東京、自らリズムを乱して自滅。泥沼の3連敗。

 

 今回はTV観戦なので、感想を中心に簡単に。

 

 まずはスターティングメンバー。東京は増田を控えにして久々に小林が先発復帰。これは順当な判断だろう。増田への拘りすぎはチームにとってマイナスだと思うし、広島戦・ガンバ戦でも小林の攻撃参加は相手にとって大きな脅威になっていたように見えた。ボランチは小池と迫井。迫井への期待はわかるのだが、このチームが苦境にある時に新人に要所を任せるのは、どうも納得がいかない。浅野を何のために獲得したのか?浅利・喜名が不在の折、なぜ迫井が先発で浅野が控えなのか?練習試合での出来が迫井の方が良いとかそういう理由だとは思うのだが、ベテランの頼りになる部分ってのは試合にならないと出ないものだと思う。一度浅野を先発で使ってみて欲しいのだが…。さらにアマラオが欠場(代役は神野)、ツゥットも体調不良とのこと。東京、ここに来て満身創痍である。一方柏は渡辺光輝が欠場している(代わりは新人の田ノ上)くらいで、あとはいつものメンバー。強力なDF3人に才能溢れる中盤、そして北嶋。いかにも強そう。なぜこのメンツと西野さんが監督で東京より順位が下なのか、よくわからん。

 

 前半の東京の出来は、決して悪くなく、むしろここ2試合に比べればずっと良いように見えた。特に、柏が3バックだったこととアマラオがいないせいか、由紀彦・小林の両ウイングが2トップにすぐにボールを渡してしまうことなく積極的にDFに勝負を挑み、前線でよく攻撃に絡んだ。やはり攻撃的MFがシュートも撃っていく姿勢を見せないと、2トップを警戒している相手を崩しきれない。後述するように決定力にはやや欠いたものの、この日の東京攻撃陣は好調時に近いパフォーマンスを見せていたと思う。守備陣も特に穴はなく、柏の若い攻撃陣と互角に渡り合っていた。

 一方の柏はいつも通りのしっかり守りを固めるサッカー。たたみかけるような迫力はないが好不調の波の小さそうな安定した戦術と鍛え上げられた選手達の質の高い動きがいつものように目につく。ただしこの日は1stステージで2点を奪われた反省からか東京の攻撃力を警戒していつにも増して慎重な試合運びで、特に先制点をとってからは無理をして前掛かりになるような場面は全くなかった(それが東京にとってはかえって厄介だった)。

 前半18分に虚をつくような大野のスルーをDFライン裏に回り込んだ北嶋がダイレクトに蹴り込んで柏先制。北嶋は左サイドにふくらんでから中に切り込み、背走していた迫井のさらに裏に回り込む巧みな動き。大野−北嶋の鮮やかなコンビネーションに迫井はまんまとしてやられた格好になった。

 先制点をとられてからむしろ東京は動きが良くなり、次々とチャンスを作る。ただ…運がなかったというか、決定力を欠いたというか、とにかく柏ディフェンスをある程度崩すところまでは行くのだが、そこからゴールまでが遠かった。神野はGKとの一対一を止められ、由紀彦の強烈シュートはGKの正面をつき、小林のミドルシュートはバーを叩いた(目の前にいた由紀彦反応できず)。惜しい惜しいといっているうちに前半は終了。ただ、前半終了間際の絶体絶命のピンチ(土肥が飛び出している間にボールがこぼれ、無人のゴール前でシュートチャンス)を柏が外してくれたこともあり、まだまだいける雰囲気であった。

 

 前半の勢いを持続して後半もペースをつかみたい東京だったが、後半8分、それまで攻撃時に多大な活躍を見せていた由紀彦に代えて増田投入。なぜだ!?それまで点は入っていなかったものの明らかな東京ペースであり、その流れを変える必要などなかったはず。全く意図の分からない交代だ。ガンバ戦と同様に守備面で由紀彦には不安があったのかもしれないが、今回は由紀彦のサイドからメタメタに崩されているという風でもなかった。この交代がこの試合の最大のポイントだった。以後東京は、全くと言っていいほどチャンスを作れなくなっていく。さらに10分後、迫井に代えて浅野投入。ここで出すのならなぜ最初から出さなかったのか?こういう試合のために浅野を獲得したんじゃないのか?ここ2試合、迫井には荷が重すぎることは目に見えていた。全く理に合わない選手起用であったように思う。迫井が、これで自信喪失してしまわないことをひたすら祈るのみだ。

