東京、一息ついて中断へ。されど視界は未だ不明瞭なり。

 

 夏休み中、都心でのナイトゲーム、人気チーム鹿島との対戦、中断期間前最後の試合と好条件がいくつも重なり、さらにFC東京渾身の企画「サンバナイト」の甲斐もあって東京主催ゲームのインチキなし入場者数(笑)としては過去最高の3万3千人が入ったこの試合。サンバのリズムが鳴り響き(まるで日本平みたい)、大観衆の熱気がムンムンとする嬉しい雰囲気の中、観戦することになった。

 ところが、キックオフ直後から斜め後ろに座った集団の中の、眼鏡をかけた茶髪男がどうもうるさい。大声を上げると言うより、東京の選手がミスするたびに「馬鹿!何やってんだよ!」「馬鹿!そっちじゃねーだろ」という感じで「馬鹿」という言葉を連発するのだ。そして先制点を入れられた瞬間、「馬鹿!!クリアミスしてんじゃねーよ、中学生じゃねーんだからよ!」。馬鹿はお前だ。確かにあの時間帯、DFの押し上げがきかずに波状攻撃をくらっていた。なかなか有効なクリアができなかったのは確かだ。だが、眼鏡男が指摘した失点直前の小池のクリアは背後から飛んできたボールを処理したもので、難しいプレーであった。まして、小池は直後にダッシュしてきっちりシューターにプレッシャーをかけている。あれは相馬のシュートを褒めるべき、あるいは押し上げられない東京のチーム全体を非難すべきであって、決して個人が「馬鹿」などと言われる類のプレーではないと思う。酒が入っていたこともあり、腹が立って席を立ったが、バックスタンドはほぼ満員で代わりの席はなかなか見つからない。結局Bブロックのさらに上、普段は観客を入れないスタンド上部の席で観戦する羽目に。お客さんが増えるのはとても嬉しい。でも、ああいう馬鹿と肩を並べて観戦しなければならないことが増えるとなると、ちょっと考えてしまう。まあ、ああいうのも気にしないでやり過ごせるようにならなきゃいけないんだろうな…。連れもいたことだし、ちょっと反省。

 という訳で前半あまり試合を見ることが出来ず、後半以降も頭に血の上った状態でしかも選手の判別も難しい遠い場所で観戦していたので、今回ちゃんとした観戦記はなし。以下簡単に感想を述べます。

 まず、鹿島は相変わらず強かった。一つ一つのプレーについて意図がはっきりとしていて、しかもそれを全員で共有している感じ。穴は少ない。何年にも渡ってJ1で経験と自身を積み重ねていくとああいうチームになるんだろうね。コメントによると「出来は悪かった」との事だが、良かったら完璧に叩き伏せられていたかもしれない。秋田を中心とする4バックは東京の2トップをうまく囲い込んでカウンターを許さず、対策もしっかり練っていたようだ。中盤でのパス回しも実にスムーズで、東京はなかなかボールがとれなかった。ただ、決定力がなあ…。柳沢も平瀬もボールをもらってからのプレーがちょっと足りない感じ。東京サポーターとしては、シュートが枠をかすめて外れていくたびに「救われた!」という気持ちになったものだった。

 東京は、ここ数試合の中では出来の良かった部類に入るだろう。よく最後までボールを追いかけていた。ただ、スタンド上部から見ているとはっきりするのだが、2トップとMFの距離が空きすぎていて、後方の味方を待ちきれずにアマ・ツゥットがドリブルで突っかけてとられ、そこで攻撃が終わってしまうことが多い。守備の面でも、ボランチ(特に小池)の位置どりがあまりにも低く、2トップの後ろにポッカリとスペースが空いている。そこから相手ボランチに自由な配球を許し、それゆえに守備に追われる両ウイングハーフの位置取りも低くなり、さらに2トップとの距離が開いていく悪循環。おまけに小林に代えて神野を入れたものだから、もう中盤がスカスカで…。後半途中から見られたアーリークロスを連発する放り込み戦術も、ボールを受けたアマがはたける場所に誰も走り込まなくては、効果が薄かった。強力すぎる2トップの副作用ということもあるだろうし、相手チームの研究が進んだせいもあるだろう。ただ、大熊さんにはスペースを埋めようという意図はないのかな(選手では、小池あたりにその意図は見られるけど)?

 選手個々に目を向けると、初先発の山尾は堅実なマーキングで健闘。ファインセーブ連発の土肥、攻守にわたる活躍を見せた内藤、鋭い出足で相手のチャンスの芽を摘んだ藤山と、守備陣はおおむね良かったように思う。攻撃に関しては、上に述べたとおり、2トップとMFとの絡みが少なすぎ、有効なサイドアタックがほとんどなくなっている。個人技か、偶然でしか点が取れないチームになりつつある、と言ったら言い過ぎだろうか。対策を絞らせない、複数のルートをもった組織的カウンターを再建せねば、東京の生きる道はない。とりあえず、FWだけでなくMFもボールをとった瞬間に反応し、素早くスペースに走り込む。この意識を取り戻すことが必要だろう。

 結局、東京も惜しい場面を作るには作ったが、ひやりとする場面はより多かった。この日は引き分けで良しとするべきなのだろう。ともあれJ1はこれで3ヶ月近い中断期間に入る。個人的には、五輪を重視し過ぎ選手達のコンディション維持への配慮が欠けるこの中断は非常によろしくないと考えているのだが、調子落ちで連敗中の東京にとってはゆっくり建て直しができるラッキーな期間だ(それにしても長すぎるけど)。フィジカルコンディションをじっくり整え(特に由紀彦!)、組織的な部分を再確認してセクシーなカウンターを取り戻して欲しい。現在東京は年間総合7位。目標の年間総合8位を達成するには残り5試合でおそらく2勝1分け以上が必要になるだろうが、フルメンバーで準備の出来る東京にとって、そう難しい課題ではないはずだ。

 

 

2000年8月19日 国立競技場

Jリーグファーストステージ第10節

 

  FC東京 1−1 鹿島アントラーズ

 


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