今年も3−0! FC東京、横浜相手に超セクシーなサッカーで完勝!!

 

 約一ヶ月の中断期間を経て、J1リーグがついに再開。昨年来すっかりFC東京中毒になっている私はこの「別にオフシーズンでもないのに試合がない」状態に耐えられず(もちろん日本代表やEURO2000もいいんだけど、我がクラブとはちょっと意味が違うのだ)、やたら東京グッズを買い込んだり「ショートカット」別冊向けにFC東京の紹介記事を書いたりして再開を待ちこがれていたのだが、ついにその日がやってきた。もっとも1stステージ終盤には疲れが溜まっていた選手達にしてみれば、この中断期間は砂漠の慈雨のようなありがたいものであったろう。チームとしても、選手個々のコンディションを上げると同時に1stステージで明らかになった課題(相手に引かれたときの試合運びなど)を修正するのに絶好の機会であった。他のJ1チームと違って過酷日程の日本代表に招集された選手もおらず、ベストメンバーで合宿も組んで、チーム力は確実にアップしているはず。しかも初戦の相手は相性と縁起の良い横浜Fマリノス。期待に胸を膨らませて雨の国立競技場に出かけた。

 

 この日は「ポケモンDAY」。入場口でのお子様へのポケモンバンダナ配布(私もゲットしようと近寄ってみたが、見向きもされなかった(笑))、試合前のピカチューによるセレモニー、ハーフタイムのポケモン抽選会など、ピカチュー&ピチューづくしである。周りを見渡してみても、心なしか家族連れ・黄色いバンダナ巻いたお坊ちゃんお嬢ちゃんの姿が多いようだ。

 ピカチュー効果がどれほどのものだったのかはわからないが、スタンドに到着してみると雨にも関わらず1万4千人の入り。嬉しいことだが、晴れれば3万は行ったのになあと、ちょっと天気が恨めしくもなった。試合20分前、いつものように22番入り口の上辺りに腰を下ろし、スタメンとサブを確認。報道されていたように由紀彦が疲労性腰痛(中断期間中に疲労性疾患とは、フィジカルコーチおかしいんじゃないの?)により欠場で、代わりに移籍の増田がいきなりスタメン。サブは堀池山尾喜名戸田神野といつものメンバーであった(注:この項アップ後、「山尾ではなく古邊だ」との突っ込みが入り、確認したところ、確かに古邊でした。失礼しました(汗))。横浜の方は松田が出場停止。いきなり新加入のユーリッチが先発だ。ともに一人ずつの欠場者だが、右ウイングとリベロ、どっちが埋まりにくい穴かといえば言うまでもない。得点はそれなりにとれそうな雰囲気である。

 メンバー紹介が終わると、選手入場口の辺りでピカチューのセレモニーが始まった、のだが、これが…非常に寒かった。ピカチューが「ピカ!」だの「ピ、カ、チュー!!」だのしか言わないのは仕方がないことだが、相方のお姉さん(名前は忘れた。水原恵理ではない)が実にわざとらしいしゃべり方で間も悪く、非常にイライラさせられた。また時間・進行の管理もうまくできていないようで、「さあピカチュー、選手入場よ!」とか言ってから実際の入場まで5分以上もかかったり(その間の白けた空気ったら…)、選手入場後にピカチュー大フラッグを広げピカチューの電撃で聖火台を灯す作業で選手を待たせたりと、まあ居心地の悪いことこの上なかった。いや、ピカチューは悪くない(電撃で聖火を灯したときはそれなりに盛り上がったし)。むしろ日本の、いや世界の大スターであるピカチューを晒し者にしたことに私は本気で腹が立ったのだ(なーんちゃって)。タイアップそのものは有り難い話なのだが…次の時は気を付けてくださいね。

