5月24日(金)

 何だかえらい騒ぎになってしまったカメルーンの中津江村キャンプだが、遅れに遅れてついに到着。それでも村の人たちは笑顔で「来てくれて嬉しい」といっているようだし、カメルーン側もきちんと非を認めているようだし、我々としても大いに楽しめたし(笑)とりあえずは良かったのではないだろうか。で、49時間のフライトの末昨日深夜に着いたばかりのカメルーン代表は休む間もなく、今日の夕方サガン鳥栖と練習試合。ニュース映像で見る限りさすがに選手の動きは重そうだったが、それでも何度か超絶テクニックを見せて九州の人は大喜び。これぞ地元開催の意義で、良かった良かった。
 ただ、「良かった」っつってもそれほあくまで我々日本人側の話であって、カメルーンの選手にしたらやはりたまらんよな。スケジュールをこなすのに精一杯で調整どころの騒ぎではない。明日には大分から神戸に移動して明後日イングランドとテストマッチ(これ、僕、わざわざ見に行くんですけどね)。で、一旦大分に戻ってから
富士吉田に移動して2次キャンプ。本番は来週の日曜日、アイルランドと新潟で。パリからW杯のキックオフまでわずか10日くらいか……。こうなったらもはや勝敗は問題であるまい。我々は中津江村のためにも、優勝の可能性を聞かれて「もっと早く来られれば…」と答えていた気の毒な監督のためにも、ぜひカメルーンを応援しようではないか。どうせ日本と当たらないんだし。


5月23日(木)

 夜、新宿ピカデリー1でピーター・ジャクソン監督『指輪物語/旅の仲間』、じゃなくて『ザ・ロード・オブ・ザ・リングス』、もとい、『ロード・オブ・ザ・リング』。トリロジーの1作目ということで「どうせ「続く」って感じの終わり方なんだろうなあ」と思ってみていたら、最後本当に「次に続く」というクレジットが出て2作目(『二つの塔』)の予告編まで流れたので笑った。そして、肝心の内容の方は、全くもって満足いくものだった。久々に大画面の劇場で見たせいもあったのだろうが、特撮の迫力はとにかく圧倒的。CG技術が凄いというよりその技術を生かしきる画面の構図の取り方をしているようで、そこらへんは監督の腕の良さだろう(チャンバラの見せ方にはやや難があるようだが)。そして何より、その世界観の素晴らしさ。様々なキャラクターがうまく散りばめられた登場人物と種族。数千年に渡る「歴史」の重さ。人の良いホビットたちの祭りでのはしゃぎぶりや旅の仲間が次々に名乗りをあげるところ、あとラスト近くで仲間の一人が息絶える場面なんかは恥ずかしながらジーンとしてしまった。こんなスケールの話を大真面目に(それも巧みな戦略をもって)映画化しようとした時点で、既にジャクソンは勝っていたとも言えるだろう。『二つの塔』(とそれ以上に『王の帰還』)が待ちきれないね。


5月22日(水)

 仕事帰りに原宿を歩いていて急に本が買いたくなったのだが、考えてみたら原宿や表参道にはでかい本屋が1つもない(ブックオフはあるけど)。「そういえば以前青山ブックセンターが入っていたな」とラフォーレに駆け込んでみたものの青山ブックセンターは既に影も形もなく(ただの記憶違いか?)、おまけに自分がその空間でものすご〜く場違いであることに気づいてしまって気恥ずかしい思いをした。キャンペーンかなんかしらないけど、入口付近で頭の上に花を立てた女の子が何人も歩いてたしなあ。

 

