課題と疲労の蓄積。自滅寸前、勝ち点2を拾う。

 

 確かに、残念な部分や課題も残る試合だった。勝ち点1を損したという見方もあるだろう。しかし、完全に自滅パターンにはまりながらも何とか勝ち点2を拾ったことをまずは素直に喜びたい。いずれにせよ反省が必要な内容ならば、勝って反省するに越したことはない。

 

 前半、序盤こそ福岡の積極的な前線へのフィードが目立ったものの、東京はすぐに対応して早めのプレスでフィード前にボールを奪うようになり、ペースを握った。福岡がホームにも関わらず引き気味に守ってきたために堅守からカウンターをかける得意のパターンにはならなかったが、しかしこの日の東京はパス回しが好調で、DFラインから中盤を経由してトップまで、福岡の守備網をかいくぐるようにして流れるようなパスワークで攻め込んでいった。さっそく前半7分にはゴール前やや右からアマラオがシュート、GK小島が横っ飛びで弾いたボールがポストに当たるチャンス。その後も、福岡がバデア等の苦し紛れのロングシュートや土肥ちゃんの正面を突くシュートしか打てない一方で、東京は内藤や藤山のオーバーラップも加えて機動力に劣る福岡DFを攻め立て、福岡に倍するシュートを放つ(アマがふかして枠の外に飛ばしたシュートも多かったが)。30分には左サイドでDFの裏に出たツゥットが小島と一対一になるも、グラウンダーのシュートを小島が足で弾き飛ばしてノーゴール。引いてくる相手に対して攻め立てつつもゴールを割れない東京の負けパターンかと不吉な予感も漂い始めた37分、小林が左サイドのドリブルでDFを引きつけ、その間を縫うように前に走り込むアマラオにパス。アマはそのままペナルティエリア内左サイドでDFを一人かわしてゴールライン際からグラウンダーのシュート。角度のないところからファー側の枠の外に軌道を描いた球だったが至近距離からの強いシュートだったため、小島の左足に当たったボールは直角にはねてゴール内に吸い込まれていった(記録はアマのゴール)。東京先制。

 その後、終了間際の福岡の反撃も人数をかけた守備で防いで東京は前半を1点リードで折り返すことに成功。出来は非常に良く、またアウェイでリードともなれば相手が前に出てきてカウンターもかかりやすくなる。九州の暑さが心配ではあったがまだ後期まだ2試合目でもあるし、相手も同じ条件。完全な東京ペースで、勝利の確率は非常に高いように思われた。

 

 後半は開始直後から、予想通り福岡が意気込んで攻め上がる展開。最初のピンチをしのいだ東京は2分にビッグチャンスを得る。FKからのボールを受けた増田がループ気味にシュート、小島の頭を越したボールはバーに当たってペナルティエリア内にはね落ちるが、クリアボールを拾った東京は右サイドへ展開。右へスイッチしていた小林がまたもドリブルでDFを引きつけ、ファーサイドへセンタリング。ファーにはアマラオがフリーでおり、アマがボールを叩きつけた瞬間には完全にゴールかと思われたが、無情にもボールはゴールポスト左サイドへわずかにそれていった。頭を抱えるアマ。ここで決めていれば試合はほとんど決まっていたところだったと思うが、これで逆に流れは一気に福岡に傾いた。

 10分頃から、僅かにバーの上を越えた篠田のヘディングシュートを境に東京はDFラインの押し上げがきかなくなり、全体の運動量も次第に落ちていった。ボールを奪取して前へフィードしてもFW・MFの反応が鈍く、組織的な攻め上がりができないために個々がバラバラにドリブル突破を図ってはボールをとられるようになってしまい、防戦一方。フィジカルな問題だけではなく、暑さの中攻撃への意識自体も低下しているように見えた。東京は前半積極的に攻め上がるなど元気な動きを見せていた内藤の動きが際だって落ち、福岡は左サイドのバデアにボールを集めて次々とペナルティエリアにクロスを放り込んでいった。大熊監督は流れを変えようとしたのか29分に小林に代えて由紀彦を投入するが、既に前線での組織的プレーが崩壊寸前に陥っていたために効果なし。一方福岡は29分石丸に代えて服部を投入、41分には健闘していた久永に代えて江口を投入し、過酷なコンディションの中次々とフレッシュな攻撃系の選手を入れて得点奪取を図ってきた。

 38分、東京にとって最大の誤算が発生した。足を痛めていた内藤がOUT、古邊が緊急投入されたのだ。DFラインにセンターバックの選手が並ぶ異常事態に浮き足だった、か東京は小峯と古邊のポジション調整がうまく行かず、右サイドは福岡に使われ放題、ライン守備もできなくなりペナルティエリア内で福岡のクロスやシュートをはね返すシーンが連続するようになった。おまけに小池も足を吊らせ、もともと引き過ぎのDFラインのせいで広かったペナルティエリア前正面のスペースでのパス回しも許すようになり、ピンチが続いた。

