完敗という名の挫折、惨敗という名の自滅
FC東京、ヴェルディ「東京」に0−3で惨敗…。今まで東京の試合を見てきて、これほど悔しい思いをしたのは初めてだ。Jリーグ優勝の、しかも昨年まで応援していた横浜の優勝のかかった試合が家の近所であるにも関わらず、わざわざ等々力まで出かけていったのに。ああ、く、く、く、悔しいー!!今季ここまでこれほど頑張ってきて、よりによってあの緑亀軍団にやられるとは!あまりに悔しくて試合のディテールについて書く気がしないので、詳細はマスコミ報道等を参照してもらうとして、以下敗因・反省点の分析と感想を中心に書かせていただく。
敗因その一、等々力のピッチ。スタンドから見て、試合開始直後から東京の選手はピッチの状態に苦戦しているようであった。等々力競技場のグラウンドは芝が深いだけではなく下の凸凹が激しいようで、パスは短く遅くなりがち、ボールも随分不規則バウンドしているように見えた。グラウンダー中心に速いパス回しで攻める東京にとって不利であったことは否めない。まあアウェイだし、慣れてるはずの等々力だし、文句は言えないのだが…。
敗因その二、前半8分のPK。判定自体にとやかく言いたくなる人もいるだろうが、小峯のタックルは飯尾に振り切られかけた時に斜め後ろからスライディングしたもので、足にかかってしまえばペナルティをとられるのは仕方がない。むしろ、ペナルティエリア内で、しかもゴールに対して角度のなくなりかけたところでなぜスライディングに行かなければならなかったのか。小峯の完全な判断ミスである。このプレーだけでなく、この日小峯は飯尾・キムに対して完全にスピード負けし、たびたび裏をとられていた。熱いプレーを見せるファイターだけに、連戦の消耗が積み重なっているのか。ともかく開始早々に、しかも比較的東京が押している展開の中でこのPKは痛かった。
敗因その三、決定力不足。思いがけず先制点を許したものの、その後後半20分くらいまでの時間帯は一貫して東京ペースだった。時折ヴェルディのカウンターに冷や汗をかいたものの、東京は両サイドからたびたびチャンスをつくった。はっきり決定機と呼べるものだけでも前半18分の由紀彦センタリング→ツゥットのシュート、26分の内藤センタリング→由紀彦のヘッド、38分のアマのシュート、後半11分の小林センタリング→ツゥットのシュート、14分の由紀彦のFK、18分の由紀彦のセンタリング(アマわずかに届かず)といったように数多かったのだが、あと一歩というところで決定力を欠いた。今季ここまで異常なほどの決定力を見せていたツゥットも
アマラオに続いて魔法が解けてしまったのか、短いシュートはGK正面長いシュートはふかしてゴールマウスの外、という風に昨年までのツゥットに戻ってしまった。まあ、何もツゥットやアマだけの責任ではなく、中盤からの押し上げが少なく(早めの小池→喜名のスイッチも、喜名の位置取りが低すぎるために意味なし)攻撃に厚みがないということも大きいのだが。いずれにせよ、先制点をとったヴェルディが攻撃を2トップのカウンター+セットプレー時の中澤に集中して守りに入ったおかげで、東京はまたも「引かれたときに崩せない」弱点をさらしてしまった。敗因その四、大熊監督の不可解采配。前半30分の小池→喜名のスイッチは、「負けられない試合」で早めに追撃体勢に入ろうという意図だったのだろうが、既述の通り喜名の位置取りは低く、前線へ有効なパスを出したり飛び出したりするよりもヴェルディの快足2トップの後を追いかけて守備している姿が目に付き、「なんだ、小池でも変わらないじゃん」と思ったファンは多かったろう。そして後半25分、佐藤由紀彦の交代。この日の由紀彦は、相変わらず運動量は落ちるもののしばしば鋭い飛び出しで右サイドを突破、決定的なセンタリングを上げていた。疲労を心配したのだろうが、私の目には左サイドの小林の方がよっぽど走れていないように見えた(結局小林も36分に交代)。由紀彦を下げたことで東京は攻撃を組み立てられなくなり、後半25分以降、決定機と呼べるものは全くなくなってしまった。また、CK・FKのキッカーがいなくなり、CKを得てもゴール前まで上げることすらできない有様。大熊采配は失敗であったように思う。
