東京、雨と関西には弱い?部活サッカーはいまいずこ!
前々節セレッソに破れ、優勝の夢ははかなく消えたFC東京(いや、シーズン前には優勝争い自体想像もしてなかったけどね)。残る目標は最後の3試合市原・神戸・川崎を3連破することでJ1残留を確定させると同時に3位賞金3千万円を確保し、さらには年間総合8位以内へ向けて弾みをつけることである。前節では雨模様のアウェイという悪条件ながらもジェフ市原にきっちり勝利。最終節対読売戦に向け、ホームで下位神戸相手にきっちりと勝ち点3を確保したいところであった。
秩父宮でラグビーを観戦していた関係で、国立競技場のスタンドに駆け込んだ時にはもう選手紹介が始まっていた。今回は内藤が累積警告で出場停止。J1での経験豊富な内藤は安定感ある守備と果敢な攻め上がりでチームに一本ビシッと筋を通していただけに、戦力的にはダウンと言わざるを得ない。代役は今期初登場の梅山。攻撃力は見劣りするが信頼できるDFであり、何よりJ2時代からの馴染みの選手の姿をJ1(しかも国立)で見られること自体がとても嬉しい。サポーターからも「ウメキュー」コールがあがる。FWはツゥットと加賀見。控えFWにアマラオの名前があり、サポーターから一際大きい歓声。サブということはまだ完調ではないのだろうが、前線にしっかりとしたターゲットができることはカウンターをかける時に大きな意味を持つ。右サイドからの攻撃があまり期待できないだけに、アマの投入は大きなポイントになるように感じられた。
あいにくの雨の中スタンドを見渡してみると、お客が…少ない。今回、ファンクラブ会員には招待券まで配っていたのに。7千人以上入っていたそうだが、ハコがでかいとどうしても空席が目立って寂しい感じになる。ガンバ戦の時は6千人でも感激したものだが、ちょっと私自身J1慣れしてきて、贅沢になっているのかもしれない。ま、7千人でも江戸川なら満員だーね。
キックオフから10分くらいまで中盤でのつぶし合いが続いた後、10分・15分と菅原・藪田にペナルティエリア外からミドルシュートを打たれる。神戸は金度勲が抜け河錫舟を欠くせいか昨年ほどマッチョな(一対一重視の)サッカーではないが、DFラインをあまり上げずに4バック+3ボランチで守りを固め、カウンターを狙うスタイルは健在だ。東京にとってははっきり苦手なタイプである。和多田・布部の2トップが思いっきり前に張って手数をかけずに攻めてくるため、東京SBが上がっているときにボールをとられると容易に二対二、あるいは三対三の状況を作られてしまう。小峯・サンドロの奮闘で2トップには大した仕事をさせないのだが、マンマークをしているうちにDFラインとミッドフィールドの間が開き、セカンドボールを藪田あたりに拾われてしまうのだ。攻撃人数が少ないため波状攻撃には至らないものの、神戸のサッカーは至極合理的であった。しかしまあ、神戸のメンバー表を見てみると、実に地味〜なメンバーではある。布部・長谷部・菅原の元ヴェルディ組に、和多田・藪田・土屋・武田…。関東人から見ると、言葉は悪いが色のないグレー軍団という感じだ。
18分、東京は右サイドを破られ、センタリングから神戸FWが一旦後ろへ戻したところやはりDFラインの前にスペースが空き、フリーの吉村がフワッと浮かしたシュート。これが土肥の頭上を越す見事なループシュートとなって神戸先制。東京からすればほとんど「事故」と言いたくなるほど見事なシュートだったが、強力守備のヴィッセルに先制点を許した事実は重かった。
先制したことで、神戸はますます守りの意識が高くなった。攻撃は基本的に2トップ+藪田が行い、3ボランチも一人が上がれば後の二人は上がりを自重して隙を見せない。人数をかけたプレッシングで、中盤から最終ラインにかけてはごつくて厚い壁が立ちはだかっているように思えた。東京も左サイド藤山のオーバーラップから加賀見・小林とのコンビネーションで前進しようとするが、フィジカルの弱い加賀見が度々倒されてボールキープできず、シュートまで持っていけない。苛ついたツゥットが30メートル以上のロングシュートを放つ場面も見られた(濡れたピッチを考えれば、これはこれで正解)。
36分、加賀見OUTアマラオIN。うーむ、うまく行かない時に早々に修正を行うのは正しいことだが、ガンバ戦での岡元起用と同様、加賀見にポストプレーヤーが務まらないことは事前に予測できたような…。肝心のアマラオもやはり万全ではないのだろう、動きが重く、周囲とのコンビネーションもいつになくぎこちない。結局、前半はチャンスらしいチャンスもなくそのまま終了。
この日は「東京テディ・ベアの日」だそうで、ハーフタイムにぬいぐるみ等が当たる抽選があった。あっさり外れる。昨年まではこうした抽選も競争率が低かったのだよなあ。昨年秋の駒沢、ヴァンフォーレ戦だったかベガルタ戦だったか、私は応募抽選で小峯の「ナビスコカップ準決勝at国立用特別ユニフォーム」をゲットしたのだが、あの時に倍率は数十倍か数倍、
