今年も苦手は変わらず?昨年同様、夏の対決で完敗。

 

 早いもので、今年の1stステージも第14節。序盤戦で不振を極めたFC東京もここのところ勢いを取り戻し、現在3連勝中。ようやく勝ち星が先行して7位まで浮上した。今回は最後のホームゲームで、勝ち点で並ぶガンバ大阪が相手。ケリー・小峯が累積警告で出場停止という不安材料はあるものの、しっかり勝ってもう「降格」などという心配をしないですむ所へ到達したい。対するガンバ大阪、注目は何といってもアーセナル移籍が決定した稲本だ。もしかすると日本のクラブチームで戦う姿が見られるのもこれで最後かもしれず、そのプレーぶりはしっかり目に焼き付けておきたいところであった。

 

 試合開始50分ほど前に到着。この日も先週と同様、夕方になっても35度を超える暑さ。バックスタンド2階のいつもの席に座り、さっそくビールを一気飲み。お客の入りは、さすがに先週の4万8千とは比べものにならないが、それでも最終的には2万人以上となった。昨年の同カードが雨のせいもあって6千6百人だったことを考えれば、何と恵まれた状況になったことか。選手には是非そのことを自覚して戦ってほしいと思う。

 ウォームアップのためにガンバの選手が飛び出してくると、「キャー」という黄色い歓声とともにガンバ側スタンドで無数のフラッシュ。まるでアイドルのコンサートのようなミーハーぶりは昨年の国立でも見られたものだが、同じく昨年見た万博のスタンドはこんな感じでもなかったような気がするので、あくまで「東京のガンバファン」の特徴なのだろうか。稲本・吉原・小島・宮本・都築と人気者が揃っているから仕方ないといえばそうなのだが、あまりの嬌声に「君たち本当にサッカーを見に来てるの?」と突っ込みたくなるのは男臭いチームを応援している者のひがみだろうか。

 スタメン発表。東京はケリー・小峯に代わって加賀見・伊藤が先発で、傷の癒えた呂比須は控え。4−5−1のフォーメーションにしてからの好調さを維持したいということなのだろうが、加賀見にケリーの代わりがつとまるのかどうか、非常に不安ではあった。一方のガンバは吉原・ニーノブーレの2トップで、小島は控え(この、タイプの重なる吉原・小島を抱えていることに関しては、常々もったいないと思う)。遠藤やっとが入ってやたら中盤が厚くなったように感じられ、DFにはこの日は控えだが山口も加入したし、このチームいい補強をしてるのは確かだ。優勝争いしなければならないメンツとも言え、今の順位はファン・サポーターにとって至極不満だろう。

 

 キックオフ直後から、両チームとも中盤で細かくつながず大きくボールを動かして相手ゴールへ近づこうとする。ただ、どちらかと言えば東京の選手の動きにはややスピード感が欠けているように見え、ガンバがボールを支配。開始4分、右サイドでMFビタウに東京の2人が詰めていったところ、ビタウは中央の遠藤にパス。ここで浅利は左右のスペースに気をとられ、他の選手も寄せていく気配がなく、遠藤に数秒の時間を与えてしまう。「危ない!」と感じた瞬間、東京DFラインとGKの間を狙って絶妙の浮き球が上がり、吉原が抜群のスピードでセンターバック2人の間を割って右足で合わせる。ボールは土肥ちゃんの脇を抜けてポストに当たってゴールの中へ転がっていった。ペースを全く掴めぬままの、早い時間帯での失点。相手のプレーが見事だったとはいえ、ケリー不在で得点力には心配がある中実に嫌な展開であった。

 ゴール裏から響く励ましのコールの中、東京は反撃を開始。いつも通り両サイドの突破から中央のアマラオに入れるパターンで同点を狙う。8分には由紀彦のクロスにアマラオが頭で合わせるチャンス(都築キャッチ)。しかし、この後も東京はそれなりに形はつくるのだが、なかなかシュートまで持ち込めない。アマラオは1人で奮闘しているもののすぐそばの加賀見にアマを助ける動きができていない。加賀見にボールが渡ればDF1人に抑えられ、ならばとアマにボールがわたれば数人がかりでとられるような感じだ。一方ガンバは前線で2トップが張り続けてセンターバックを釘付けにし、そこにMF二川・稲本が飛び出し、遠藤・ビタウが縦に球を入れるシンプルで効率的な攻め。伊藤・サンドロの奮闘もあってやはりシュートまではなかなか行かないものの、右サイド(東京の左サイド)のスペースを数回に渡って突破し、東京ゴールを脅かし続ける。