 夜、ビデオで北野武監督の第2作『3−4×10月』。ヤクザの恫喝や鉄拳や拳銃やマシンガンよりもやっぱり一番怖いのは根暗人間の爆発だよね、というわかりやすい物語。柳ユーレイは無表情のままとぼとぼと歩いたり素振りをしたりする姿に妙な迫力があり、冗談抜きで名演技だと思う。唐突な暴力、美しい自然、ふと現れるお間抜けな瞬間といったたけし節はこの頃からすでに魅力的だ。序盤のぎこちなさ(演技も演出も)が気になるといえばなるのだが、時系列を大胆に操作したラストシーンは余韻が残っていい感じ。


5月21日(火)

 夜、新宿の「鳥一」で飲み。串焼を1人1本ずつ頼んだら、下品なくらいにでかい肉が出てきて全員死にそうになった。サラダのうまいことうまいこと。

 福島県で熱心なアルゼンチン人サポーターがフーリガンと間違われて(?)警察に通報され、取調べを受ける騒ぎになったとのニュースを聞いて頭が痛くなった。マスコミがやたら警察のフーリガン鎮圧訓練なんかをとりあげているせいか、いつの間にか「世界とともにサッカーを楽しもう」や「遠来の客へのおもてなし」よりも「暴力外国人対策」がW杯の主題になってしまった感がある。仮に日本のサポーターがアルゼンチンで同様の扱いを受けたとしたら、ほぼ間違いなく日本人は「これだから第三世界は…」という感想を持ったと思うね。キャンプ地でのトラブル続出といい、いよいよ大会失敗の予感が漂ってきたような。


5月20日(月)

 DVDで、篠崎誠監督『忘れられぬ人々』。胸がぐっと詰まる映画。人間というのは忘れてしまう生き物だけれども、でも決して忘れられぬことだってある。幸福な時間も、悲しい記憶も。だからこそ、ある人が死んだとしてもその人の思い出はどこかへ消えてしまうのではなく、周りの人々によって受け継がれていくのだ。きっと。大木実の好演、三橋達也のかっこよさが印象的。戦争体験世代のジーサンたちは、「近頃の若い者は」などと愚痴る前にこの映画を見てもう一度襟を正すべきであろう。背中で語るべし。

 

 なんだかあの瀋陽日本総領事館での北朝鮮難民駆け込み失敗事件以後、メディアはにわか人道主義一色に染まっている様子。TVのコメンテーターなんかもヒステリックに外務省批判を繰り返す。ま、そりゃあの武装警官に帽子を渡した副領事とやらは批判されても仕方がないと思うよ。が、しかし、これまで日本の外交政策やら北朝鮮の現状といった問題についてきちんと関心をもって考えてきた人間がこの国にいったいどれだけいるというのだろう。もしくは、そうした関心を喚起するような報道がなされてきたのだろうか?仮に中国大使が「難民まがいの連中は追っ払え」という指示を出していたとしても、それは従来の方針を上なぞりしているにすぎないはず。非人道的な外交と外務省の腐敗、さらには鈴木宗男のような寄生虫的政治屋の跋扈を許してきたのはいったい誰か。問題なのは、個別の(つまり今回の)対応だけではないだろう。


5月19日(日)

 昼間、ビデオで北野武監督『HANA−BI』。はるお君と話していて以前TV放映を横目に見ただけなのに気づいたので、じっくり見直してみる。なんつーか、そりゃあベネチアで賞も取るよね、というくらいに完成度の高い映画。『ソナチネ』に比べると色調とか構成とか様々な要素がぐっと洗練され、さらにヒューマンな味も加わったらもう降参するしかないだろう(個人的には荒削りな『ソナチネ』の方が好みだけど)。主演俳優としてのたけしもこの作品が頂点なのではないだろうか。沈黙の重み。生きるということの切なさ、悲しさ。胸に響く寺島進のつぶやき。残念だったのは、ラストに余計な1カットが入っていたことかな。波打ち際に鳴り響く銃声、で終わっていればどんなによかったことだろう。

 

