優勝に向け大事な一戦、集中力欠き完敗す

 

 いつものように試合開始20分前くらいにスタンドに到着すると、この日は「FC東京『子供の日』」ということで多くの子供達が詰めかけていた。バックスタンドの前段に席が確保され、東京スタッフに誘導されて試合直前までユニフォーム姿のちびっこが次々と入場してくる。小学生の頃に日産の社員さんに囲まれて日本リーグの試合を見たのを思い出すなあ。あと、なぜか私が腰掛けた辺りには外国人が多く、キックオフ前から楽しそうだ。中には傘に東京のフラッグをくくりつけて踊っている奴もいる。このハイテンション、ラテンのノリでしょうかね(いいことだ)。全体の観客数は今季としては普通?の1万2千人だが、この子供達や外国人達の前で好調時の小気味良いサッカーを展開し、東京の魅力を大いにアピールしてもらいたいものだと思った。

 

 メンバーを確認すると、またしてもアマラオの姿はなし。今年34歳(しかも元々ケガ多し)なのだから仕方がないと言えばそうなのだが、これで4試合連続欠場。このままアマがいない状態が普通になってしまうのではと、ちょっと不安になる。選手紹介時、今季初めて加賀見の名前が呼ばれ、スタンドがどよめく。おー、やっと出たか。今年10番もらってampmのポスターにも写真が出ていたのにベンチにも入れず心配していたのだが、ようやく登場。楽しみである。一方セレッソは出場停止もなくベストメンバー。西澤・森島・廬・西谷がずらりとならぶ攻撃陣は壮観である。このJリーグ屈指の破壊力で優勝争いにも絡んでるのだから、もっと人気が出ても良さそうなのに。サポーターの数もガンバに比べても少ない(地元での動員力はガンバよりあるらしいが)。まあガンバと違い、試合もろくに見ずにフラッシュ焚いてばかりいやがるギャル(笑)の比率は少なそうで、そこは好感が持てるのだが。

 

 試合開始直後からゲームはセレッソペースで進んだ。セレッソは意気込み十分で前線からプレッシャーをかけるとともにDFラインも高く上げ、押しこんできた。3分には藤山の裏を突かれ西澤が突進して(素晴らしいスピード!)、ゴール前で混戦になるピンチ。東京はパス交換を駆使して攻め上がろうとするが、セレッソのコンパクトな守備網の中、ボランチから神野・ツゥット等に当てて前進しようとする(特にダイレクトの)プレーでの失敗が目立ち、切り返されてたびたびピンチを招いた。セレッソディフェンスのプレッシャーもさることながら、東京の選手の反応がいまいち鈍い。また廬・小川には常に藤山の後ろのスペースを狙われ、逆サイドの内藤も攻め上がれない。にっちもさっちも行かない印象だった。

 一方セレッソは攻撃では縦に出る馬力とポストのうまさを兼ね備えた西澤が中央に位置し、その周りを森島・西谷が自在に動き回る。西澤にはサンドロがつく形になったが森島・西谷を放してしまうことが多く、飛び出しにヒヤヒヤさせられた。結局、要である浅利が森島らのマークに忙殺され、東京のバランスが崩れてしまう。セレッソはディフェンスでは4−4−2の体型を敷いて意外とコンパクトなサッカー。そして何といっても特筆すべきは田坂の精力的な動き・的確な指示であろう。危険を予知して的確にスペースを埋め、パスの出先に必ず顔を出す彼の存在で、セレッソは昨年よりもずっとバランスのとれたチームになっているようだ。

 ところがこういった状況でも点が取れるのがFC東京の強み。22分、前方に僅かにスペースが空いたのを見つけた小池がドリブルで持ち上がり、ラストパス。左足でボールを浮かせて強引にDFの裏に抜け出た神野がシュート、GKに当たったものの何とか押しこみ、東京先制。やっぱり相手が強かろうと弱かろうとある程度前に出てきてくれた方がやりやすい。そう再確認させられたゴールであった。