敗因その五、後半のチームとしての機能性とモチベーションの低下。この日の東京イレブンはここ数試合に比べればコンディションは悪くなさそうだった(小峯除く)。実際チャンスは多くつくったし、サポーターも由紀彦の交代までは「何とか同点にさえすればイケる」という雰囲気だった。しかし、由紀彦が下がり後半28分にロングパス一発から金にゴールを叩きこまれると、見るからに選手達は「チームの一員」としての闘志と戦術を失ってしまう。周囲との連携を放棄したドリブルでボールを取られ、自分がミスしても手を叩いたり天を仰いだりして取り返しに行かない。攻撃の選手は守備に戻らず、守備の選手は押し上げようともしない。あきらめの雰囲気が漂うグラウンド。これだけは見たくなかった、戦う集団としての東京の崩壊だった。そこには、戦術の徹底と豊富な運動量、そして溢れる闘志でJ1に旋風を巻き起こした「部活サッカー」など微塵もなかった。
ヴェルディは昨年同様、コンサバティブな4−4−2を基本に、「しっかり守ってカウンターで得点する」チームだった。絶対的な選手はおらずまた見栄えの良いサッカーを展開するわけではないが、2トップを軸にしたスピードある攻撃や米山・中沢らの強固なディフェンスには着実なチーム作りの跡がうかがえる。以前神戸について同様のことを書いたが、こういうチームは優勝するのが難しい代わりに2部にもなかなか落ちない。大メディアが所有しているくせに、地味な中堅チームである。問題は、多くのサッカーファンや地元に嫌われていることか。この日もヴェルディサポーター(どこまでが「サポーター」かというのも難しいが)、200人かそこらしかいなかったぞ。しかも2つのグループに分裂、お前達はヴァンフォーレ甲府か(笑)。サポーターの人数よりフラッグの数の方が多そうだった(笑)。まあ、あんなに好き勝手なこと言って、地元を捨てて、その一方でメディアを使って変な人気取りして、愛してもらおうという方が無理だろう。東京スタジアムにも、「来るなら来い」という感じである。しかし、東京、そんなチームに負けるなよ…。
FC東京にとっては、とにかく悔しい、情けない試合であった。この日は、傲慢にも来年から勝手に「東京」を名乗りやがる緑野郎どもを一年早くギャフンと言わせてやろうと、東急東横線に乗って大勢の東京サポーターがアウェイ等々力に集結したのだが、
ギャフンと言わされたのはこっちの方であった(涙)。ああ、開幕前から「どんなに成績が悪くともここだけは勝たなくては」と思っていた試合だったのに…、この試合に勝てば昇格後初シーズンにして4位という快挙だったのに…、前半戦の最後はすっきりとした形で終わりたかったのに…。0−3というスコア、追加点を取られた後のだらしない内容と合わせて、ショック!ショック!!ショック!!!である。ただ、前向きに考えれば、この試合は様々な膿を出してしまう絶好の機会を与えてくれたとも言える。「中盤の構成力がないため相手に引かれると手も足も出ない」「長いシーズンを戦っていく上での肉体的・精神的スタミナの不足」「柔軟性に欠ける戦術・采配」「集中力を維持できない」等々。後半戦開始までの一ヶ月間で全てを修正することは不可能であろうが、都内ホームで5回しか戦えない厳しい後半戦に向けて、もう一度開幕時の戦闘態勢を取り戻しつつ課題の解決を図ってもらいたい。そして是非とも、一段ステップアップした「大人の部活サッカー」を見せてくれ!!
ゲームが終わった後、割り切れない思いを抱えてスタンドにたたずんでいると、ベンチ裏からゴール裏に向けて、スポーツバックを抱えたスーツ姿の男が歩いてくるのが見えた。前半30分で交代させられた「ペルー」小池だった。あわてて2階席から1階席に駆け下りる。最前列までたどり着くと、小池が何人かのサポーターと言葉を交わしていた。「せっかく来てくれたのに…」。何だか救われた思いがした。別に選手に謝ってもらおうとか言うのではない。ただ、後半のあまりに情けないプレーぶりに「この試合のファンの悔しさ、選手はわかっているのかな?」などという傲慢とも言える考えが私の頭に浮かんでいたからだ。自身も30分間のみの出場しかできず悔しさで一杯のはずの小池が試合終了後真っ先に気を遣ってスタンドへ来てくれたおかげで、そんな考えも何とか振り払うことができた。とりあえず今私にできるのは、6月24日から始まる後半戦もスタンドに足を運び、選手をサポートすることだけだ。さあ、気を取り直してがんばろう。
2000年5月27日 等々力陸上競技場
Jリーグファーストステージ第15節
ヴェルディ川崎 3−0 FC東京