 夜、国立競技場で久々にラグビーのテストマッチ。日本代表 59−19 ロシア代表うむ。ボールがテンポ良く回ってとても面白いゲームだった。ロシアのインサイド防御の緩さを突いてミラー・小野澤が中を破りまくり、とどめを栗原・大畑が刺すという理想的な展開。立ち上がりこそややミスも目だって手間取ったものの、前半途中からは湧き出るフォローで圧倒、最終的には7トライを奪って日本が快勝した。

 ミラーは期待通りの前への強さを見せ、DFのギャップを的確に突いてゲインを重ねた。彼の場合はどちらかと言えば防御が問題だと思われ、より内側の強いチームと戦ったときにどうなるか見てみたいところ。そのミラーとセットということでで起用されたと思われる苑田は密集への到着の遅れが目立ち、やや物足りなく映った。密集でもみ合う時間が少しでも長くなればなるほど日本にとって不利な状況になると考えられるので、やはり現時点では村田の方が良いのではないだろうか。バックスリーはスペースさえあれば(小野澤に限ればスペースさえいらない)無敵。涼しいコンディションだったとはいえFWの走力も改善されているように見えた。斉藤のど迫力のライン参加は大きな武器になるだろうし、大久保・箕内・伊藤と構成する第3列はまことに頼もしい。CTB2人は地味ながら堅実なプレーを見せ、怖いのは怪我だけだろう。

 あえて問題点を探すとすればセットプレーのミスとモール防御かな。まあ前者は練習で精度を上げていくしかなく、後者はある程度仕方がない部分でもある。ゴール前での粘りがあまりにないような気もしたが、あえてクラッシュによる消耗を避けた上で攻め勝つ意図なのかもしれない。まあ、ここら辺は次のトンガ戦で見えてくるだろう。

 ロシアは欧州で8〜10番目くらいの実力だと聞いてちょっと心配していたのだが、フィジカル的な強さは見せたもののそれを帳消しにするほどミス・反則が多く「やられっぱなし」で終わってしまった。コンディションとレフェリングとの相性に相当問題があったようにも見えたのだが。

 いや、ホント、今日は久しぶりに日本代表のスッキリする勝ちゲームを見せてもらった。こんな試合ならば指定席3千円も全く高いとは思わないぞ。

 後ろの席の女が試合中「スーパー12で目が肥えちゃってるからさあ」「緊迫感が感じられない」などとたわけたことを抜かしていたが、その割にラックでどちらがボールキープしているかもわからないなんて、いったいどういう目の肥え方をしてるんだ(笑)。両チームのラインの位置取りを見ればだいたいわかるだろうに。フットボールは、テレビでばかり見てちゃいかんぞい。

 

 ラグビーといえば、来年から全国リーグが始まることがようやく決まった。サッカーやバレー・バスケの例を見てもわかるとおりこうした試みがすぐに軌道にのってメデタシメデタシということはほとんどありえず、むしろ一時的にはラグビー界が混乱と苦境に陥ることさえ覚悟せねばなるまい。それでも現状では駄目だということでは意見が一致しつつあるのだろうから、「やってみる」価値は大いにあると思う。不安なのは、80年代後半からの日本サッカー改革に比べると現場レベルでの革新志向が足りないように見えることだろうか。


5月18日(土)

 ビデオで、ジガ=ヴェルトフ集団制作『東風』。要するにゴダールの作った政治劇映画だ。ジャケットには「ここに来てゴダールの変貌はすさまじく」なんて書いてあるけど、『ウイークエンド』・『ワン・プラス・ワン』に続いてこれを見たらたいして違和感がないようにも思える。というかその2本の笑って聞き流す(やりすごす)べき部分を「左翼的なもの」に感化されたゴダールがくそ真面目に突き詰めてしまった、という感じかな。ナレーションも映像も政治的なメッセージ・示唆に富んでいる(というかそれしかない)のだが、にもかかわらず観念的なものは(少なくとも今観ている僕たちにとっては)どうでも良くて、印象に残るのはスタイリッシュな画・音だけだったりするあたりが、結局はゴダールということか。