 これでペースをつかむかに思えた東京だったが、得点直後に神野が足を痛めるアクシデント。29分に神野OUT、鏑木IN。東京の前線にボールキープできる選手がいなくなるとセレッソはますます攻勢を強め、東京は左サイドに加えて右サイドも破られるようになる。29分には森島のヘッドが土肥の手をかすめ、36分にも浅利が放した隙にフリーの森島からパスが西澤へ渡りゴール前まで斬り込まれ、さらに38分にはまたしても藤山の裏を廬が突破、西澤に強烈なシュートを打たれる。いずれも土肥・サンドロ・ゴールポスト(笑)の好守備に救われたものの、セレッソの「前線良し、サイド良し、2列目良し」の攻撃は分厚くド迫力ものであった。

 東京は一向にピリっとしてこない。コンビネーションや個々の反応に問題があるだけでなく、プレー失敗後、「あーあ」という感じで上を見上げて突っ立ってる選手が多い。自分のミスでボールとられた時くらい相手を追えって!さらに前半残り10分くらいから小林の運動量が極端に落ちる。もうスタミナ切れか?それでも42分、ツゥットが左サイドでDFを抜いてチャンスを作るが、内に入ったツゥットは切れ込む→打たない→切れ込む→打てない→切れ込む→やっぱり打てない→カブにパス→それでも打てない→切り返す→打とうと思ったら目の前にGKが!、あ〜あ。という感じでチャンスを逃す。サポーターも不満げに「シュート打て!」コール。貴重なチャンスだったのにー。いずれにせよ、リードしていたものの大いに不満の残る内容だった。

 

 ハーフタイム、他球場の途中経過を見ると、何と磐田がガンバに破れ、横浜も苦戦している。もしかして、今日勝ったら首位?あと3試合は神戸、市原、V川崎。これはもしかしたら、ひょっとしたらひょっとするぞ…と思ったのがいけなかったか(笑)。

 

 後半開始時、急に空が暗くなり照明が入った。この日午前中降っていた雨は試合開始時にはあがっていたのだが、後半になって再びポツリポツリと雨音がし始めた。もやも薄くかかった変な雰囲気の中で、東京の選手は前半にも増して動きが鈍い、というか集中力が全然ない。キックオフ直後に左サイドでの小池と小林のコンビミスからボールを奪われ、森島にゴール間近でのシュートをくらう。足でボールを弾き、倒れ込む土肥。この日は強烈シュートと相手の突進で土肥ちゃんは度々体にダメージを受け、受難の日であった。それでも目が覚めない東京、2分に中盤の甘いチェックから左サイドに展開されたところ小池が飛び込んでかわされ(あれだけの攻撃をくらっておいて、なんちゅう守備だ)逆サイド、どフリーの西谷へ。土肥よく飛び出すも止めきれず、同点。森島にかき回されたこともあり中盤で浅利・小池が効いておらず、ツゥットが下がってこないと守備力が半減してしまうこの日の東京の欠点がもろに出てしまった一点だった。

 一点とられてようやく目が覚めたか、東京は反撃開始。内藤・藤山がオーバーラップしてシュートを放つなど、期待できる形を作りつつあった。ツゥットが田坂らに自由にさせてもらえないために厚い攻めとはならないが、「喜名か加賀見を投入して中盤にパスの起点を作ればマークが外れて結構簡単に崩せるのではないか」という東京ペースの時間帯。しかも降り出した雨のためか東京DFのチャージに対してセレッソの選手があっさりと倒れ、ボールを簡単に獲得できる。ところが、「いける」という雰囲気が漂いだし、私も「相変わらずモットラムはあまりファウルをとらんなあ」などと余裕をかましていた12分、またしても東京の集中力が切れてしまう。FKに東京の選手が反応せずなんとなくフリーで抜け出た森島を、後ろから浅利が倒してPK。あっさり勝ち越される。16分にはペナルティエリア内で藤山が不用意なドリブルからボールをとられピンチを招き、22分には攻め込んだところをカウンターで切り返されて西澤のシュートがポストを直撃するなど、どうにもおかしな東京に戻ってしまった。

