秋のカウンター祭り!アマのハットトリックでセレッソ降格決定!!

 

 思い起こせば、1stステージ前半の段階で降格の影に怯えていたのは、むしろFC東京の方だったのだ。

 今季のJ1リーグも残りわずか4試合、今回の相手は2部降格に王手のかかったセレッソ大阪である。昨年の1stステージで優勝直前まで行き年間総合5位の成績を収めたチームがわずか1年でこうなってしまうとはにわかに信じがたく、戦力拮抗したリーグ戦における栄光の儚さと「流れ」の恐ろしさを痛感させられるが、しかし同情ばかりもしていられない。FC東京も2ndステージ一時優勝争いに食い込んだもののここ3戦は負・負・引分と今ひとつ失速気味。怪我人も続出しており、ズルズル順位を下げるかそれとも上位にとどまるかの瀬戸際にいるのは間違いない。ここは何の恨みもないがセレッソさんを踏み台として(あっさり降格していただき)、再び勢いをつけたいところだ。

 

 開始1時間弱前にバックスタンド2階前段のいつもの席につくと、後段にぞろぞろとガキ、失礼、小学生の皆さんが入場してきた。引率者の腕章を見ると「烏山小SC」の文字が。「少年少女観戦バスツアー」というヤツですな。初めて見に来る子が多いらしく、「芝がきれい!」「すげー、でけー!」などと東京スタジアムについて感激の声をあげているのが微笑ましい。国立競技場に初めてサッカーを見に行って木村和司師匠のプレーに魅せられた記憶がよみがえった。この子たちもこの日を境にサッカーに、FC東京に魅せられて我々の仲間になってほしいものである。

 メンバー発表。東京はアマラオと文丈が復帰で負傷の浅利に代わって下平先発、戸田がMFに入って福田は控えに回った。サブはカブ・宮沢・小林(稔)と、またしてもフレッシュな面々だ。一方のセレッソは岡山・大柴の2トップでトップ下に森島が入る布陣。田坂とか尹とかいったお馴染みのメンツはいるが、室井・布部など移籍してきた選手が目につく。西谷はどこに行っちゃったのだろう(怪我?)。そして、主審の発表で我々は息を呑んだ。なんと恩氏!あの、荒れる試合を演出することでは追随を許さず「J最低審判」との呼び声も高い、「退場量産マシーン」恩氏孝夫である。ただでさえ欠場者が多い上に由紀彦・小峯・サンドロがイエロー2枚という状況下でこのレフェリー、「東京の悪い流れは加速してしまうのだろうか」という不吉な予感が頭をよぎった。

 キックオフ直前、東京ゴール裏から「さよならセレッソ!」のコールが起こり、白いタオルを振るサポーターの姿(笑)も目立つ。まー、特に因縁のない相手に対してこーいう「死者にむち打つ」類のことはあまりやらない方がいいと思うのだけれど……。来年は我が身かもしれないしね(それを言い出したら何もできないかもしれないが)。直後、少人数でがんばるセレッソサポーターに対して拍手が起こり、ちょっとほっとする。

 

 キックオフ。この日は終始雨が降り注ぎ、滑りやすいピッチ状態であった。双方とも選手間の距離を適度に保って慎重な立ち上がり……になるかと思いきや、もはや勝つ以外に道がないセレッソが人数をかけて攻め、意外と激しい展開に。6分、山尾のミスからペナルティエリアすぐ外のFKとなり、ヒヤリとさせられる。8分には逆に東京が由紀彦・小林の2人でカウンターの形を作り、由紀彦がGKと一対一になりかけるチャンス(GKかわしに行くもクロスをカットされ逸機)。東京はコンディションを考慮したかいつもにも増してDFラインを上げず、試合の多くは東京陣で進むことになる。押しこむセレッソ、守りを固めカウンターを狙う東京という構図。しかし、これは東京にしてみれば得意の形であった。

 15分、後方からのスルーで右サイド由紀彦が抜け、マイナス気味のグラウンダーを中央に走り込んできた文丈の足下に入れる。文丈がきれいな弾道のミドルシュートを突き刺してゲット。東京、あっさりと先制。この得点で雰囲気は完全な東京ペースとなり、個々が突っ込んで来るばかりで組織性の薄い防御を嘲笑うかのようにパスがセレッソDFの間を抜けていく。18分には数十秒に渡ってパスがつながり続けるという、およそ東京らしくない場面も見られた。そして19分、またしても右サイドでDFのスライディングをかわした由紀彦が裏へ抜け、深くえぐってから中央でなぜかフリーになったアマラオへ。アマは軽く右足で浮かすトラップからボレーで叩き込み、2−0。いくら前に行きたい気持ちが強くともカウンターの場面で、しかもボールを持っているのが由紀彦なのに、アマをフリーにしたらそりゃやられるわな。

