだけ攻めても試合を決めらないと当然嫌な予感がしてくるものであり、実際ヴェルディも12分の石塚のヘッドや後半3分の三浦淳のシュートなど単発ながらもそれなりの逆襲は見せ、一歩間違えればやられていてもおかしくはなかった。しかし、今年の東京には呂比須がいる。延長後半5分、右サイドでボールを持ったケリーが喜名とのワンツーでペナルティラインまで進出、微妙に早いタイミングでグラウンダーのセンタリングを入れるとヴェルディDFはケリーとニアサイドのアマに引き寄せられており、ファーにいた呂比須はほとんどフリーで受けることができた。呂比須は柔らかいタッチから利き足側の右へボールを持ち出してシュート、ボールはブロックに入ろうとしたDF3人の間を抜け、真っ直ぐゴール右上に突き刺さった。FC東京、3年目にして初のヴェルディ戦勝利で、記念すべき東京スタジアム初試合初勝利。Vゴールの瞬間、スタンドでは3万人以上(推定)が一斉に両手で万歳・ガッツポーズ。この日この場所にいた東京のファン・サポーターは実に幸せだ。もちろん私も、本当に幸福な気持ちに浸れた。嬉しすぎる。くーっ!

 サポーターのブーイングを浴びていた小幡レフェリーだが、個人的感想としてはヴェルディ寄りというよりも単に下手くそなだけだと思う。だって、走ってないんだもの、この人。全般的に、ポジショニングが遠すぎる。いつもハーフスピードの小走りかウォーキングで、グラウンド中央付近の限られたエリアをウロウロしているだけ。だから近場のファウルには神経質に笛を吹く一方で、遠目のファウルには鈍感になる。ミスジャッジそのものは誰にでもあることだとしても、もっと近くで見ないと誰も納得させられない。

 この日は「東京ヴェルディ1969」の初戦でもあったが、やっているサッカーは昨年までと大して変わりばえのしないものだった。地味な俊英揃いのディフェンスは確かに固いのだが、攻撃は単発的でスムーズさと厚みに欠ける。いくら三浦淳や永井・小倉・前園に才能があっても、組織性に欠けて一人一人がボールを受けてから次の展開を考えるようなサッカーでは効果が薄い。これだけの顔ぶれを揃えたからにはもっと見栄えのするサッカーをやりたいのだろうが、李流リアリズムから松木流イケイケサッカーへの移行にはもう少し時間がかかりそうに見える。もしかしたら昨年1stステージでのガンバ大阪のように、理想(やりたいサッカー)と現実(勝ち点計算)の狭間で揺れ動くようなこともあるかもしれない。あとは、今の嫌われぶりを克服していかにサポーターを増やせるかも重要だ。試合後の中沢の「FC東京の方がしっかりしたサポーターがついていた」というコメントは、緑サポーターにしてみればショックだろう。FC東京サポーターの「ヴェルディ川崎!」コールもいつまで続くことやら(笑)。

 FC東京は、苦しみながらも歴史的な一戦をものにした。出だしからスピーディーな東京らしいサッカーが見られ、今年もそれなりに戦えそうな実感は得ることができた。一部の選手の入れ替えにも関わらず、チームの骨格は昨年のものが維持されていたと言えよう。極端に引きすぎないディフェンス(昨年後半以来の試みが形になってきたのか、それとも小峯と伊藤の特性の違いか)も安心できた。そして加わった選手たちの活躍。これはチームに良い刺激を与えるに違いない。呂比須はゴール前のチャンスにおいて日本人らしからぬ落ち着き(笑)を見せ、やはり確実な計算が立ちそうな選手だ。ケリーは時差ボケ・コンビネーション練習の欠如・不慣れそうなポジションという三重苦もものともせず、巧みなボールキープと球さばきを披露し、これからが楽しみ。その奇妙な動きと外見(失礼)から、「怪人」と呼ばせていただきたい。できれば一度、トップ下でのプレーが見てみたいところだ。三浦文丈も惜しみない運動量で攻撃に厚みをもたらした。従来からの選手では浅利・小林・由紀彦・増田のMF陣がまずまずの動き。ただ、ちょっと不安になったのは先制されてからのポジションの乱れと、意図のよく分からない選手交代。立ち上がりが良かっただけに、たった1点とられただけでチームのバランスが崩れてしまったのは反省点だろう。まあ、この1勝で監督も選手もより自信を持って戦えるだろうから、改善されると思いたいが。

 試合中は風が強くて非常に寒く、スタジアムでは終始震えっぱなしだった。また、飛田給までの帰り道も大変混雑し(駅まで徒歩で30分くらいかかったか?)、電車もぎゅうぎゅう詰めの状態で我慢せざるを得なかった。でも、この日はそれらのことも全くつらくも苦しくもなかった。なぜか?それは、FC東京が勝ったから。好きなチームが劇的な試合を見せてくれ、私たちがそれに満足させられたからだ。どん欲な私は、今日のような試合がもっともっとたくさん見たいと思う。だから、これからもFC東京が熱くひたむきに戦ってくれる限り、私たちは何度となく東京スタジアムに足を運ぶことになるのだろう。歴史は、今ここに始まったのである。

 

 

2001年3月10日 東京スタジアム

Jリーグファーストステージ第1節

 

     FC東京 2−1 東京ヴェルディ

 


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