 17分、小池OUT喜名IN。いつものパターンだが、ここ数試合と同様喜名はあまり目立たない。配球は無難にこなし、マークを引きつけて内藤が攻めあがるスペースを作ってはいるのだが、もう少し中央からの攻撃を演出してほしいと思うのは私だけだろうか。東京は度々チャンスを作り、内藤・由紀彦らのセンタリングまでは行くのだが、31分に由紀彦がフリーのヘッドを外すなど、最後の詰めが甘い。東京は32分、小林OUT加賀見IN。さらにサンドロも積極的に前へ出る(彼個人は攻守に活躍して目立っていた)フォーメーションをとって得点を狙うが、陣形が前と後ろに二分。セレッソがボールをとるとノーチェックの中盤を抜けて簡単にシュートまで持っていける状態になり、東京はチャンスさえも作れなくなっていく。加賀見と喜名の役割分担も明確にされているようには見えない。パスをカットされてはシュートを打たれ、ゴールキックから攻撃をやり直すという繰り返しだ。45分、右サイドでうまくマークを外してフリーになったツゥットが絶妙のグラウンダークロスを返すが、サンドロの足が僅かに届かず(あと5センチ足が長ければなあ…と一瞬思ったが、あれが他の選手だったら全然届いていないだろうから文句は言えない)、ノーゴール。結局、そのまま試合終了の笛を聞くことになった。

 

 セレッソは強い。東京より上の3位なのだからそれはわかっていたのだが、昨年までのイケイケのイメージがあるだけに、今季のバランスのとれた、完成度の高いサッカーには驚かされた。こういうサッカーをやりたいから、レネをクビにしたんだね。納得。爆発力は今までほど期待できないかもしれないが、大きな落ち込みもあるまい。残り試合は福岡、横浜、川崎。首位横浜との直接対決を残しているだけに、初優勝も現実味を帯びてきた。

 また、あくまでアウェイ国立での話ではあるが、ここのサポーターはホントにチームのことが好きそうだ。勝利の瞬間、皆がスタンド上段から最前列まで一目散に降りてきた姿は昨年のナビスコカップ快進撃時の東京サポーターを思い起こさせ、ほほえましい感じさえした。ガンバとはえらい違いだ(いや、ガンバにもそういうサポーターもいるんだろうけど、前回ギャルとヤンキーがやたら目立ったものだから)。

 FC東京は、大事な時間(特に後半開始直後)に集中力を欠いてしまうという弱点をまたもさらしてしまった。どこのチームでもそういった時間帯はあるのかもしれないが、東京の場合はあまりにも顕著すぎる。また、今回は試合全体を見ても反応の鈍さが目立った。体力的な「疲れ」の問題だけではなさそうだ。連戦で精神的に余裕がないのか、逆に順調に来たことで余裕をかましてしまっているのか…。昨年アビスパ福岡はファーストステージで今季の東京と同様の快進撃を見せたが、安心したセカンドステージで連敗の泥沼にはまって再び2部転落の危機に陥った。東京も昨季、余裕で昇格を決めるペースだったのが終盤の連敗でギリギリの展開になってしまった。まだ安心するには早すぎる。ファーストステージも残り3試合だが、きっちり勝ち点6以上をゲットし、目標の年間総合8位以内の可能性を大きくしてほしい。スケジュールは相変わらず厳しいが、昨年の夏・秋を思い出せば、まだまだ東京は頑張れるはずだ。

 

 

2000年5月13日 国立競技場

Jリーグファーストステージ第12節

 

FC東京 1−2 セレッソ大阪

 


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