もしかしたら応募したのは私一人だったんじゃないか(笑)というような状況だった。お客さんが増えて嬉しくもあり、寂しくもあり…贅沢ですな(笑)。
後半、まず小池OUT喜名IN。喜名は中央に位置してゲームを着実に組み立て、東京がペースを握る。1分、右サイドで得たFKが左サイドへ抜け、ツゥットのボレーシュートが神戸ゴールを襲うも、武田好セーブ。4分には藤山が神戸陣でボール奪取、フリーのアマラオへパスを出すが、アマがシュートをふかして×。9分、喜名が右サイドからセンタリング、小林がヒールで後ろに流して再びフリーのアマラオへ。だが、アマのトラップが大きくまたもチャンスを逃してしまうのだ。今季のアマラオはアマらしからぬ(失礼!)決定力を誇っていたのだが、この日は
まるで魔法が解けて昔のアマラオに戻ってしまったような(笑)感じであった。こうなると流れは神戸に行ってしまう。11分、東京のクリアボールを度々拾った神戸、右サイド吉村が鋭い切り返しで東京DFをかわした後にセンタリングを上げる。梅山がジャンプするもボールに触ることができずに背後で待ちかまえていた和多田がゴール。カウンターを得意とする東京が逆にカウンターをくらう最悪の展開になってしまった。
その後も東京は全体的には押しこみつつも、ディフェンスの人数を減らして攻め上がったところを切り返され、CK等を与えてしまうジリジリとした展開。次第に運動量や反応のスピードも落ち、神戸の強力ディフェンスの前にコンビネーションも噛み合わない。20分過ぎにはついにサポーターがブーイングと「動け」コールを始めてしまう。23分に小林に代えて戸田を投入するも状況は変わらず、喜名からボールがDFラインへ戻る場面が目に付くようになる(喜名も、ドリブルでためを作るのは良いのだが、もっと前へ出る動きを増やさないとアウミールになってしまうぞ)。逆に神戸の守備のペースは落ちず、東京の選手が体から少しボールを離すと鋭い出足・スライディングでボールを奪取、素早く前線へボールを運んでシュートまで持っていく。ボランチ・DFラインに加えてFWも惜しみないチェイスで守備に貢献。完全な神戸ペースである。
終盤東京はサンドロを前線まで上げツゥット・アマラオをやや低い位置に下げる変則的なポジショニングからようやく崩しに成功し始め、37分・38分には立て続けにゴール前でチャンスをつかむが、やはり神戸DFの厚い壁を前にボールをうろうろ転がしているうちにチャンスが潰えてしまう。45分、右サイドライン際からのアマのセンタリングをサンドロが後方にすらした角度のないところ、ツゥットが強引にゴールへ叩きこんでようやく1点。しかし、いかんせん反撃が遅すぎた。ロスタイムでも神戸は東京陣コーナー付近で巧みな(相手からすればまことにいやらしい)時間稼ぎを冷静に遂行。結局そのまま試合は終了してしまった。
完敗である。時間帯によっては東京がリズムをつかみかける場面もあったものの、ゲーム全体を見渡してみれば完全に神戸の思うつぼにはまってしまった。神戸流の現実主義サッカー・厚い守備のプレッシャーの前に手も足も出ず、チームとしての未熟さを見せつけられた思いだ。また、ここ数試合の傾向ではあるが、後半の途中で足が止まる選手が多かったのも残念なことである。開幕当初の「部活サッカー」はどこへ行ってしまったのだろう。まだプロとして若いチームなのだから「大人のサッカー」ができないのは仕方がないのだが、だからこそ運動量とメンタルの強さで相手を上回らなければ勝ち目は薄い。過密日程をずっと同じメンバーでこなしてきて疲れはたまっているのだろうが…。あるいは次の試合では大胆なメンバーチェンジが必要かもしれない。次は「ここにだけは勝たなければならない」ヴェルディが相手で、しかもその後は約一ヶ月の中断期間に入る。そこまで頑張れば、チームとして今季のこれまでの経験をフィードバックする時間的余裕も生まれるだろう。とりあえず、あと一踏ん張り。気持ちよく後半戦へ行こう。
ヴィッセルは、ずば抜けた能力の選手はおらず地味なカラーだが、戦い方についての意思統一がしっかりできているようだ。懸命さとリアリズムの同居した、言うなれば「上級生の部活サッカー」。優勝争いに絡む力まではないし興行的にも苦戦しているようだが、2部落ちの危険性は少ないと思われる。サンフレッチェと同様のいかにも中堅といったチームという印象だ。東京がこういうチームを力でねじ伏せられるようになる(即ち上位の力を得る)のが、近い将来であることを願おう。
しかし、テレビ東京が中継すると、なぜか勝てないねえ。
2000年5月20日 国立競技場
Jリーグファーストステージ第14節
FC東京 1−2 ヴィッセル神戸