 ピカチューも引き揚げ、ようやくキックオフ。予想通り横浜がボールを支配して東京陣に入る時間が多くなったが、東京守備陣のマークがしっかりしているために右へ左へボールを回すもシュートまで至らない展開。パスの出しどころがなく最終ラインで長々とパス回しを行ってブーイングを浴びる場面も2度ほど見られた。一方東京は自陣でボールを奪うやすかさず前線に張るアマラオにボールを送ってそこから左右に散らす、教科書通りのカウンター(やまかんさん風に言うと「アマラオ大作戦」)でシュートにまで持って行く。明らかな東京ペースだ。注目の増田も序盤は積極的に攻撃に絡み、5分にはオーバーヘッドシュートも見せた。ただ、やはりまだまだ東京サッカーが身に付いているわけではなく、逆サイドでボールを獲った時に反応が遅れたりコンビネーションが合わない場面も見られ、徐々に攻撃参加も少なくなってしまう。

 13分、手詰まりになった横浜が自陣で漫然とボールを回し始めたその時、死角から飛び出たツゥットがボールを奪い、右斜め前に位置していた小林にパス。小林は独特のリズムのドリブルでゆっくりと中央に切り込み、ユーリッチを引きつけた上でクロスして右サイドに回り込んだツゥットにスルー。ツゥットは完全に振られたユーリッチのスライディングに続いて飛び込んできた小村・波戸もかわしてゴール右隅に突き刺し、東京先制。全く東京らしい、惜しみないディフェンスと卓越したコンビネーションによる得点であった。これで東京は完全にペースをつかみ、その後しばらく左右両サイドから自在の攻撃を見せる。この日の東京は後方の藤山・小池らも合わせてパス回しが安定しており、追加点はなかなか奪えないもののダイレクトパスがどんどんつながるテンポの良い、見ていて楽しいサッカーを展開した。

 この試合で一つ目についたことは、横浜サポーターのちょっとした変身だった。いつも横浜サポーターと言えば数は多いがおとなしい印象で、女性の割合が多く、「真面目な」大勢のサポーターの中で一人ハンドマイクをもったリーダーらしい男性がこれまた「真面目に」怒鳴っている姿が思い浮かぶのだが、この日はけっこう元気。サポーターの中で違う集団が台頭してきたのか、男っぽい声で相手をはやしたり味方に檄をとばす姿が見られたのだ。ツゥットがFKをふかした場面で「かっ飛ばせー!ツゥット!!」は良かったなあ。対して東京サポーターはいつも通り。横浜サポーターのコールには「かっ飛ばせー!ツゥット!!」と合わせて応え、失点や不利な判定の度にハーフライン近くまで上がっていく川口に「落ち着け能活!」「怒るな能活!!」とコールを浴びせる(これに手を挙げて応える能活。お互い好きなんだよね、多分)。

 20分を過ぎる頃から、横浜はストッパーの片方も前へ上げて押し上げ、エジミウソンに球を集めて攻勢に出ようとする。東京が次第に前線でパスがつながらなくなったこともあり、横浜の攻撃シフトはある程度の効果を上げた。23分にはCKから小村のヘッドがバーをかすめ、26分にはセンターバックの間をエジミウソンがDFラインの裏に抜ける(土肥ちゃんが完璧なタイミングで飛び出してセーブ)。ただ、横浜は俊輔が厳しいマークにあっている上にFW陣(特に外池)にマークをはずす動きが乏しく、頼みのセットプレーも土肥ちゃんが安定したセーブを見せてゴールを割れず、再び手詰まりになっていった。

 35分頃から東京は小林と増田がポジションをスイッチ。さらに小池の前線へ飛び出す動きが目立つようになり、相手が押し上げてきた後に出来たスペースへ球を出してチャンスをつくる。Fマリノス守備陣は東京側のシフトチェンジに対応しきれず、混乱状態に陥る。大熊さん、やるじゃん41分にはいつもと逆の右から切れ込んだ小林がドリブルで3人抜いてシュート(川口ナイスセーブ)。45分にはツゥットが左サイドを単騎で突破、相手DFが背走して止まった瞬間を見計らい、中央の小池にパスを出した。この場面、横浜DFは皆足が揃ってしまっていただけにシュートへ持ち込む絶好のチャンスだったのだが、小池は弱気にも右サイドの増田へへたれパスを出してオフサイド。1stステージ最終戦ヴェルディ戦で前半で引っ込められてしまい、悔しい思いをした(にもかかわらず試合後にサポーターのところへ来てくれた)小池だけに、ここで一発いいとこを見せてほしかったのだが…。結局、1−0で前半終了。