 そして、試合が膠着状態に陥った中での後半22分の増田の退場。一発退場は可哀想に思える場面だったし、この日のレフェリーは明らかに試合をコントロールしていく力量が不足していたが、それにしても交錯した後相手に対して(足が当たることは予想外だったにしても)ぶつかっていく姿勢をとってしまったのだから、言い訳はきかない。ただでさえ流れを悪くしてしまった後で一人減ったことにより、東京の勝利の可能性は全く絶たれてしまった。さらに28分に小池に代えて戸田を投入したことで(ほんっとにFW増やすの好きだよね、熊さんは)中盤はスカスカに。前線と後衛が完全に分断してしまう東京らしからぬフォーメーション。結局そこを突かれて31分に大野のミドルシュートが決まり、ジ・エンド。終了間際の東京の必死の反撃も、ホン・ミョンボに軽くいなされてしまった。

 

 柏は、慎重な試合運びでリスクを最小限に抑え、確実に勝利をものにした。渡辺・ホン・薩川の3バックに下平・明神を加えた守備陣は強力で、後半に入ってからは東京に付け入る隙を与えなかった。新人の田ノ上も豊富な運動量と増田退場で(笑)チームに貢献。北嶋は派手に目立ったのは先制点の場面だけだったが、2点目でもDFの注意を引きつける動きで東京DFラインの前にスペースをつくるのに貢献していた。少ないチャンスを生かす、さすが点取り屋である。あと大野(いつの間にか五輪代表に!)も前線に効果的に絡み地味な印象ながら良い働きをしていた。

 東京は上でも述べたように、少なくとも前半の動きは良かった。特に由紀彦は前節までの不調が嘘のように素晴らしい動きを見せていた。それだけに彼の途中交代は残念だったし、彼自身も無念だろう。他では神野もベテランらしい効率の良い(おっさん臭い、とも言う(笑))動きでチャンスを作り出していた。問題だったのはツゥットか。自身の体調不良のせいもあったのだろうか、ボールが来ないといつにも増して苛立って後ろへ下がってきてしまう。2トップの一角なのを忘れて、まるで将軍のような動きだが、代わりに神野が前線で孤立する場面も目立った。大熊監督は「ツゥット、前!」とかやたらと怒鳴っていたが、あまりに指示を守れないのであれば、ツゥットといえども代えるべきだろう。少なくとも、由紀彦を代えるよりは納得できたように思う。

 チームはこれで3連敗である。3試合で失点6・得点2(うち1点はオウンゴール)。いかに不調かは、この数字を見ただけで一目瞭然だ。長い長いトンネルに入ってしまったような感じさえ受ける。負傷者続出(特に浅利)の影響も大きいが、この日の試合に典型的に見られるように、采配ミスやつまらないプレーで自らリズムを乱してしまっているのが目につく。状況に適した采配・プレー。「口で言うのは簡単だ」と言ってしまえばそれまでだが、しかしそれをせねばいつまでたっても悪い流れからは抜け出せない。具体的には、増田と迫井をどのように使うか、そしてバランスが崩れかかったときにピッチの中でいかにカバーしていくか。さらに前節でも述べたが、ベテランと生え抜きの力をどこでどう生かすか。中断期間まであと2試合。名古屋・鹿島と、いずれも強豪が相手だ。しかし強豪相手でこそ真価を発揮するのが東京のカウンターサッカーの本来の姿でもあるはず。できるだけ早く、立ち直って元気な姿を見せてもらいたいと切に願う。

 

 最後に少々余談を。MXTVの中継、ちょっとあれはないなあ。選手の名前を間違えまくり、かつ東京が劣勢になるとヒステリックになるアナウンサー。思わず「それならてめえがやってみろよ」と大人げなくも叫びたくなる戸塚哲也のエラソーな解説。うーん、少々辛かった。試合終了後に流れる「東京ブギウギ」をBGMにしたプロモーションフィルム(?)は凄く好きなんだけどなあ。

 

 

2000年8月5日 石川県西部緑地公園陸上競技場

Jリーグセカンドステージ第8節

 

FC東京 0−2 柏レイソル

 


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