 その後も基本的な展開は変わらない。陣地・ボール支配ではセレッソの方が明らかに優勢で、かつ東京のDFがそれほど堅いとも思えないのだが、最後の一線をなかなか越えられない。強力なパサーがいないのと、アタッキングエリアに入ってきた時に受け手側にもチャレンジングな動きが足りないように見えた。頼みの森島も目立たず。カルロス監督もその辺は意識したのか、DF藏田に代えてMF尹を投入(ちなみにこの時私は何をどう勘違いしたのかその表示を「尹に代えて盛田」と読んでしまい、「狂ったかジョアン」と思ったものだ。盛田って、とっくに移籍してたよね、そういえば)。21分、岡山の叩きつけるヘッドがゴールマウスに飛ぶが土肥ちゃんが弾き出す。23分、クロスのこぼれ球を拾った小林がペナルティエリア内でシュートを打つが、枠外へ。28分、左サイドでアマが深くえぐってセンタリング、しかし走り込んできたコバの足下に入りすぎてシュート打てず。30分には布部のクロスに岡山が合わせた場面、サンドロと土肥ちゃんが激しく競って行ってノーゴール。

 30分を過ぎると東京陣の中で延々とボールの取り合いが続き、退屈な時間帯に突入した。時折東京が散発的にカウンターの形を作る時だけ場内が沸くが、全体的に試合はトーンダウン。小峯から前へのパスが全然通らずブーイングが起こったりもした。冷たい雨の中で体力の消耗も激しく、「2点勝ってるし、ハーフタイムまで小休止しよう」という感じであったろうか。44分にはゴール前で大柴→尹からの三角形パスに岡山がスライディングで飛び込んでヒヤッとするが、直後のCKで下平がクリアしたボールがなぜかゴールキックになり(さすが恩氏だぜ)助かる。ロスタイムの大柴のロングシュートも土肥がきっちり防いで前半は2−0のまま終了した。

 

 ハーフタイムの休養が効いたか、後半に入ってから試合が動くのは早かった。1分、東京DFの短すぎるクリアを拾った尹のミドルシュートがサンドロに当たってコースが変わり、土肥ちゃんが逆を突かれてゴール。2−1。「少々油断があったか?」、それにしても不運な失点。しかし、東京のリアクションもまた早かった。4分、由紀彦が中央に流れながらクロスしてサイドに出る文丈にスルーパスを通し、文丈の角度のないところからの思い切ったシュートが斉藤の体に当たってインゴールへ。あっという間に突き放して、3−1。幸運の直後の不運、高揚の後の落胆。この、のぼった梯子を外されたような間の悪い失点、セレッソはお祓いでもしてもらった方が良いのかもしれない。

 もう攻めるしかないセレッソはMFマルセロに代えて快足ドリブラー大久保を投入、思いっきり前がかりの態勢に。FWも遠目からでも積極的にシュートを狙い、東京ゴールを脅かす。7分には大久保のドリブルからの強烈なシュートが、9分には布部のグラウンダーがそれぞれ枠に飛び、いずれも土肥ちゃんが横っ飛びで弾き出す。11分には正面でのFK、尹のシュートが外から巻いて入ってきたが、ポストを叩いて得点ならず。その他にもわずかに枠を逸れたシュートが多数。東京は一見アップアップの状態に見えたのだが……そういう時こそカウンター。15分、自ゴール前でボールをとってから藤山→アマ→左サイドのコバへとつながり、セレッソ陣で右サイドへ開いた文丈へサイドチェンジ。文丈はダイレクトで中央のアマラオへボールを返し、アマが左サイドへ流れながら室井を振りきってニアへ難しいシュートを決めた。4−1。これでほぼ勝負あった。

 セレッソにしてみれば状況に変化なく攻め続けるしかないわけで、東京は全体的にはペナルティエリアに釘付けのまま。しかし前に出てボールをとりさえすれば、面白いほど裏に抜ける場面が見られた。18分、FKからの混戦で球を奪った藤山がドリブルで持ち上がり、中央を上がる戸田へパス。戸田は左サイドへ弧を描くように懸命のドリブルを見せてセンタリング。これは逆サイドへ流れたが由紀彦が拾って柔らかいクロスを上げ、アマがDF2人から頭一つ抜け出るジャンプ、ヘッドでゴール右隅へ。5−1。絵に描いたようなカウンターの連続に狂喜の場内。この日は後段で雨を避けていたゴール裏ももうどーでも良くなったのか(笑)、濡れるのも構わず前段に降りてきて踊り出した。Fマリ戦どころではなく、この日は本当の祭りになった。フェスティバル!!