 

 ハーフタイム、オーロラビジョンでポケモン映画版の予告編上映。いやあ本編よりもピカチューとピチューが街中を駆け巡るおまけ映画の方が楽しそうだな俺けっこうピカチュー好きなんだよね、などと思いながらふと周りを見回してみると、周囲のお子様方がじっと予告編に釘付けになって微動だにしない。うーん、恐るべしポケモン今FC東京にマスコットはおらず今後もまず作ることはないだろうが、もしもJリーグから「一チーム一マスコットをもつこと」などという圧力がかかったら、ピカチューをマスコットにしてはどうだろうか。テレビ東京も大喜び、ちびっ子ファンも大喜び、世界的にも有名になるぞ。しかし、それにしても、冷たい雨の中でピカチューもご苦労様ではある。

 

 後半立ち上がり早々、1stチャンピオンの意地を見せるかのように横浜が攻勢に出る。俊輔がやや下がり気味になり、代わりにマークの薄い永山・遠藤が前に出て右サイドからの崩しを図る。東京は2度にわたってゴールエリア内にボールを入れられるが、サンドロの広い守備範囲と得意の強運(笑)とで何とか乗り切る。ピンチを防げば、すぐにペースは東京のもの。5分、自陣中央で球を受けた小池がハーフウェー付近でポストに入ったアマにパス。アマがダイレクトで右斜め後方のツゥットへ返し、ツゥットが再びダイレクトでそのままダッシュしていた小池の前方目がけてスルー。横浜DFは右サイドの増田とアマ・ツゥットにすっかり気を取られており、小池は全くのノーマークであった。東京サポーター全員の「勝負だ!」との心の叫びに応え、小池はたちまち30メートル以上を走り、なんと川口との一対一の勝負を制してゴール右隅にビューティフルゴール。ダイレクトプレーによる鮮やかなカウンター。東京のセクシーフットボールが炸裂した、そして中断期間の合宿でも練習していた「小池が追い越していくプレー」が意図通り見事に決まった瞬間であった。やるじゃんやるじゃん小池(試合後お立ち台での「子供の頃見ていた国立で…」のコメントが泣かせるJ1初得点)、そして大熊さん。

 暫定王者のふがいない戦いぶりに横浜サポーターからは「戦え横浜!」のコール。アルディレスもたまらず動き、永山に代えて永井投入。Fマリノスはいよいよ本格的に東京を押し込み始める。しかし攻撃陣の運動量が落ちて前からのプレッシャーはなくなったものの東京DFは全く集中力が切れず、ペナルティエリア内にボールを入れられても何度となくはねかえす。10分の俊輔のヘッドは土肥ちゃんがセーブ、17分のゴール前の混戦もDFが体を張り、20分に外池がDFライン裏に抜け出た場面でも土肥ちゃんが好判断の飛び出しでクリア。その他の場面でも藤山が鋭い出足でパスをカット、小峯は相手FWに密着して自由にさせず、サンドロは長い手足で広い範囲をカバーする。ほとんど隙はなかった。

 25分くらいからは試合も膠着し始め、東京サポーターも言いたい放題やりたい放題であった。横浜サポーターのコールに合わせて「戦え横浜!」、ユーリッチが交代でベンチに引く際には「ユーリッチ!」コールで送り、この日が誕生日の俊輔君には「ハッピ〜バ〜スデ〜イ、シュンスケ〜!!」(俊輔苦笑い)、とどめに「流して3−0!」「今年も3−0!!」。いやあ、横浜の皆さん、怒っただろうなあ。まあ、今度東京がやられた時には好き放題言って下さい(ただしただの罵倒、つまらない野次はなしよ)。

 34分に小峯が相手陣から飛んできた何でもないボールを空振りして見せ場をつくり(笑)、37分には三浦淳のドライブFKがバーを叩くが、ピンチはこれでおしまい。終了間際にはこの日は主審・線審ともに判定が不安定だということで(私の席からはそれほど酷くは見えなかったが)不満な横浜サポーターの「審判最低!」コールも場内に響いた。終了間際の46分、内藤が大きくクリアしたボールを波戸が処理しきれないところをアマがかっさらい、珍しく飛び出しが遅れた川口をかわしてとどめのゴール。あまりの完勝ぶりに東京サポーター席はとんでもない馬鹿騒ぎである。