 しかし、こんな小難しいこと(用語)をぐだぐだ言ったり考えたりしなきゃ革命が達成されないとすれば、やっぱり共産主義革命というのは成功する可能性はなかったのだと改めて思い知らされたような。

 

 夜、赤坂の「つぼ八」(3週連続(笑))で飲む。後輩のはるお君と映画の話になったのだが、「僕、ウォン・カーウァイ好きなんですよ」と話を振られたのには困った。全く見ていないのだ。「『七人の侍』が面白かった」ということなので、「『用心棒』『天国と地獄』はもっとすごいぞ」と言っておく。あと、一応黒沢清も薦めたのだが、さて彼のお口には合うのかどうか。

 気がつけば、サイト開設からもう2年。


5月17日(金)

 サッカー日本代表のW杯メンバー発表。中村俊輔の落選という「衝撃」。まあ、ありそうなことではあった。

 アレックス・小野・服部が揃ってしまえば左サイドに俊輔の入る余地はない。では、本来の位置であるミッドフィールド中央はどうか。おそらくトルシエは、小笠原と俊輔を天秤にかけた結果として俊輔を外すに至ったのだろう。昨年来の小笠原の成長は著しく、安定感では俊輔を上回るかもしれないし、戦術的にもよりフィットしそうではある。それはそれで監督の判断としてはよくわかる。トルシエ政権初期に「覇気がない」などとしてあごの割れたフランス人に突き飛ばされまくっていた姿を思い出せば、満男君が本番でピッチに立つことがあるとすればそれはそれで感動的とさえ言えるだろう。が、しかし。やはり俊輔は「ものが違う」と信じている僕としては、やりきれない気持ちを捨てきれずに6月を迎えることになるのだろう。極限状態での大仕事、世界をあっと驚かせる一発。それが見たかったのだけれど。

 リスト全体を見渡してみると、各選手のユーティリティ性に重きを置いているところにトルシエ色が強く出ているように思える。波戸を外したのはバランス的にどうなのかが気がかり。秋田は、今になって選ぶのならば今までの「テスト」は何だったのか。中山隊長が入ったのは素直に喜ばしいし、FW4人の顔ぶれはきわめて妥当だろう(西澤の傷口が開かないか心配だが(笑))。福西は稲本の控えということなのだろうが、外した選手と比較してあえて23人に入れる必要があったかどうか。そして最も残念だったのは、10番を付け、キャプテンの腕章を腕に巻いた名波浩の姿がW杯のピッチで見られないことだ。彼の不在で、このチームにはピッチ上での「中心」がいないように見えてしまうのだ。


5月16日(木)

 夜、新宿NSビル30階「PORTO」で夕食。せっかくの新宿の夜景も、男3人で馬鹿話をしながら飯を食っていては全く目に入らないのであった。

 TBSで欧州チャンピオンズリーグ決勝。レアル・マドリード 2−1 レバークーゼン。雨の降り注ぐ滑りやすいピッチコンディション。両チームともシーズン終盤のきついスケジュールでだしがらのような状態にあったせいか、ミスも多く決して出来はよくなかったように見えた。それでも、質・量ともに圧倒的に優れた戦力を持っているだけに、マドリーの方がまだ味の出る余地があったというか。ラウール・ジダンのスーパーゴールで2得点。終盤のレバークーゼンの猛攻も途中出場のGKカシージャスがゴールライン上に身を投げ出して防ぎまくり、ついにクラブ百周年を優勝で飾った。史上最強の戦力が最後の最後でついに結果を出したというところか。まだロスタイムを5分以上残したセットプレーでGKブットが上がって惜しくもヘディングを外した場面、95年のJリーグファーストステージ、あるいはアトランタ五輪の川口能活を思い出した人間は僕だけではないだろう。無茶は無茶でも、世の中にはやる価値のある無茶があるのだ。


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