 そのうち、やはり暑さのせいか東京の運動量とパス成功率が落ちはじめる。ガンバもそれほど動けているわけではないのだが、リードされている状況だけに東京の選手の「動かなさ」が目立ち、攻撃を組み立てられないことにイライラが募る。各自が自分のポジションの辺りをうろうろするばかりで、相手の守備網をかき回すようなポジションチェンジやスペースをつくる・スペースへ走り込む動きが極めて乏しい。浅利は下がりっぱなし、下平は攻守の繋ぎ目として機能せず、しまいには中盤でのパスコースまで作れなくなってDFラインでのボール回しが続く始末。当然、ゴール裏からはブーイングも発生。加えて稲本がボールを持つたび、ガンバ側スタンドからやたら歓声が上がるのがさらに気に障る(笑)。もやもやした気分のまま前半が終了した。

 

 後半、東京は下平に代えてダイナモ役の三浦文丈を投入。これで活が入ったか、東京の攻撃はにわかに活性化。6分には中央で稲本(!)をかわした小林がDFライン手前までドリブルした後左へはたき、フリーの加賀見がインサイドキックでゴールを狙う(都築キャッチ)。東京が前がかりになり中盤がばらけた分ガンバも東京ゴール前でシュートまでたどりつけるようになるが、浅利とセンターバックの3人が集中してディフェンスし、ゴールを許さない。13分には右サイドで加賀見がDFラインの動きをよく見た上でスルーパス、文丈が走り込んだところ都築が良く飛び出してノーゴール。さらに20分には相手DFがスルーパスをカットしたボールを由紀彦が拾い、ファーサイドのアマラオへどんぴしゃのクロス。しかし、これも決められない。毎度の事ながら「決定力不足」の文字が頭に浮かんできた。そのうちガンバは残りのスタミナと時間を考慮したのか、DFラインとボランチの辺りでゆっくりボールを回すシーンが目立つようになった。再びイライラが募る。

 22分、加賀見に代えて呂比須投入。スタンドは大歓声に包まれる。シーズン序盤の不調期には「呂比須不要論」がネット上で頻繁に見られたため、「ケガが癒えても呂比須の戻る場所がないのでは」と思ったものだが、ケリーの出場停止とその試合での決定力不足を見せつけられて皆気が変わったのだろうか。個人的にはほんの数試合で(ゴールもそれなりに決めていたのに)「不要」などと言われた呂比須を気の毒に思っていただけに、この歓声はとても嬉しかった。で、実際、この日の呂比須はやはり足元でボールを抱えすぎるきらいはあるものの、以前に比べれば動きは良くなっていたように思う。ここで一発決めれば男になれたのだが…。

 25分、東京にとってこの日最大のチャンス。敵陣FKでのリスタートから浅利がペナルティエリア外中央で待ちかまえる小林に縦パス。小林は反転し、オーバーラップして走り込む文丈目がけて浮き球を送る。その時ガンバDFはゴール前から戻る呂比須に気をとられたかセンターバックとサイドバックの位置にギャップが生じ、文丈はオフサイドにかかることもなくきれいにDFライン裏に飛び出した。都築の飛び出しも遅れ、後は振り返って決めるだけ。文丈は丁寧にボールコントロールして反転、シュート。「決まった(だろう)!!」と我々が立ち上がりかけた瞬間、ボールはゴールポストのわずか右を通過していた……。つーか、決めろよ、文丈!!あれ入れなくていつ得点するんだ(飛び出しまでは見事としか言いようのない動きだったが)。めげずに東京は攻撃を続けるが、ビッグチャンスを逃したことによるテンションの低下は避けられなかった。

 そして29分、ガンバは相変わらず中盤でゆっくりボールキープしていたのだが、東京側がほとんどプレッシャーをかけないと見るやジリジリと前進、右サイドビタウから中央の稲本にボールが渡ったところで突如ペースアップ、稲本はキリンカップユーゴ戦のリプレイを見るかのように突進から交代出場の小島とのワンツーを決め、ゴール右隅に叩き込んだ。肉体的にも精神的にも限界に達していた東京DFは「次季アーセナルMF」の鮮やかなプレーにほとんど棒立ち状態で、最後内藤先生が必死のブロックに飛び込もうとしたが届かず、決定的な追加点を許してしまった。ガンバ側は、もう総立ちで拍手。どうも、この日は稲本目当ての非東京ファンが非常に多かったらしく、ゴール裏のみならずメイン・バックでも凄い盛り上がりだ。うーん、悔しい。

 それでもめげずに反撃を試みる東京イレブン。しかし、やはりゴールは遠い。33分には呂比須が鮮やかなフォームでミドルシュートを放つが、わずかにポスト左。さらに直後、呂比須がドリブルからペナルティエリアぎりぎりのところで倒される。「PKか!?」再び腰を浮かしかける我々。しかし、何とも不運なことに、ほんの数十センチほどエリアの外であった。わずかの距離で、天国と地獄。由紀彦ならずともあの「近すぎる」直接FKを決めるのは困難であったろう。由紀彦の蹴ったボールはあっさりと壁にはね返され、最後のチャンスはついえた。終了間際はガンバに順調に時間を使われ、そのままタイムアップ。結果、このカードは昨年に引き続き東京の完敗に終わったのであった。