 ところが、この直後、場内の空気が凍る。アマが気分よさげに踊っている脇に目をやってみると、ピッチに仰向けになった赤いGKジャージが動かない!駆け寄ったFマリノスの選手も何だかあわており、さらに異変に気づいたアマが血相を変えてベンチに向かって手を振って担架を要求する姿も目に入った(後でテレ東の放送を見てみると、解説の金田さんが「その前にチームドクターが飛び出さなきゃダメだ!」と言っていた。同感)。倒れた川口を取り囲むマリノスイレブン+アマラオ。アマラオはタオルで川口を仰いでいる。結局、能活は起きあがれず担架で退場。交代枠を使い果たしている横浜は急遽小村をGKにして(確かに、手を使うのはうまそうだ(笑))試合再開。レッド退場での急造GKなら「狙え〜!!」と大騒ぎになるのだろうがこの時はとてもそんな雰囲気ではなく、そのまま東京は何もせず、マリノス岡山のヘディングがゴールマウスをかすめた程度で試合終了。その後、検査の結果能活は脳震盪程度で大事ないようだが、最後になってヒヤッとさせられ、試合後すぐには喜べなくなってしまったのも事実。まあ、何はともあれ暫定王者相手に3−0の快勝である。

 

 横浜はやはり松田の欠場が痛かったのだろう。ユーリッチは1試合ではまだ何とも言えないが、松田ほどの身体能力と攻撃参加は望めない。波戸の奮闘(数々の失敗の結果、併走の際のコース取りで相手FWを封じ込める術を身につけつつあるようだ)は光ったが、小村にスピードがないために東京のような手数をかけない素早い攻撃をされると穴が埋めきれなくなるし、だいいちFWが弱体であるのでDFの攻撃参加が不可欠でもある。中村・三浦は代表での疲れが抜けきっていないだろうし、外池はこのチームのFWとして役不足。攻撃面で常に頼りになるのは上野くらい。横浜の完全優勝へ向けての道は、相当険しい。

 東京は、1stステージに続き、これ以上ない素晴らしいスタートを切った。中断期間を挟んだだけあって選手のコンディションも戻っているようで、攻撃面ではダイレクトプレーを中心とする小気味よいサッカー、速いサッカー、鮮やかなサッカーが復活した。特に2点目は素晴らしく、人に「セクシーフットボールって何?」と尋ねられたら「これだよ」と言えるようなプレーであった。守備面でも代表クラスをずらっと揃えた相手にしつこく最後まで食い下がる「部活サッカー」が復活。実は横浜相手に3点獲ったことよりも完封したことの方がずっと凄いのかも知れない。選手では、小林(左で右で中央でドリブルを中心に光る才気を見せ、この日は最後まで頑張った)や土肥ちゃん(空中戦で完勝、チームに安心感をもたらした)が特に目立ったところだが、他の選手も皆よく頑張ってほとんど非の打ち所はなかったように思う。新加入の増田も攻撃面での影は薄かったが、三浦淳相手に守備で健闘していた。今日は大変いいものを見せてもらった。みんなありがとう。

 さて、このゲームについては文句なく東京は素晴らしく、このまま行けば再び上位を狙えると思うのだが、しかし喜んでばかりもいられない。今回は横浜が「王者」のプライドをかけて押し込んできてくれたからカウンターがはまったとも言えるわけで、東京にしてみれば思うつぼの展開であった。ここ数年来の東京の課題は、「相手が引いてきたときにどうするか」だ。そういう意味では、アウェイとはいえ続く福岡戦と川崎F戦に注目しなければならない。ここで良いゲームで2連勝でもしようものなら……また欲が出て来ちゃうなあ(笑)。

 

 

2000年6月24日 国立競技場

J1リーグセカンドステージ第1節

 

FC東京 3−0 横浜Fマリノス

 

 

いやあ、あまりに東京が良かったもので、ついつい書きすぎた(笑)。

 


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