 40分を過ぎると東京の選手の足が完全に止まって集中力も切れ、アキレス腱の右サイドから攻め立てられてモントージャやバデアに立て続けにシュートを許す。それでもサンドロ・小峯のカバーリングと幸運でしのいでいた東京だったが、5分と表示された長い長いロスタイムをしのぎきることはできず、48分にがら空きの東京右サイドを駆け上がった三浦泰がねらいを定めてセンタリング、ファーに飛び込んだ2、3人の福岡アタッカーの中で江口が頭にミートし、土肥ちゃんの一か八かのダイビングも空しくボールはゴールに吸い込まれていった。勝利目前で同点ゴールを決められた東京にもはや勝ち点3を奪いに行く余力はなく、勢いに乗って攻め寄せる福岡の攻撃を何とかしのぐのがやっと。終了の笛が鳴ると、引き揚げてくる選手達の顔にも疲労と落胆の表情がはっきりと浮かんでいた。

 

 もはや完全な福岡ペース。残念ながら、気力・体力ともに勝る福岡の勝利は間違いないように思えた。後半の両チームの戦いぶりにはそれほどの差があった。東京はせいぜい引き分け狙いが関の山で、あとは福岡FWがシュートを外してくれるのを祈るのみだと私は考えていた。実際、延長戦が始まると福岡は後半開始時にも増してやる気満々で、人数をかけて攻撃に精力を傾け始めた。

 ところが、延長前半2分、思いもかけない光景を目にすることになった。前掛かりになりすぎたか、福岡の中盤とDFラインの間にぽっかり空いたスペースを小池がドリブルで持って上がり、相手の注意が自分に向いた頃を狙ってペナルティエリア内左サイドのアマラオへパス。アマラオがなぜかフリーでパスを受けて前を向いたその瞬間、福岡DF藤崎がアマの後ろから突進してアマを両手で突き、アマはうつぶせに倒れる。藤崎は両手を挙げてノーファウルをアピールするが、あえなくレフェリーの笛が鳴ってPK。場内騒然となる中、ツゥットがあっさりと決めてVゴール。ファウルの場面、藤崎はおそらく一瞬アマラオの姿を見失ったのだろう。フリーでボールを持つアマラオの姿を見て慌ててチェックに行こうとしたが、直線的に距離を詰めようとしたために勢い余って追突した感じだった(この場合、物理的に強くぶつかったかどうかとか、アマの跳び方がどうかとかは問題ではない。やや大げさ気味なアマのジェスチャーが不自然に見えないほどの勢いで当たったように見えた時点で、勝負あったのだ)。いずれにしろ、瀕死の東京は何とか救われ、勝ち点2を確保。

 

 福岡はここまで総合14位と低迷しているが、オフにおける戦力の大量流出・補強の貧弱さを考えれば苦戦は当然と言え、むしろここに来て久永・江口・藤崎(あと山下・中払)といった若手が自信をつけ、三浦・小島・野田・服部・前田・バデアのベテラン勢と噛み合ってきているようにも見える。ピッコリ監督の思いきった用兵・作戦もあり、もしかすると2ndステージでは面白い存在になるかも知れない。ここ2年J2一歩手前で踏みとどまった経験もあり、少なくとも2部落ちはないだろう。博多に平均1万人以上詰めかける(今回はFC東京の物珍しさもあってか1万4千人入った)熱心な地元ファンの皆さんは安心しても良いのではないか。

 東京は、決定力不足で引いた相手になかなかゴールを割れず、足が止まったところをやられるという完全な自滅パターンだった。にもかかわらず勝ち点2を拾えたのは、まことに幸運だったと言えるだろう。福岡が勝ち慣れておらず、藤崎がまだ若かったのが幸いした。前半の流れるようなパス回しは素晴らしかった。アマがシュートを外しまくるのは、昔からそうだからある程度は仕方がない(後半2分のは「おいおい!」という感じだったが、「それもアマラオ」)。問題は、後半ずるずると後ろに引いてしまったことだ。1stステージ後半でも明らかになったフィットネス不足がまた出てしまうと同時に、気持ちの面でも「このまま守りきればいいや」という弱い面が出てしまったようにも見えた。2ndステージはアウェイゲームが多く、真夏のくそ暑い中試合が行われる。この日の試合では最悪の事態は避けられたとはいえ、今後に大いに不安が残る内容であった。

 

 今回はMXテレビで観戦したのだが、解説の楚輪さん(前サガン鳥栖監督)がツゥットのことを「ツイット」と呼んでいたのが印象的だった(笑)。あと、試合後に放送時間が余ったらしく「FC東京99〜2000年の活躍の模様」が流されたのだが、あまりに時間が余ったらしく、同じものを2回も繰り返し放送していた(笑)。岡元が決めたJ2ファーストゴール、懐かしかったなあ。そういえば、西が丘のグラウンド整備のおやじさんは元気なのだろうか。ちょっと気にかかることではある。

 

 

2000年7月1日

J1リーグセカンドステージ第2節

 

アビスパ福岡 1−2 FC東京   

 


2000年目次へ            ホームへ