 大騒ぎの東京側に対し、ガックリと肩を落とすセレッソの選手達。プレー再開後も前に出る姿勢は相変わらずながら、時折集中力を欠いたプレーも目立ちはじめ、攻め疲れで動きの落ちた東京と何となくスローな攻防が続く。24分、フィールド中央を持ち上がったアマラオから右スペースの戸田にスルーパスが通るが、ファーサイドを狙ったシュートはGKに弾かれてノーゴール。29分、尹がカーブをかけた浮き球をゴールポスト前の大久保に通し、ボレーシュートを土肥ちゃんが飛び出して防ぐ。30分を過ぎると東京は両ウイングに代えて福田・鏑木を投入、再び活の入った攻撃で右から左から好クロスが上がるが、アマが宇宙開発(笑)したりして「惜しい!あー!!」と嬉しい悲鳴が飛ぶ。いいよね、余裕って(などと思ってたら土肥ちゃんがCKをこぼしたりしたが(笑))。38分には相手DFの空振りのプレゼントボールを戸田が拾ってDFライン裏の文丈に通し、文丈が落ち着いてシュート!……はサイドネット。

 東京はさらに41分に土肥ちゃんに代えて今季リーグ戦初の小沢を入れる余裕のかましぶり。が、やりたい放題されているセレッソに神様が同情したのか、それとも雨の中最後まで攻める姿勢を保った事へのご褒美か、その直後、尹からの浮き球をペナルティエリア内で森島が落とし、大柴がゴールへ蹴り込んでゲット。5−2。押しこまれた時に得点を重ね、逆に試合が決まって攻撃が楽になったところで差を詰められるところが東京らしいというか、サッカーは奥深いというか。とりあえず、得失点差も順位に影響することを忘れてはいけないよな。そしてロスタイム、セレッソやけくその反撃を東京はお約束の「ゴール前での体を張った防御」(「部活サッカー」ってか)で防ぎ、最後の直接FKを小沢が押さえたところで終了の笛が鳴った。

 

 恩氏レフェリーも、今回はぶちキレてご乱行に及ぶことはなし。東京がもらったイエローは2枚のみ。あ〜良かった。

 試合後、ヒーローインタビューはもちろんハットトリックを決めたアマラオだったのだが、通訳を介してポルトガル語で喋り続けるアマに対してゴール裏から「日本語しゃべれ!!」コール。もちろんアマはそれに応え、最後は流暢な日本語でサポーターへの感謝を述べた。まー、大変だよね、ブラジル人のふりも(笑)。

 

 セレッソ大阪は、この敗戦でついに2部落ちが決定。ここまでの戦いぶりについて詳しくは見ていないが、得失点差−36ではこの成績も仕方ないだろう。攻撃面では西澤の不在がやはり響いたように思える。西澤個人の能力ももちろん、彼をターゲットとしてその周りを森島・西谷が自在に動き回るという得意の形が出せなくなったのが大きい(そう考えると、アマラオ不在の東京も同様の状況になるのであって、他人事とは思えないな)。守備も昨年のコンパクトさはどこへやら、この試合だけを見たら、はっきり言って「ザル」だ。カウンターをくらったとはいえ、やはりアマラオと由紀彦をあれほど自由にやらせれば5失点も仕方がないだろう。あと、昨年の良かったときに比べると選手の顔ぶれも相当変わっており(両サイドアタッカーが2人ともいなくなっている)、フロントの戦力マネージメントにも問題があったのかもしれない。何やら、今年1年全てが悪い方向に進んでいってしまったような印象すらある。森島はどこへ行くのだろうか(彼の性格ならば残留するような気もするが…)。

 FC東京にしてみれば、ある意味自分たちの型にはまりまくった会心のゲームだった。あれだけ後ろをおろそかにした形で前に出てくれれば、それこそカウンターの見本市状態。わっしょいわっしょいと今季リーグ戦最高の5得点を奪った。アマも由紀彦も文丈も小林も戸田も藤山も持ち味を出して好機によく絡んだ。守備ではタイトさに欠けて2失点を含め多くチャンスを作られたが、1点目は不運なものであったし、雨の中大量リードで集中を保つのも難しかったろうからある程度は仕方ないと思う。で、言うまでもないことだが、やはり「勝って兜の緒を締めよ」。次は、上位に入るためには大事な大事なアウェイの鹿島戦だ。ここを乗り切れば、2ndステージ3位(賞金3千万円!)も見えてくる。この日のカウンターの感触を忘れず、かつ守備の厳しさをもう一度思い出し(2ndはまだ完封試合がない!)、茨城県の方々に手強いFC東京の姿を見せつけてやろう!!

 ちなみに、我々の後ろに座った子供達は点の入りまくる派手な展開にもちろん大喜びだったが、何よりも彼らの目を引きつけて放さなかったのは雨の中次々と1階席前段に降りて行進して歌い続ける東京サポーターの姿だったようだ。みんな、ああいう風になるんだぞ(笑)

 

 

2001年11月3日 東京スタジアム

Jリーグセカンドステージ第12節

 

FC東京 5−2 セレッソ大阪

 


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