 

 感想。まあ、今の東京はケリーが抜けてしまうとこんなもんなんだろう。一昨年辛うじてJ1昇格を果たしたもののアマラオへの過剰な依存が指摘され、昨年はツゥットが今年はケリーが補ったものの、彼らがいなくなるとアマの負担が増えて東京のサッカーが機能しなくなる。これはもう数年来続いている問題だ。幸いにも次週はケリーが戻ってくるが、またいつ同様の状況になるかわからないし、アマラオもこんなハードワークが続いてはフル出場は難しい(ただ、こちらには呂比須がいるのでまだいいが)。この日見たところ、加賀見ではいかにも役不足という感じだった。由紀彦や小林のトップ下起用という試みがあってもいいと思うし(サイドには増田だっているだろう)、それで駄目なら「補強」が必要か。今シーズンというよりむしろ来季以降のために、攻撃の形を巡る問題についてはこれからも検討していかなければならないのだろう。

 個々の選手では、小林が良かったと思う。サイドだけでなく中央でも積極的にボールに絡み、攻撃にアクセントをつけた。あと伊藤も小峯に全く劣らぬ(むしろより安定した)守備を見せてくれた。下平はもう少し展開力を発揮してほしい。今のプレーぶりなら、別にペルー小池でも良い。藤山もあれだけ前にポジショニングをとるのなら、もっと攻撃でも存在感があっていいはず。あとは、全体的に頭でっかちにならず、もう少し個々のポジションでマーカーないし自分のマーク相手とファイトしてほしいと思う。マークの受け渡しや攻撃のシステム化がいつの間にやら「人任せ」に陥っている時があるように見えるからだ。「部活サッカー」だけは忘れてはいかん。

 ガンバ大阪にしてみれば、格の違いを見せつけたというところか。全体的にあらも目立ち(特にDFライン)、動きもそれほど良かったわけではない。しかし得点になった2つのプレーは非常に質の高いもので、勝負所で見せた高い技術と集中力には素直にシャッポを脱ぐべきなんだろう。稲本はプレミアリーグへ行ってしまうがしっかり遠藤を補強してるし、両外国人も地味ながらいい仕事をしているし、優勝争いに食い込んでいないのが不思議でもある。昨年1stでけなした直後に2ndで上位に進出したこともあって批判はしづらいし今年はよく見ていないのだが、早野さんの采配はどうなんだろう。誰かガンバサポーターに聞いてみたいところだ。で、話題の稲本だが、正直言って緩慢なプレーも多かったように見えた(小林にあっさり抜かれたとことか)。2点目のゴールを決めたプレーとその他の時間帯の落差が目立ち、もしかしたら今のチームでは自分の能力をもてあましはじめているのかもしれない。だとしたら、レベルの高いリーグへの移籍は賢明な選択だろう(行き先のチームも最高だし)。いずれにせよ、頑張ってほしいという気持ちは「稲ギャル」(笑)も私も同じだ。 

 

 私はバスの時間もあったので試合終了のホイッスルと同時にスタジアムを出てしまったのだが、どうやらその後オーロラビジョンに稲本への応援メッセージが映し出され、東京サポーターも稲本コールで送り、稲本自身もガンバ側のみならず東京側のゴール裏にも挨拶することでそれらに応えたという。柏スタジアムでの「FC東京の選手・スタッフ・サポーターの皆さんを心より歓迎いたします!」というアナウンスにちょっと感激したのを思い出した。ユニフォームの交換や相手関係者の不幸への黙祷などに見られるように、本来戦いの時間以外では敵も味方もないはずなのだ。相手にブーイングを浴びせるのも(私は好きじゃないが)、ちゃかすのもいい。だけど、こういう「感情とメッセージの共有」というのもまた忘れてはならないサッカーの大事な部分なのだと思う。頑張れよ、稲本。

 

 

2001年7月14日 東京スタジアム

Jリーグファーストステージ第14節

 

FC東京 0−2 ガンバ大阪

 

[追記1]
 本文ではあまり書かなかったが、ガンバ大阪のゴール裏は今年も2グループ(ヤンキーっぽいのとミーハーレプリカギャル(笑)軍団)に分裂していた。ヤンキー連中は昨年国立で倒れた東京の選手に「くたばれ!」とかメガホンでがなりたててて不愉快だったのだが、今年は席が遠く東京側がサポーター数で圧倒していたのであまり気にならなかった。しかしガラの悪さは相変わらずだったようで、爆竹投げたり東京のサポーターを囲んだりしてたとか。そりゃあ宮本も稲本も出ていきたくなるよな(もし東京の選手が海外移籍するとして、ガンバサポはどういう反応で送り出すかな?)。つーか、そんなことやってっからいくらタレント揃えても人気も成績もイマイチなんだよ、いつまでも。反面教師にしなきゃならんな、FC東京としては。

 


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